敬愛する5組のミュージシャンとのセッションアルバム『K⁵(Kの累乗)』をリリースしたシシド・カフカ。9月5日にZepp Tokyoで開催されるワンマンライブのゲストして、KenKenの参加が決定!多彩な表情を引き出されたレコーディングを経て、ライブでの生セッションが実現することになった現在の心境を聞いた。


――まず、5組のアーティストとセッションした全体的な感想から聞かせてくだい。


「みなさん、ステージでも多くのセッションをなさっている方々ばかりだったので、受け入れ態勢が万全だったなって感じましたね。まず、私のサウンドや手グセ、私自身を受け入れるっていう扉の開け方が本当に光栄でありがたくて。そういった懐の大きさにどっぷり甘えさせていただきましたね。ドラムのリテイクも少なかったし、歌もぱぱっと歌った仮歌の段階で『これ、OKにしちゃう?』っていうことも多かったですし」


――歌詞を見ても、なるべく生身のカフカさんがみたいという意識があるのかなと思いました。


「<もしもシシド・カフカとセッションするならば、どんなシシド・カフカが見たいか?>っていうところから始まったんですけど、やっぱりみなさん、『きれいに作ってしまったものはつまらない』ということをおっしゃって。人の心が入る隙間を楽曲に残すというのが、みなさんが持っていらしたテーマだったと思います。自分だけのレコーディングだったらもう何回か歌うし、もう何回か叩くので、多少は不安というか、心配もありましたけど、みなさんがOKといえば、じゃあ、OKという感じで進めていましたね」


――ひとりずつの印象もお伺いしたいと思います。まず、甲本ヒロトさんですが、インパクトの強い曲ですよね。タイトルが『バネのうた』で……。


「歌詞が<ビヨーン>ですからね。私からは一生かかってもでてこない歌詞だなって思って。だから、デモをいただいたときは、1回目は楽しく聴いたんですけど、2回目に聴いたときは『ものすごい歌がきてしまったけど、果たして私が歌えるのか?』っていう焦りが生まれてきて。私のプロデューサーの大島賢治がザ・ハイロウズのドラマーだったこともあって、勝手知ったる仲ということで、アレンジはこちらでして。ヒロトさんが、コーラスを入れていただけるということも決まっていたので、とにかくヒロトさんに負けないように歌おうと、自分の中で最大限に出せる声量と勢いを“ビヨ〜ン”にのせたっていう感じですね。ヒロトさんは、聴きながらニヤニヤしていました。『いいんじゃない、いいんじゃない』って」


――(笑)続く斉藤和義さんのセッション曲「Don't be love」は、ドラマ『医師たちの恋愛事情』の主題歌として書き下ろされた楽曲だそうですが、なんというか、ぞくぞくするような色気が漂ってますよね。


「5人の中で和義さんとのレコーディングの時間がいちばん長かったんですけど、テレビやライブで拝見するそのままの方で。すごくセクシーでしたね(笑)。なんでしょう、あの方がまとっているオーラって。下ネタがガンガンにくるわけではないんですけど、ガチガチに緊張していたのを上手に解していただきながらご一緒させていただいたっていう感じですね」


――歌詞は共作になってますが、どんな思いを歌ったといえばいいですか?


「私がドラマの台本を読んで感じた走り書きみたいなものを元にブラッシュアップしてくださったんですけど、簡単にいうと、恋することを諦めてしまったことすら忘れてしまった女性の心情ですね。ただ、“とはいえ…”っていうところで、ふたりで熱いものを語ってしまって。その熱を冷ますのに時間がかかったんですけど(笑)、忘れられない/忘れてはいけないところがちゃんとあるんだぞっていう女心が全体として残せてよかったなと思いますね」


――ボーナストラックとして、この曲のピアノバージョンも収録されてます。大橋トリオによるジャズピアノ一本の演奏に、これまでに見たことのない表情の声が乗ってて新鮮でした。


「メロディは一緒なんですけど、切り離して考えました。和義さんとの曲に女性の強さが出ているんだとしたら、大橋さんとの曲では弱さを出せたらいいなと思って。完全に別物と考えて、声を出すポイントや息の吸い方も矯正して臨んだので、自分にとっても挑戦だったし、新しい面を引き出していただいたなと思います」


――3曲目は唯一の同世代で、昨年末のカウントダウンジャパンでもセッションしているKenKenさんとのインストの「Trans fatty acid」ですが、データを切り貼りしたヒップホップ〜ブレイクビーツのようなトラックになってますね。


「最初にスタジオにふたりで入って、セッションをして、いくつかのパターンを作って。ベーシックを録ったあとの彼が本当にすごかったですね。その場から何をしようか探すというか、この曲をどう料理しようかっていうところから始まって、ほんとに好奇心でいろんなものを混ぜていくんですね。その、新しいものを拒まないというか、音楽を楽しむ心や視点の持ち方、遊び心が素晴らしいなと思いながら拝見していました」


――TOKYO NO.1 SOUL SETの渡辺俊美さんとBRAHMANのTOSHI-LOWさんによる常磐道ズによる「くだらない世の中で」は、いちばんカフカさんらしく感じますね。疾走感のある歌謡ロックというか。


「そうですね。私がこれまでやってきた楽曲にいちばん近い雰囲気があると思います。俊美さんはもう、お父さんみたいな感じでした(笑)。すごく温かい方なんですけど、時々、急に毒を吐いたりするんです。“ダメだな。こういうところがパンクなんだよな”っておっしゃっていましたけど、やっぱり受け入れるという態勢でご一緒して頂いて。ドラムに関しても、『自分の理想があるだろうから、好きなだけ叩いていいよ』って言ってくださって。結局、最後は止められたんですけど」


――あはははは。好きなだけ叩いていいって言ったのに!?


「あのまま止められていなかったら、きっとあと2、3時間は叩いていたと思います。私としては、なかなか自分の中に理想としてあるグルーヴに近づかなかったんですよね。でも、そのあとに俊美さんがベースを入れて、歌を乗せて、TOSHI-LOWさんのギターが入っていくうちに、どんどん自分のドラムが正解に近づいていって。それを見越してのストップだったんだろうなって思いました」


――最後にYO-KINGさんによる「あの夏、君が見てたモノ」ですが、なにかリクエストは出しました?


「YO-KINGさんだけは、『どんな感じがいいですか?』って聞かれたので、『楽しい感じがいいです』っていうことだけ伝えましたね。YO-KINGさんも<楽しい>っていうことを自分の中で大切にしているキーワードだったそうで、その言葉だけで、ものすごく合点がいったみたいでした」


――朗らかなフォークロックになってますよね。


「ギターとベース、ドラムの3人だけで構築していったので、バンドにいれてもらったみたいな気がして楽しかったです。初めて“僕”という人称で歌ったことも楽しかったですし、朴訥というキーワードをもらって歌ったのも新鮮でした。あんなにのほほんとしたレコーディングは他にないんじゃないかっていうくらい、朗らかな気持ちで歌っていましたね。いつもは汗をかきながら、マイクを食べる勢いで歌っているので」


――あはははは。本当にそれぞれのアーティストがもってる独自の世界観に飛び込んでいった感じなんですね。アルバムのタイトルはどうして累乗にしました?


「単純に+や×、vsっていうのもあったんですけど、そんな小さな話じゃないぞと思って。1曲1曲ですごい化学反応が起きているので、その5曲が集まったときにはもう累乗というくらい大きい世界は広がっているだろうという思いでつけさせていただきました。それと、このセッションをきっかけに、みなさんとまた別の機会でご一緒して、違う曲も制作させていただけたら嬉しいなっていう気持ちもあり、この関係性が累乗していって、みんなに楽しい音を届けられる機会と空間を作れたらいいなという期待も込めて、“累乗”にしていますね」


――早速9月のワンマンライブに、KenKenさんがゲスト出演されることが発表されました。


「ワクワクしています。KenKenとは、まだどの曲をやるかわからないんですけど、みなさんが期待されているようなパフォーマンスを見せたいなと思っています。それに、自分としては、Zepp Tokyoは、単独ではいままでにやったことのない広さなので、なにができるのかをしっかり考えて、ライブとして、エンタテイメントとして、みなさんを楽しませたいと思っています。なにができるか、目下考え中でございます」


――9月にはデビュー3周年も迎えます。


「3年も続けられるんだなっていうことに驚いていますけど、1枚目からこのアルバムまでの広がりを考えると、今後の広がりがもっと望めるだろうなって思えるようになって。怖がらずに挑戦するというか、好奇心をちゃんと持って進まないとなって、心を決めているところです。次は先導してくれるミュージシャンはいないでしょうけど、怖がらずに、自分自身で切り開いていくぞっていう思いでいますね」


インタビュー:永堀アツオ


INFORMATION

シシド・カフカ

RELEASE

シシド・カフカ「K⁵(Kの累乗)」
[CD+DVD]
※初回限定・
紙ジャケット仕様

シシド・カフカ「K⁵(Kの累乗)」
[CD ONLY]
※初回限定・
紙ジャケット仕様

SESSION MINI ALBUM「K⁵(Kの累乗)」
(avex trax)
NOW ON SALE

(CD収録内容)
1.theme - performed by シシド・カフカ
2.バネのうた- feat.甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)
3.Don't be love/feat.斉藤和義
4.Trans fatty acid - feat.KenKen(LIFE IS GROOVE)
5.くだらない世の中で - feat. 常磐道ズ(渡辺俊美[TOKYO No.1 SOUL SET]、Guest:TOSHI-LOW[BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND])
6.あの夏、君が見てたモノ- feat.YO-KING(真心ブラザーズ)

K⁵(Kの累乗)スペシャルページ

LIVE

K⁵(Kの累乗) ワンマンライブ「ミディアム・レア」

2015年9月5日(土)Zepp Tokyo
1F全自由 ¥5,940(税込)
18:00 開場 / 19:00 開演
Guest:KenKen/斉藤和義[五十音順]
NOW ON SALE

K⁵(Kの累乗) ワンマンライブ「ミディアム・レア」公演詳細はこちら


Guest:KenKen/斉藤和義

シシド・カフカ オフィシャルサイト