兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第98回[2022年2月はライブが多いので3回に分けて書きます、の中盤・宮本浩次×2、エレ片、マカロニえんぴつ、新日本プロレスを観ました]編

コラム | 2022.02.25 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽ライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観た、主に音楽・時々演劇とかお笑いとかプロレスとかの、すべてのライブのレポを書いていく連載の98回目です。いつもは月二回のペースでアップしていますが、2022年2月はやたらと本数が多いので、月三回に分けました。その二回目=2月13日(日)から2月17日(木)までの5本です。音楽が3本でそれ以外が2本、生が4本で配信が1本、に、なりました。

2月13日(日)18:00 宮本浩次@東京国際フォーラム ホールA

 全都道府県ツアー『宮本浩次TOUR 2021-2022 日本全国縦横無尽』の21本目。当初は、翌日の2月14日(月)の東京国際フォーラム ホールAが発表されていて、あとで追加公演として、前日であるこの日=2月13日(日)にも行うことが、アナウンスされた。
 というわけで、ツアーはまだまだ続くので、もちろんネタバレは書かないが、ひとつだけ。
 ある曲の途中で宮本が、歌いながら、口のまわりを四角く囲うジェスチャーをして、マスクを外していたお客さんに「マスクをしてください」ということを伝えていた。そして、アンコールで出て来た時に、「窮屈な思いをさせて申し訳ない」みたいなことを言っていた。
 その注意したお客さんに対する、フォローだったのだと思う。細やかだなあ、気配り。と、本人も感じたのか、そのあとに「俺が謝ることじゃないけど」と付け足していた。そのとおりです。
 しかし、いつもライブでオーディエンスに「いい顔してるぜ! よく見えないけど」もしくは「全然見えないけど」と言っている割に、ちゃんと見えてるんだなあ、とも思います、こういう光景に出くわす度に。

2月13日(日)18:30 エレ片@博品館劇場/Streaming+

 その宮本浩次の東京国際フォーラム ホールAの1日目と同じ日に千秋楽を迎えた、『エレ片 コントライブ 「燃えろコントの人」』、昼夜二公演の二公演目を、後で配信で観た。
 「キャンプに来て気がついたら自分(片桐仁)以外のふたりが死んでいた」というシチュエーションで始まる、妙に哲学的な1本目のコント。『自己肯定感アップ教室』の生徒(片桐仁・今立進)と講師(やついいちろう)による、2本目のコント。4本目は「衝撃波を出す師匠(やつい)とそれに出くわした子供ふたり(片桐・今立)」のコント。5本目は『プロゴルファー猿』を元ネタにした『プロボウラー蛇』というコント。
 それらのコントの合間を、昨年の『やついフェス』で行ったエレ片劇団の公演の模様と、エレ片のラジオで企画し実行した『片桐仁キングオブコント決勝への道』を追ったドキュメンタリーの映像で、つないでいく構成。
 で。特に、3本目のコントにやられた。というか、死ぬほど笑った。片桐仁が扮する「かたかた」のコンサートを、熱狂的なファン(やつい)とよくわからずに連れて来られた友達(今立)が観る、という内容。こういうふうに、その時流行っているものを題材にするのは、エレ片の(というかやついの)得意技だけど、過去のそういうコントの中でも出色の出来だったのでは、と思う。
 何度もリピートして観た上に、サブスクで探して元ネタの曲を聴いて、その上でまたコントを観て、また大笑いした。それくらいハマった。
 なお、「片桐仁は腹筋が一回もできない」というのは、エレ片ファンには周知の事実で、これまで至るところでネタにされてきたけど、このコントにも、また織り込まれていた。そこにも笑った。

2月14日(月)18:00 宮本浩次@東京国際フォーラム ホールA

 前日に続き、東京国際フォーラム ホールA、全都道府県ツアー『宮本浩次TOUR 2021-2022 日本全国縦横無尽』の22本目。
 そういえば、こうして2日続けてライブをやる日程、このツアーでは二回目である。基本的には、ここまで、たとえば10月24日(日)に高松で26日(火)に神戸、2月4日(金)に宇都宮で6日(日)に新潟、というふうに、1日空けでスケジュールが組んであった。週末に2日続けてやって東京へ戻る、というツアーの切り方が中心だった、2017年のエレファントカシマシの全都道府県ツアーと、異なるポイントです。
 ……と、ここまで書いたところで、これ以降の日程を見直してみたら、2月18日(金)は和歌山で19日(土)は奈良、26日(土)は宮崎で27日(日)は大分、3月12日(土)は長崎で13日(日)は佐賀……と、このあとはけっこう2日連続ライブ、続くんですね。ノドのコンディションを保つために、1日空けにしているのかと思っていた。失礼しました、撤回します。
 というのは、この日のステージを観ても、思い知った。おそろしく声が出ていたのだ、どの曲においても。そういえば、前述のエレカシ全都道府県ツアーの時も、「うわ、二連チャンの2日目だから声きつそうだなあ」とか感じたこと、一回もなかったことを、思い出した。
 あともうひとつ。このツアー、アンコールで宮本と小林武史が、その地方のことについてちょっとしゃべるコーナーがあるのだが、この前日、東京の場合はどうするんだろう、と思いながら観ていたら、やはり、「……東京だと言うこと、ないね」「そうですね」と困っていた。で、その末に宮本、「ここは東京駅と有楽町駅、どっちが近いんですかね?」。
 そして、この2日目では、アンコールで出て来ると、「じゃあいっちゃいますか?」「いきましょう!」と、MCを省略してすぐ曲に入った。気持ちがよくわかりました。

2月15日(火)18:30 マカロニえんぴつ@日本武道館

 大ヒット中のニューアルバム『ハッピーエンドへの期待は』のリリース・ツアーの初日、日本武道館2デイズの1日目。なので、ネタバレは自粛するが、これほんとに初日? 最終日みたいじゃん! と言いたくなるほどの、歌・演奏・各演出等の仕上がりっぷりに、まずびっくりした。
 チケットはソールドアウトしていても、感染状況によっては空席が目立ったりすることがあるのが、コロナ禍以降のコンサートだが、この日は(おそらく翌日も)2階のてっぺんまでびっちり満員。みんなマナーを守っていて、声を上げたりはしないけど、個々の気持ちがその場の気温を上げている、そんなふうに感じるほどの、オーディエンスの熱の高さにも、やられた。
 で。もともと演奏も歌もうまいし、パフォーマーとしてもタフなバンドなので、初日から完成したライブをやることは、意外でないといえば意外ではない。が、個人的に最もうれしかったのは、全体に、はしばしに、「ユニコーンイズム」を感じるステージだったことだ。
 そもそも「はっとり」という名前からしてユニコーンの『服部』からとっているほどユニコーンを敬愛している、というのはよく知られているが、音楽性が近いとか(別に近くない)、歌詞が似ているとか(全然似てない)、そういう話ではなく、バンドとしてのポリシー、運営のしかた、プライドの持ち方、思想そのもの、などの面で、ユニコーンイズムを感じるステージだった、ということだ。
 たとえば、効果映像のセンスとか。たとえば、演出面で、ばかばかしいことであればあるほど、真剣に、手間をかけて、クオリティ高くやらねば気がすまないところとか。あんまり書くとネタバレになるので、このへんでやめておくが、とにかく、そんなようなことを感じたのも、うれしいライブだった。

2月17日(木)18:30 新日本プロレス@後楽園ホール

 2月19日(土)・20日(日)北海道立総合体育センター 北海きたえーる2デイズでファイナルを迎える『LECクリンぱっ! Presents 新春黄金シリーズ』の途中、東京・後楽園ホール3デイズの3日目。コロナ禍前は、年に一〜二回は後楽園ホールに行っていたが(ドームとかの大会場よりも後楽園で観るのが好きなのです)、コロナ禍以降行ってないのが気になっていたので、足を運んだ。
 以前なら、後楽園ホールのキャパなら、何日やろうが余裕で満員だったが、この日は6〜7分ぐらいの入り。改めてコロナ禍の深刻さを実感する(その分、月額999円で見放題の配信サイト『新日本プロレスワールド』の会員数が増えていたりするんだろうけど)。
 全部で7試合。5試合目はYOH・石井智宏 VS SHO・高橋裕二郎の試合だったが、途中で照明が落とされ、その間に第6試合に出るはずだったBULLET CLUBのディック東郷とEVILが乱入してSHOと高橋裕二郎に加勢し、反則負け。
 急遽そのまま第6試合は第5試合のメンバーと第6試合のメンバーが合体し、CHAOS(YOH・石井智宏・YOSHI-HASHI・後藤洋央紀) VS BULLET CLUB(ディック東郷・SHO・高橋裕二郎・EVIL)の8人タッグ戦になった。
 最終的にはYOSHI-HASHIがディック東郷をバタフライロックで仕留め、ギブアップをとってCHAOSが勝利。
 で、最後の第7試合は、小島聡・真壁刀義・棚橋弘至・オカダ・カズチカ組 VS ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン=高橋ヒロム・鷹木信悟・SANADA・内藤哲也組の、時間無制限イリミネーションマッチ。
 フォールかギブアップかリングから落とされるかで退場、最後のひとりまで残っていた方が勝ち、というルールだが、真壁・棚橋・オカダの順にリングアウト、小島聡ひとり対ロス・インゴ4人、という図式になってしまう。それでも必死で闘う小島だが、最後は内藤哲也にディスティーノを食らって敗北──という結末になった。
 って、こんなに長く書いてどうする。いや、その2試合(3試合?)が、特におもしろかったもので。あと、大好きなエル・デスペラード(第91代=現在のIWJPジュニアヘビー王者)を観れた、第3試合もうれしかった。
 2022年の2月中盤は、以上5本でした。次回、2月19日(土)LINE CUBE SHIBUYAの清水ミチコで始まる、2022年2月後半編に続く。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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