兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第99回[2022年2月はライブが多いので3回に分けて書きます、の3回目・清水ミチコ、Analogfish、フラワーカンパニーズ、真心ブラザーズを観ました]編

コラム | 2022.03.22 18:00

イラスト:河井克夫

 音楽ライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たすべてのライブの短いレポを書いて、月二回ペースでアップしていく連載、なのですが、2022年2月は本数が多いので、3回に分けました、の3回目。今回は4本で、すべて生でした。
 なお、基本的に関係者招待で入れてもらっていますが、音楽以外のジャンルのものや、音楽でも仕事上の接点がない場合などで、普通にチケットを買って観ている公演も、時々あります。今回は2月19日(木)がそれです。

2月19日(木)16:30 清水ミチコ@LINE CUBE SHIBUYA

 正月に日本武道館でワンマンをやるのが毎年恒例になっていて、今年は1月2日に『清水ミチコ大感謝祭in武道館〜作曲法SPECIAL』として開催されたが、今年はその後、2月〜4月に、同じ『大感謝祭〜作曲法SPECIAL』というタイトルで、9本のホール・ツアーを回る、というスケジュール(2/26の青森は中止になってしまったが)。で、その3本目がこのLINE CUBE SHIBUYA。武道館に行けなかったので、ありがたい限りです。
 ご本人のほか、第二部に、ファンにはおなじみの弟さん=清水イチロウ(ピアノやギター等)が登場。あと、これもおなじみ、松尾スズキと清水ミチコによる幕間映像もあり、今年も爆笑(過去のものが清水ミチコの公式YouTubeにアップされているので、まだの方はぜひ)。
 で、『作曲法』というのは、このアーティストの曲には、どれもこういう特徴があります、こういうふうにできていますよ、という解析というか指摘というか、とにかくそういうことを、いかにもその人っぽいオリジナルのメロディに載せて歌う、という芸。数年前にARABAKI ROCK FEST.で、「サカナクション作曲法」や「スピッツ作曲法」を観て、血を吐くほど笑った記憶がある。今回は誰の何をやったかは、まだツアーが終わってないので書かずにおきますが、今回もめちゃくちゃ笑いました。つくづく偉大だと思う、この方。

2月20日(日)17:30 Analogfish@代官山SPACE ODD

 ニューアルバム『SNS』のリリース・ツアーの東京公演。会場の代官山SPACE ODDは、昔AIRというクラブで、よく夜中に遊びに行っていたり、一回だけDJをやったこともあったりして、足を踏み入れただけでしみじみしてしまうが、そんな個人的な事情はいいですね、別に。
 感染防止対策のため、入場者数を絞っているとはいえ、チケットはソールドアウト。天井が高くて音がいい、ステージが近くて観やすい、などなどの条件もいい、バンドの息の合い方やボーカルふたり(佐々木健太郎と下岡晃)のコンディションもいい、というわけでもう良くなくなりようがないライブだった。
 『SNS』の曲にも顕著だが、いつの曲もその時代ならではの表現になっているにもかかわらず、大昔に作られた曲も、今聴いても一切古くなっていない、むしろ今の時代のことのように響くのが不思議。

2月22日(火)19:00 フラワーカンパニーズ@名古屋ハックフィン/Streaming+

 このひとつ前に観たフラカンのライブ(2月4日金曜日/下北沢CLUB Que)の時、2022年2月22日(火)の名古屋でのライブは、ばかばかしくておもしろいことをやる、生配信もあるので観てほしい、と、ベース&リーダーのグレートマエカワが言った。グレートは、ゾロ目の日には必ず何かやりたがる、バンド界一のゾロ目好きである。終演後に「何をやるの?」と訊いたら、「2022年2月22日だから、俺らの全部のアルバムの2曲目をやる」。あはは、くだらない、おもしろそう、じゃあ行こう。ハックフィン、行ったことないし。
 そう、フラカンは生粋のE.L.L出身バンドなので、E.L.Lよりでかいキャパのダイアモンドホール等でイベントを打つことはあっても、名古屋でのワンマンを、E.L.L.以外でやることは、普段ないのです。ハックフィンでやるのは、名古屋にいたアマチュア時代まで含めても、初めてとのこと。
 2月22日に全部のアルバムの2曲目をやるライブを地元名古屋でやりたい、と思いつく→E.L.Lに相談したが、その日が空いていなかった→ならば、せっかくなら、一度もやったことがないハックフィンで──というふうに、決まったのだと推測します。セットリスト、書いておきます。

 1はぐれ者讃歌 2人生Roll On 3波の下 4永遠の田舎者 5今池の女 6DIE OR JUMP 7産声ひとつ 8地下室 9センチメンタルエンジン 10元少年の歌 11この胸の中だけ 12東京ルー・リード 13人間の爆発 14紅色の雲 15SOUL BONE ATTACK 16トラッシュ 17ああ今日も空振り 18捨鉢野郎のお通りだ En.ロックンロール

 以上。ということは、8曲入りだったデビュー・アルバム『フラカンのフェイクでいこう』(1995年)や2015年の7曲入りミニアルバム『夢のおかわり』まで含めて、アルバムが19作出ているってことですね、フラカン。
 なお、デビュー前にインディ・リリースした『聞コエマスカ』(1992年)の2曲目もやればよかったかな、いやそれはちょっと……みたいなMCを、後半でしていた。その曲=「あんな風になってしまうのに」、個人的には大好きなので、やってほしかった気がしないでもないが、やらなくても十二分におもしろかったので、文句ありません。「波の下」とか「地下室」とか「センチメンタルエンジン」とか、レアな曲もいっぱい生で聴けたし。
 しかし鈴木圭介、よく全曲歌詞を覚えたな、と感心する。全体のセットリストの3分の2ぐらいが、今はライブでやっていない曲なのに。カンペも置いてなかったし。終演後に「すごいねえ」と称賛したら、カンペ置いたって見えないから、とにかく必死で覚え直した、常に口の中でブツブツ歌詞を唱えながら歩いたりしていた、とのことでした。

2月27日(日)17:30 真心ブラザーズ@中野サンプラザ

 毎年この時期恒例の、MB’Sとの10人編成で中野サンプラザで行うワンマン。今年も開催されてよかった、とにかく。1曲目は「拝啓、ジョン・レノン」で、本編ラストは「COSMOS」、アンコールは「RELAX〜OPEN〜ENJOY」と「新しい夜明け」、つまりこの編成でぜひやってほしい4曲。「空にまいあがれ」や「ENDLESS SUMMER NUDE」や「どか〜ん」や「愛」あたりの定番曲もあり、「サマームード」や「毎日」や「遠くまできて」といったレア曲もありの、大満足な全21曲だった。
 最初のMCで、YO-KING、「年一回だから、正直、ひどい出来の年もありました! ところがみなさん、今年のリハの出来は最高です!」と宣言して拍手を浴びていたが、確かにその言葉どおり、演奏&歌もすばらしかった。
 オリジナル・バージョンにはホーンや鍵盤やうつみようこのコーラスが入っている曲も、普段のツアー等では岡部晴彦&伊藤大地との4人編成でやる、というのが定例化してずいぶん経つが、こうして10人の華やかな音で聴くのは、やっぱり格別だなあ、と、つくづく思った。
 来年以降も続くことを願う。続けてくれるだろうけど。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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