兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第85回[2021年8月前半]編

コラム | 2021.08.27 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たライブのレポを書き、月二回ペースでアップする連載の85回目、2021年8月前半編です。今回は全部で5本、4本を生で、1本を配信で観ました。
 しかし、毎回毎回おんなじバンドばっかり観てるな、おまえ。と、自分で言いたくなるほどフラワーカンパニーズと初恋(突然少年)だらけですね、この連載。今回に関しては、本来ならROCK IN JAPAN FES.2021があった時期なので、全体的にライブが少なかったのと、でもその2バンドは、いつでもとにかくマメに、ライブをやっているせいだと思います。

8月3日(火) 17:45 フラワーカンパニーズ×THE NEATBEATS@新代田FEVER/Streaming+

 フラワーカンパニーズが月イチで新代田FEVERで行っている『月刊フラカンFEVER』の8月編は、大阪と東京で行ったTHE NEATBEATSとの対バンイベント『ハイエース兄弟、2台で100万km』の東京編。この日、この2バンドのスプリット・シングル『ROCK TOWN BABY/ザッツオーライ』も、CDと7インチアナログでリリースになった。生配信も行われた。Streaming+でチケット代税込2,500円、8月9日(月)23:59までアーカイブ配信あり。
 この日、僕は、夕方まで別のインタビューの仕事が入っていて、終わってダッシュでFEVERへ向かったが、THE NEATBEATSはラストの1曲、「裏地は赤のチェックだ」でおなじみの「黒いジャンパー」しか観れなかった。ステージ、THE NEATBEATSが終わったら転換しなくていいように、2バンド分のアンプ等の機材が並んでいる。
 で、フラカンの、いつもながら安定しつつもはっちゃけたライブのあと、2バンド全員でセッション。前述のスプリット・シングルの2曲、「ザッツオーライ」と「ROCK TOWN BABY」を、賑やかに、華やかに、そしてシャープに聴かせてくれた。
 あと、この2バンドが揃うと、THE NEATBEATS真鍋崇(Gt/Vo)の「いじり芸」を中心としたMCで、腹痛くなるほど笑うことになるのが常だが、この日もやはりそうでした。思わず笑い声をあげそうになって「あっ」って感じで必死にがまんしているお客さんたちが、ちょっと気の毒ですらあった。

8月7日(土)12:30 百々和宏with有江嘉典、初恋(突然少年) DJ:フミヤマウチ、MC&DJ:クラヤマナオキ@下北沢BASEMENT BAR

 下北沢の老舗イベント、『VIVA YOUNG』が、今年は『真夏の真昼のVIVA YOUNG』と題して、土曜の昼に3週連続で、BASEMENT BARにて開催、その第一回目。最初に初恋(突然少年)、次に百々和宏with有江嘉典、開演前と転換中のDJはフミヤマウチ、スタート時&終了時のMCと終演後のDJは、このイベントの主催者のクラヤマナオキ。
 4月末に、コロナ禍期間限定で突然少年から名前を変え、ドラマーがピエール畳になって3ヵ月が経つ初恋、月にいっぺんくらいの割合で観に行っているんだけど(ライブはもっとやっている)、そのたびによくなっている。この日も大武茜一郎がギターの弦を2本切りながら大熱唱、すごいテンション。新曲「上向きでいこう」もど直球でいい。
 で、百々和宏with有江嘉典は、ふたり座ってギター&ベースで弾き語り(アコースティックではないけど)。各曲の端正で凛々しい響きと、どんどん時間が長くなって、その分何度も爆笑を巻き起こすMCのギャップが素敵。お客さん、笑い声を出せないので気の毒だった、この日も。
 特に、百々が昨日、二回目のワクチン接種をした、という話。音楽業界の職域接種だったそうで、自分の前に並んでいたのがPOLYSICSのハヤシヒロユキだったこと、ウエノコウジに「二回目のワクチンの次の日にライブできるわけないだろ、代わりに俺が出てやる」と言われたことなどを話してから、今日になって何度も体温を測っているが、ずっと36.6℃のままである、と報告する百々。OS-1の6本パックを買って昨日から飲みまくっているのが、功を奏しているんだと思う、とのこと。
 ほんまかいな。と思いつつ、3日後が二度目のワクチンだったので、それを真似してみた。接種の翌日、扁桃腺の腫れや身体の節々の痛みなど、風邪と同じ症状が出たが、熱は37.7℃までしか上がらず、次の朝起きたら、なんともなくなっていた。私の周囲の二回目のワクチンを打った人たちと比べると、極めて軽い症状ですんだ、ということです。恐るべし百々(何が)。
 それからフミヤマウチ、和モノDJとして昔から有名な人だけど、プレイをちゃんと聴いたの、この日が初めてだったかも。とてもよかった、自分の好みの曲の連発で。

8月12日(木)18:00 molly@下北沢シェルター

 名古屋の4人組ニューカマー、この日は3バンド出演の『Vortex』というイベントの二番目で出演。「いいバンドがいる」と知人に誘われて、初めて観た。確かにいいバンドだった。オーソドックスなギター・バンドのサウンド・フォーマットで、メロディがきれい。演奏面なんかの細かい面では「俺がディレクターだったら、『ここ、直そう』って言うなあ」みたいなところもあったが、それも「だからダメ」ではなく「のびしろありまくり、もっともっとよくなる」というふうに感じた。
 YouTubeに「走れ!」という曲のMVがアップされています。

molly -走れ!【Official Music Video】

8月14日(土)18:00 OHIO101、フラワーカンパニーズ、兄弟船@下北沢シャングリラ

 この日は、OHIO101のボーカル&ギターの鈴木純也の50歳の誕生日、ということでその記念イベント。鈴木純也はフラワーカンパニーズ鈴木圭介の弟、ということで対バンはフラワーカンパニーズ。ツイキャスで生配信あり、チケットは2,500円で、8月28日(土)23:59まで視聴可能。
 あ、兄弟船というのは、圭介と純也ふたりの兄弟ユニットです。昔は藤井フミヤ&尚之兄弟のユニット、F-BLOODに倣ってS-BLOODと名乗っていたが、今はF-BLOOD自体が活動していないので元ネタを知らない人、多いだろう、という判断で名前を変えた。と、MCで説明しておられました。
 ライブは最初にフラカン(後半で2曲純也がゲスト参加)、次にOHIO101、兄弟船の2曲をはさんで最後に全員でフラカンの「サヨナラBaby」、という構成。
 なお、OHIO101、鈴木純也以外のメンバーは何度も替わっているんだけど、3年くらい前から、ベースは調先人、ドラムはクハラカズユキ、という「なんだその豪華さは」と言いたくなるメンツになっている。この日も、曲の6割くらいが3拍子もしくはシャッフル(ってかなりめずらしいと思う)の、サイケでブルージーな音を食らわしてくれた。
 あと、フラカンのライブの時、ちょっとおもしろかったこと、ふたつ書いておきます。
 ひとつめは、グレートマエカワがMCで明かした、フラカンのデビューの頃の話。純也のギター、若い頃から周囲の評価が高くて、デビュー直前のフラカンのライブで、ゲストで弾いたのを観たフラカンのディレクターが、「圭介の弟、いいな。このまま5人でやらないか?」と言い出したそうだ。グレート「あのまま5人でデビューしたら、今頃どうなってたんかな?」、「たぶんオアシスみたいになってたんじゃない?」と圭介。
 で、ふたつめは、後半の、恒例「メンバー紹介しながらひとりずつMCのコーナー」でのこと。ドラムのミスター小西が、中3の時に軟式テニス部のキャプテンをしていた、そこに入って来た1年生が純也だった、という話をしてから、感慨深そうに「あれから17年経って、こうして一緒にライブができるなんて……」。
 え? は? 17年? と思ったが、メンバー誰もつっこまないので、そのまま話が進んでいき、お客さんたちがザワザワし始める。で、しばらく経ってからグレートマエカワが「おいおまえ、さっきの17年ってなんだ!?」と指摘して、無事、笑いになった。
 終演後、楽屋で小西にきいたところ、「緊張して37年って言うところを17年と言ってしまった」とのこと。で、グレートはその言葉がよくきこえず、自分の聞き間違いだと思ってスルーしたが、お客さんのリアクションで気がついて、ツッコミを入れたという。
 「お客さんザワザワしてたもんね」「そう、あれでわかったんだよ」という会話のあと、ふたりともしばし「……」となり、「わかるもんだね、ザワザワ!」「そう! 不思議だね」と言い合った。
 お客さんみんな声を出せないし、マスクしているから表情も見えないのに、ステージの上のグレートも、フロアの最後方にいた僕も、お客さんのザワザワがわかったのだ、観ていて。おもしろいもんだなあ、と、思いました。

8月14日(土)18:00 在日ファンク@渋谷WWW X/ZAIKO

 『今から本気』と題された、在日ファンクの復活ライブ。本編で本人もMCで言っていたが、「復活」というのは、コロナ禍で活動を阻まれた時期を経ての「復活」というよりも、2020年の8月にボーカル浜野謙太が、椎骨動脈剥離という病気で2週間入院したブランクからの「復活」という意味合いの方が大きいそうです。
 ZAIKOで生配信もされた。KAKUBARHYTHM Ticketsで販売されたチケットは1,500円で、8月22日(日)までアーカイブ配信あり。そのチケットを買って、前述の下北沢シャングリラから帰って、観ました。
 2019年11月以来のライブだけあって、ハマケン気合い入りまくり、アクションも以前以上にキレキレ。他のメンバーも、ギターの仰木亮彦がしばらく観ない間になんか男前になっていたり、トロンボーンのジェントル久保田の最大の武器である「気持ち悪さ」に磨きがかかっていたりして、そして全員の音がとてもタイトに引き締まっていたりもして、休んでいた間も止まっていたわけではないことが、見て取れた。
 コロナ禍以降に作った新曲などもやってくれたが、歴代の曲もどれもよくて、特に「はやりやまい」がタイムリーすぎて「うわっ」となった。だからやったんだろうけど。2011年のアルバム『爆弾こわい』収録の曲なんだけど、「いつもの世界と何かが違う そうさ、ノロウイルスにかかったからさ」という一行をコロナに変えたらそのまんま今の世の中。ノロウイルスの頃以上に、今の方が刺さった、ひとことひとことが。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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