MUCC・Psycho le Cému・Waive、新たなシーンの土俵を築き上げた3バンドが集結!『MUD FRIENDS 2000~2018』特別追加公演 10/17@高田馬場AREA

ライブレポート | 2018.11.05 18:00

『MUD FRIENDS 2000~2018』特別追加公演 10/17@高田馬場AREA

“思い出”と呼ばれる中にある音楽や匂いや目に映るもののすべては、そこに触れた瞬間、“その時”の大切な時間に気持ちを一気に引き戻してくれる。
10月14日から18日にかけて行われた、MUCC、Psycho le Cému、Waiveの3バンドが競演した対バンイベントライヴ『MUD FRIENDS 2000~2018』は、1曲1曲ごとに、そして一瞬一瞬ごとに、演者であるメンバーももちろん、その場に集まったオーディエンス1人1人が、自らの思い出と互いの成長と向き合い、“やっぱりこのバンドを好きでいて良かった”と確信したであろう、とてもスペシャルなかけがえのない時間であったに違いない。

1997年に茨城で結成され、1999年にYUKKEが加入して現メンバーになったMUCCと、1999年に姫路で結成されたPsycho le Cémuと、2000年に大阪で結成されたWaive。
別々の場所で、それぞれの人生を送ってきた彼らが、バンドという生き方を選び、東京という場所で出逢い、同じ時代にライバルとして、そして友人として切磋琢磨した21世紀。当時から異彩を放っていた3バンドは、まったく別の音楽性を放ちながらも、“3バンド共通のファン”を獲得し、シーンを大きく引き上げ、新たなシーンの土俵を築き上げていったという印象だった。
一度も活動を止めずに歩み続けているMUCCと、一度活動を止め、無期限活動停止に入り2009年に再演するも再び活動停止し、2014年の10月に活動再開(本格的な復活)を宣言したPsycho le Cémuと、2005年12月に解散し、2010年と2016年に一時的な再結成および再演をおこなって以来、再び活動を止めていたWaive。
現在進行形で友好関係にある彼らの中には、仲間の復活を心から喜び、復活ライヴに足を運び、純粋にライヴを楽しむ姿もあったほど、常に互いの胸には“いつかまた一緒にステージに立ち、一緒にライヴがしたい”という想いがあった。

そして今回、それがやっと形になったのだ。ファンにとって念願の対バンライヴでもあったのはもちろんだが、それ以上に本人達もどれほど強く望んだ対バンライヴであったか計り知れない。
それを証明するかのように、Waiveは今回、このイベントにて再集結することを決めたというほど、“ここ”には何ものにも代えがたい大切な思い出と時間が在るのだ。

10月14日Zepp Osaka Bayside、18日Zepp Tokyoというスケジュールで組まれたツアーであったが、この3バンドが初めて会したのは、大阪の心斎橋MUSE HALL(現在のOSAKA MUSE)だったということもあり、後日、Zepp公演のチケット購入者限定で、急遽15日のOSAKA MUSEと17日の高田馬場AREAでのライヴが決定し、ツアーは全4公演で行われた。

ツアー初日となった大阪公演が近づくにつれ、どのバンドも思い出が次第に深く蘇っていた様だった。
そして迎えた東京公演。東京公演は大阪とは逆に小箱からファイナルの大箱へと繋げられたライヴであったのだが、高田馬場AREAの横に長い決して広くはない楽屋に窮屈そうに集まっていた3バンドは、とてもリラックスした様子で、本番を待っていた。肩を並べてメイクをしながら、とりとめのない会話に花を咲かせる者あり、向き合ってお弁当を食べながら昔話に花を咲かせる者あり、ゲームで対戦する者ありと、何年も空白の時間があって集結したとは思えないほどに打ち解けたファミリー感のあるその現場は、他では見ることのできない光景だった。これも、やはり最初に記したとおり、お互いの中にお互いの存在が、かけがえのないものとして、しっかりと刻まれているからなのだろう。
そこに、会っていなかった空白の時を感じることはまったくなかった。

Psycho le Cému

そんな高田馬場AREAで先陣を切ったのはPsycho le Cému。
江戸時代の芝居小屋を思わす呼び込みから、そのライヴは始まった。この日彼らが掲げたテーマは『カラクリWORLD』。キャラクター説明をするナレーターの声に導かれるように1人1人登場し、中央で歌舞いて魅せるといった、彼らならではの始まりでライヴは幕を開けた。
四郎時貞・YURAサマ(Dr.)、花魁・AYA(Gt.)、シーク・ワーサー・seek(Ba.)、仏様・Lida(Gt.)、そして、歌舞伎者・DAISHI(Vo.)。カラフルな衣裳を身に付けた5人がステージに並ぶと、狭くて暗い印象のライヴハウスのステージが一瞬にして華やいだ。
彼らPsycho le Cémuは衣裳が桁外れに華やかであるということは、昔から彼らを見続けてきたオーディエンスはもちろん知っているところなのだが、小箱である高田馬場AREAのステージに、横歩きしないとすれ違えないほどデカくて場所を取っていたその出で立ちに、フロアからは微笑が起っていた。彼らからしたら微笑が起ることこそも想定内。いや、もっと言うならば、そここそもPsycho le Cémuというバンドの狙いなのである。

1曲目は和の音をふんだんに用いた「大江戸旅ガラス」。DAISHIを中央にAYAとYURAサマが両脇でダンスを繰り広げ、2人がDAISHIに向かって扇子で桜吹雪を舞い上げるという演出付きの、4つ打ちの打込みロック・ダンスナンバーだ。ポップさとロックが絶妙な比率で混ざり合ったザッツ・Psycho le Cémuサウンドは、アッという間にフロアの熱を上げていった。昔から、YURAサマがすべての楽曲の振り付けを担当していたのだが、近年エアロビクスのインストラクターの免許を取得したとあって、昔よりもキレキレのダンスでステージを引っ張っていたのがとても印象的だった。
2曲目ではDAISHIとYURAサマのダブルボーカルで届けられる「AREA」、3曲目ではDAISHIの横でAYAがポンポンを持ってパフォーマーとなって盛り上げる「You&Me」と、列記とした“バンド”でありながら、曲ごとにまったく異なるPsycho le Cémuの形を魅せてくる彼らの在り方は素晴しい。
再始動メジャーデビューシングルとなった「あきらめないDAYS」では、4曲目にしてやっと“普通のバンド形態”の状態で楽曲が届けられたのだが、キャッチーでポップな楽曲に乗ったときのDAISHIの歌声は、“この声ありきだ”と改めて確信させられたほど魅力的に響いていたのだった。この楽曲で彼らがシーンに帰って来たとき、純粋にまた音楽で夢を魅せてもらえるとワクワクしたことを、今もはっきりと覚えている。
ヘヴィなサウンドをぶちかました「2020」では、濁りのないDAISHIのボーカルと対照的なダミ声のseekがボーカルを取り、ポップ路線中心に魅せた前半戦を払拭していった。

Psycho le Cému

オキマリの“オマエらLidaに抱かれる覚悟で来たか!”“オマエらseekが欲しいか!”なる、“昭和の悪(ワル)”っぽい煽りで客席をけしかけるDAISHIの言葉を受け、seekがダミ声でオーディエンスに“オマエら、全員死刑!”と投げかけた。
“オマエら全員死刑!”とは、「蘭鋳」(MUCC)の曲中で叫ぶ逹瑯のキメ台詞である。この言葉に反応したオーディエンスは大興奮。こうしたちょっとした“身内ノリ”的な小ネタも、この3マンライヴの楽しみの醍醐味だったに違いない。
ライヴ後の楽屋では、“(逹瑯より)先に言ったったわ(笑)!”と満足そうに語っていたseekの姿があったことも追記しておくとしよう。

Psycho le Cémuは「2020」から後半に向けて「インドラの矢」、ルーツであるメタルのフレーズを感じさせるギターソロ終わりで魅せる、当時“ドスコイ”と呼ばれていたLidaのキメポーズも健在だった「Last Emotion -Long ver.-」や、ヘヴィナンバーの代表曲ともいえる「聖~excalibur~剣」と、激しい楽曲を中心に攻め立て、ラストは、カーテンコールのような仕様でメンバー全員が楽器を置き、「STAR TRAIN」でオーディエンスの声援に手を振って応え、華々しくライヴを締めくくったのだった。

Waive

2番手はWaive。オープニングSEとオーディエンスのクラップによってステージに登場した4人(※ドラムはサポート)。高井淳(Ba.)の登場に大きな歓声が沸き、ギターをかき鳴らしながら登場した貮方孝司(Gt.)に対しても大きな歓声と拍手が起った。そんな盛り上りを魅せている中に、いかなるときも沈着な杉本善徳(Gt.)がクールに腕組みをして定位置に付くと、変わらないそのキャラにオーディエンスはさらに声援の声を上げた。最後に田澤孝介(Vo.)がステージ下手から勢い良く登場すると、杉本がWaiveの代表曲でもある「バニラ」のイントロのギターをかき鳴らした。人気曲でもある「バニラ」のイントロにオーディエンスが歓喜の声を上げると、田澤がイントロのギターを切り裂くかのように伸びやかな歌声を響かせた。貮方が曲中で歌詞に合せて“猫を数える振り”を魅せると、オーディエンスも懐かしそうにその振りを真似た。
Waiveというバンドをよく知らない人が読んだときに誤解の無いように説明しておきたいのだが、Waiveは、決して“振り付けのある可愛いバンド”ではなく、当時から実力派のバンドであったのだが、極めて完成度の高い楽曲センスとポップさとキャッチーさを追求したサウンド感によって、自然と体が動いていまうというものである。

「Waiveです! よろしく!」(田澤)

「バニラ」終わりで田澤が叫ぶと、その声を合図に「Lost in MUSIC」へとつないだ。グルーヴィな縦ノリロックを素晴しいリズム感と歌唱力で歌いこなしていく田澤。ピタリと息の合ったブレイクを見せつけるバンドの演奏力も相当だ。解散したバンドとは思えない、生き続けている“バンドとしての絶対のグルーヴ感”は、いまさらながら解散を惜しんでしまったほどだった。
軽やかかつ厚みのあるギターリフと細かく刻まれていくリズム隊が生み出すグルーヴと、圧巻の歌唱で魅せた「FAKE」、杉本が中央に躍り出てギターイントロを見せつけるパフォーマンスで始まった「assorted lovephobia」では、高井のランニングベースが低音を支えた重心の低いロックン・ロールナンバーでオーディエンスを引っ張った。

Waive

MCでは田澤が、“今日はここ高田馬場AREAに3バンドが初めて集った記念すべき日”と語り、この3バンドで新たに作り上げた思い出が出来ていることをうかがわせた。
また、田澤と杉本の“関西漫才”的なトークでも客席を沸かせ、後半戦は田澤と杉本のダブルボーカルの「Sad.」で、田澤ボーカルのWaiveとは違った側面からWaiveというバンドの奥行きを見せつけたのだった。
間髪入れずに届けられた、言葉がぎっしりと詰め込まれたメロコアの匂いも漂う煽り曲「ネガポジ」は、今聴いてもまったく古さを感じさせない激しさを含んだメロディアスなロックチューンだ。

今、正直こういうセンスの良さを持ったバンドは少ないと思う。そう感じさせられる想いを確信したのは、この日のラスト2曲。他の2バンドが“Waiveといえば!この曲!”と、サビでの田澤の振りをオーディエンスが真似る「ガーリッシュマインド」の“楽曲としての存在感”も素晴しかったし、文句なしの美メロな歌モノ「いつか」は、2000年代のロックシーンを生きた彼らの感性が生み出した時代を反映した名曲だと感じた。この曲で聴かせてくれたオーディエンスの大きな歓声も、とても印象深く胸に残った。

MUCC

この日のラストを担ったのはMUCC。「ホムラウタ」をSEに登場した彼らは、小箱に寄せた、“地下室系”のセットリストで攻めてくると思いきや、まったく逆。当時を色濃く蘇らせたセットリストでのライヴは、思い出深い再会の地OSAKA MUSEで既にやってきたということで、この日は、なんと、都内のこのキャパのハコではなかなか観れなくなったMUCCの“最新”を見せつけたのだった。もちろん、衣裳も“今”のMUCCである。

1曲目に放たれたポストロックを思わす「TIMER」は、ヴィジュアル系のバンドがホームとするハコである高田馬場AREAには少々違和感を覚えた響きであったが、その違和感こそにMUCCというバンドの成長を見た気がした。そんな違和感の提示も、リーダーであるミヤの思惑であると勘ぐると、“さすが”と思えてくる。

「今日近けぇな、オイ。2列目以降くらいからがお客さんだと思ってライヴやるんで。そこより前は柵みたいなもんだと思ってライヴやるんで、適当に楽しんでって下さいよろしく!」(逹瑯Vo.)

逹瑯“らしい”MCでオーディエンスを緩く煽ると、「娼婦」を畳み掛けた。「娼婦」、「黒煙」と立て続けに届けられた“当時のムック”が届けられると、夢烏を中心とするオーディエンスはステージ前へと押し寄せた。やはり、このあたりの楽曲は、こういう小箱がしっくりくる。昨今のライヴではあまりやることのなくなった「黒煙」では悲鳴にも近い歓声が客席から上がった。逹瑯は言葉どおり、ステージ前に押し寄せたオーディエンスを“柵”と見なして足をかけ、体を客席に預けるように唄い、ミヤ(Gt.)はギターを抱え込むような体制で狂ったようにギターをかき鳴らし、YUKKE(Ba.)は猟奇じみた表情を魅せながらベースの弦を弾き、SATOち(Dr.)は我武者らにドラムを叩きまくった。狂気の沙汰。この地下室故の空間が、彼らを過去のムックに引き戻していたのかもしれない。そう思った。

そこから繋げた楽曲は、ムックとMUCCの融合だと感じさせた新曲「絶望楽園」だった。暗くいなたい歌謡曲的フレーズを含む“当時のムック”を感じさせつつも、“現在のMUCC”を感じさせる音楽性の高さとラウドなサウンド感に打ちのめされた瞬間でもあった。新曲というのに、早くもオーディエンスは逹瑯と共に声を重ねていたのも、とても印象的だった。
ここから彼らは、ガレージロックっぽい雰囲気を宿す、ミヤと逹瑯の曲中の台詞が肝となる「自己嫌悪」を届け、そこから一気に毛色の違う美しいメロディを宿す「ハイデ」で、開けたMUCCの世界へと導いた。
ラスト前の煽り曲として用いていた「蘭鋳」では、オーディエンスを全員座らせるというオキマリの指令を出した逹瑯が、seekに先を越された“全員死刑!”の煽り文句でオーディエンスを座った状態から高くジャンプさせ、終幕へと繋げたのだった。

MUCC

持ち時間40分8曲という限られた時間の中で、時代ごとに変化してきたMUCCというバンドを余すところなく魅せてくれた彼ら。ラストに届けられた「生と死と君」は、そんな彼らの歩んできた歴史が彼らに作らせた楽曲だと改めて感じた瞬間でもあった。

SET LIST

Psycho le Cému
01. 大江戸旅ガラス
02. AREA
03. You&Me
04. あきらめないDAYS
05. 2020
06. インドラの矢
07. Last Emotion
08. 聖~excalibur~剣

Waive
01. バニラ
02. Lost in MUSIC
03. FAKE
04. assorted lovephobia
05. Sad.
06. ネガポジ
07. ガーリッシュマインド
08. いつか

MUCC
01. TIMER
02. 娼婦
03. 黒煙
04. 絶望楽園
05. 自己嫌悪
06. ハイデ
07. 蘭鋳
08. 生と死と君

MUCC
▼LIVE INFO
MUCC 2018 Birthday Circuit <YUKKE day>
2018年11月5日(月) TSUTAYA O-WEST

 

【Is This The “FACT”?】TOUR 2019
出演:MUCC/DEZERT
2019年1月15日(火)、16日(水) LIQUIDROOM
≫オフィシャルサイト

 

Psycho le Cému
▼LIVE INFO
2018年12月14日(金) Zepp DiverCity(TOKYO)
≫オフィシャルサイト

 

Waive
▼LIVE INFO
Waive GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ
2019年4月30日(火) Zepp Tokyo
≫オフィシャルサイト

  • 武市尚子

    ライター

    武市尚子

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