cali≠gari、30周年イヤーを飾るツアーファイナル公演はホーム、新宿!カオスで美しい世界を体現しフロアを魅了

ライブレポート | 2023.09.21 19:00

cali≠gari TOUR16 FINAL
- 銀河鉄道の夜 ~廃線された未来駅にて~-
2023年9月18日(月祝)Zepp Shinjuku(TOKYO)

 今年6月に最新アルバム『16』を発表し、前後してリリース・ツアーとなる『TOUR16 -銀河鉄道の夜-』もキックオフ。全国を巡っている最中の9月11日には結成30周年を迎えたcali≠gariが、9月18日にツアーの最終公演『TOUR16 FINAL -銀河鉄道の夜 ~廃線された未来駅にて~-』を開催した。会場は今春にオープンしたばかりのZepp Shinjuku(TOKYO)。節目のタイミングにバンドのホームとも言える新宿でツアー・ファイナルを迎えられるのは、なんだか喜ばしい。

 開演前のフロアで扇動的なミニマル・テクノと和やかなざわめきに耳を傾けていると、オーロラのようにゆらめくシンセがフェイドイン。今回のツアーのオープニングSEとして各地で使用されてきた宮沢賢治の作詞・作曲による「星めぐりの歌」のカバーが、ファイナルでは生演奏バージョンとしてお目見えだ。この日の編成は、cali≠gariの3人にサポートとして中西祐二(Dr)、秦野猛行(Key)、yukarie(Sax)、白石元久(Mani)というお馴染みのメンバーを加えたフル・ラインナップ。ゆったりと刻まれるリヴァーブがかったリズムとアブストラクトに宙を漂うサックスの音色、ノスタルジックなメロディーに乗せて丁寧に言葉を紡ぐ石井秀仁の歌唱が音の層となって渦巻いていく──さながら童謡ダブといった趣の同曲で、6人(+1人)は会場を深遠な星間へと一気に塗り替える。

 そこからコズミックなシンセに導かれて『16』のリード曲「銀河鉄道の夜」が早くも登場。星が瞬くようなライティングと相まって、銀河を車窓越しに眺めながら移動するような昂揚感に見舞われると、続いては往年の人気曲「リンチ」。サックスが加わることで見世物小屋のような風情も纏ったこの曲は、桜井青がX(旧Twitter)で語ったところによると、この日の終演後に配布された新曲「廃線された未来駅にて」と「銀河鉄道の夜」の前段として世界線を共有するそう。『16』のインタビュー時には背景が明示されなかった「銀河鉄道の夜」の読み解きが、序盤のセットリストに仕込まれている模様だ。そして、フュージョン・メタルな「赤色矮星」で銀河パートをド派手に駆け抜けると、一転してどんよりとしたダブ・テクノ風のSEへ。硬いビートのなかから徐々に浮上する混沌を受け継いだのが「狂う鐫る芥」だ。

石井秀仁(Vo)

 とことん抑えた照明のなか、会場のあちこちから点々と白いペンライトの光が灯されていく。ときには照明が完全に消えて光源をペンライトだけに頼る瞬間もあって、その儚い光がなんとも美しい。けれど、それが淡々とした不敵さで阿鼻叫喚の光景を描いた楽曲に向けられていると思うとシュールでもある。そこにジャジーなバラード「夜陰に乗じて」、スパニッシュ調も交えた「一つのメルヘン」でライヴならではのエモーショナルな叙情を畳みかけると、次第にしっとりした雨音のSEが。cali≠gariには長く歌い継がれてきた雨ソングが多くあるが、ここでピックされたのは最新作から「紫陽花の午後」だ。泣きのギターも交えて一つの短編小説のような歌世界をじっくりと聴かせると、「続、冷たい雨」「冷たい雨」と定番の人気曲が続く。そして、ファニーなアンサンブルで翻弄する「果て描く真っ平な日差し」を終えると、大きな拍手のなかで本日初めてのMCコーナーへ。

桜井青(Gt)

村井研次郎(Ba)

桜井「大バコはいいですね」
村井「じゃあ、小バコはだめってこと?」
桜井「んなことない!」
村井「大バコだから、久しぶりに青さんのあれ聞きたいな。(桜井の物真似で)『アリーナ!まだまだ行けるかい?』っていうの。やらないの?」
桜井「やりますよ!」

……といった、ナチュラルに煽る村井研次郎と、仕切っているようで意外と振り回されている桜井のトーク(石井はお色直し中)で観客の笑いを誘うと、そのあとは怒涛のアッパー・タイムへ突入。グラマラスな「禁断の高鳴り」、煌びやかなビート・ロック「都市人」、ジュリ扇を振りまくる狂乱のフィーバー・タイムがお約束の「マッキーナ」、「コズミック然れど空騒ぎ」「淫美まるでカオスな」というダンサブルな昇天チューンとノンストップで突き進むと、「燃えろ!」という桜井のシャウトと共に石井流の人生賛歌「燃えろよ燃えろ」から森岡賢に贈るSOFT BALLET「Engaging Universe」のカバーへ。ロマンティックなシンセ・サウンドと大らかなメロディーに包み込まれるような恍惚感を残して本編は終了した。

 アンコールの声に呼び込まれてふたたびステージ上に現れたcali≠gari一行は、言葉もなく「廃線された未来駅にて」を初披露。ラストの祈るようなコーラスが印象に残るメランコリックなミディアムだけで姿を消したメンバーたちに2度目のアンコールがかかると、ここで今後のライヴの告知が。来月10月から毎月30日にはバンドの歴史にまつわるライヴハウス(現時点で発表されているのは池袋手刀、本八幡ROUTE14、新宿ロフトプラスワンの3本)での連続公演が、そして2024年の1月20日には建て替えを控える日比谷野外大音楽堂公演の開催が発表され、会場からは歓声が沸き上がる。

 そうした31年目のcali≠gariの勢いを投影したように、フィナーレまでの4曲はトップギアで激走。「ライ・ラララライ!」というコールで攻めるポスト・パンク・チューン「切腹」、さまざまなパンク要素がてんこ盛りの「脱兎さん」、バナナをフロアに投げ入れるパフォーマンスが恒例の「混沌の猿」、「クソバカゴミゲロ!」と場内が一体となって叫ぶ様が痛快なハードコア・チューン「クソバカゴミゲロ」と、ステージの上も下も持てる熱量を大放出したところでこの日の公演はすべて終了した。

 楽曲の世界観をじっくり聴かせるシーンと、音楽を「体感」するものとしてエネルギッシュに突っ走るシーンと。その両方を体験できたツアー・ファイナルだったが、そのなかで個人的に強いインパクトを受けたパートが、「燃えろよ燃えろ」~「Engaging Universe」~「廃線された未来駅にて」と続いた場面だ。来るべき死に目を向け、「見送るということ」「見送られるということ」に思いを馳せる桜井の現在のモードに対し、まばゆいほどに強烈な生で聴き手を照らし出す石井の楽曲。その最たるものが「燃えろよ燃えろ」で、熱量高いパフォーマンスを通じ、生きることの儚さ、残酷さ、やるせなさも抱えたまま突き進むパワー……のようなもの、にふと触れたような気がしてグッときた。先述の情報のほか、今後のスケジュールもどんどん発表されていきそうな31年目のcali≠gari。その動向にも引き続き期待したい。

SET LIST

OP 星めぐりの歌
01. 銀河鉄道の夜
02. リンチ
03. 赤色矮星
04. 狂う鐫る芥
05. 夜陰に乗じて
06. 一つのメルヘン
07. 紫陽花の午後
08. 続、冷たい雨
09. 冷たい雨
10. 果て描く真っ平な日差し
11. 禁断の高鳴り
12. 都市人
13. マッキーナ
14. コズミック然れど空騒ぎ
15. 淫美まるでカオスな
16. 燃えろよ燃えろ
17. Engaging Universe

ENCORE 1
01.廃線された未来駅にて

ENCORE 2
01. 切腹
02. 脱兎さん
03. 混沌の猿
04. クソバカゴミゲロ

LIVE INFO

cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″「青春の抜け殻」
2024年1月20日(土) 東京・日比谷野外大音楽堂
開場16:30 / 開演 17:00

cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″「有名人だョ!全員集合」
2023年10月30日(月)東京・池袋手刀
開場 18:00 / 開演 18:30

cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″「2000.7.10」
2023年11月30日(木)千葉・ 本八幡ROUTE14
[第一部] 開場 15:30 / 開演 16:00
[第二部] 開場 18:30 / 開演 19:00

cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″「カリ≠ガリの決算説明会 style2023」
2023年12月30日(土)東京・新宿ロフトプラスワン
開場 11:45 / 開演 12:30

  • 土田真弓

    取材・文

    土田真弓

    • ツイッター
  • 撮影

    マツモトユウ

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