兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第64回[2020年9月後半]編

コラム | 2020.10.07 13:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、主に音楽、たまにそれ以外=演劇やお笑いやプロレスなどの「生で観た公演」についてレポを書いて、半月ごとにアップしていく連載です。新型コロナウィルス禍以降は、配信ライブを観てレポを書いていますが、今回は7本のうち2本は、生で観て書きました。というふうに、今後、だんだん生が増えていけばいいなあ、と希望する日々です。

9月20日(日)京都音楽博覧会2020 @京都拾得/Streaming+

 くるりプレゼンツのこのフェス、14回目にあたる今年はオンラインでの開催で、岸田繁楽団(ゲスト:Homecomings畳野彩加、UCARY & THE VALENTINE、小山田壮平)と、くるりの2アクトが出演した。前売3,500円で当日券4,000円、Streaming+で配信、9月27日(日)23:59までアーカイブ視聴可能。リアルサウンドにレポを書きましたので、ぜひ。
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9月22日(火祝)17:00 Saucy Dog @KT Zepp YOKOHAMA

 新しいミニ・アルバム『テイクミー』のリリース・ツアーの1本目。本来オールスタンディングの1Fにも座席を置き、1Fも2Fもお客さんは一席飛ばしにして、入場者数は本来の半分以下で──と、感染予防に細心の注意を払って開催された。このDI:GA ONLINEにレポを書いたので、そちらをぜひ。
DI:GA ONLINE:生ライブの感動と興奮!Saucy Dogワンマンツアー “We will take you” 初日をレポート!

9月24日(金)20:00 Caravan @日比谷野外大音楽堂/ZAIKO

 Caravanにとってもファンにとっても特別な場所である日比谷野外大音楽堂での、無観客配信ライブ。8月23日(日)に収録、この日に配信されました。これもDI:GA ONLINEにレポを書きました。ぜひ。
DI:GA ONLINE:Caravan、日比谷野外大音楽堂でのアルバム「Wander Around」再現した無観客ライブ、ライブレポート!

9月24日(金)21:00 真心ブラザーズ @Streaming+

 2020年10月14日リリースのニュー・アルバム『Cheer』を全曲披露するという生配信ライブ。Streaming+で配信、視聴券3,000円/オマケ付視聴券3,800円で、9月26日(土)17:00までアーカイブ視聴可能。YO-KINGと桜井秀俊を支えるサポート・メンバーは、ベース岡部晴彦&ドラム伊藤大地のおなじみのコンビに、キーボードで野村卓史が加わった5人編成。会場はライブハウスで、ステージの中央から花道が作られている。
 1曲目は『Cheer』の曲ではなく、「空にまいあがれ」でスタート。ハープを吹いたり歌ったりしながらその花道へ出たYO-KING、今日は新曲ばかりで(歌って演奏するのが大変で)花道に出られないだろうから、1曲目だけ出た、と、歌い終えてから説明。
 で、「アルバムの曲順ではないけど、全曲やります」と宣言、そこから「パッチワーク」「かっこいいだろ」「不良」「こんぷろマインズ」「サンセットハンター」「朝日の坂を」「妄想力」「ビギン!」「炎」「緑に水」と、全曲完奏。途中で「でも冗談抜きでいい演奏してません?」(桜井)「してた。今の、ちょっと俺のテンポが遅かったけど、でもそれが却ってね」(YO-KING)などと自画自賛したり、MCのたびに野村卓史をいじったりしつつの、快調にかっとばしていっくようなプレイだった。
 後半のMCで、11ヵ月ぶりに有観客でのワンマンライブを行うことを発表。11月1日(日)品川シティホール、ふたりでのライブになるそうです。その末に、アンコールは「明日はどっちだ!」で、景気よく締めくくった。
 『Cheer』が、全10曲、みっちりといい曲が詰まったアルバムであることが、よくわかるライブだった。その『Cheer』の特設サイトで、私、おふたりにインタビューしています。ぜひ。
真心ブラザーズ 「Cheer」特設サイト

9月25日(金)21:30 Permanents ゲスト:田島貴男(ORIGINAL LOVE) @Billboard Live TOKYO/UNITED FOR MUSIC,Streaming+

 GRAPEVINE田中和将と、長年GRAPEVINEのサポートを務めるキーボーディストであり、他のアーティストのサポートやプロデュース等も多数手掛ける高野勲のふたりユニット=Permanentsが、『Permanents A ZIG/ZAG SHOW』と銘打って、ビルボード東京で有観客ライブ。この9月25日と翌日の26日の2デイズ、ビルボードの定形どおり1日2公演、なので計4公演。ゲストで田島貴男が出演。
 で、その初日の2公演目が、スペースシャワーネットワーク/J-WAVE/CINRAが立ち上げた、音楽エンターテイメントをバックアップするプロジェクト「UNITED FOR MUSIC」で、有料配信された。プラットフォームはStreaming+、前売3,000円/当日3,500円、1枚につき1,000円が「Music Cross Aid」へ寄付されるスーパードネーションチケットもあり。終演後24時間までアーカイブ視聴可能。というわけで、その配信を観ました。
 「今宵は素敵な夜になるでしょう、って言おうと思ってたんですけど、セカンド・ステージなんで、既に私たちにとっては、すごく素敵な夜になっております。だから、みなさんに魔法をかけてあげられるかどうかわかりませんが、私たちは既に魔法を手にしております」という、田中和将の粋なMCから、「それを魔法と呼ぶのなら」でスタート、2曲目は「遠くの君へ」。
 で、田島貴男が登場。5月に組んでいた対バンツアーの目玉が田島で、共演を楽しみにしていたがコロナ禍で流れてしまった、それが残念で今回声をかけたらふたつ返事で承諾してくれた──という田中の説明を経て、3人でORIGINAL LOVEの「プライマル」。田中がリードボーカルをとり、田島がハモリを付ける。
 そして、田島ひとりで「接吻」「bless You!」「フリーライド」と、ORIGINAL LOVEの代表曲を三連打。ふたりが戻ってきて3人でGRAPEVINEの「エウテリア」。アウトロで田島のソロと田中のカッティングがバトル状態になる。田島が去り、田中、カメラを指差して「観ました? 今の。もうほんまに、幸せな夜が人生の中で何回かあるんですけど、また更新しましたね。ありがとうございます」。で、「もうあれを観たあとは、やることがないんですけど、この曲だけはやっておかなければいけない、という田島さんのカバーをやりますね」と「ORANGE MECHANIC SUICIDE」を歌う。そこから「こぼれる」「小宇宙」「smalltown,superhero」で本編終了。
 アンコールは3人で、GRAPEVINEの「ピカロ」。1コーラス目は田中、2コーラス目は田島が歌い、間奏はセミアコ(田島)とアコギ(田中)とピアノ(高野)のセッション状態と化した。いやあ、観てよかった! と強く思う、とても豊かな時間だった。
 なお、アンコールで、GRAPEVINEでホール・ツアーを行うことを発表。田中曰く「ホールやったらソーシャル・ディスタンシングやないかと」いうことで、11月1日(日)神奈川県民ホール、3日(火祝)大阪オリックス劇場、7日(土)中野サンプラザの3本。

9月26日(土)20:00 佐藤千亜妃/椎名杏子/堀胃あげは @月見ル君想フ/MOON ROMANTIC CHANNEL

 『BABY BLUES』という弾き語りイベントの30回目で、南青山の月見ル君想フから、その生配信特設サイト「MOON RMANTIC CHANNEL」で生配信。視聴料は2,500円で(「MOON CARD」という投げ銭もあり)、9月29日(火)20:00までアーカイブ配信あり。最初は堀胃あげは(黒子首)、次に椎名杏子(チーナ)、トリが佐藤千亜妃、という順。正直、佐藤千亜妃目当てで観たんだけど、堀胃あげはも、椎名杏子も、とてもよかった。
 堀胃あげはは、「どうせ死ぬならでかいことしよう」というサビの「どうせ死ぬなら」という曲があったり、「吸って吐いて吸って吐いて」で始まる曲を歌い終えたあとに、「今のは『怒り』っていう曲でした。むちゃくちゃむかついた時に作った曲です」と紹介したり。ラストの「夢を諦めたい」という曲が、特にインパクト大だった。タイトルにも表れているが。聴きながら思わず詞を書き起こしたほどでした。
 キーボード弾き語りの椎名杏子も、「昔チーナのライブは観たことあるけど、こんな強力なリリックの曲ばかりだったっけ?」と思わされる曲が続く。たとえば、「チーナではあんまりやってない曲をやります」と5曲目に歌った「いつか」という曲。「いつかこのベンチが壊れるように いつか私も壊れるの いつかこのピアスをなくすように いつかきみをなくすの そんなことって笑うんでしょ 退屈だって言いたいんでしょ でもそんなことって笑える今日がすごいんだよ すごいんだよ」という歌詞。なんかもう、すんごいわかる。ずっしりきた。
 で、トリ、佐藤千亜妃。「海と花束」で始まり、「The SEA」「大キライ」「金木犀の夜」「橙ラプソディー」「空から落ちる星のように」「STAR」、そしてアンコールで「夜が明けたら」を追加、という、初期から現在までを自在に行き来するようなセットリスト。アルバム音源だと途中からラウドになる「大キライ」と、頭から最後までパンクな「STAR」、どちらも弾き語りでもずっぱまり。あと、「金木犀の夜」(きのこ帝国の2018年のシングル)、やっぱり名曲だなあとしみじみ思った。
 なお、途中のMCで、延期になっていたカバー・ライブ『VOICE』を、11月14日(土)・15日(日)にBillboard Live TOKYOでお客さんを入れて行う、ということを告知した佐藤千亜妃、「……不思議ですよね。お客さんがいるライブが、今までは普通だったんですけど、『お客さんがいる』って告知する時代になっていて」。確かに。全4公演のうちの4回目で、生配信も行うそうです。

9月30日(水)19:00 突然少年 @下北沢シェルター/YouTube

 『炎の突然少年企画 わたしたちはどんだけつらくてもやってきたvol.2 -がんばれミルクボーイ&疫病退散祈願-』というライブ。なんでこんなタイトルなのかというと、これ、当初はミルクボーイとの2マンだったのです。今年3月に突然少年がクリトリック・リスと3日間で東名阪を回る2マンツアーをやった時に、移動中に寄った滋賀県の草津パーキングエリアで、ミルクボーイがテレビのロケをしていて、取材を受けた──という縁で、この日下北沢シェルターで一緒にやりましょう、観客は10名限定、生配信あり、という運びになったのだが、その直前にミルクボーイ内海がコロナで陽性が出てしまったのだ。
 という事情で、タイトルと内容を変更。お客さん10名はそのままだが、オンラインはYouTubeのLoft Channnelでの無料配信に切り替え(投げ銭あり。10月5日時点ではアーカイブ、そのまま残っています)。内容は、メンバーひとりずつソロライブをやって、最後に突然少年、という構成で行われた。
 トップは戸田源一郎(ベース)が弾き語り。ミルクボーイへのエールの意をこめて、頭に牛の被り物、身体は半パン一丁で首にカウベル、曲間に牛乳を飲みながら歌う、というもの。この日のために作ってきたという「ミルク」という曲や、ポリスの「見つめていたい」に自分で日本語詞を付けたカバーなどを披露。
 続いては、正式加入して以降、本日が初めての人前(10人だけど)でのライブになる岩本斗尉。タムやフロアタムを外してキックとスネアとハットとライドシンバル1枚だけにしたドラムを、ひとりで延々と叩き続ける、というパフォーマンス。計ってみたら14分強だった。
 三番手、ボーカル&ギター大武茜一郎は、神戸太陽と虎の風次店長とのコンビ、「茜と風になって」で、40分近い長尺漫才。グダグダなところも少々、いや、けっこうあったが、東京生まれなのにエセ関西弁で、自由な店長を相手に必死に台本に沿おうと奮闘する茜一郎のひたむきな姿に引き込まれました、観ていて。
 次のギターカニユウヤは、横置きにしたギターを鳴らしたり、キーボードを爪弾いたりしながらの、いわゆるノイズ・ミュージック的なライブだった。途中で「えいや」って感じでTシャツを脱いで裸になった。
 で、最後に突然少年。「火ヲ灯ス」「アンラッキーヤングメン」「ボール」等を経て「フロムアンダーグラウンド」で終わる全7曲。最高だった。前回のシェルター(9月30日)に続いて、今回も会場で生で観たせいもあるかもしれないが、観るたびにどんどんよくなる。で、自分はこういうどまんなかなロック・バンドが好きなんだなあ、と、つくづく思う。この日やった曲も多数入っているニュー・アルバム『心の中の怪物たちよ』は、10月21日(水)リリース。お勧めです。ぜひ。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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