――8月に横浜アリーナで開催されたレベッカの20年ぶりの再結成ライブがかなり大きな反響を呼んでいました。
「自分としては信じられないくらい注目していただいたので、改めて、やってよかったなって思いましたね。始まった日も夢みたいだったし、終わった時も夢みたいでした。ほんとにできるのかな?というところからはじまって、準備を進めていくなかでだんだん高まっていって。終わってからも興奮は醒めやらなかったんですけど、三日くらい過ぎたあたりから、普通の生活が戻ってきて。お風呂をごしごしと洗ってる時にふと、客席との密室感と似てるなって思ったんですよ」
――どういうことですか?1万5千人の前で大歓声を浴びるステージとはとてもギャップがあるように感じるのですが。
「自分でも意外だったんですけど、ステージ上ですごく集中してる瞬間っていうのは、自分のなかでは静止画のように止まって覚えてるんですよね。そのときの静かな心境が似ているというか……。もちろん、日常という地べたな暮らしと、高みにもっていく横浜アリーナにはギャップがあるんだけど、すごい集中して何の違和感もなく歌えてるときの状況と、何の違和感もなく暮らせているときの状況は似てるんだって感じたんです。緊張を差し引いて考えると、自分という感覚のなかでは同じ気持ちでやってるんですよね。日々のご飯のメニューとライブの曲順、料理の段取りを考えて熱々で出すことと、崩しすぎないでスイートに歌うこととか。そういう匙加減はそんなに違わないかもしれないと思いましたね」
――それはステージに立った経験のある方じゃないと実感できない感覚かもしれないですね。その復活ライブでは「76th STAR」のアレンジが当時とは変わってました。これは、レベッカの楽曲にEDMやダブ、ヒップホップ、トラップなどのニューアレンジを施して新たにレコーディングしたNOKKOさんのニューアルバムに収録されているヴァージョンですよね。
「そうなんですよ。昔のまんまですねっていう方が多かったんですけど(笑)」
――時代が1周して80年代マナーのダンスポップが流行ってますからね。聴き心地の印象としては近いけれども、サウンドは現代的にアップデートされるし、楽曲が本来持っていた本質に時代が追いついたと言っていいかもしれないです。
「そうですね。もともとは3年くらい前かな。娘を学校に送り迎えする道すがらに、カーリー・レイ・ジェプセンの『コール・ミー・メイビー』をよく聴いてたんです。(バスドラの)ドンドンドンドンっていう128くらいのテンポ感が若い気持ちとよく合うんだなって思いながら聞いてたんですけど、昔のダンスミュージックよりもちょっと歌謡曲っぽい構成になってて、コード進行も私の好きなポップスのパターンに近いなと感じて。あるとき、その曲に合わせて『76th STAR』を歌ってみたら、サビのところまで歌える!っていうことに気づいて、すごく感動して。時代が過ぎて……30年も経ってつながったことに対して、すごい発見をしたような気がして、EDMにしたらいいんじゃないかって思ったんですね。ちょうどその頃、バンドの再結成の話が進んで、スタジオで過ごす時間が増えてきて。自分の歌に対してもダンスミュージックを目指す気持ちに向いてたので、Goh HotodaさんがDJ Levinっていう謎のDJと連絡をとって、『76th STAR』をはじめ、『RASPBERRY DREAM』や『MOON』、『真夏の雨』とか、EDMにしたら面白そうなものから手をつけていって」
――「真夏の雨」の音響処理も刺激的でした。
「この曲はどうしてもレゲエとR&Bの間になってしまうというか、中途半端なところから抜け出せないまんま、放り投げ出されるようにリリースされてしまった曲だったんですね。解散後に、サビが全部英語だったのが残念で、ソロで書き直してるんですけど、ライブでは私だけイヤフォンのなかでアップビートの裏打ちのスネアの音を聴いて歌ってるんですよ。自分でもシェイカーを入れながら歌ってたんですけど、リアーナの『マン・ダウン』を聴いたときにこれだ!と思って。こういうアレンジ(トラップ)にしたいんですけどって言ったら、作ってくださったの」
――歌声が当時のままなので、一聴したときは、これがレコーディングし直した声なのか元の素材を使ってるのか分からなかったです。
「バンドをやめたときは……やめるくらいだから否定してるわけですよね。自分の歌い方も否定して、変わったところからまただんだん戻ってきて、1周してすごく似てたっていう(笑)。当時のダンスミュージックにのせていく歌い方、息のスピード感をありありと思い出しました。自分でもこんなことあるんだなって思って。こんな風に歌えるなら早くやってよ!っていう話だと思うけど、自分ではコントロールできなかったんですよね。私、いつもそうなんですよ。ビルボードライブを3年くらい続けていて。ビルボードライブというシチュエーションの中で自分のパフォーマンスがピークを迎えたんですね。これ以上、詰め込めないくらいに飽和すると、全部外に出して、並べ替えて、違う要素を足してっていうことをバンドのときから繰り返しやってきたところがあって。そういう時期でもあったんですよね」
――『フレンズ』には、エレクトロラップユニット、Charisma.comが参加して、新たな息吹を吹き込んでいます。
「テイ・トウワくんに紹介していただいたんですけど、『フレンズ』を書いたときのNOKKOちゃんと、若いCharisma.comちゃんが時を超えて出会った瞬間を、今の私が見てるような感慨深さがありましたね。当時は、10代の思春期の頃を思い出してる22〜23歳のお姉さんとして、人間が持ってる痛みや、誰にでも経験のあるような普遍的なことを盛り込みつつ、あたかも自分を通して見せるっていうことがうまくいったなっていう実感があって。自分で言っていて自分で泣けてくるような、ちょっと震えるような感覚があったんですね。その歌詞にラップを乗せてくれたんだけど、今はもっともっと正直に表現する時代になってるなっていうのを最初に感じて」
――「フレンズ」という楽曲のなかでは、Charisma.comの方が年上になってますよね。苦みや痛みを知ってる位置から歌いかけてるような気がしました。
「そうそう。フレンズちゃんはもっとおぼこいですね(笑)。Charisma.comちゃんは<思い出は美化されるもの>とか、訳知りなんだよね。私には姉妹がいなかったので、こういう会話がしたかったなって思いますね」
――本作をきっかけに、思春期真っ只中の若いファンも増えると思います。11月にはレベッカとして、さいたまスーパーアリーナでの追加公演が控えてます。
「このアルバムがジャケットやPVに至るまで、いろんな要素が呼び合ってできたように、ライブも点と点を結ぶところに私がいるんですね。全部を自分でやるわけじゃないけど、把握しないといけないとなると目と目の間の筋がつりそうになったりして(笑)。プロフェッショナルな舞台演出の進行があって、照明のタイミングがあって、バンドの演奏がある。自分のパフォーマンスとしても、音程やリズム、衣装とかがあって。やることが網の目にようにあって大変なんですけど、張り巡らされた糸を丁寧に織りながら、大きな錦絵が描けたらいいなと思うし、仕込みさえちゃんとクリアされていれば、また、お風呂を洗ってるみたいに、有り体の私として、ステージに立てるんじゃないかと思いますね」
NOKKO from REBECCA「NOKKO sings REBECCA tunes 2015」
(Mastard Records)
NOW ON SALE
※全国流通 通常盤、Loppi/HMV のみの初回生産限定盤
Illustration:Eisaku Kubonouchi
2015年11月29日(日) | さいたまスーパーアリーナ [SOLD OUT] |
15:00 開場 / 16:00 開演 | 指定席 ¥9,800(税込) 注釈付指定席 ¥9,800(税込) |
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『Yesterday,Today,Maybe Tomorrow LIVE in YOKOHAMA ARENA 2015』映像作品発売決定!
現代の音楽シーンにも鮮烈な足跡を残すREBECCA。
2015年8月12日と13日に横浜アリーナにて行われた、20年ぶりの再結成ライヴを余すところなく収録予定。
『Yesterday,Today,Maybe Tomorrow LIVE in YOKOHAMA ARENA 2015』/ REBECCA
収録予定曲:
M01_RASPBERRY DREAM
M02_MOON
M03_LONELY BUTTERFLY
M04_COTTON TIME
M05_ONE MORE KISS
M06_CHEAP HIPPIES
M07_メドレー
HOT SPICE〜GIRLS, BRAVO!〜BOSS IS ALWAYS BOSSING〜ラブ イズ CASH〜蜃気楼〜HOT SPICE Reprise
M08_真夏の雨 (2015 ver.)
M09_TIME
M10_76th S TAR (2015 ver.)
M11_LITTLE DARLING
M12_(It's just a) SMILE
M13_OLIVE
M14_WHEN A WOMAN LOVES A MAN(女が男を愛する時)
M15_MONOTONE BOY
M16_プライベイト・ヒロイン
EC01_フレンズ
EC02_MAYBE TOMORROW
■発売日
【先行販売】2015年11月29日(日)さいたまスーパーアリーナ
【一般販売】2015年12月2日(水)Loppi(ローソン・ミニストップ)/ HMV ONLINE / 全国のHMV店舗
■価格 / 品番
DVD:税込6,800円(税込)/ 品番:DGAV-0001
BLD:税込7,500円(税込)/ 品番:DGAB-0002
■仕様:【DVD】本編DVD+特典映像DVD / 【BLD】本編BLD+特典映像DVD
■特典
【初回生産限定盤】豊洲PITのライヴの模様やメンバーインタビューのアウトテイクを収録したスペシャルDVD(共通特典)
DISK GARAGE.com REBECCA アーティストページ
NOKKO オフィシャルサイト
REBECCA オフィシャルサイト
NOKKO from REBECCA (2015.11月号掲載 DI:GA interview)