伊東歌詞太郎、クラシック・アレンジで届けた繊細な感情。「Live Classics Vol.4 〜Visit the Stars〜」をレポート

ライブレポート | 2023.12.27 17:30

伊東歌詞太郎「Live Classics Vol.4 〜Visit the Stars〜」
2023年12月22日(金)日本橋三井ホール

 伊東歌詞太郎が12/22、クラシック・アレンジによるワンマンライブ「Live Classics Vol.4 〜Visit the Stars〜」を東京・日本橋三井ホールで開催した。
「Live Classics」は、伊東歌詞太郎が2020年から行っているクラシック・アレンジでのワンマンライブ(2020年は配信のみ)。「未来古代楽団」の砂守岳央(指揮/マニピュレーター)、松岡美弥子(ピアノ)のアレンジ・演奏のもと、ピアノ、バイオリン(×2),ヴィオラ、チェロ、コントラバスが加わった六重奏・7人編成で行われた。

 今年で4年目を迎え、今や毎年恒例となった「Live Classics」。普段のライブよりもドレスアップした観客が多く、このライブシリーズを心待ちにしていたことが伝わってきた。
 会場が暗転し、演奏者と伊東歌詞太郎がステージに登場、大きな拍手で迎えられる。オープニング曲に選ばれたのは「Storyteller」。最新アルバム『魔法を聴く人』の起点となったこの曲は、葛藤や絶望を経て、新しいストーリーを紡ぐ決意を歌った楽曲だ。一瞬のブレスの後、ピアノの音色とともに〈HELLO MY STORY/何年も待っていた〉というフレーズが響く。さらに弦カルテット+コントラバスが重なり、まさにクラシカルな音響が生み出される。ステージのスクリーンに映し出されるのは、宇宙をモチーフにしたアニメーション。楽曲の世界観を際立たせる演出も心に残った。
 続く「パラボラ〜ガリレオの夢〜」では流麗なストリングス、滑らかでドラマティックな歌声が会場を包み込む。そして「真珠色の革命」(TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」EDテーマ)によってライブは早くも最初のピークへ。優しさと強さを内包した旋律ーー感情豊かなファルセットが素晴らしいーー〈伝えたい言葉はあなたの心に届くと信じて/ここで歌うだけ〉というライン、美しいストリングスが響き合うシーンは、まちがいなく「Live Classics」でしか体感できない。椅子に座って熱唱する伊東の姿もレアだ。

「年末の忙しいなか、よくぞいらしていただきました。……泣いてる人、ちょっと早くないですか(笑)」「生楽器の音色を感じていただいて。普段のバンドライブとは異なった解像度の演奏を聴いてもらえたらと思います」
 というMCの後は、「さよならだけが人生だ」。もともとはボカロ曲として発表された楽曲を伊東は、すべての歌詞に繊細な感情を込めながら歌い上げる。人は誰もが孤独で、大切な人とも必ず別れの時がくる。でも、だからこそ、今はそばにいたい──そんな切実な思いが刻まれた歌は、観客ひとりひとりの心にしっかりと届いたはずだ。続く「ヰタ・フィロソフィカ」(TVアニメ「わたしの幸せな結婚」ED主題歌)におけるロマンティックなボーカリゼーションも絶品。言うまでもなく、伊東歌詞太郎のシンガーとしてのポテンシャルを存分に味わえることこそが、このライブシリーズの大きな魅力だ。彼の歌を支え、その奥深い表現力を増幅させる演奏も最高。「未来古代楽団」の砂守岳央は、アーティストや声優への楽曲提供、さまざまな劇伴を手がけるクリエイター。伊東の音楽性とも共通点が多く、「Live Classics」は砂守の編曲センスなしには成立しえないと言っていいだろう。

 続いては、「Live Classics」恒例のアニソン・メドレーへ。今年のテーマは宮崎駿監督作品(スタジオジブリ作品)。“家庭教師のアルバイトをしていた頃、監督を見かけたことがある”というエピソードを披露した後、「やさしさに包まれたなら」(「魔女の宅急便」/荒井由実)、「君をのせて」(「天空の城ラピュタ」/井上あずみ)、「地球儀」(「君たちはどう生きるか」/米津玄師)をストリングス・アレンジでつなげ、大きな感動へと結びつける。3曲とも言わずもがなの名曲だが、伊東の歌唱によって新たな魅力が引き出されていた。

 アルバム『魔法を聴く人』の収録曲「singer.song.writers.(alpinist.)」からライブは後半へ。「百火繚乱」は重厚なサウンド、打ち込みのビートとともに演奏され、心地よい高揚感が広がった。手拍子が巻き起こった「magic music」では伊東が椅子から立ち上がり、身振り手振りで観客を煽りまくる。そのまま客席に降り、観客のすぐそばでパフォーマンス。伊東のテンションを高まりによって、ミュージシャンたちの演奏もさらに熱を帯びていった。

「音楽をもっと愛するためにはどうしたらいいんだろう?と考えて。今年は“やっぱり一生懸命歌うことがいちばん大事なんだな”と改めて気付きました。そういうことを思う出来事がいっぱいあったんですよね」。音楽、歌に対する強い気持ちを込めたMCを挟んで歌われたのは、「Live Classics」の定番曲「帰ろうよ、マイホームタウン〜追想〜」。「ただいま」「おかえりなさい」という言葉への思い、安心できる場所の大切さを綴ったノスタルジックな歌が大らかに広がっていく。最後は“ラララ〜”の合唱で、2023年の「Live Classics」は幕を閉じた。(これも恒例の“アフタートーク”では、讃美歌についてのトーク、そして、「もろびとこぞりて」を独唱で歌い、聖夜ムードを演出していました)

 ツアー「Storyteller」、アルバム『魔法を聴く人』のリリース、ツアー「主人公を訪ねて」、そして、ライブ「Live Classics Vol.4 〜Visit the Stars〜」。今年も多くの歌を届けてくれた伊東歌詞太郎。歌という表現の可能性を追求し、アーティストとして成長を続ける彼は、2024年、どんな歌を響かせてくれるのか? 今から楽しみでしょうがない。

SET LIST

01.Storyteller
02.パラボラ〜ガリレオの夢〜
03.真珠⾊の⾰命
04.さよならだけが⼈⽣だ
05.ヰタ・フィロソフィカ
06.アニソンメドレー(やさしさに包まれたなら〜君をのせて〜地球儀)
07.singer.song.writers.(alpinist.)
08.百⽕繚乱
09.masic music

ENCORE
01.帰ろうよ、マイホームタウン〜追想〜

SHARE

伊東歌詞太郎の関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る