トゥライ、念願の初ワンマンライブを開催!バンドメンバーと作り出すグルーヴに会場も酔いしれたTIAT SKY HALL公演をレポート

ライブレポート | 2024.03.08 17:00

トゥライ 1st one-man live「ALL TO LIVE vol.1.5 〜Birth & Retry〜」
2024年1月20日(土)TIAT SKY HALL
※昼夜公演(レポートは昼公演で実施)

VOCALOIDクリエイター、サウンドプロデューサー、ソングライター、歌い手など多岐にわたり活動を続けるアーティスト、トゥライ(湊 貴大/流星P)。彼が2024年1月20日、羽田空港TIAT SKY HALLにて「1st one-man live『ALL TO LIVE vol.1.5 〜Birth & Retry〜』」を昼夜2部制で開催した。

2020年6月27日に開催予定だった初ワンマンライブ「ALL TO LIVE Vol.1 ~はじめてのわんまん~」が新型コロナウイルス感染症の影響で10月24日へ延期に。さらにそれも感染再拡大の影響を鑑み事実上の中止となり、クラウドファンディングのリターンとして全8曲を歌唱する無観客配信ライブを行った。そこから3年3ヶ月の時を経て、ようやく彼にとって初のワンマンライブの開催に至ったのだ。このレポートでは昼の部「Retry part」の模様をお届けする。

「Retry part」のコンセプトは、クラウドファンディングのリターンとして2020年10月24日に開催した無観客ライブの“リトライ”であり、ニコニコ動画に投稿したカバー楽曲の“リトライ”。ゆえに同ライブで披露した楽曲を含むカバー曲を中心としたセットリストが組まれ、同様の衣装とバックバンドで繰り広げられた。

ピアノ、アコースティックギター、コントラバス、バイオリン、パーカッションのバックバンドメンバーが登場すると、ピアノの音色に乗せてトゥライがステージに登場。「炉心融解」で幕を開ける。ムーディーなサウンドスケープに乗せて、感傷的なメロディを艶やかに彩った。彼の集中力がほとばしる佇まいからも、この日にかける熱い思いが伝わってくる。

「3年3ヶ月ぶりの雪辱を果たす」と意気込みを語ると、「ピアノ×フォルテ×スキャンダル」、「サリシノハラ」とカバー曲を2曲連続で披露する。ストリングスを招いたアコースティックアレンジにはジャズなどのテイストも盛り込まれ、ふくよかなサウンドが会場を満たした。トゥライも歌でもって歌詞に綴られた哀愁にリアリティを宿し、バンドメンバーと作り出すグルーヴに会場も酔いしれた。

コロナ禍でフリーランスとして音楽サークルAt.Mallettoの活動を行っていた旨を明かしたトゥライは、その時期の制作が非常にのびのびとしていたと振り返る。「気負いなどがなく、ただただ純粋に好きなことをアウトプットできて、商業の音楽を作るのと全然違う楽しさがあると再確認した」と充実を噛み締め、「どの曲も難しくて(自分が歌うとなると)毎回腹が立ちます」と笑わせると、なかでも思い出深い3曲のセルフカバーを届けた。

「アマリリスの憂鬱」は耽美なメロディに乗せて憂いと情熱を込め、ミドルテンポの「花束はいらない」では歌詞のメッセージをストレートかつ切実に歌い上げる。伸びやかなバイオリンや優しいピアノとギターの音色、細やかなタッチのパーカッションも、彼の歌声を静かに照らした。ドラマチックなアレンジが効果的な「恋し夢芝居」では、間奏で和太鼓がプレイされる展開に観客も湧き立つ。アウトロでトゥライが一旦ステージ袖に下がると、そのままバックバンドのメンバーのインストセクションへなだれ込み、ソロ回しなども交えて華やかな演奏で会場を盛り上げた。

再びステージに戻ったトゥライは、活動15年を迎えて初ワンマンを行う自身の心境について「楽しい半分緊張半分でドキドキしていて、でも歌っている間にニヤッとしちゃう」と興奮を伝える。バンドメンバー紹介をする際も「人生で初めて」と告げ、彼の初々しい様子に観客も笑顔を見せた。

スツールに腰掛けて「思い出などに浸りながら聴いていただけたら」とバラードを3曲披露する。その後のMCで「3曲ともものすごく好きな曲」「曲の良さをどれだけ自分なりの歌い方で表現できるかを当時から意識していた」「いい曲だから聴いてくれ!という思いで歌ってきた」と語っていたとおり、ファルセットが楽曲の透明度を上げた「crystal mic」、切実で誠実な歌声で心を揺さぶった「Just call my name」、光が降り注ぐような多幸感の「from Y to Y」と、それぞれ異なる趣で観客をじっくりと曲の深淵へといざなった。

そして「無観客ライブで“これ歌わないの!?”と散々言われた曲」と告げ、「magnet」のセルフカバーを披露。エモーショナルなアコースティックアレンジは楽曲の美しさを格上げし、間奏でギタリストがクラップでリズムを刻むと、観客もそれに合わせて手を叩く。その様子を見て彼の表情が華やいだ瞬間は、まさにライブの醍醐味だった。本編ラストは彼の名前の由来にもなった「ブラック★ロックシューター」。力強い歌声とロングトーンで客席を沸かし、大空のようにスケールの大きい歌声を響かせた。

VALSHEへの提供曲「ハルノハテ」でアンコール1曲目を飾ると、「最後は新曲で締めくくりたい」「人生初のコール&レスポンスをしてみたい」と呼びかける。同曲はクラウドファンディングのストレッチゴールを達成したことを受けて制作され、書いては捨てを繰り返していたところこのライブの開催が決まりすぐに完成したとのことだ。「みんなで一緒に歌える!と思ったからできた曲」「今日のための曲でもあり、これから大切にしていきたい曲でもある」と続けると、最後に「愛すべき僥倖」を届ける。赤裸々で等身大の心情を綴った歌詞を胸に手を当てて歌う姿、観客と歌声を交わし合う様子、すべてがピュアだった。

3年3ヶ月越しの初のワンマンライブの開催、自身歌唱のオリジナル曲のリリースと、2024年の好調なスタートを切ったトゥライ。ここから彼の新しいストーリーが始まるような、そんな予感に胸を高鳴らせるぬくもりに溢れた1日になった。

SET LIST

01.炉⼼融解
02.ピアノ×フォルテ×スキャンダル
03.サリシノハラ
04.アマリリスの憂鬱
05.花束はいらない
06.恋し夢芝居
07.crystal mic
08.Just call my name
09.from Y to Y
10.magnet1
11.ブラック★ロックシューター

ENCORE
01.ハルノハテ
02.愛すべき僥倖

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