バンドマンよ、なぜ走る[グッドモーニングアメリカ たなしん編・後編]

僕はけっこうスポーツは好きな方で。小さい頃は団地に住んでいたんですけど……8階建のマンションで、1階から8階まで上がってピンポン押して、「遊ぼう遊ぼう！」って言うような活発な子供だったと思います。

で、かけっこしたりとか、ドロケイだったりとかをみんなでやるのが好きな少年時代を経て、小学校の時も休み時間とかは校庭で遊ぶタイプで、中学で部活は卓球部に入って、高校はテニスで。大学の時はもう今のバンドを組んでいたんで、音楽活動へ、ってなっていくんですけども。でも、最初に言ったように、走り始めたのは大学の時ですしね。基本、運動するのはすごく好きでした。

あ、僕、まったくこだわりがないんです。距離と時間を測るアプリは使ったほうがいいと思いますけど。記録できるから。僕はNIKE PLUSっていうアプリを使ってますけど、でも、すごくこだわってそれにしているわけではないし。

ウェアも、洗濯しやすいかどうかくらいしか気にしない。なんなら俺、ツアー先はシューズ持って行ってないんで。普段履いてるVANSのスリッポンで走っています。ライブで穿いてるスパッツで走る時もあるし。

間接的には影響あるでしょうけど、直接的にはないですね。僕ね、もともとあんまり太んないし、あんまり食べないんです。最低限しか食べない。お客さんとかによく「そのスタイルの秘訣はなんですか？」的なことを言われるんですけど、それは走ってるからというよりも、食事なんじゃないかなと思ってます。

いや、逆だと思います。美味しいものを食べるのは大好きだし。でも、過度に摂らない、最低限にする。っていうのは心がけてますね……いや、心がけてるっていうより、自然にそうなってるのか。いっぱい食べたいっていうのがないんでしょうね。お腹いっぱいだとすぐ眠くなったりするし、テンション上がんないじゃないですか？カップラーメンとか甘いものを制限したりはしてないんですけど、食生活が偏ってると、自然に「食いたくねえな」ってなっちゃうし。

いや、みんなでワイワイ飲んでる時にそうなったら、「いいねえ！」って。それは娯楽じゃないですか？ だから一緒に行きますけど、普段ひとりの時だったら絶対そうんなんないです。

俺は聴かないです。っていうのは、最初にも言いましたけど、走ることの俺の中の醍醐味は、やっぱ自然なんですよ。走りながら、たとえば、昔の人は走ってたのかなあ、って想像したり……原始時代とかはいちばん本能的な状態じゃないですか？ 獲物を獲ったり、何かで急いだりする時に、走るんだろうなあとか。で、ほんとに……たとえば、食べ物に困ってる時って、走んないと思うんですよね（笑）

で、原始的であればあるほど気持ちいいじゃないですか、人間って。現代に置き換えた時に……余裕があるから走れると思うんですよ。たとえば夜走っていても、いきなり殺される恐怖とか、ほとんどないじゃないですか？日本は。ある程度余裕があるから、娯楽として走れると思うんですよね。

自分のペースで自由に走れる、というのが、最大のぜいたくだと思うんですよね。走れる環境がないと、余裕を持って走れないでしょ。東京でも、公園があって緑があって虫が鳴いていたりする、そういうのを感じながら走れるのがすごい楽しみだし、それを意識して最近は走っていますね。

いや、普段は勧めないですけど、今日みたいにこういう場をいただけるんなら、もう全然勧めますね（笑）。だって走るって気持ちいいじゃないですか？どうしたって。人間的な身体の根本的な機能を全部使うから。で、走りながら考えたりもできるし……よく「ポジティブになる」ってみんな言うけど、本当にそうだと思う。

あ、でもそれはあると思いますよ。やっぱりライブの時のあのたなしんって、ポップで明るくて、っていうキャラクターですけど、走ったあとは自然にあの感じになりますよね。そんくらい、よく……ウジウジ悩んじゃうこととか、誰でもあると思うんですけど、そういう時は走ることにしてるし。

そうすると、関係なくなりますよ、ほんとに。よく「迷ったら行動しろ」っていうけど、本当にそのとおりで。アクションを起こしてみる、動いてみることって、いちばん意味があることだと思っていて。で、走るって、特に理由がなくてもできるじゃないですか。だからいちばん、その……生きてるっていう感じ、しますよね。