エレクトーン界のレジェンド、窪田宏が12月9日にアルバム「Vocalize」を発売する。約11年ぶりとなるソロアルバムでは、昨春発売されたエレクトーン「STAGEA ELS-02」を駆使し、約1,000種もの音色を持つ同機にインスパイアされ、曲を制作。きらめくような楽曲が誕生した。新譜、そして2016年に予定している発売記念公演について聞く。
エレクトーン奏者として、30年以上のキャリアを持つ窪田。「“長老”として、次世代に夢を与えることができるような作品をつくりたい」と制作に命を燃やした。「人間のリアルな声と、鍵盤で弾くボーカル音を融合させた」という「Vocalize」はボーカルのMiyuki、大野瞬の生声に、STAGEA ELS-02の“歌声”を合わせる斬新な幕開けで、一瞬で耳を捕らえる。つくっている間にどんどんイメージが広がっていったと話す同曲は「新境地」と自信を見せる。ライブでおなじみの「Spin Kick」はドラムに則竹裕之、サックスにつづらのあつしを迎え、新アレンジを施し「Real Spin Kick」として再生。エレクトーンにからみつくようなサックスの音が印象的だ。
鍵盤をなめらかに滑る指、足はステップを踏むようにペダルをなぞっていく。楽器に向き合う姿勢は孤高という言葉が浮かぶが、エレクトーンの魅力をたずねると、「頭に浮かんだ音をすぐに演奏できるところ。パソコンだと、『つくろう!』と思って電源を入れて、作業ができるまでに2分ぐらいかかるでしょう。その2分が待てない」。本気か冗談か。ユニークな表現に、音楽への深い愛情が感じられた。
「音楽家になろうとは思っていなかった」と謙遜するが、音楽家の父を持つ窪田は、4歳でピアノ、17歳のときにエレクトーンと出会い幼い頃から音楽が身近にあった。音楽大学進学のため北海道帯広市から単身上京。周囲を見渡したとき、「自分よりうまい子ばかりで悔しくて、『もっとうまくなりたい』」と練習に励み、ライバルを追い越していった。「できなかったことができるようになるとうれしいから、また頑張って、気がついたときにはプロへの扉が開いていた。どこでどう変わるか、人生は分からない」と感慨深げに語った。
「才能ある若い人たちを応援したい」。平井武士が奏でるギターが心地いい「Tokyo Games」は2020年に来る東京五輪を思い制作した。コーラスには9歳から11歳まで、7人の男女を起用。プロが使うスタジオで初めてのレコーディングに、興奮する子どもたちに終始圧倒されたが、「身体を揺らしながら楽しそうに歌う姿を見て感動しました。転機はいつ訪れるか分からない。歌ってくれた子たちが、今回のことがきっかけで『音楽家になりたい』という夢を持ってくれたら」と未来に思いをはせた。
2016年1月には東名阪でリリースを記念したライブを開催する。1月22日に「Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」(東京都渋谷区)で行う千秋楽には、アルバムに参加したドラムの則竹、ボーカルのMiyuki、ギターの平井を招くことも決まった。「アルバムをなぞるだけなら、家でCDを聴いていればいい。会場でその瞬間に生まれる音を一緒に楽しみたい」と笑顔を見せた。
2016年1月22日(金) | Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE | 18:30 開場 / 19:00 開演 | 指定席 ¥5,400(税込) |
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NEW ALBUM「Vocalize」
(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
12月9日(水) SALE
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窪田 宏 (2015.12月号掲載 DI:GA interview)