Cocco、“自由”を得た彼女が、のびやかに歌い、かろやかに舞った。純粋に音楽を届けた、20周年記念スペシャルライブ〜 二の巻 〜

2017.07.2817:00

「Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館 2days 〜 二の巻 〜」
2017年7月14日(金)日本武道館
取材・文/永堀アツオ 写真/西槙太一

「〜 一の巻 〜」で愛によって自由を得、“大丈夫である”ことを再確認したCocco。まる一日のインターバルを挟んだ「〜 二の巻 〜」は全てがガラリと変わっていた。

まず、「〜 一の巻 〜」では何もなかったステージは、そこかしこに花が咲いていた。ノースリーヴの白いワンピースだけで歌っていた彼女は、この日、金色のステッチが入った青いヴェールをまとって登場した。彩とりどりの花の間で歌い、舞う姿は、まるで空飛ぶ宝石と言われる幸せの青い鳥、ハチドリのようでもあった。サポートミュージシャンは、10年前のツアーにも同行した鹿島達也(Ba.)に、椎野恭一(Dr.)、藤田 顕(Gt.)、粂 絢哉(Gt.)、渡辺シュンスケ(Key.)という面々。「〜 一の巻 〜」ではバンドアンサブルが生み出す音の波に身を委ねて、思うがままに泳いでいるように感じたが、「〜 二の巻 〜」ではサウンドの中心にいるのはCoccoであり、まるでコンダクターのように音を操っていた。例えば、「〜 一の巻 〜」の18曲目、「〜 二の巻 〜」のオープニングナンバーである「焼け野が原」は、軽く挙げた左手を前後させながら歌うのだが、この日の彼女の左手の指からはバンドメンバーにつながる糸が見え、彼女が薬指を引っ張るとバスドラが大きくなっているのではないかと感じるほど、彼女をぐるりと取り囲んだメンバーは彼女の一挙手一投足を凝視し、集中して演奏していた。また、バイオリンが担っていたパートをCoccoがフェイクやハミングで補っていたのも大きな違いの1つ。さらに、照明も「〜 一の巻 〜」ではステージ後方から放たれる強烈なバックライトが多く、Coccoがどんな表情を浮かべているのかかが窺い知れないことが多かったのだが、「〜 二の巻 〜」では演者にスポットライトが当てられたり、場内が明るく白い光で満ちるなど、ステージを見せる演出となっていた。 「〜 一の巻 〜」がロックのダイナミズムに溢れたライブハウス版のCoccoだとしたら、「〜 二の巻 〜」はハイクオリティーなポップスを歌うホール版のCocco。それくらいの違いがあった。

冷たい青い花が咲く「ドロリーナ・ジルゼ」や、朗読のような語り口で命の終わりを歌う「遺書。」も、独白ではなく、物語に昇華されていた。また、「箱舟」を歌い終えた後、曲間の暗闇からは笑い声が聞こえ、空に青い鳥が飛ぶ「キラ星」でも柔らかな笑みを湛えており、「〜 一の巻 〜」では、口を拭いながら強く激しく歌った「やわらかな傷跡」もどこか楽しそうで、生き生きとしていた。ここで青い鳥が遠くの空へと飛び立つと同時に、彼女は青いベールを脱ぎ、ベージュのワンピース姿となった。頭には花の冠が乗せられており、腕には鈴がつけられていた。「やわらかな傷跡」で少女時代が過ぎ去り、花嫁となった音楽劇を見ているような思いがした。

最初のMCで彼女は、「今日は若い声がするね。一昨日とちょっと違う感じがするね」と場内を見渡し、若い観客に向けて話し出した。

「あっという間に大人になって。昔、子供の時は、なんでみんなもれなく、ちゃんと大人になってるんだろうって思ってね。どうやったら、大人になるんだろう、自分はって。小学生の頃は図書館に入り浸って、大人になる方法の本を探してたんだけど、大人になっちゃったっていうだけなんだよね。大人になれたって思うことはあんまりないんだけど、1個だけあって。もう無理っていうことがしょっちゅうあったわけ。その時に、周りの大人はみんな、『逃げるな』って言ったわけさ。でも、コウはその時に、自分は逃げてもいいって思える大人になりたいって思ったわけ。それ、最初に思ったのは15歳くらいだったかな。大事なのは、まず、生きることだから。それが正しいとか間違ってるとか、いいとか悪いとかは後の話で。まず、生きるためだったら、逃げたっていいって思ったわけ。だって、見て。逃げて、逃亡して、辞めたりとかしても、生きてたら、こうして会えるさ。ふふふ。生きてたら何度でも向き合えるしさ、挑戦できるわけよ。だから、覚えてて。もう無理って思った時に、周りの大人がみんな、『逃げるな』って言っても、Coccoは逃げてもいいって言ってたなって。覚えておいてね。15歳のときに強く思ったことを、ちゃんと言える大人になったのは嬉しいことだなって思いましたね」

大きな拍手を受けた彼女は、アコースティックギターを受け取り、「Heaven’s hell」を弾き語りで歌い始めた。活動休止中の2003年に始めた啓発イベント「沖縄ゴミゼロ大作戦」のDVDに収録されていた楽曲であり、その中で彼女は沖縄の子供達の前で「大人になることを恐れないで欲しい」と語っていた。その言葉は15歳の彼女自身にも、現在や未来の彼女にも向けられた言葉でもあったろう。Coccoの歌とギターに、バンドメンバーによる鈴やハーモニカ、3声のコーラスが加わり、場内からは自然に手拍子が起き、ステージの両袖に集まっていた全てのスタッフも音を重ね、大きな1つの楽団となっていく。それは、とても幸せで、愛の豊かに満たされた時間であった。

花冠を外した彼女は、白のロングドレスに着替え、青い風を呼ぶ鳥の歌声をモチーフにした英語曲「blue bird」で軽やかに歌い、舞った後、「踊ると嬉しくて笑っちゃうね」とこぼし、続く「Never ending journey」が「上手く歌えない」という葛藤を正直に吐露した。自身の歌の力を信じた、デビュー10年目の『きらきら』ツアーで歌ったこの曲がリハでどうしてもうまく歌えなかったそうで、その悩みを観客に話しかけながら解決していった。

「その時は、自分の歌に力があるって思ってたわけ。Coccoの歌で元気になるし、治るって言われれたから、それを真に受けて、コウが歌えばなんとかなるって思っちゃったわけ。コウが歌えば、人が治るかもしれないって思って、全力で歌っていて。でも、どんなに強く願っても、頑張っても、叶わないことがあるわけさ。そん時に、歌で人は治らないってわかっちゃったわけ。自分の無力さを目の当たりにして。絶望してしまったから、自分に。あまりにも力がないことに。だから、この歌が苦手なんだね。すごく悲しくなっちゃうんだと思うんだけど。でも、生き残ると、長く生きると、見送る経験が増えるよね。見送ると、残された方は自分を責めるわけよ。自分の力が足りなかったからだって。でも、それはそうなってしまっただけで、誰のせいでもない。生きるってきっと、受け入れる術を身につけることでもある。なんで?どうして?って責めるばかりじゃなくて、ただそうなってしまったんだって受け入れる術を見につける時期が来てるのかもね。残された方は、後悔を背負うのではなくて、受け入れることが仕事になるんだ。見送る側になったとしても、それはあなたのせいではない。そして、私のせいでもない。そうなってしまっただけなんだっていうことを受け入れないといけないんだよね。だから、自分の歌に力がないって思ったけど、Coccoの歌に、救われた、元気をもらったっていう手紙をくれるでしょ。そんな夢みたいなことがあったんだったら、とっても嬉しいことだけど、コウの歌に力なんてないわけ。それは、受け取る側の力だと思うわけさ。だから、コウの歌がいいと思ってくれたんだとしたら、あなたに拾い上げる力があったんだと思うわけ。コウがここまでこれたのは自分の歌に何かがあったんじゃなくて、拾い上げてくれるみんながいたからここまでこれたっていうさ。コウはたださ、力がある人たちに出会えたっていうだけなわけ。だから……この歌を初めて、ただ歌えばいいんだ。誰かのためとか、何かのためとか、恩着せがましいことではなく、ただ歌えばいいんだ。そうだ!ああ、そうさ!! しかも、こんな大勢の人の前で……立ち会ってくれてありがとう。なんか、立ち会い出産みたいだね(笑)」

この20年間あまり、15歳の時に作った「Raining」をはじめ、彼女は身を切るようなテーマの曲を自分の身を素材にしてパフォームしてきた。ある意味、歌われてきたのはCoccoの生き様そのものであり、それゆえにこれだけ熱狂的な支持を得ることになった。しかし、この日の彼女は、いい曲を、いい演奏といい歌で届けるという点に焦点をあてていた。彼女は無意識だったかもしれないが、1曲目「焼け野が原」から歌を、歌として、純粋に歌っているように感じていた。過激な振る舞いに興味が向いていた方は少し寂しく感じるかもしれないが、純粋にCoccoの音楽を味わえることに喜びを感じた人も多かったはずだ。

大きく息を吸い、まっすぐに前を見据えて歌った「Never ending journey」、ドキュメンタリー映画『大丈夫であるように-Cocco 終らない旅-』でも使われていた「ジュゴンの見える丘」には、濃密ながらもどこか軽みがあり、優しさがあった。そして、天井からハート形の白い紙飛行機が舞う中で歌唱したラストナンバー「有終の美」へ。<いつだってきっと笑ってるよ/私は大丈夫>というフレーズとともに、2夜に渡ったスペシャルライブの幕は閉じられた。メンバーと手を繋ぎ、挨拶をした後、それぞれが花束を持って、ステージを下りた。あの花束にはきっと、この2日間の音や歓声、思い出、そして、みんなの“きっと、大丈夫”という思いが詰まっていることだろう。

7月12日(水)Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館 2days
「〜 一の巻 〜」のレポートはこちら

セットリスト

M01.焼け野が原
M02.ドロリーナ・ジルゼ
M03.強く儚い者たち
M04.遺書。
M05.Raining
M06.箱舟
M07.キラ星
M08.やわらかな傷跡
M09.樹海の糸
M10.Heaven’s hell
M11.手の鳴るほうへ
M12.オアシス
M13.カウントダウン
M14.絹ずれ ~島言葉~
M15.音速パンチ
M16.BEAUTIFUL DAYS
M17.blue bird
M18.Never ending journey
M19.ジュゴンの見える丘
M20.有終の美

FUJI ROCK FESTIVAL 2017

7月28日(金)、29日(土)、30日(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※Coccoの出演は、7月29日(土)
>>詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください

SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2017

8月25日(金)、26日(土)、27日(日) 山梨県 山中湖交流プラザ きらら
※Coccoの出演は、8月27日(日)
>>詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください

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関連リンク

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