——まずは昨年いっぱいでバンドを解散し、ソロアーティストになったことについてお聞きしたいんですけど。
「バンド解散の理由というのが、私が曲を作る立場として、もっときちんと最後までイメージを具現化することに責任を持たなきゃいけないと思ったんです。まだまだ私のイメージが再現されていない気がして」
——音楽的な壁を感じたということですか?
「そうですね。黒木渚と名乗っていながら、3人で作り上げてる音楽に私自身が濃度の低さを感じてるっておかしな話だから。たとえいろんな人に恨まれても、自分の頭のなかで描いてる音楽を突き通したかったんです。その強さを守れるかどうかが黒木渚と名乗って音楽をやれるかどうかの境い目だと思っていて」
——メンバーを傷つけることになっても自らの音楽を漂白させたくなかった。
「そうですね。2人とはもともと親友同士だし、一緒に上京もしてきたから自分の人生に巻き込んでしまった責任感はもちろんありました。でも、そこで遠慮してたらいつまでも黒木渚の音楽は完成されないから。絶縁される覚悟で解散したい旨を伝えたいんですけど、2人は受け入れてくれました。私が嘘をついてないことが伝わったんだと思ってます」
——そして、1stフルアルバム『標本箱』は、松岡モトキさんをサウンドプロデューサーに迎え、中尾憲太郎さん、柏倉隆史さん、MASEETAさんという強力なサポートミュージシャンらが参加しています。全11曲で11人の女性を描いたコンセプトも含めて鉄壁の音楽世界が築き上げられてますね。
「レコーディングではビリビリ震えるくらい奇跡的な瞬間を何度も体感しました。さまざまな女性像をテーマにしたのは、自分が曲を作るうえで最も近いのに最もわからないことだったからで。“自分は誰?”というのと同じで“女とはどういうものですか?”と問われたときにひとことでは返せない。その答えを出すために11人の女性を集め、標本箱に閉じ込めて、みんなに触れてもらおうと思ったんです」
——1曲目の「革命」にはソロアーティストになった覚悟が力強く刻まれています。
「解散に際して言いたいことはたくさんあったけど、新生・黒木渚として音楽で進んでいくしかないし、曲にすべての思いを込めようと思いました。もはやひとりのための音楽ではないし、ファンのみんなに“2年以内に武道館でライブをやる”と約束してるから。それは生半可な決心ではできないし、そこに間に合わないと思ったからバンドを解散したわけで」
——そういう意味でも次のツアー、そしてファイナルの6月1日に開催される渋谷公会堂公演は重要な意味を持ちますね。
「そうですね。具体的なステップだと思います。私は、この『標本箱』というアルバムをすごく気に入ってるんです。だからもちろん多くの人に聴いてほしいけど、CDには録音できる音のレンジに限界があるじゃないですか。私の声が持っているいちばんオイシイ部分である倍音成分がどうしても削がれてしまうんですよね。渋谷公会堂のライブはそこもしっかり聴いてもらえる場所にします」
2014年6月1日(日) | 渋谷公会堂 | 16:00 開場 / 17:00 開演 | 指定席¥5,000(税込) |
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受付期間:受付中~4月5日(土) 23:59 ※規定枚数になり次第終了 |
黒木渚(2014.4月号掲載 DI:GA interview)