昨年12月17日の日本武道館公演をもって25年の歴史に幕を閉じたTHE BOOMのフロントマン・宮沢和史が、ソロ・アーティストとしてのベスト・アルバム『MUSICK』を発表する。本作は2枚組の大ボリュームで、新曲や新録も織り交ぜた、総括にして現在進行形の作品。新曲の“The Drumming”には三味線で上妻宏光が参加し、“形”は盟友・高野寛との共作、THE BOOMのセルフカバー“世界でいちばん美しい島~ウチナーグチ ver.~”にはBEGIN、“風になりたい”にはMUTE BEATを母体とするDUBFORCEが参加と、豪華なゲストミュージシャンにはそのまま宮沢の旅の足跡が表れている。そして、一月からスタートするコンサートツアーには、宮沢と一時代を共にした日本の音楽家達とブラジル・キューバ・アルゼンチンの音楽家達との混成バンド、GANGA ZUMBAのメンバーがひさびさに集結。これまでのソロのキャリアを振り返りながら、ツアーへの意気込みを宮沢に訊いた。
——ベストアルバムを発表するに至った経緯を教えてください。
「THE BOOMが解散して、ソロ活動をすぐに始める気にはならなかったんです。武道館でいいライブができたと思ったので、ちょっと余韻があった方がいいし、振り返る時間も必要だなって。そうやって日々を過ごす中で、THE BOOMとしてのキャリアは区切りがついたけれど、音楽家・宮沢も26年やってきたよなって思ったんですよね。THE BOOMの宮沢じゃない、作家・宮沢、歌手・宮沢っていうのもひとつにまとめたいなって。でも、ベスト盤っていうと過去を集めるってイメージだから、それだけだとつまんないなってことで、2枚組の半分はベスト、もう半分は新曲と、人に書いた曲のセルカバーとか、既発曲を新しいメンバーで録り直したりして、現在進行形のベストにしようと思ったんです」
——改めての話になりますが、そもそもなぜ宮沢さんはバンド外でソロ活動を始めようと思ったのでしょうか?
「バンドっていうのは宿命であり運命で、4人なら4人でやることは限られてるというか、枠がいつの間にか見えてくるんです。もちろん、それを広げて行こうとはするんだけど、枠があるからこそ、その中で自由になれるというか、それがバンドの良さでもある。でも、そこから出てみたい、枠がないところで自分がどれだけやれるのかを見てみたくもなるんですよね。海外に出たときに、自分がどれだけちっぽけなのか、意外とやれるのか、それを見てみたい。それで1997年にロンドンとブラジルに計2か月間ぐらい行って、『Sixteenth Moon』と『AFROSICK』っていう2枚のアルバムを作ったんです」
——『Sixteenth Moon』は非常に豪華なメンバーとの制作でしたよね。
「ヒュー・パジャムっていう、ポリスの『シンクロニシティ』をプロデュースした人がプロデューサーで、バンドメンバーもスティングのサポートメンバーだったから、野球で言ったらメジャーリーガーですよね(笑)。いきなりNYヤンキースに入っちゃったみたいな感じで、最初は敗北の連続だったんですけど、でも局面局面で〈宮沢、すごいぞこの曲は〉って言ってくれて、ドミニク・ミラーがダビングまで見に来てくれたり、ツアーも日本に行くよって言ってくれて、俺の音楽もちょっとは受け入れられてるのかなって思いましたね」
——一方、『AFROSICK』はブラジルでのレコーディングでした。
「ブラジルでは僕と同世代で、僕と同じようにミクスチャーな音楽をやってるブラジル人を、それこそポリスを聴いてたような俺みたいなブラジル人を集めてレコーディングをしたんですけど、もちろんお国柄でプリミティブな民族音楽もできて、そのハイブリッドになった感じですね。ロンドンは固定バンドでの録音だったんですけど、ブラジルでは毎日スタジオに10人くらいいて、俺の曲で楽しそうにしてくれてたのが嬉しかったですね」
——宮沢さんの音楽活動は、やはり現地に飛び込んで、そこでの体験を血肉化していくことの繰り返しだったように思います。
「そう、音楽と行動が一緒っていうかね、そこに飛び込んだときに何ができるか。ブラジルなんて特にどうなるかわからなかったから、絶対面白くなるだろうと思ったし、僕が作ってる音楽自体がそういうものだから、作り方も自然とそうなるんですよね」
——だから、THE BOOMの音楽がメンバー4人を中心に作り上げられたものであるのに対して、ゲストメンバーが多数参加している『MUSICK』は、宮沢さんの旅の記録であり、そこで出会ってきた人たちの記録でもあるなって思いました。
「THE BOOMって本当に様々な音楽をやってきましたから、普通のバンドに比べたら相当散らかってると思うんですけど、でもさっき言ったようにTHE BOOMの枠っていうのがやっぱりあるんですよね。山川の匂いを感じたり、栃木さんの顔が見えたりする。でも『MUSICK』を聴くと、際限なくバラバラで、〈あ、やっぱ宮沢ってこうだよな〉って思いました。〈しっちゃかめっちゃかですね〉って言われてもドンと来いで、それが宮沢の26年なんですよって言えるだけの説得力がある。言ってみれば、宇宙なんですよ。THE BOOMは銀河系というか、ひとつのグループっていう枠があるけど、ソロの場合はどこまで行っても壁がない。そういう作品になってると思いますね」
——そして、一月からのツアーにはGANGA ZUMBAのメンバーがひさびさに集結しますね。
「僕は無意識に自分のソロ活動のピークを2008年に持って行った気がするんです。その年は日本からの移民がブラジルに渡って100周年の年で、とても大きな意味のある年でした。なので、2008年に自分を一番いい状態に持って行って、ブラジルでライブツアーをやるっていうのが、きっと自分の目標だったんだと思います。誰にも言ってなかったんですけど、そこに向けて自分のソロ活動は組み立てられていったんだなって」
——GANGA ZUMBAの結成は2006年ですが、それも2008年を見据えてのものだったと。
「もともとGANGA ZUMBAはソロのサポートメンバーだったんですけど、より絆を強くして、どこに行っても折れない精神性や技術を身に着けるには、バンドとして、みんなで責任を持ってやる必要を感じて、そうやって2008年に向かいたかったんです。で、実際に2008年にブラジルでツアーをやって、最後がリオデジャネイロのカネカウォンっていうホールだったんですけど、そこは僕の憧れのホールで、大勢の名のあるブラジル人ミュージシャンのコンサートを観て勉強した場所でしたから、そこでのライブが上手く行って、ソロになってからの一番の結果を出せたような気がしたんですよね」
——そんなGANGA ZUMBAと共に回る一月からのツアーは、どんな内容になりそうですか?
「一月からのツアーは僕のソロの集大成という意味ではアルバムと同じです。GANGA ZUMBAは僕にとってとても大事なグループなので、必然的に半分は宮沢ソロ、半分はGANGA ZUMBAみたいな見え方のライブになると思うんですけど、それが僕にとっての集大成だと思っています。さっきも言ったように、もともと僕のソロツアーのサポートメンバーだったので、宮沢らしいシーンももちろん作れるし、そこからGANGA ZUMBAのサウンドに急に変わるとか、そういう感じもできると思いますね。温かい、優しい、楽しいとかって言葉だけでは片づけられない、〈すごいな〉って思ってもらえるようなものにしたいですし、とにかくアルバムとツアーで26年間走ってきた宮沢を見て欲しいので、去年のTHE BOOMのツアーに負けないくらいの気合いでやるつもりです」
2016年1月11日(月・祝) | 横浜BAY HALL | 17:15 開場 / 18:00 開演 | スタンディング ¥6,500(税込) |
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2016年1月31日(日) | Zepp DiverCity(TOKYO) | 17:00 開場 / 18:00 開演 | スタンディング ¥6,500(税込) 2F指定席 ¥6,500(税込) |
2016年1月28日(木) | LIQUIDROOM | 18:15 開場/19:00 開演 | スタンディング ¥6,500(税込) |
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ベストアルバム「MUSICK」
※【初回盤】CD(2枚)+豪華ブックレット(52ページ)+ボーナストラック収録/三方背ボックス仕様
※【通常盤】CD(2枚)
THE BOOM LIVE DVD・Blu-ray
「THE BOOM TOUR 2014 ANOTHER SIDE OF DOCUMENTARY」
(よしもとアール・アンド・シー)
DISK GARAGE.com 宮沢和史 アーティストページ
宮沢和史 オフィシャルサイト
宮沢和史 (2015.12月号掲載 DI:GA interview)