兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第62回[2020年8月後半・観た配信ライブ全部書く]編

コラム | 2020.09.17 12:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、ライブや演劇やお笑いプロレスなどなど、自分が観た生の公演について短くレポを書いて、月2回ペースでアップしていく連載で、新型コロナウィルス禍になって以降は、配信ライブを観て書くことにして続けています。が、今回、全7本のうち1本が「配信じゃなくて生で観た」もので、1本が「配信ライブだけど諸事情で現場まで行った」ものです。

8月26日(水)15:00 エレキコミック @下北沢本多劇場

 エレキコミック第30回発表会『☆空前の偶然☆』。本来は秋に開催する予定だったが、世の中がこんな状況なのでいったんバラし、急遽公演数等の規模を縮小して、客席も1席空けでキャパ半分にして、下北沢本多劇場で、8月25日(火)に一回、8月26日(水)に二回、計3公演が行われた。
 で。これだけ配信ライブではありません。生配信が入った回もありましたが(26日19:30開演の回、2,500円で8月31日0:00までアーカイブ視聴可能)、私はこの日時に生で観ました。
 エレキコミックのライブ、やついいちろうくんと面識があって、招待してくれる時もあるんだけど、今回はこのご時世だからさすがにそれは無理だろう、でも観たいし……と、ダメもとでチケットを申し込んだら、運良く26日の昼の公演のチケットが取れたのでした。
 めちゃくちゃ笑った、とにかく。こんな世の中でも、というか、きっとこんな世の中だからこそ、「くだらない」ことに迷いなく邁進するさまがすばらしかった。特に今立進のキレっぷり、1本目のコントから全開で、目をみはるものがありました。

8月26日(火)20:00 大木温之 @新宿紅布/ZAIKO

 新宿紅布の17周年シリーズ・ライブ『red cloth 17th ANNIVERSARY』のうちの1本で、Theピーズ大木温之のひとり弾き語りライブを無観客で生配信。プラットフォームはZAIKO、チケットは1,500円で、8月29日(土)23:59までアーカイブ視聴あり。
 20時に「バカのしびれ」で始まり、31曲目「幸せなボクら」で終わったのが22:22。基本的に、弾き語りの時もバンドの時も、ワンマンになると尺長め・曲数たっぷりやる人だけど、配信でもまさにそんな按配の、大充実のライブだった。
 「実験4号」や「短い夏は終わっただよ」等の昔の曲もやったけど、近年の曲の方が多めだったのも、よかった。特に後半、27曲目から31曲目まで、「グライダー」「ノロマが走っていく」「耳鳴り」「初夏レゲ」「幸せなボクら」のゾーンが圧巻だった。
 なお、その「短い夏は終わっただよ」の歌詞を「コロナばっかでしょぼくれてんだよ」と変えて歌ったり、途中でフラワーカンパニーズのタオルを出して「この“フ”の人たちが、横浜で無観客でやるんでしょ? がんばれ。がんばれがんばれ、“フ”!」と、翌日横浜アリーナで無観客生配信ライブを行うフラワーカンパニーズに、エールを贈ったりも、しておられました。

8月27日(木)19:00 フラワーカンパニーズ @横浜アリーナ/PIA LIVE STREAMING

 と、前日に大木温之もエールを贈った、「無観客だから普段ならワンマン切れないでかい会場でやる」という前代未聞な動機で決行された無観客生配信ライブ。PIA LIVE STREAMINGで3,300円、8月30日(日)23:59までアーカイブ配信あり。
 このライブに関しては、メンバーの入り時間から現場に行って、ぴあが翌日配信したレポートと、翌週に音楽と人.comにアップされた「このライブはなんだったのか」ということを考察したテキストの2本を書きました。ぜひ。

ぴあ:フラカン初の横アリ無観客ライブは “2020夏”だからこそのセトリで魅せた!【ライブレポート】

音楽と人.com:フラカンが横浜アリーナ公演で描いたストーリーとは? 当日の現場の様子も含めてレポート!

8月28日(金)14:30 『UKFC in the Air』@Streaming+

 今年で開催10回目、UKプロジェクトから音源をリリースしているアーティストとUKプロジェクトがマネージメントしているアーティストが集結するこのイベント、今年は2ステージ交互&アフタートークありで、無観客生配信で開催。チケットは早割3,000円(8月26日までに購入した場合)/通常3,500円で、9月7日(月)23:59までアーカイブ視聴あり。
 ここ5年ほど、ありがたいことに毎年なんらかの形でのライブレポの仕事で呼んでもらっていて、新木場スタジオコーストに行って、2つのステージの片方のレポを書いてきたんだけど、今年は「家で配信を観て書くんだったら、兵庫さんひとりで全部いけるかなと思って」(by UKプロジェクト副社長)ということで、とてもとてもありがたいことに、2ステージの9アクト全部書いて、それがSPICEにアップされました。オープニングのセッションも合わせると10アクトか。
 こちらです。ぜひ。
SPICE :アレキ、MAMA、TF、ポリ、電話ズらUKP勢がオンラインで集結したフェス『UKFC in the Air』

8月30日(日)20:00 SURFACE @神田明神ホール/Streaming+

 29日はファンクラブ会員限定、30日は誰でも観れる形で、SURFACEがふたりきりで神田明神ホールで行った無観客生配信ライブの2日目。チケットは1日4,000円で、9月2日(水)23:59までアーカイブ視聴可能。
 このDI:GA ONLINEにレポを書きました。ぜひ。
DI:GA ONLINE:SURFACEが初の無観客生配信ライブを2days開催!2日目をレポート!

8月30日(日)20:00 King Gnu @KT Zepp Yokohama/CLUB GNU

 King Gnuの配信ライブ、プラットフォームはファンクラブのサイトで、会場は、配信が始まった時に映った外観で、KT Zepp Yokohamaであることがわかった。完全な無観客ではなく、2Fに少しだけお客さんを入れてのライブ。事前に募集があり、運良く当選した人が観れたようです。途中のMCで、お客さんがいることについても、触れていました。
 で、これ、ひとつ前のSURFACEと同日同時刻からの配信でした。でも、アーカイブで観れば「ライブレポのダブルブッキング」というのが可能なわけですね。先にSURFACEのレポが決まっていたので「あとでアーカイブ観て書く、というのでもOKですか?」「問題ないです」ということで、観て、書きました。
 あ、でもこのライブ、そのレポがまだ世に出ていないのと、そもそもそのメディアで自分がこれを書いたということを、記事が出る前に言っていいかどうかもわからないので、出るまで書かずにおきます。出たら追記します。

※付記:9月17日(木)の朝日新聞夕刊にレポが掲載されました。

8月31日(月)19:30 Cocco @Streaming+

 2019年のアルバム『スターシャンク』のホール・ツアーのあとに行うはずだった、キャリア初のライブハウス・ツアー『Cocco Live Tour 2020 みなみのしまのはなのいろ〜ダークサイドクイーン初訪の地、近隣住民近う寄れ〜』と「Cocco Live Tour 2020 みなみのしまのはなのいろ〜ダークサイドクイーン再訪の地、リクエストにお応えして〜」全15本がコロナ禍で中止せざるを得なくなり、その振替公演として行われた、有料生配信ライブ。チケット代は3,500円で9月1日(火)23:59までアーカイブ視聴可能。
 最初に、このライブのリハーサルをしていると思しきスタジオで、そもそも『スターシャンク』がどのように生まれたのか、ということから、なぜホールツアーの後にライブハウス・ツアーを行うことにしたのかまで、Cocco本人が丁寧に説明した。という画までは録画で、その説明が終わったところで生配信の画面に切り替わり、ライブがスタート。
 で。すごいもん観ちゃった。Coccoのライブって、何度観てもそう思うような、「いい」とか「すばらしい」とかを超えて「ショック」とか言いたくなるシロモノなのだが、この日も掛け値なしにそうだった。いや、「この日も」じゃないかも。「この日はさらに」かも。
 最初に本人がしていた説明を超ざっくりまとめると、ホール・ツアーはブライトでポップなことをやりたくて、そうじゃない曲やそうじゃないアレンジはセットリスに入れられない、そうすると、自分の「ダークサイド・クイーン」的な側面も表現するツアーもやりたくなって、ライブハウスで各地を回ることにした、というような経緯だったそうだが、こうして目撃すると「うわ、そうか、こういうことか!」という衝撃だらけ、全18曲が。
 「花爛」でライブが始まった時は、「カウントダウン」でデビューした頃のサウンド・プロダクトに近い感じだな、と思ったが、その曲が終わる前に、いや、あの頃はもうちょっとわかりやすく「ああ、グランジだなあ」という感じだった、今目の前でくり広げられているこれはもっとディープだし、もっと手に負えない鳴り方をしている、と、考えを改めた。メンバーは、ベース根岸孝旨、ドラム椎野恭一、ギター堀越信康、今回はキーボードはおらず、曲によってCoccoが鍵盤ハーモニカやホイッスルを吹いたり、舌を鳴らす音や口笛や縦笛を曲にく輪得たり、ベルや鉄琴を鳴らしたりする。
 『スターシャンク』の曲たちのドスの効いた響きはもちろん衝撃的だし、聴き慣れた過去の曲も重たいアレンジに生まれ変わっていて、いちいち驚かされた。新曲も2曲もあった。Coccoの顔のベール、最初は黒だったが途中で赤へ、そして黒へと色が変わっていったりもした。
 全曲が終わったところで、最後に、Cocco手描きのセットリストが画面に映った。リアルタイムで観てよかった、と、つくづく思った。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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