兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第91回[2021年11月前半・KALMA、マカロニえんぴつ、syrup16g、『パ・ラパパンパン』二回、フラカンとピーズ、OUTRAGEなどを観ました]編

コラム | 2021.12.02 15:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽、時々演劇やお笑いなどの、生もしくは配信で観た興行すべての短いレポを書いて、半月に一回アップしていく連載の91回目、2021年11月前半編です。今回は音楽のライブ7本、演劇2本(同じ舞台を二回)の9本を、生で観て書きました。そうか、コロナ禍前の平均値より多かったのか、今回は。それだけ生の興行が増えているのか。どうか世の中がこのまま進んでいきますように、と願うばかりですが、これを書いている日に、国内で初めて「オミクロン株」の感染者が確認されました。ううー。

11月1日(月)18:00 KALMA@リキッドルーム

 1stフルアルバム『ミレニアム・ヒーロー』をリリースした2日後、10月22日(金)大阪なんばHatchで始まり、12月26日(日)札幌道新ホールで終わる6本のツアーの4本目、リキッドルーム2デイズの1日目。破竹の勢いのバンドなのに本数が少ないのは、コロナ禍がどうなるかわからない時期にブッキングしたからではないか、と推測します。その分、ハコは、これまでより大きなところを押さえているが、余裕でソールドアウト。声を出したり暴れたりできないにもかかわらず、フロアの熱も極めて高い。
 『ミレニアム・ヒーロー』を聴いた時も思ったが、畑山悠月のメロディメーカーとしての才能、いわゆる「3ピースのロックバンド」のファン層に留まるもんじゃないな、これからもっともっとでかくなっていくんだろうな、と、このライブを観て改めて思った。
 それから、これは、アルバムを聴いた時も、前にライブを観た時も気がついていなかったが、ベース斉藤陸斗&ドラム金田竜也のリズム隊、とてもいい。オーソドックスなプレイスタイルで、変わったことは特にしないんだけど、ノリが畑山悠月の歌にとても合っている。

11月2日(火)19:00 マカロニえんぴつ@Zepp Tokyo/WOWOW

 ツアー・ファイナルのZepp Tokyo2デイズの2日目で、WOWOWの生中継が入っていた。SPICEにライブレポを書きましたので、ぜひ。
SPICE:マカロニえんぴつの在り方と魅力が浮き彫りとなったツアーファイナル・Zepp Tokyo

11月3日(水・祝)18:00 『パ・ラパパンパン』@Bunkamuraシアターコクーン

 2016年のNHK『木曜時代劇』の『ちかえもん』で、主演と脚本家だった松尾スズキと藤本有紀が、演出と脚本で手を組んだ舞台の初日。『クリスマス・キャロル』をモチーフにしたミステリーで、歌もダンスもふんだんにあって、松たか子神木隆之介大東俊介早見あかり皆川猿時などの俳優陣も豪華。セットも衣装も豪華。
 で、とにかく、おもしろかった! 確かに松尾スズキと藤本有紀が組まなければできないものだし、わかりやすいし、めちゃくちゃ笑えるし、その上きっちりミステリ仕立てで、前半の謎を後半できれいに回収していくし。13日(土)にもチケットを取っていた自分を褒めたくなった。

11月4日(木) 19:00 syrup16g@東京ガーデンシアター

 本邦初公開の新曲を10曲やります、ということが前もって発表されていたライブ。だが、10曲ではなかった。12曲だった。MCで、五十嵐隆曰く「10曲って言われると12曲作りたくなるんです」とのこと。ドラムの中畑大樹によると、五十嵐がそういうライブにする、と言い出したそうですが。
 で、本編は、その誰も知らない12曲を続けてやって、終了。そして、一回目のアンコールで「希望」「神のカルマ」「Sonic Disorder」、二回目のアンコールで「水色の風」「ソドシラソ」「天才」「真空」、三回目のアンコールで「落堕」の、計8曲の既存曲をやった。「水色の風」は、ややめずらしい気がするが、それ以外は、わりとライブの定番曲ですね。「希望」もちょっとめずらしいか。
 しかし、こんなライブ、やる? 小さめのライブハウスとかならわかるけど、東京ガーデンシアターという8,000人キャパの大会場で(一席飛ばしだけど)。かなり衝撃的だった。
 ただ、その新しい12曲、耳に引っかかるメロディや歌詞やアレンジが、あちこちにあった。これをそのまま録ればニューアルバム完成だけど、果たしてそうしてくれるのか、どうか。続報を待つ。

11月7日(日)18:30 初恋(突然少年)@下北沢LIVE HAUS

 下北沢LIVE HAUSで行われた、2デイズイベントの両日に初恋(突然少年)が出演、その2日目がこれ。Tomato Ketchup Boys、石指拓朗が出て、初恋(突然少年)がトリ。
 半年くらいこのバンドのライブを観ていなかったのと、11月18日(木)の新宿ロフトの崎山蒼志との対バン(いい組み合わせ!)が、自分が行けないスケジュールなのもあって、この日、足を運んだ。
 そしたら、前とちょっと感じが変わっていた。「火ヲ灯ス」なんかの鉄板曲もやったが、知らない曲も増えていた。スピード感命じゃなく、ヘヴィで重い感触の曲が多い。新曲なのか、昔作ったけど音源にしていなかった曲なのかわからないが、新基軸を観れた気がした。ボーカル&ギターの大武茜一郎、以前よりも、妙に迫力が出てきた気がする。

11月9日(火)19:00 うつみようこ&YOKOLOCO BAND@下北沢FLOWERS LOFT

 「たまに集まる愉快な五人組、音楽同好会ヨコロコ、気がつけば20年やってます」というタイトルの、20周年ライブ。そうか、もうそんなに経つか。うつみようこ、奥野真哉、クハラカズユキ、グレートマエカワ、竹安堅一、いずれも本業が他にある人たちなので、普段はそんなに頻繁に集まれるわけではない。が、何か、コロナ禍になってから、生も配信も含めて、自分がこの人たちのライブを観れる頻度、上がっているような気がする。
 この日はワンマンということで、ロックンロールのような、ブルースのような、ハードロックのような、パンクのような、オリジナルもカバーもいろいろあるこの人たちのステージを、存分に味わえた。オーソドックスでかっこいい。すごく基本的で、すごく大事なことをやっている。そういう感じ。
 余談。FLOWERS LOFTにはバーのスペースがあって、開演前や終演後に、DJが回していたりする。この日は片平実のイベント『GETTING BETTER』チームがDJをしていたのだが、ライブが終わったあとのDJ、フラワーカンパニーズの曲をかけてるなあ、と思ったら、知り合いだった。カメラマンの中野敬久さん。フラカンのアルバム『Stayin’ Alive』のジャケット写真を撮った人です。

11月11日(木)19:00 フラワーカンパニーズ、ピーズ@新代田FEVER/Streaming+

 で、ヨコロコの次に観たのはフラカン、『月刊フラカンFEVER』の11月編、対バンは(前回も書きましたが)新体制で新しいミニアルバム『2021』をリリースしたばかりのピーズ。昔は何度も一緒にツアーを回ったり、そのさまをDVDでリリースしたりした関係だが、共にステージに立つのは久々、アビさんに至っては「会うの、ピーズの日本武道館以来だから4年ぶり(グレート)」だったそうで、どちらのバンドも本当にうれしそうで、楽しそうで、それが観ているこっちにも伝播して来る、幸せな時間だった。
 先にピーズがやって、次にフラカンがやって、アンコールではフラカンのステージにピーズが全員参加して「はぐれ者讃歌」。アビさんはギターを弾きまくり、はるは踊り、ベースのみったんとドラムの茂木左は、そんなステージをスマホで撮ったり、踊ったり、飲んだりしておられました。

11月13日(土)13:00 『パ・ラパパンパン』@Bunkamuraシアターコクーン

 というわけで、二回目の観劇。全体の流れは一回目で把握したので、今度は、ギャグのひとつひとつや、ちょっとした瞬間のそれぞれの登場人物の表情及び動きや、数々の伏線→回収などの細部を、舐めるように楽しんだ。最高だった、やっぱり。
 この松尾スズキ&藤本有紀のタッグ、それぞれビッグネームだし、忙しくないわけがないので、そうそう実現するものではないであろうことはわかっているが(現に、出会いの作品であるNHKのドラマ『ちかえもん』からこの公演まで、6年弱かかっている)、できればもう一回観たい、自分が生きているうちに。

11月13日(土)18:00 OUTRAGE@渋谷クラブクアトロ

 その二回目の『パ・ラパパンパン』を観た日の夜は、これ。名古屋で結成して39年、初音源リリースから34年、ボーカルの橋本直樹の脱退とかいろいろあったが、デビュー時の4人に戻ってから14年、日本のメタルの至宝、OUTRAGEの東名阪ツアーの2本目、東京編。
 1991年10月25日、つまり30年前にリリースしたアルバム『The Final Day』を、当時のプロデューサーであるステファン・カウフマン(元ACCEPT)が全曲リミックスしたCD、名古屋の交響楽団が同作をフルオーケストラでレコーディングしたCD、2008年に行った同作の完全再現ライブのDVD、以上の3枚が入った『Re:prise~The Final Day 30th Anniversary~』を、10月27日にリリースしてのツアーである。
 本編13曲、アンコールで2曲、ダブルアンコールで3曲の計18曲。『The Final Day』からは、全9曲のうち「Wings」以外の8曲をプレイしてくれた。
 「うっわあ、いかつい音!」「だあー、すげえ声!」と、ただただ圧倒されて、脳内が真っ白になっているうちに、ライブが終わる。という楽しみ方をさせてくれる、自分にとっての数少ない存在がこのバンドである。今回もまさにそうだった。
 で。OUTRAGEのデビュー35周年を記念した映画『鋼音色の空の彼方へ』という映画が、2022年の5月に公開される(※映画のオフィシャルサイトは、これを書いている時点でも「夏公開」となっているが、公式ツイートの方は途中から「5月公開予定」に変わった)。
 ということは、今年の5月に発表されているのだが、オフィシャルサイトを見ても、詳しいことはわからない。
が、この日のアンコール後に、トレイラー映像が上映されたのだ。それによると、若き日のOUTRAGEをモデルにした映画を作る、ということで、俳優たちが集められるところから始まるらしい。つまり、ドキュメンタリーでも、伝記映画でもなくて、ええと、「伝記映画を作る物語、というフィクション」みたいなこと?
 とても謎だ。で、おもしろそうだ。原案は「メタル・ゴッド」伊藤政則先生だという(OUTRAGEがメジャー・デビューした当時の所属事務所社長でもある)。早く詳しいことが知りたい。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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