兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第82回[2021年6月後半]編

コラム | 2021.07.05 19:00

イラスト:河井克夫

 音楽ライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たライブすべて、短いレポを書いて半月に一回アップしていく連載の82回目・2021年6月後半編です。今回は全部で7本のうち、生で観たのが4本、配信が3本、フェスは3本でそのうち1本が生、2本が配信、という内訳。文中でも触れていますが、『やついフェス』を、配信のチャンネルをどんどん切り替えて観ながらレポを書いていく、というのは、ちょっと新鮮な経験でした。

6月18日(金)19:00 サンボマスター@中野サンプラザ

 『サンボマスター 真 感謝祭〜ホール&レスポンス〜』と銘打った、栃木県小山市・千葉・東京・名古屋・大阪の5本のホール・ツアーの3本目、東京・中野サンプラザ。有観客の公演で、この日は配信なしだが、ツアー・ファイナルの7月24日(土)大阪城音楽堂では、ふたつのプラットフォームで生配信も行われる。
 というわけで、これを書いている時点では、そのファイナルの大阪がまだなので、セットリストの詳細に触れるのはやめておきますが、TBS「ラヴィット!」のテーマ曲として毎朝流れている「ヒューマニティ!」などの最近の曲から、長年ライブで重要なポイントになり続けてきた初期の曲まで網羅した、大満足なメニューだった。
 で、平時だろうがコロナ禍だろうが、無観客だろうが有観客だろうが、「泣いてんじゃねえぞおお!」「死ぬんじゃねえぞおおお!」と何度も叫びながら、怒涛のごときポジティヴィティをぶちまけ続ける、そのさまが圧巻なのがサンボマスターのライブだが──僕個人の感じ方かもしれないが──この日は何か、そのポジティヴィティの前提にある、今の世の中と今の自分に対する苛立ちや悲しみや怒りが、パフォーマンスに強く表れているように感じた。で、そこがとてもよかったし、とても刺さった。

6月19日(土)11:30 『YATSUI FESTIVAL 2021』1日目@渋谷複数会場/ニコ生、YouTube、LINEなど

 昨年は無観客無料配信で行われた『やついフェス』、今年は会場数と入場数をしぼって有観客&無料生配信で開催された。2日とも、このDI:GA ONLINEにレポを書きました。1日目はこちら。≫ DI:GA ONLINE:YATSUI FESTIVAL! 2021、6/19(土)DAY1クイックレポ
 このフェス、一昨年までは(つまりコロナ禍前までは)ラウンジフロアのDJとして、毎年のように呼んでもらっていて、レポも毎年のように書いていた。今年はDJこそないものの、やっぱり現場には行きたい、でも「1日目のレポは即アップしたいのでなるべく早く」というリクエストがあったので、じゃあ初日は家で配信を観て書いて、2日目は現場に行ってメモりながら観ようかな、と思ったのだが……2日目に続く。

6月20日(日)11:30 『YATSUI FESTIVAL 2021』2日目@渋谷複数会場/ニコ生、YouTube、LINEなど

 その2日目のレポはこちら。≫ DI:GA ONLINE:YATSUI FESTIVAL! 2021、6/20(日)DAY2レポ
 で。1日目、配信を観ながら書いてみて、思い知った。これ、配信を観て書いた方がいいわ。配信だと、終演とほぼ同時にテキストを納品できるくらいのスピードで書けるし、何よりも、同じ時間にやっている別のステージをザッピングできる、だから両方について文中で触れることができる。「そりゃそうだろ」って話だけど、実際に観ながら書いてみて、その便利さを痛感したのだった。それライブレポって言っていいのか? という疑問はありますが。

6月25日(金)19:00 堀込泰行@ヒューリックホール東京

 ニュー・アルバム『FRUITFUL』のリリース・ツアー、東名阪3本のファイナル。『FRUITFUL』全曲=9曲、それ以前のソロやキリンジ時代の曲から11曲、全20曲のセットリスト。キリンジ時代にソロ・ユニット「馬の骨」名義でリリースしたファースト・アルバムから「少しでいいのさ」を、アンコールの1曲目にやってくれたのもうれしかった。
 マイクに乗せると「声からなんか出てる」ことがわかる、耳に入ってくることそれ自体が快楽に満ちている、そんなこの人の歌は、生で聴くと、よりいっそうやみつきになる。
それから、もうひとつ、やみつきになるのが、MC。天然、というと言葉が雑すぎるが、お客をこういうふうにコントールしたいとか、自分のことをこんな人だと思ってほしいとか、そういう作為が一切ない、どこに話が転がっていくのか皆目見当がつかないこの人のMC、本当におもしろいのです。他に例を見なくて。
 その横でカッカッカと笑ったり、ちょっと言葉を足したりする真城めぐみの、言わば「拾い技」の見事さによるところも大きい。堪能しました。

6月26日(土)16:00 『LOVE MUSICフェスティバル2021』1日目@ぴあアリーナMM

 フジテレビ系の音楽番組『LOVE MUSIC』のフェス、2デイズの1日目。自分の「ライブでばったり会う知人チャート」、ここ数年における不動のナンバーワンが、この番組の三浦淳プロデューサーである。どう考えてもマスコミ招待なんてかけていないような小さなライブハウスとか、地方とかも含めて、とにかくよく出くわす。俺と趣味が合うんだな、と最初は思ったが、彼は地上波のキー局の音楽番組のプロデューサーなわけで、つまり、僕と趣味が合わないライブにも大量に行っているんだと思う。つまり、僕どころではない、とんでもない数のライブを観ているということですね。とにかくそんな縁で、「観に来ます?」「あ、行きます行きます」というわけで、1日目に足を運んだ。
 出演はSaucy Dog、緑黄色社会、Creepy Nuts、マカロニえんぴつ、という、もう「旬!」と言いたくなる4アクト。当然、お客さんも若く、しかもこういうご時世でも来ているだけあって、みんな真剣で、どのアクトも一所懸命観ていて、その空気感が、とてもよかった。『スペースシャワー列伝』に行くと、お客さんの貪欲さと真剣さに圧倒されることがよくあるが、あれをメジャーにして規模をでかくした感じ、とでも言いましょうか。
 で、どのバンドも、会場の大きさを感じさせないパフォーマンスだった。マカロニえんぴつやCreepy Nutsは、コロナ禍前からフェスとか出まくりだったので、今がそうであるのもわかるが、3人編成で基本的に立ち位置から動けないSaucy Dogも、堂々とした佇まいだったし。あ、でも、「こんなに大きいところでやるの、初めてじゃない?」みたいなことをMCで言い合っていた。日本武道館でやったバンドでもそう感じるのか、じゃあ武道館よりでかいのか、やっぱり。帰ってから調べたら、そうでした。本来のキャパは、武道館よりちょっと多いくらい。

6月26日(土)20:00 電気グルーヴ@Zepp Haneda/ローチケLIVE STREAMING、LINE LIVE-VIEWING

 Zepp Hanedaでの無観客配信ライブ。タイトルは『ON THE STAGE
〜恐怖!!町のブタイ〜』。前回の配信ライブが『FROM THE FLOOR〜前略、床の上より〜』というタイトルで、リキッドルームのフロア部分を使ってのパフォーマンスだったが、今回はステージを使う、という意味合いで『ON THE STAGE』と付けたのだと思う。
 あと、説明するのも野暮だが、『恐怖!!町のブタイ』というのは、日野日出志のマンガ『悪魔が町にやって来る 恐怖!!ブタの町』が元ネタ。日野先生公認のイラスト入りのタオルとTシャツが、この配信ライブに合わせて発売されました。
 配信プラットフォームは、ローチケLIVE STREAMINGと、LINE LIVE-VIEWINGのふたつ。視聴チケットは4,800円。ローチケの方は、DGCC(電気グルーヴカスタマーズクラブ)の会員なら、4,300円でチケットを買えるというサービスあり。アーカイブ配信は6月29日(火)23:59まで。
 で。「ON THE STAGE」といっても、Zepp Hanedaのステージをそのまま使うのではなく、新たに丸いステージを作って、そこにメンバーふたりとサポートのふたりの4人が向かい合って立つフォーメーション。つまり、カメラは4人の背後、360度からステージを映す。そして、丸い床が画面になっていて、曲に合わせて効果映像が映し出されるさまを、天井からのカメラが追う。さらに、メンバーの背後に縦型のビジョンが何枚もあって、そっちからも映像が──という演出だった。
 始まった時刻が、『LOVE MUSICフェスティバル』からの帰り道だったので、スマホ&イヤフォンで観始めたんだけど、あまりにも最高すぎて、電車を下りて駅のホームで観続けて、終わって、家まで帰ってすぐリピート、腰を据えてもう一度じっくり観た。フジロックの大トリが、さらに楽しみになった。
 ただし、フジロックがあるからその前に一回やっとこう、という内容ではなかった。フジではもっとわかりやすい、往年の人気曲もいっぱい入れたセットリストになると思うので。私は「今の電気がいちばんかっこいい」と思っているので、今回のような、最近の曲多めの方がうれしいです。
 セトリ書いておきます。
 1 電気グルーヴ10周年の歌2019/2 MAN HUMAN/3 顔変わっちゃってる。/4 The Big Shirts/5 モノノケダンス/6 SHAME/7 B.B.E./8 SHAMEFUL/9 ガリガリ君/10 Missing Beatz/11 Upside Down/12 Fallin’ Down/13 柿の木坂/14 猫夏/15 Set you Free/16 FLASHBACK DISCO/17 UFOholic

6月27日(土)17:30 川畑 要@KT Zepp Yokohama

 2020年10月に自身のマネージメントを興し、ソロ活動の軸足をそちらへ移してから初となる、有観客でのツアー、横浜・大阪・名古屋・東京の4本の初日。めちゃめちゃ力の入ったライブでした。このDI:GA ONLINEにレポを書いて入稿済みなので、アップされたらリンク貼ります。
(公開されました。こちら)

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

最新記事

もっと見る