兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第72回[2021年1月後半]編

コラム | 2021.02.16 12:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽のライブ、たまに演劇やお笑いやプロレスなども含めて、生で観たすべての興行の短いレポを書き、月2回ペースでアップしていく連載です。
 新型コロナウイルス禍以降は、「配信ライブもOK」ということにして続けていますが、そうなってから、もうすぐ1年になりますね。
 このような状況の1年間で、これだけライブを観て、こうして文字として記録して残し続けている奴、他にあんまりいないんじゃないか。後になって「コロナの時はこうだったよねえ」みたいなことがわかる、という意味で歴史的資料として価値が出るんじゃないか。
 と、今回書きながら思いましたが、そういうふうに活用するには、観ているものが偏っているのが残念なところ、という自覚もあります。今回は5本ですが、そのうち2本がフラカンだし。

1月23日(土)18:00 フラワーカンパニーズ@HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3

 2020年の秋口から、フラワーカンパニーズは『ふらっとフラカン』というツアーを行っている。「全国各地のライブハウスやイベンターさんたちと日々思いを交わしながら、ふらっと決めてふらっとライブをしにいこう、というシリーズです」(オフィシャルサイトより)という趣旨で、つまり、新型コロナウイルス禍でライブのスケジュールがいったんガタガタになった時期を経た後、行けるタイミングで、行けるところに、サッと日程を決めてフットワーク軽く行こう、という趣旨で始めたツアー、ということ。
 そのツアー、2021年の1月は、16日(土)に豊橋club KNOT、18日(月)に大阪心斎橋JANUSも、ブッキングされていたが、感染者数の増加・二度目の緊急事態宣言の発令を受けて、豊橋は4月17日(土)、大阪は19日(月)に、延期になった。
 で、その2公演の延期を発表した1月8日(金)の段階では、「開催の可能性も含めまして引き続き協議しております。改めてお知らせいたしますので、もうしばらくお待ちいただけますようお願い致します」とアナウンスされていた、このさいたま新都心の公演は、1月15日(金)に「予定通り開催させていただきます」と発表があった。
 というわけで、行きました。当然ながら、フロアにイスを出してお客さん同士のディスタンスを取り、消毒・検温・換気あり、歓声NG、等の感染予防対策を、しっかり取った上でのライブ。
 ただ、フロアに足を踏み入れると、「やっぱ人数少ないなあ」みたいな感じではなく、意外と悪くない雰囲気。ひとりひとり数を数えてみたらちゃんと少ないんだけど(なんだその言い方)、そのわりにスカスカ感がない。このハコの作りの問題なんだと思う。そう、この、イスを出して感覚を空けて座った時の感じって、ライブハウスによって全然違うのです、ほんとに。そんなことを知るような世の中になるとは、1年前は想像もしなかったが。
 こんな状況の中でもライブをやるバンドと、こんな状況の中でもライブに来るファンの邂逅の場だけあって、悪くなりようがないというか、終始とても幸せな空気感の、とてもいいライブだった。
 ただ、ちょっと新鮮だったのが、ボーカル鈴木圭介のステージ・アクション。たとえば、イントロや間奏の時、マイクスタンドを両手で持ってそこに体重をかけ、上体をほぼ90度倒した形で、リズムに合わせて両足を走るみたいにバタバタ動かす、という動き。もう30年近くライブを観ているが、こんなふうに動く圭介、初めてな気がする。というような、新鮮な動きが、他にもいくつかあった。
 と、終演後、本人に言ったら、理由を教えてくれた。飛沫防止対策で「演者はステージのこの線から前に出たらダメ」ということが厳格に決まっており、いつもの動きの多くを封じられたため、今までにない動き方をするしかなかった、とのこと。「モニターに足をかけて歌う」がNGだったのが、特にきつかった、とおっしゃっていました。

1月27日(水)19:00 マカロニえんぴつ@KT ZEPP Yokohama/Stagecrowd

 新型コロナウイルス禍で全公演中止を余儀なくされた『マカロックツアーvol.10〜わずかな希望を探し求める者たちよ篇〜』の振替公演として、マカロニえんぴつが開催した無観客生配信ライブ。チケット料金は税込2,500円、配信プラットフォームはStagecrowd、1月31日(日)23:59まで見逃し配信あり。
 観て、SPICEにライブレポを書きました。こちらです。ぜひ。
マカロニえんぴつ、結成の地・横浜から届けられたアルバム『hope』ツアー振替配信ライブを観た

1月29日(金)21:00 フラワーカンパニーズ@新代田FEVER/Streaming+

 毎年夏から秋くらいにやることが多い、恒例のアコースティック・ツアー『フォークの爆発』を、毎月新代田FEVERで行っているシリーズ・イベント『月刊フラカンFEVER』の1本として、無観客生配信ライブで開催する、というもの。なのでタイトルは『月刊フラカンFEVER 2021 vol.1〜真冬のフォークの爆発〜』。チケット代は税込2,500円で配信プラットフォームはStreaming+、2月4日(木)23:59までアーカイブ視聴可能。
 全14曲。ニューアルバム『36.2℃』からは「揺れる火」と「アッチ向いてホイ」を演奏。「アッチ向いてホイ」は、ライブでやること自体が初。他は、YouTubeの『THE FIRST TAKE』で話題になった「深夜高速」と「東京タワー」、あと「最低気温」「冬の陽」といったレアな曲も披露した。いつもより長めでダラッとしていて、それが楽しいMCもふんだんにあり。
 あと、普段の『フォークの爆発』では、メンバー3人は座って演奏し、鈴木圭介は立って歌っているのだが、この日は座って歌った。「立った方が力が入ると思ってたけど、リハーサルで座ったり立ったりしてみて、座った方が力が入らないから、むしろいい、ということに気づきました。テンションは抜かず、力は抜く」とのこと。
 「俺たち、どうしても力入っちゃうから」と圭介が言うと、グレートマエカワが「俺、血圧測る時、緊張しちゃうんだ」と続け、それに圭介が「俺、注射の時」と返して、あらぬ方向に話が転がっていく──みたいな展開でした、どのMCも。

1月31日(日)17:30 真心ブラザーズ@日本青年館/Streaming+

 東名阪ホール・ツアーのファイナルで、この日は生配信もあり。配信のチケット代は税込3,500円で、オマケ付視聴券は税込4,000円(「ツアー3公演のライブ&オフショット写真をデジタルフォトにてプレゼント!」とのこと)。Streaming+での配信で、2月6日(土)23:59までアーカイブ配信あり。
 観に行って、真心の所属レーベルが、各ウェブメディア等に配信する、オフィシャルのニュースレポを書きました。SPICEにアップされたものを貼っておきます。
 こちらです。ぜひ。
真心ブラザーズ、東名阪ツアーファイナル・日本青年館ホール公演『Cheer up!006』のオフィシャルレポートが到着

1月31日(日)17:00 奥田民生@YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)/LINE LIVE-VIEWING

 奥田民生のソロの時のバンド、MTR&Yとしては3年ぶりのツアー、全11本の初日。全公演生配信ありで、全公演セットリストを変える、という「マジか!」な内容。配信チケットは、OTなので例によっていろいろ種類があるが、いちばん安い「外野席」チケットで、3,500円。LINE LIVE-VIEWINGでの配信で、全公演1週間後まで見逃し配信あり。
 配信を観てこのDI:GA ONLINEでレポする、という仕事をいただきました。ひとつ前に書いた真心ブラザーズとバッティングしていたので、真心を生で観終わって、帰宅してから見逃し配信でOTを観て、書いたレポがこちらです。ぜひ。
奥田民生、3年ぶりのバンドツアー「MTRY TOUR 2021」がスタート!ツアー初日をレポ

  • 兵庫慎司

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