Anonymouz、3年ぶりの“バースデーライブ”で見せたアーティスト／シンガーとしてのさらなる進化と成長

Anonymouz Live 2024〜ON BOARD〜
2024年5月21日(火)LIQUIDROOM

Anonymouzが5月21日（火）、東京・LIQUIDROOM でワンマンライブ「Anonymouz Live 2024 ～ON BOARD～」を開催した。3年前の同じ日、同じ会場で初のワンマンライブ「1st Special Live ～Daybreak～」を行った彼女。3年ぶりの“バースデーライブ”でAnonymouzは、アーティスト／シンガーとしてさらなる進化と成長を感じさせる、素晴らしいステージを見せてくれた。

バンドメンバー Gt.マスダミズキ(miida)、Ba.まきやまはる菜、Dr.上原俊亮、Key.大樋祐大(SANABAGUN.)に続いてカジュアルなパンツルックでステージに登場したAnonymouzは笑顔で「Are you ready？！」と挨拶、そのままオープニングナンバーの「Don't Need the Pain」へ。ドープなバンドグルーヴに乗って、いきなりエモーショナルな歌声を響かせる。さらにシンセベースの響きを取り入れたトラック、シリアスな雰囲気のメロディが響き合う「Thrill」を披露。「夜行性」ではダンサブルな音像に導かれ観客が一斉に手を挙げ、体を揺らし始める。間奏で「楽しい！みなさんも自由に楽しんでください！」と呼びかける姿も印象的だった。

「改めましてAnonymouzです！今日は平日だし、めちゃ暑いし(笑)、来るのが大変だった方もいると思いますが、本当に今日来てくれて、ありがとうございます！」というMCの後も、多彩にしてボーダレスな音楽性を体感できるシーンが続いた。澤野弘之のプロデュースによる「Silhouette」では壮大なスケールを感じさせるアレンジとともにドラマティックな旋律を描き出す。さらにエキゾチックな官能性を感じさせる「潜在的最愛」、リラックスした雰囲気の歌声を響かせる「何なんｗ」（カバー/藤井風）を続け、カラフルなボーカル表現でオーディエンスを魅了した。

ライブ前半で個人的にもっとも心に残ったのは「Underground」だった。「私が書いてきた曲の中でも、ひと際特別な立ち位置にある曲です」と紹介されたこの曲は、TVアニメ『ヴィンランド・サガ』にインスパイアを受けて制作されたナンバー。ファルセットを活かした繊細で美しいメロディとともに放たれた〈I'm underground,I'm　under waiting to bloom〉というラインには、“ここからさらに新しい世界に進んでいきたい”という強い意志がしっかりと込められていた。

ひとつひとつのフレーズを丁寧に紡ぎ出し、心地よい解放感へとつなげるボーカリゼーションも素晴らしい。2019年3月からYouTubeでJ-POPの英語カバーを発表し、美しい透明感、凛とした強さを感じさせるボーカルによって瞬く間に音楽ファンの心を掴んだAnonymouz。2023年2月には1stフルアルバム『11:11』を発表し、同年7月には素顔を公開し、活動の幅を確実に広げてきた。23歳の誕生日に行われたこの日のライブでは彼女は、まちがいなく自身のキャリアハイを更新してみせた。

「In Our Hearts」ではAnonymouz自身がエレキギターを演奏。「前からライブでエレキギターを弾いてみたかったので、その夢が叶いました！」と嬉しそうな表情を見せる。奥深いボーカルと“23歳女子の等身大”のギャップもまた、彼女のライブの魅力だろう。

ここで5月31日から3週連続で新曲を配信リリースすることを発表（5/31「よそはよそ」、6/5「酔えない feat.Anonymouz」（MIMiNARI）、6/12「ジューブン」）。第1弾となる「よそはよそ」を初披露した。彼女自身が作詞・作曲を手がけたこの曲は、SNS世代のリアルを描いたポップチューン。“よそはよそうちはうち”というキャッチ―なサビのフレーズ、シティポップ系の心地よいグルーヴを感じさせるサウンドは、幅広い層のリスナーに浸透することになりそうだ。

“お互いに気になってるのに、聞きたいことが聞けない”という微妙な関係性を映し出した「あらいざらいfeat.春野」を放った後は、4/26に配信された新曲「なにする？feat.はしメロ」。ステージには“はしメロ”（の概念）が登場し、2人で〈あれやろうって　これやろうって／忙しいアタシたち全然なんでもいいよ〉というフレーズを響かせる。体を揺らし、手を左右に振る観客も、この瞬間をしっかりと楽しんでいた。R＆B、インディーポップ、ネオソウルなど幅広いサウンドを的確かつ奔放に奏でるバンドメンバーも最高だ。

「ここからラストスパートです！盛り上がっていきましょう！」という声に導かれた「Ladder」（TVアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマ）からライブは終盤へ。華やかなダンスチューン「JAM」では〈このまま終わらないで　手を叩いてビートに身を任せて〉という歌詞によってフロアの高揚感がさらにアップ。続く「Snake Love」ではハートウォームな歌声が広がり、観客ひとりひとりの心をしっかりと揺らしてみせた。

ここでAnonymouzは「今日、23歳になりました」とオーディエンスに語り掛けた。
「20歳のときにここで初めてワンマンライブをやって。3年後にまたここで音楽を楽しむことができて、本当に本当に幸せです。この3年、いろんな変化もあって。いっぱい悩んだこともあったけど、支えてくれるみんなのおかげで音楽を続けられてます。私にとって力になっているみんなに、私からも力を届けられたらなっていつも思ってます。今日がみなさんにとって、何かのはじまりになったらなと思って歌います」
本編ラストは「はじめのはじまり」。大切な人に向けた“また会えたらいいな”“ここからはじめよう”という切実な思いを真っ直ぐに歌い上げ、豊かな感動が広がった。

鳴りやまない手拍子に導かれて、Anonymouzとバンドメンバーは再びステージへ。アンコールの1曲目は「River」。重厚でシリアスなサウンドエスケープ、奥深いボーカルが響き合う。TVアニメ『ヴィンランド・サガ SEASON 2』オープニングテーマとして国内外の音楽ファンに広がったこの曲は、ライブアンセムとしてもしっかりと機能していた。「Vinyl」（King Gnu）の英語詞カバーを披露し、グッズ紹介……と思いきや、“Happy Birthday to you”のメロディが流れ、誕生日ケーキが運ばれてくる。突然のサプライズにAnonymouzも歓喜（＆照れ）の表情で「ありがとう！」と感謝の言葉を返した。

ラストは「シガレットfeat.xea」。洗練されたサウンドとともに“背伸びした恋”をテーマにした歌詞を描き出し、ライブはエンディングを迎えた。