兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第100回[2022年3月もライブが多いので3回に分けて書きます、の1回目・DOPING PANDA、女王蜂、POLYSICS、宮本浩次、フラワーカンパニーズ&おとぎ話の5本を観ました]編

コラム | 2022.03.25 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、生もしくは配信で観た、主に音楽、時々音楽以外のすべてのライブの短いレポをアップしていく連載の、おお、100回目だ。
 普段は月に二回書いているのですが、2022年2月は、本数が多かったので三回に分けました。で、3月も本数が多くなりそうなので、三回に分けます。その一回目の5本、すべて生で観て書きました。

3月2日(水)19:00 DOPING PANDA@新代田FEVER

 解散から10年、再始動を発表し、ニューアルバム『Doping Panda』をリリースし、4月23日から4本のZeppツアーを回るDOPING PANDA。そのアルバムのリリース日に、入場者100人限定で、新代田FEVERでキックオフ・ライブを行った。
 観に行って、Rolling Stone Japan com.にレポを書きました。こちらです。
 ≫ Rolling Stone Japan:Doping Panda、ラスト・ライブから10年ぶりに再結成 聖地より再始動開始

3月3日(木)19:00 女王蜂@日本武道館

 女王蜂、二度目の日本武道館(前回は約1年前で2デイズ)。2021年11月から2022年2月にかけて11本のホール・ツアーを行った末の武道館だが、ツアーの方は『全国ホールツアー2021-2022 「qUEEN OF b」』で、この武道館は『単独公演「犬姫」』と、タイトルが違う。つまり、ツアーのファイナルとしての日本武道館ではなく、別のライブということ。
 で。1年前の2デイズの時も、「武道館で画面がないことが気にならない」「2階席から観たのに目の前にいるぐらいステージが近く感じる」などと書いたが(こちらです ≫ DI:GA ONLINE:兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第74回[2021年2月後半]編)、今回もやはり、そうだった。いや、前回以上にそうだったかもしれない。MCなしで、曲のつながりや曲間まで完璧に考えた上でライブをやる、というのは前回もそうだったが、前回はあったアンコール、今年はなかったし。
 全部で19曲。ライブのタイトルになっている、2月16日にデジタル・リリースされたばかりの新曲「犬姫」を1曲目に持ってきて、ライブのコンセプトをはっきりさせる。12曲目の「もう一度欲しがって」では、アヴちゃんがはけて、メンバーが順番にボーカルをとり、衣装替えを終えたアヴちゃんが戻って来て、途中から歌を引き継ぐ。14曲目の「雛市」は、花道の先に出て来たアヴちゃんが、アカペラで歌った。
 というふうに、何曲目で、どの曲を、どんなふうにやるか、というのに、いちいちすべて必然がある、だから、曲のたびに「そうか!」と強く思わされる感じ、というか。
 他のバンドと競っているレベルではなく、演劇とか映画とかダンスとかの、他のジャンルのエンタメと競っている、そして勝っている、そんな表現だと思った、僕は。コロナ禍じゃなかったら、さっさと海外に輸出した方がいい、こんなすごいものは。海外と同じだから、じゃなくて、海外には絶対ないから。日本にだって、他にひとつもいないし、こんなバンドは。

3 月4日(金)18:30 POLYSICS@リキッドルーム

 結成25周年のキックオフ・ライブ。なのでタイトルは『POLYSICS 25th Anniversary 〜STARTOISU 25!!!〜』で、曲数はアンコール込みで25曲。なお、3月4日は、1997年に初ライブを行った日だそうです。新宿JAMで、いっぱいバンドが出る中の一番目で、逆リハだったので遅い入り時間だったのに、JAMの店員が来る前に行って待っていて、「早いな!」と驚かれた、という話を、MCでハヤシがしていた。
 1曲目からいきなり新曲をやったが、それも含めて25曲のうち3曲が新曲。その上、アンコールで発表されたのは、25周年なのでこれから1年かけて25本のツアーを回る、ツアー1本につき必ず1曲新曲をやる、という企画『POLYSICS 25th Anniversary Tour 〜アタック25!!!〜』。
 25年やって、今なおそんな、ケタ外れのエネルギー量。すごいなこの人たち。まあ始めたのが早かった分、それだけ長くやっているわりに、年齢は若いんだけど。ええと、俺が初めて観たのは、下北沢CLUB Queの、30分で終わった初ワンマンだったから、1999年の3月か、じゃあ25年のうち23年くらいは観ているってことか。当時、POLYSICSに関して某先輩ミュージシャンが発した「すごいけど、三回観たら飽きる」という言葉が、あまりにキャッチーすぎて広まりまくったが、23年経ってもまだ飽きていませんよ、こうしてみんな喜んで観ていますよ、と思った、「シーラカンス イズ アンドロイド」や「URGE ON!!」や「Baby BIAS」等々の、おなじみの曲たちを浴びながら。
 アンコールの最後、25曲目は、23年前に僕が初めて観た時の1曲目「BUGGIE TECHNICA」だった。よね? 合ってますよね? ハヤシくん。

3月6日(日)18:00 宮本浩次@長良川国際会議場

 全都道府県ツアー『宮本浩次 TOUR 2021-2022 日本全国縦横無尽』の29本目で、俺が観たのは何本目だ、ええと、川口、広島、大阪、年が明けて新潟、東京×2、で、この日だから、7本目か。さすがに7本観ると、曲順とか、効果映像等の各曲における演出とかは覚えているが、それでも飽きるどころか毎回ドキドキする。ステージの上の演者たち(そう、宮本浩次ひとりでなくミュージシャンたちも含めて)が、常に1本目みたいな、ヒリヒリしたテンションのままだからだろうと思う。
 いや、「まま」じゃない。さらにどんどん、よりいっそう、ヒリヒリ方向につっ走っているように感じた、この日も。だから目が離せない。2022年3月9日(水)放送の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』にゲストに来た千鳥ノブが、『伊集院光とらじおと』における伊集院光の仕事っぷりを大絶賛していて、「伊集院さんはまだリラックスしてないん?」と大悟に訊かれ、「するわけないやろ! 伊集院さんは毎朝初回や!」と答えていたが、それを聴いていて「宮本のツアーもそうだなあ」と思った。それをここで喩えとして出すのは、ちょっとどうかと自分でも思うが。
 あとは、まだまだネタバレ自粛で、具体的なことは書けないので、余談をふたつ。
 ひとつめは、ベースのキタダマキが、髪を後ろで縛っていたのは、私が観た7本の中では、初めてでした。
 それからもうひとつは、このDI:GA ONLINEの母体であるディスクガレージのスタッフが、隣の席だった。普段の関東圏の本番は、当然、頭から最後まで観ることなどできないので、自分の担当の現場がない日で、終わってその日のうちに東京に帰れる地方を探したら、ここになった、とのこと。終演後、「すごいですね!」「最高ですね!」と、めったやたらと興奮しておられました。

3月8日(月)19:00 フラワーカンパニーズ、おとぎ話@新代田FEVER/Streaming+

 新代田FEVERが企画した『ハレノチハレ 2022』という対バン企画で、ブッキングされたのがおとぎ話とフラワーカンパニーズ。配信もあり。
 先に出たおとぎ話の有馬和樹、「やっとこの日が来た。フラカンと音楽を交わせる日が来た」。ギターの牛尾健太はフラカン竹安堅一と同じギブソンSGを使っているので楽屋で見せ合っていたとか、自分は鈴木圭介とこんな話をしたとか、とにかくうれしそう。
 そりゃまあ確かに、フラカン好きじゃないわけがない感じの人たちだし、2009年9月に出た、全員が『深夜高速』をカバーしている異様なトリビュート・アルバム『深夜高速――生きててよかったの集い――』にも、参加している。で、そのバージョンの「深夜高速」も、演奏した。ウケてた。
 その「深夜高速」を「12年以上前だよ? カバーしてくれたの」と喜んでいたフラカンは、「DIE OR JUMP」や「オレたちハタチ族」や最新曲「ザッツオーライ」等の定番曲に、この間の名古屋で久々にやったら気に入ったらしい「地下室」なんかのレア曲も交じるセットリスト。
 あ、「なんとかなりそう」もやった。何十年もやってなかったレベルではないけど、ちょっと久々だったのではないか、と思う。(コロナと戦争で)こんな大変な時だから、聴いてほしかった、いや、歌いたかった、というようなことを、鈴木圭介は言っていた。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る