兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第52回[2020年4月前半・とにかく観たやつがないので、聴いたやつについて書く]編

コラム | 2020.04.21 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が観たすべてライブなどについてひとことレポを書いて、半月に一度のペースでアップしていく連載、なのですが。
前回=2020年3月後半編は、まだ辛うじて観に行くライブがありましたが、今回=4月前半から、いよいよ、本当に、完膚なきまでになくなりました。なので、とにかく観たやつ、ありません。
というわけで、この連載もお休み、だと、ちょっとあまりにも芸がないというか、「サボってんじゃねえよヒマなくせに」と自分に言いたくなるので、大変に苦肉の策ですが、この時期に聴いたニュー・アルバムを4作選んで、ひとことずつ何か書くことにしました。
多くのアーティストが発売延期を選ぶ中で、そのままリリースしている、もしくはきっと「あえて」リリースしているそのスタンスを応援したい、というのもあります。単に「聴いたらとてもよかったから」というのも、もちろんあります。3月のものと4月のものが混じっていますが、そのへんはご容赦ください。

マカロニえんぴつ『hope』
配信・CD:2020年4月1日リリース (TALTO/muffin discs)

数年前、ボーカリストでありバンドの音楽的中枢であるはっとり、その「はっとり」という名前が本名でもなんでもなくて、ユニコーンの『服部』(サード・アルバム、1989年リリース)からとっている、ということを知って「なにっ!?」と思って以来、注目していたバンド……ってどういう注目のしかただと思うが、とにかくそんなふうにして知って以降、あれよあれよという間に大人気バンドになった、そのセカンド・フル・アルバム。
 達者なバンドだなあ、メンバーみんな含めてウィークポイントないなあ、というのが最近のライブでの印象だったので、新しい音源ではさらにそういう完成度勝負な感じになるのかな、とか思っていたのだが、逆だった。「整える」んじゃなくて「生を刻む」感じのラフなバンド・サウンド。パッケージとしての優秀さよりも、生々しさとか言いたいこととか伝えたいことを前面に出して作った印象がある。というのが、とてもいい。
あと、どこまでも飛翔していく、と同時にどこまでも聴く人を開放していく歌メロと、言いたいことありすぎてこうなるんだろうなと思わせる歌詞の長さ、特に好きです。

マカロニえんぴつ「hope」 Music Video

OUTRAGE『Run Riot』
配信:2020年3月7日リリース/CD:2020年4月15日リリース (UNIVERSAL MUSIC)

名古屋の超ベテラン・ヘヴィ・メタル・バンドのニュー・アルバム・1982年結成、1986年に現在の4人になった頃から存在は知っているので、私が高校生の頃です。1999年にボーカルの橋本直樹が脱退して3人で活動していた時期もあったが、2007年に復帰(そのへんからまた聴くようになりました)、以降2〜3年にアルバム1作くらいのペースで活動している。
で。私、中高生の頃は熱心なメタル好きだったんだけど、高校の途中からいろいろ聴くようになるにつれメタルから離れていった、BURRN!(メタル雑誌)も創刊号から買っていたけどしばらくしたら買わなくなった、くらいの、言わば「転びメタル」なので、あんまり偉そうなことは言えないという自覚はある。あるが、たまに「ああ、メタル聴きたい」という時にこれが鳴っているといちばんうれしいというか、新しいのが出るたびに「ああ、これこれ!」ってなるというか。そういうバンドなのです、自分にとって。
超王道、でも「いつもおんなじ」じゃない、いや、いつもおんなじなような気がする時もするんだけど、飽きない。たとえば王道の広島のお好み焼き屋って地元にいっぱいあるけど、その中でも「この一軒があればいいや」という存在というか。メタル以外も含めて後続のバンドたちにリスペクトされ続けているのもよくわかる。LOUDNESSと並べて語っていい存在なんじゃないか、と、個人的には思っています。

OUTRAGE「Blood And Scars」Music Video

サニーデイ・サービス『いいね!』
配信:2020年3月19日リリース/CD&アナログ:2020年5月22日リリース (ROSE RECORDS)

サニーデイ・サービス、3月18日に突然「今晩ニュー・アルバムを発表します」とツイッターで告知。で、18日から19日に日付が変わったところで、apple musicやSpotify等の配信サイトで聴けるようになった。彼らは事前に、ドラムに大工原幹雄が正式加入したことを発表した時に、「4月にニュー・アルバム、5月からは4年ぶりの全国ツアーが始まります」と告知していたので、急遽、前倒ししてリリースしたことになる。
というのが、「新型コロナウィルス以降」のこの世の中の状況と関係あるのかないのかはわからないが、とにかくびっくりしたのと、とにかくいいアルバムだったので、聴いてすぐ、自分のブログにちょっと書きました。こちらです。
で、これを書いてから1ヵ月が経つ現在も、ほんとにしょっちゅう聴いている。で、何がこんなに耳を惹きつけるのか、なんでこんなに何度も聴きたくなるのかについて、ちゃんと芯まで解析できていないまんまな気がする。気がするが、まるで曲の途中から突然始まったみたいにスタートする1曲目「心に雲を持つ少年」や、逆回転っぽいノイズで始まって歌が入ると同時にベースが8のルート弾きになる4曲目「春の風」や、ハイハットの16ビートがバシャバシャ響き続ける7曲目「コンビニのコーヒー」のような曲が──つまり、「蒼い」とか「混沌」とか「ガレージ」な感じの曲を、特に自分は好きなような気はする、このアルバムの中でも。
あと、ラスト=9曲目の「時間が止まって音楽が始まる」、なんていいタイトルなんだろう、と、何度聴いても思う。

Sunny Day Service「春の風」Official Video

くるり『thaw』
配信リリース:2020年4月15日リリース/CD:2020年5月27日リリース (ビクター/スピードスター)

配信は11曲入り、CDは15曲入りになるニュー・アルバム。今年3月からのツアーの最終リハの日に開催の見合わせを決めたのと同時に、「活動を止めたくない」「ファンに何かを届けたい」という動機で、リリースを決めたという。他のアーティストがリリースを延期しているのとは逆の行動である(※あ、延期する人を責める気持ちはまったくありません、当然だと思います)。
で、1997年(つまりメジャー・デビューの前年)から2020年までの未発表曲から11曲+4曲を収録したのが、この作品。そんなにいっぱいあるのか、未発表曲、と言いたくなるところだが、くるりなので「ああ、あるだろうなあ」と素直に思う。
ライブではやっていたが音源にはならなかった曲、レコーディングしたあとでメンバーが替わったので収録されなかった曲、途中まで作ってそのままになっていたのを今回新たに仕上げた曲、デモみたいな音質の曲、録り音からミックスまでバキバキに仕上げている曲など、本当に1曲1曲がさまざま。中には「あ、知ってるこれ、聴き覚えある」という曲もあるが、ほとんどは知らない。だから新鮮だし、当然ながら時期によってサポート・メンバーもさまざまなので、それもこうしてまとめて聴くと、とても新鮮。
あと、岸田繁の歌が、メロディが、無防備で素直な感じがする。基本的に「ロック」とか「J-POP」とかの枠に縛られない、いいメロディを書く人だけど、その自由度が高い感じがある、というか。
詳しくは、バンドのオフィシャルサイトのnoteに、岸田がセルフ・ライナーノーツを書いているので、そちらもぜひ。
 あと余談。このアルバムが出ることが発表になった時、歴代のメンバー・サポートメンバーが、それぞれ喜びのツイートをしていたのが微笑ましかったです。「俺の叩いたあのテイクが世に出る!」という。初代オリジナルメンバーもっくん(森信行)、BoBo、あらきゆうこ、田中祐司のツイートを確認しました、私。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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