トゲナシトゲアリ、「ガルクラ」聖地、川崎・CLUB CITTA’で開催!エモーショナルなステージにフロアが熱狂した2ndワンマンライブをレポート

ライブレポート | 2024.10.02 19:00

トゲナシトゲアリ 2nd ONE-MAN LIVE “凛音の理”
2024年9月13日(金) 川崎・CLUB CITTA'

これまで数多くのバンドのライブを観て来た。ブレイクするバンドには、特有の熱気や空気感があることを知っている。今にも暴発しそうなほどパンパンまで膨張し切ったテンション感、人が波打つようにうねるフロア。まさに一触即発。トゲナシトゲアリのライブには、確かにそれらがあった。

TVアニメ『ガールズバンドクライ』劇中バンド、トゲナシトゲアリ(以下、トゲトゲ)の『2nd ONE-MAN LIVE “凛音の理”』が9月13日(金)、川崎・CLUB CITTA'で開催された。3月に横浜・1000 CLUBで行われた『1st ONE-MAN LIVE “薄明の序奏”』のときから、本格的ライブバンドとしてのポテンシャルの高さを見せつけ、一部ではすでに話題となっていた彼女たち。TVアニメ『ガールズバンドクライ』の放送が始まると、アツくエモーショナルな劇中歌の数々が話題となって期待値も倍増。今回のライブはアニメ放送後初のワンマンとあって、1300人のキャパに対して3万人の応募が殺到し、急遽、ライブ配信が行われることになったほどのプレミアムライブとなった。

TVアニメ『ガールズバンドクライ』は、いじめをきっかけに不登校となり、東京でアルバイトをしながら大学進学を目指していた主人公・井芹仁菜が、ストリートミュージシャンの河原木桃香と出会い、それぞれ深い事情を抱えたメンバーが集まって、ガールズバンドを結成して壁を乗り越えていく物語。同作は神奈川県川崎市が舞台となっており、ラゾーナ川崎プラザやライブハウス川崎セルビアンナイトなど、実在する場所も多く登場することから、ファンの間では有名な聖地となっている。その物語のラストで仁菜が「私たちの始まりの目撃者になってください!」と発してライブを行ったのが、ここ川崎・CLUB CITTA'だ。

ライブは、アニメのライブシーンを再現するかたちで、アニメ映像を交えながら展開。観客はそのシーンに出くわす観客の一人となって、トゲトゲの物語をライブと共に追体験した。まずは主人公・仁菜が新幹線で初めて上京するシーンの映像に続けて、アニメOP主題歌「雑踏、僕らの街」を1曲目に繰り出すと、大歓声と共に会場が大きく揺れた。クラップと〈ハイ!ハイ!〉というかけ声が響き、ボーカルの理名はアツく真っ直ぐなロングトーンで観客を魅了する。仁菜とギタリスト桃香の出会いを描いたJR川崎駅前の路上ライブシーンは、ギターの夕莉が一人で「空の箱」を歌うところから始まり、そこに理名が加わり二人で歌うというかたちでアニメを完全再現。腹の底から声を振り絞るように歌う理名。クールに淡々とギターをかき鳴らす夕莉。二人の出会いの衝撃が、生々しくも新鮮に目の前に広がった。また、ラゾーナ川崎プラザ ルーファ広場でのシーンでは、アッパーで早口のメロディをスリリングに展開する「声なき魚」で観客を圧倒。劇中で理名たちがトラウマを書いたTシャツを着て「視界の隅 朽ちる音」を歌ったライブハウス川崎セルビアンナイトのシーンは、スクリーンに「不登校」「脱退」「噓つき」の文字が流れる。そして理名、夕莉、ベースの朱李(ルパ役)の3人が並んで演奏した「名もなき何もかも」は、まるでダンスするようにステップを揃えながら演奏。魂の叫びのような歌と演奏をぶつける三人に、会場のボルテージはさらに高まり、拳を掲げながらひしめき合う観客によって、フロアはもはや、すし詰め状態となった。

理名

夕莉

朱李

「自分で言うのもアレだけど、めちゃめちゃいい曲が多いんです」と言ってMCを始めた理名。「私たちには劇中歌以外にもたくさん曲があるんです」と話し、夕莉は「声なき魚」と「運命に賭けたい論理」、朱李は「名もなき何もかも」と「気鬱、白濁す」、理名は「視界の隅 朽ちる音」「黎明を穿つ」と、メンバーそれぞれの好きな劇中歌と劇中歌以外の曲を発表し、ライブ中盤は劇中歌以外も多数披露して観客のハートをつかんだ。アニメが映し出されていたスクリーンは取り外され、サポートメンバーを加えた五人が、爆音でロックを繰り出す。胸をギュッとつかむようなエモーションにあふれた「理想的パラドクスとは」。「気鬱、白濁す」ではマイナー調のメロディから一転キラキラとした華やかさが広がり、夕莉が速弾きのギターソロをステージ最前で繰り広げる。そして「運命に賭けたい論理」では、リリックビデオをバックに映し出しながら演奏。観客は、手を左右に揺らしながら楽曲に心酔した。

TVアニメ『ガールズバンドクライ』で声優に初挑戦したことについて、芝居や芸能活動を行ったこともなく、とにかく初めてのことばかりで不安が大きかったと話した理名。「私は広島出身で、アニメ第1話で仁菜が東京駅で迷ったのと同じ経験をしたことがあり、仁菜との出会いは運命だったかもしれない」とコメント。「これからも壁を乗り越え、新しいチャレンジを続けながら前に進んで行きます」と言って、チャレンジの一環として新曲も多数披露された。

1つ目の新曲「蝶に結いた赤い糸」は、大事な人に向けた楽曲とのこと。「でも私は、仁菜から桃香への気持ちを歌った曲だと解釈している」と理名。歌とギターで始まる同曲。紡いできた思い出を振り返りながら、それをこぼれ落ちないように、大切に手ですくうような楽曲。ここまでのアツさとは一転、胸の奥をかきむしるような切なさと優しい温かさが会場を包み込んだ。間髪入れず、さらに新曲「無知のち私」を繰り出した三人。一転、耳をつんざくノイジーなギターと爆音が会場に鳴り響くと、一気にフロアが沸き立つ。理名のエモーショナルなボーカルに、軽やかに演奏しながらコーラスを重ねた二人、そして汗をかきながら声を枯らす観客を、赤いライティングが妖しく照らした。

終盤戦を前に「アニメが終わって“ガルクラロス”だったみんな、今日はアニメの映像も流れて、浸っちゃって元気ないんじゃないの!まだまだいける?」と声をかけた理名。「水を飲んで」「前の方がギューギューで苦しそうだけど大丈夫?」と観客を気遣いながらも、目をキラキラと輝かせて「やばい、楽しい!」と、笑顔で顔を見合わせた夕莉と朱李。

朱李

ライブ終盤は、トリッキーなリズムも魅力の「傷つき傷つけ痛くて辛い」、朱李のチョッパーベースも火を噴いたアッパーな「サヨナラサヨナラサヨナラ」など。「爆ぜて咲く」では、曲のキメで三人が動きを合わせて魅せる。そして本編最後では、野外フェスのシーンを再現。仁菜の「私の全てを否定した全ての連中に間違ってないって叫んでやる!」とのセリフに続けて「空白とカタルシス」を繰り出すと、観客の大合唱とかけ声が会場を埋め尽くした。巧みにファルセットを効かせながら、アツくピュアにボーカルを響かせた理名。彼女の魂を込めたシャウトに大歓声が沸き起こり、フロアのあちこちでまばゆいオレンジの光がいくつも回った。

理名

夕莉

「それじゃあ、もういっちょ行きますか!」(理名)と言って始まったアンコール。トリッキーなリズムと早口で畳みかけるメロディ、一転広がりを見せるサビのギャップが耳を引き、ヘッドバンギングのように体を前後に揺らして盛り上がった「偽りの理」。ギターのアルペジオによる静かな始まりから少しずつ音が重なり、語りのように歌うリーディングボーカルが耳に刺さる「黎明を穿つ」は、胸のザワザワが止まらない深夜のような情景が浮かんだ。

MCでは音楽を始めたきっかけを話した。「小学生のときにボーカロイドと出会って歌に興味を持ち、今ここに立っています」(理名)。「中学三年生のとき、高校選びで迷っていていろんな高校の文化祭に行っていて、そこで初めて軽音部の演奏を観てめちゃくちゃカッコいいと思ってギターを始めて、今8年目くらいになります」(夕莉)。「中学一年生のときに入部した吹奏楽部でコントラバスとベースを担当したことがきっかけです。本当はユーフォニアムをやりたかったんですけどアニメ『響け!ユーフォニアム』が流行っていて希望者が多すぎて溢れてしまい、第二希望だったコントラバスとベースをやったのがきっかけです。ベース歴は8年です」(朱李)とコメント。また朱李は「川崎来たぞ!夢のような街、こんなに素敵な場所でライブができて本当にうれしい!」と、聖地凱旋の喜びを口にした。

アニメ最終話のラストを再現した「運命の華」では、理名がアニメと同様ギターを弾きながらボーカルを務めて会場を沸かせた。まるでメロコアのような前向きさを放つ同曲。畳みかけるメロディが、ワクワクした未来へといざなう。そしてサビで〈1,2,3,4〉のかけ声を一緒に叫び、理名がこの日最長のパワフルなロングトーンを響かせると、会場には銀テープが発射された。そしてアンコールの最後には、まだやっていない大事な曲、アニメED主題歌となった「誰にもなれない私だから」を演奏。中指の代わりに小指を立てるお馴染みのポーズでライブを締めくくった。

いわゆるガールズバンドを題材にしたコンテンツもの、みたいな軽い感覚で行ったら、本気モードのめちゃめちゃカッコいいバンドのライブで、カウンターを食らってしまったという人も多かったのではないだろうか。アニメとリアルを見事にシンクロさせながら、誰もが心の片隅に持っているネガティブな感情や思い出したくないトラウマをバンバン燃やして、エンジンをフル回転させるようなステージ。この日集まった観客は、トゲトゲの“真の物語”の幕開けの目撃者となった。

すでに11月2日(土)東京・TOKYO DOME CITY HALLで『3rd ONE-MAN LIVE “咆哮の奏”』、12月20日(金)に東京・豊洲PITで『4th ONE-MAN LIVE “協奏の響”』、来年1月12日(日)にMyGO!!!!!との対バンライブ『Avoid Note』の開催を発表しているトゲトゲ。この日はさらに、来年2月7日(金)に神奈川・パシフィコ横浜で『5th ONE-MAN LIVE』の開催、ゲームキャストのオーディション、さらに『ガールズバンドクライ』劇場版総集編の製作決定など多数のニュースを発表。“ガルクラロス”とか言っている暇はなさそうだ。

SET LIST

01. 雑踏、僕らの街
02. 空の箱(夕莉)
03. 空の箱(BAND)
04. 声なき魚
05. 視界の隅 朽ちる音
06. 名もなき何もかも
07. 理想的パラドクスとは
08. 気鬱、白濁す
09. 運命に賭けたい論理
10. 蝶に結いた赤い糸
11. 無知のち私
12. 傷つき傷つけ痛くて辛い
13. サヨナラサヨナラサヨナラ
14. 爆ぜて咲く
15. 空白とカタルシス

ENCORE
01. 偽りの理
02. 黎明を穿つ
03. 闇に溶けてく
04. 碧いif
05. 極私的極彩色アンサー
06. 運命の華
07. 誰にもなれない私だから

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