MUCC・Psycho le Cému・Waive、泥友たちの絆が新たに強く結ばれた夜。『MUD FRIENDS 2000〜2018』 10/18@Zepp Tokyo

ライブレポート | 2018.11.08 15:00

『MUD FRIENDS 2000〜2018』10/18(木)@Zepp Tokyo

MUCC・Psycho le Cému・Waive。彼らの出会いから約20年の時を経て競演することとなった『MUD FRIENDS 2000~2018』。
このツアーは、単なるイベントツアーではなく、ただ懐かしむだけの緩い対バンライヴでもなかった。

1997年に茨城で結成され、1999年にYUKKEが加入して現メンバーになったMUCCと、1999年に姫路で結成されたPsycho le Cémuと、2000年に大阪で結成されたWaiveが、交友を深めながらも、互いにライバルとして、音で、そして唄で戦い合ってきた“青春”と呼べる大切な時間であった。この3バンドのうち、どのバンドが欠けていても、それぞれのバンドの今の成長はなかっただろう。そう思えるほど、当時の彼らは互いの存在とサウンドを意識することで、自らの音と個性に磨きをかけてきた。まったく異なる個性の3バンドであったからこそ、より刺激し合うことが多かったのだろう。

2018年10月18日。前日の高田馬場AREAでのライヴに引き続き、このツアーのファイナルライヴがZepp Tokyoで行われた。

Waive

トップバッターはWaive。Waiveは2005年に解散、過去に2度(2010年と2016年)に期間限定の再演を果たしているのだが、今回はこのイベントにて再集結を持ちかけた逹瑯(MUCC Vo.)の一言がきっかけとなったのだと言う。
そんな彼らを再演へと踏み切らせた話は、刺激し合える仲間がいてくれることの大切さや、大切な縁が自分を支えてくれているのだという、“生きる上での大切さ”に気づかせてくれたものだった。
鮮やかなギターフレーズから幕を開ける「HEART.」からスタートさせたこの日のWaiveは、やはり圧巻のサウンド感と田澤孝介(Vo.)の絶対的な歌唱力でオーディエンスを魅了した。透明な逆光に照らされてメロディアスな景色と伸びやかな歌声を響かせるWaiveの放つ音は、純粋に引き込まれる楽曲の良さを感じさせられる。何度も言うようだが、これが解散しているバンドであることが残念でならない。

Vo.田澤孝介(Waive)

「MUD FRIENDSファイナル!楽しんで行こうぜ!」(田澤)

田澤に煽られたことでたがが外れたオーディエンスは、続いて届けられた「FAKE」のグルーヴに手放しで体を委ねた。
間髪入れずに届けられたポップロック「バニラ」でフロアをオーディエンスの両手で埋め尽くした彼らの導引力は半端ないものだった。ギターソロを中央で弾く杉本善徳(Gt.)の背中に、自らの背中を合せた田澤。少し頭を後ろに倒し、杉本の背中に重心をかけると、杉本はギターソロ終わりで田澤の腰あたりを右手でポンポンと触り、定位置へと戻っていった。こんな何気ないやり取りがいちいち胸を締め付けるのは、彼らが今、動きを止めてしまったバンドだからなのだろうか?時おりステージ上でアイコンタクトを交わし、サウンドを組み立てていく彼らを見ていると、当時からの時間の経過をまじまじと感じさせられる。

Gt.杉本善徳(Waive)

田澤はここでMCを挟み、このツアーが終ってしまうことへの寂しさを口にした。前日の高田馬場AREAでのライヴが終った後、SATOち(MUCC Dr.)が楽屋で“明日、「C.」が聴けるのがめっちゃくちゃ楽しみなんだよね!また生で「C.」が聴ける日が来ると思わなかったから、めっちゃ嬉しい!”と言っていたほど、バンドマン内にもWaiveファンが多くいたほど数々の名曲を残しているのも、彼らWaiveの特徴である。
そして、届けられた名曲バラード「C.」。深みのあるアルペジオにそっと声を乗せて歌う田澤。田澤から杉本にボーカルが引き継がれると、その歌詞の情景が少し変化するかのように感じられた。大切に歌い上げられた愛しい想いは深くオーディエンスの気持ちに刻み込まれていた様だった。ギターのフィンガーノイズで締めくくられたこの楽曲の後、会場は一瞬静まり返り、次の瞬間、オーディエンスの贈った拍手で埋め尽くされたのだった。

Gt.貳方孝司(Waive)

そんな美しい静寂をバッサリと打ち切ったのは、杉本。“こんにちは、こんばんは、どうもWaiveです!”と、余韻もへったくれもありゃしないこの切り替えに、フロアからは笑いが起った。そしてこの日も田澤と杉本による漫談に近いMCが届けられ、4月30日にWaiveの単独公演があることの告知を挟み、曲は「Lost in MUSIC」へと進められた。
前日以上に磨きのかかったアタック感で聴かせてみせた「Lost in MUSIC」では、曲中にメンバー紹介を設け、高井淳(Ba.)はスラップで客席を煽り、貳方孝司(Gt.)はタメ感のあるロックなギターリフで攻め、サポートのドラムソロを挟み、杉本は単音のギター音を差し込み、田澤が自らを紹介すると、リズミックなサウンドに乗せてコール&レスポンスへと移し、フロアをジャンプで盛り上げ、ラストに声を長く伸ばすアドリブで圧巻の歌唱力をみせつけオーディエンスを魅了したのだった。

Ba.高井淳(Waive)

この日、彼らが選んだラスト曲は「いつか」。
“「いつか、死ぬ僕たちは。」わかっているんだ キミに逢えて 鼓動の音が 愛しく思えた”
そう歌われるこの歌は、この仲間との出逢いにも重ねられる言葉だと感じた。共に、バンドという人生を生きる仲間を持てる彼らは、本当に素晴しい生き方が出来ている、“生かされている人”だと思う。
どうかいつまでも、Waiveというバンドの音を、こうしてライヴで聴き続けられる未来でありますように。

MUCC

2番目に登場したのはMUCC。その始まりは「アカ」。なるほど、そうきたか。と、ニヤリとしてしまったのは言うまでもない。前日の高田馬場AREAで“当時のムック”を見せつけてくるかと思いきや、そこでは“最新のMUCC”で挑み、さすがの裏切りを魅せた彼らは、この日、敢えて大箱のZepp Tokyoで“地下室系”の“ムック”を見せつけたのである。
絶望の渕に追いやるかのような深い闇を孕んだ「アカ」のサウンドに、逹瑯(Vo.)は低く声を張った。「娼婦」のイントロが始まると、逹瑯はハットを取払い、髪を振り乱しながら曲に挑んでいく。タイトに畳み掛けるSATOち(Dr.)のドラムにミヤ(Gt.)とYUKKE(Ba.)は音を乗せ、上手と下手を行き交った。フロアには“ムック”の音を渇望するオーディエンスの人壁が出現した。夢烏(ムッカー:MUCCファンの愛称)たちが人壁となり、一斉に暴れ出す光景はまさに地獄絵図である。もはや、この光景はオーディエンスを巻込んだMUCCのライヴのひとつの演出となっていると言ってもいい。曲が「絶望」へと流れるとオーディエンスはさらに熱を上げ、大きな歓声を上げ、前へと押し寄せる波をフロアに起こした。大きく足を広げて腰を下ろし、少し猫背気味に上半身を低く落とし、長い手を脱力させて魅せる逹瑯。人間離れしたその異形に、ムックという世界観がより濃く印象付けられた。

Vo.逹瑯(MUCC)

次の展開に期待感を煽られたのは「絶望」からのミヤのアルペジオだった。“ムック”へ繋がるのであろうと予感させれた郷愁感漂うアルペジオは、意外にも“最新のMUCC”「自己嫌悪」へと繋げられたのだ。
しかし。「アカ」「娼婦」「絶望」という“ムック”からの流れで聴く「自己嫌悪」は、前日の「絶望楽園」という“MUCC”からの流れの「自己嫌悪」とは、少し違った“ムック色の強い「自己嫌悪」”となって響いていたのが、とても不思議な化学変化だった。MUCCのライヴは通常のワンマンライヴでも毎回ミヤによってセットリストが変えられることから、選曲や楽曲の並びの違いで毎回まったく異なる新鮮なライヴを楽しめるのも特徴的なのだ。

Gt.ミヤ(MUCC)

MUCCはここからSATOち作詞作曲のドラマチックな「レクイエム」へと繋げ、美しくも哀しげな世界で目の前の景色を染め変えた。この後に届けられた「前へ」もSATOち曲なのだが、昔も今もSATOちはドラマーとして一歩後ろから全体の音を客観的にとらえ、支えているからなのか、彼の作る曲はライヴでとても美しい最高の景色を生み出すのだ。「レクイエム」のアウトロからの静けさをSATOちのカウントで破り、「前へ」と繋げると、フロアは再び人の波と化した。間奏では、逹瑯のツイストダンスに大きな歓声が上がった。逹瑯のブルースハープから、エレクトロに加工されたミヤの台詞が差し込まれ、ムックとMUCCの融合を魅せ、YUKKEの存在感あるベースフレーズから「大嫌い」へと畳み掛けていったのだった。

Ba.YUKKE(MUCC)

「Waiveは楽曲や歌はもちろんMCがすげぇ楽しいし、Psycho le Cému は楽曲ももちろん、衣裳やダンスやコントが楽しい。じゃあ、MUCCは何をアピールしていこうか!暴れるしかねぇだろ!」(逹瑯)

そんな逹瑯の挑発に触発されたオーディエンスは、4人の音と唄に戦いを挑むかのように声を上げて曲を盛り上げたのだった。そこから「蘭鋳」への流れで絶頂に達したのは言うまでもない。
 彼らは、そんな絶頂から余韻へと時を移した。彼らが最後に届けたのは「生と死と君」。生まれ持った運命の残酷さと、生きることへの意味が描かれたこの曲は、人間の業を描いてきたムックが行き着いたひとつの答えなのかもしれない。中盤からYUKKEのベースとSATOちのドラムが曲を引っぱり、メタルのギターソロを思わすミヤのギターソロで曲の山を作り、逹瑯が“生と死と君”への想いを叫ぶ。その美しい嘆きは、出逢いと別れの刹那を感じさせた、激しくも美しい、儚い景色だった。
最後にステージを去ったSATOちは、ツアーの大トリを務めるPsycho le Cémuの振り付けを真似て会場を沸かせ、Psycho le Cémuへとバトンを渡したのだった。

Psycho le Cému

思い返せば、Psycho le Cému周りのエピソードはたくさんある。
当時、Psycho le Cémuを初めて観た杉本(Waive Gt.)が、ステージから楽屋に戻ったPsycho le Cémuを待ち構え、“めっちゃ良かった! すごかった!”と絶讚してしまったと語っていたことや、“いつかPsycho le Cémuのステージで一緒に躍りたい!”と、とにかくPsycho le Cémuに恋い焦がれ、いまだにその願望を募らせるYUKKEや、Psycho le Cémuが最初に復活することが決まったとき、“そんなにも!?”と驚いたほど、目を輝かせて喜んだミヤの姿もいまだに忘れることができない。それほどまでに、同期の中でもとにかく愛されていたのがPsycho le Cémuだ。Psycho le Cémuは、あれだけキャラクターが濃く、コントやダンスを交えたステージングが中心であることから、硬派なバンドからしたら敬遠されるタイプのバンドである様に思う人もいるかもしれないが、楽曲のクオリティの高さや、エンターテイメントをとことん探究した構成や演出、バンドとしての在り方は、簡単に真似出来るものではないほど、唯一無二なバンドなのである。つまり、側だけのおちゃらけバンドではないということ。黒い衣裳に身を包んだバンドが主流だった1999年から彼らが生き抜いてきた時代の中で、確実に彼らPsycho le Cémuの存在は特異なものであったが、そんな彼らの在り方を認め、ライバルとして向き合っていたのが、ムックとWaiveだったと言える。まさに、この3バンドは互いを尊敬しながら、切磋琢磨してきた仲間なのである。

Vo.DAISHI(Psycho le Cému)

この日、このツアーの大トリを務めたPsycho le Cému は、2009年に10周年記念ライヴ『Psycho le Cému 10th Anniversary Legend of sword』として最初の復活ライヴを行った際の衣裳で登場した。ここZepp Tokyoは、10周年記念ライヴを行ったときに立った場所でもあったことから、この衣裳でこのステージに立つことは、きっと彼ら的に特別な想いがあったに違いない。
Psycho le Cémuらしく、5人が再会するという“MUD FRIENDS”をテーマとしたコントから始まったステージに、オーディエンスは大きな歓声を贈った。DAISHI(Vo.)、YURAサマ(Dr.)、AYA(Gt.)、Lida(Gt.)、そして全身を真っ赤に塗った神童seek(Ba.)が揃うと、曲は「JUNGLE×JUNGLE」へ。
この「JUNGLE×JUNGLE」、なんと5人が楽器を持たずに横一列に並び、両手を振り子のようにブラブラとさせる緩いダンスで魅せる“5人ボーカル曲”なのである。最近の若手のヴィジュアル系バンドでもこのような演出を入れているところもある様だが、確実にこのスタイルはPsycho le Cémuが走りだったと言っても過言では無い。後になってから、よく“当時は、時代がPsycho le Cémuに追いついていなかったなぁ”と本気で思うことがしばしばあったほど、彼らのエンターテイメント性は当時から素晴しく高かった。

Gt.AYA(Psycho le Cému)

緩めのオープニングナンバーでオーディエンスの緊張を解すと、彼らはAYAとYURAサマがダンサーとなって楽曲を彩る「激愛メリーゴーランド」へと続けフロアを盛り上げた。MUCCでは硬派なノリを魅せていたフロアが、同じ会場だとは思えないほど煌びやかにメンバーカラーのサイリウムで光り輝いた。打込みを活かしたメリハリのきいたデジタルロックに乗せて躍るオーディエンスはとにかく楽しそうである。

Gt.Lida(Psycho le Cému)

「『MUD FRIENDS 2000~2018』最終日!伝説作ろうか!オマエら、抱かれる覚悟で来たか!?」(DAISHI)

“抱かれる覚悟で来たか”…当時は少々ダサいとツッコミの対象となっていた煽り文句も、定着した今となっては不思議とカッコ良くも思えてくる。そんなDAISHIの煽り文句から繋げられた「聖~excalibur~剣」は、DAISHIが聖剣を持ち、楽曲の世界観を具現化させる形で届けられた。メロディアスな歌メロを中心に置きながらも、速弾きのギターが曲を引っ張るディープなバンドサウンドに、Psycho le Cémuファンだけではなく、ヘヴィなサウンドを求める硬派な夢烏(ムッカー:MUCCファンの愛称)や実力派思考のWaiveファンたちも、納得の面持ちでうなだれた。重厚なサウンドに包まれたステージは真っ赤に染上げられ、ステージ中央ではAYAがDAISHIの後ろに回り込み、操り人形と化したDAISHIを操った。奇怪な世界はポップでキュートな印象のPsycho le Cémuを跡形もなく封印してしまう。この激しい二面性こそがPsycho le Cémuだ。
根柢に眠らせる本当の意味でのバンドの在り方を見せつけた彼らは、メジャーデビュー曲「愛の唄」でポップ路線に舵を切り返し、何処にも代わりのない無い唯一の存在感でオーディエンスを包み込んだのだった。

Ba.seek(Psycho le Cému)

「あっという間の4日間でしたが、参加してくれたみなさんありがとうございました。特別な関係だと思っています。MUCC、Waive、僕らPsycho le Cému 、18年間いろんなことがありましたが、MUCCとWaiveという存在が近くにあり続けてくれたことで、僕達もまたこうしてステージに戻ってくることができました。ありがとうございました。また、やりましょうよ。僕らも頑張ってバンド続けていきますんで、みんなもバンギャル続けて下さい!」(seek)

包み隠すことのない本心を言葉にしたseekのMCは、3バンド共通の想いだと感じた。

Dr.YURAサマ(Psycho le Cému)

後半はPsycho le Cémuがロックバンドであることの証明を突きつけたとも感じられた「Liberty, babies」「Murderer・Death・Kill」で攻め立て、DAISHIの口から12月からのライヴの告知が届けられた後、当時からラスト曲として大切に歌い継がれてきた「REMEMBRANCE」でライヴを締めくくったのだった。
“みんなの未来と僕達の夢に———”
DAISHIが「REMEMBRANCE」を歌う前に言った一言。彼らの夢の場所・日本武道館。きっと立てる日がくると信じている。

この日は、ツアーファイナルということもあり、Psycho le Cémuのライヴ終りで全員がステージに揃い、このツアーを振り返った。楽屋の延長線上で交わされた素顔のままの会話は、3バンドの仲の良さを物語っている気がした。
と、ここでステージ下手の2階に居たYUKKE(MUCC Ba.)が、ずっとやりたかった「愛の唄」の振り付けをこっそりやってオーディエンスを密かに煽るという行動に出て、長年の夢をひっそりと叶えていたのも、なんとも微笑ましい光景だった。

「なかなか集まるのは難しいけど、また絶対やろうね!」

そんな言葉で新たに強く結ばれた絆。たったの4日間ではあったが、3バンドの関係性と、3バンドと共にここに集まったオーディエンスの関係性をとても羨ましく思った時間だった。
MUCC、Psycho le Cému、Waiveの未来に、またこの『MUD FRIENDS 2000~2018』ツアーの様な時間がありますように。

SET LIST

Waive
01. HEART.
02. FAKE
03. バニラ
04. C.
05. Lost in MUSIC
06. Sad.
07. ガーリッシュマインド
08. いつか

MUCC
01. アカ
02. 娼婦
03. 絶望
04. 自己嫌悪
05. レクイエム
06. 前へ
07. 大嫌い
08. 蘭鋳
09. 生と死と君

Psycho le Cému
01. JUNGLE×JUNGLE
02. 激愛メリーゴーランド
03. 聖~excalibur~剣
04. 愛の唄
05. STAR TRAIN
06. Liberty, babies
07. Murderer・Death・Kill
08. REMEMBRANCE

  • 武市尚子

    ライター

    武市尚子

  • カメラマン

    Rina Asahi

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