UNICORN 奥田民生60祭「Let’s チリチリタミー」
2025年5月11日(日)12日(月) 東京ガーデンシアター(有明)
※取材は12日に実施
各メンバーの50歳などの節目の誕生日に、スペシャルライブやイベントを開催する、というのは、2009年に再始動して以降のユニコーンの恒例となっている。2009年10月に、日本武道館2デイズ+大阪城ホール2デイズで開催された、『川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年』が、おそらくその最初だと思う。
ちなみに、OTの50歳を記念してのライブ『奥田民生50祭“もみじまんごじゅう”』(2015年5月11・12日、広島文化学園HBGホール)の時、本人は「もうこれで終わりにしようね、60の時はやらないようにしようね」と言っていたが、その願い虚しく、こうして行われることになったのだった。
初日は日曜だが2日目は月曜、しかも18:00開演にもかかわらず、2日ともチケットは即完。両日フルハウスのオーディエンスが、OTの善き日を祝った。
この日の模様は、フジテレビTWO ドラマ・アニメで、生中継された(6月28日に再放送もあり)。
今回の衣装は、全員ソデなしのツナギで、OTは前後逆にキャップをかぶっている。還暦だから赤で、OTは髪の毛がチリチリパーマ→レッドでチリチリだからレッチリ(RED HOT CHILI PEPPERS)ということで、レッチリのチャド・スミスのコスプレなのですね。
なんでドラマーのコスプレなのかというと、レッチリの他の3人は、基本的に、「タトゥーの半裸がユニフォーム」なので、それを真似するのはちょっと……ということなのだろう。ABEDONが腕にタトゥー(風の落書き)をしていたのも、彼らに倣ったのだと思います。
なお、OTは真っ赤なツナギ(ギターも赤いレスポール。「WAO!」で叩いたカウベルも赤)、EBIはそれよりちょっと薄い赤、ABEDONはピンク。還暦の人は赤で、まだ還暦じゃない度合いに従って色が薄くなっていくそうです。
テッシー(手島いさむ)と最年長の川西幸一は、とうに還暦を終え、古希に近づいて行っている、ということで、赤→紫の間の、グラデーション的な色合い。テッシーはエンジ色で、川西さんは「もうだいぶ褪せてしまった」(by OT)とのことで、くすんだピンクみたいな色だった。あっはっは。
「まあ、そんな、普通です。前よりは。びっくりすることはないです」
と、最初のMCでOTが言っていたとおり、過去のユニコーンのアニバーサリー・イベントと比較すると、わりとキビキビと進んでいく印象。
突拍子もない演出とか、OTに対してのむちゃぶりとか、素敵に楽しいグダグダな時間とかがない、ストレートというか、質実剛健というか、各楽曲の良さ、演奏の良さ、歌の良さ、総じてライブ・パフォーマンスの良さを、正面から届けることに焦点が定まったステージだった。
ABEDONのMCが延びた時、(おかしくて自分も笑っていたにもかかわらず)OTが「長くない?話」と言って戻したりしていたので、今回はそういうライブをやりたかったんだと思う。
この日、ユニコーンが演奏したセットリストを、書いておきます。
01. スターな男
02. ヒゲとボイン
03. WAO!
04. 頼みたいぜ
05. はいYES!
06. サービス
07. 米米米
08. ハヴァナイスデー
09. ツイス島&シャウ島
10. 7th Ave.
11. エコー
12. すばらしい日々
13. 私はオジさんになった
14. 晴天ナリ
15. チラーRhythm
16. Feel So Moon
17. Boys&Girls
18. 大迷惑
19. ロックンローラーのバラード
20. 55
《アンコール》
21. アルカセ
22. 車も電話もないけれど
当然ながら、OTがボーカルをとる曲が中心。他のメンバーがリードボーカルの曲は、「WAO!」(ABEDON)、「米米米」(EBI)、「Boys&Girls」(ABEDON)の3曲くらい。
あと、OTとテッシー(手島いさむ)のツインボーカルが1曲(「7th Ave.」)、OTとABEDONがツインボーカルが2曲 (「はいYES!」と「ツイス島&シャウ島」)あった。
「サービス」や「はいYES!」、「ハヴァナイスデー」や「晴天ナリ」のような、ライブで聴けたの久々では?という曲も、随所にあり。あとで調べたら、「サービス」「はいYES!」「ハヴァナイスデー」は8年ぶり、「晴天ナリ」は14年ぶりだった。
そのほか、セットリスト上のポイントは、中盤で「エコー」「すばらしい日々」と、しんみりしみじみ系のOTの名曲が並んだこと。そして、その次に「私はオジさんになった」が来たことだ。50祭記念のタイミングで発表した曲で、OTソロの「それはなにかとたずねたら」「CUSTOM」と並び、OTには決して多くない、直球内面吐露系の名曲として、多くのファンに愛されている存在である。
それから、20曲目の「55」は、タイトルを見ると、一瞬「えっ、55歳の時も曲、出したっけ?」と思いそうになるが、広島東洋カープのエルドレッドの背番号から付けられている。彼が2019年に引退した時に、OTが捧げた曲。これを、「ロックンローラーのバラード」の次に本編ラストに置いたのも、なんともナイスだった。
ナイスと言えば、アンコールが、「アルカセ」と「車も電話もないけれど」だったのも、そうだ。最新アルバム『クロスロード』収録の、作詞OT作曲ABEDONだからこそ成し得る(あと映画の主題歌だったのも多少は関係あるかも)、スケールの大きな叙情性に満ちた名曲と、完全に「設定あり」のフィクショナルな歌詞とメロディのマッチングが、大きな感動を聴き手にもたらす1991年の曲。いい終わり方である。
なお、OTへのバースデーケーキ贈呈は、そのアンコールの2曲の間に、ABEDONコーナー(ABEDONがラメのジャケットを着て&子犬を連れて、ボイスチェンジャーによる変な声でメンバーにからみまくったりするコーナー)として、行われた。
「車も電話もないけれど」のエンディングで、指揮者の要領で、バンドのかき回しの音を何度も上げさせたり下げさせたり、メンバーひとりずつに音を出させたりしてから、最後に全員のボリュームを最大まで上げさせた末に、「♪ジャン!」とやらずにそのまま「フッ」と終わらせて、OTはこの日のステージを締めた。虚をつかれたオーディエンスは皆、大笑いと拍手で応えた。
「俺のはもう(今日で)終わるから!次は“脱皮”があるから!」などと、MCでOTがやたら強調していたように、次の還暦の催しの主人公は、EBI。「UNICORN EBI60祭『60回目のエビだっピ』」と銘打って、10月4日(土)・5日(日)に、横浜BUNTAIで開催される。