兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第74回[2021年2月後半]編

コラム | 2021.03.04 16:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽、たまに演劇お笑いやスポーツ等の「生で観たものすべて」を、短くレポして半月に一回ペースでアップしていく連載の、2021年2月後半編です。1年前の新型コロナウイルス禍以降は、「配信ライブを観て書くのもあり」にしています。
 今回は、6本観ました。しかし、真心、OT、フラカン、って毎回同じアーティストばかり観てるなあ俺、という気がしますが、それは、そのアーティストたちが、今のような困難な世の中であっても、意欲的にライブを行っている、ということでもあります。

2月20日(土)16:00 真心ブラザーズ@中野サンプラザ/Streaming+

 毎年この時期恒例、真心ブラザーズが主に90年代中期~後期に活動を共にした、10人編成の「MB’s」でのライブを、中野サンプラザで行う企画。今回は、2020年3月25日(土)に開催されるはずだったが、新型コロナウイルス禍で延期になった回の振替公演で、よってタイトルも昨年のまま『はしゃぎすぎてる春の大人さ 2020』。
 「サマーヌード」の歌詞「はしゃぎすぎてる夏の子供さ」をもじったわけだが、このタイトルを付けたのは2019年の秋で、その後に、世の中が、まさかこんなことになるとは……というMCを、この日も、1月31日(日)の日本青年館でも、しておられました。YO-KINGと桜井秀俊のおふたりは。
 あと、小川文明が2014年に亡くなって以降は、キーボードは奥野真哉が常だったが、今回は、先月の5人編成のツアーでも弾いていた伊東ミキオだった。それ以外はいつものメンツ。
 で。この企画、いつもは、ニュー・アルバムとかの特定の作品には紐付けずに曲を選んでいたが、今年は事情が特殊なのもあってか、2020年10月リリースの『Cheer』から6曲、それ以外から14曲、というセットリスト。しかも『Cheer』からの6曲は、「ビギン!」「妄想力」「不良」「緑に水」「パッチワーク」「炎」という絶妙な選曲。
 それらの曲たちを、MB’sバージョンで聴ける、という新鮮な喜びもあり、「新しい夜明け」「RELAX~OPEN~ENJOY」「BABY BABY BABY」「EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG」等のMB’sの定番曲を聴ける喜びもあり、ファースト・アルバム収録の「さるまわし(MERCY,MERCY,MERCY)」や『GREAT ADVENTURE』からの「ふっきれてる」といった、レアな曲を聴ける喜びもあり、と、多方面でうれしさに満ちたライブだった。
 あ、生配信もありました、Streaming+で。視聴チケットは税込3,500円、2月23日(火・祝)23:59までアーカイブ視聴可能、でした。

2月24日(水)18:00 女王蜂@日本武道館/Stagecrowd

 女王蜂、初の日本武道館公演、2デイズ。1日目『HYPER BLACK LOVE』、は2020年のリリースの最新アルバム『BL』をコンセプトとしたライブで、2日目『夜天決行』は2021年1月27日リリースのニュー・シングル『夜天』をコンセプトとした内容。生配信もありで、チケットはジュリ扇付きで税込6,500円・なしだと税込3,500円。プラットフォームはStagecrowdで、2月28日(日)18:00まで見逃し配信あり。なお、海外向け配信視聴チケットも販売された。対象国はアメリカ・台湾・香港・マカオ・シンガポール・韓国・タイ。
 そして、さらに、WOWOWで放送されることも、後日、発表になった。1日目が4月29日(木)21:00、2日目は4月29日22:15から。
 この1日目は、セットリストは、『BL』から「CRY」以外の全曲=7曲と、それ以外のアルバムから11曲、本編15曲アンコール3曲の、全18曲だった。翌日に続く。

2月25日(木)18:00 女王蜂@日本武道館/Stagecrowd

 2日目、『夜天決行』は、『夜天』収録の「夜天」「火炎(FLAME)」「コスモ」の3曲はすべて披露、それ以外の作品から15曲、本編16曲アンコール2曲の全18曲というセットリスト。前日もやった曲は「夜天」1曲のみで、前日はアンコールの1曲目に、この日は3曲目にプレイされた。
 しかし、2日とも18曲って、けっこうやってたのね、曲数。なんせ本当にあっという間だったので。10曲くらいだった、体感としては。
 女王蜂、以前は普通にMCをはさんだりしていたのが、ある時期から、MCはアンコールでの一回だけ、曲のつながりや曲間まで含めて完璧にパッケージしたライブをやるようになった。なので、それによって全体の尺が短くなった、というのもある。
 が、それ以上に、圧倒されている間にライブが終わってしまう、始まった瞬間に呑まれてしまって最後まで呑まれたまんま、だから短く感じた、というのも、大きいと思う。
 オープニング、やしちゃん・ルリちゃん・ひばりくん・みーちゃん(サポートKey)の4人がせり上がりで登場した時の立ち位置やポーズから、アンコールを終えて一列で去って行くところまで、すべての瞬間、すべての光景、すべての音、もうあらゆる細部に至るまで、総合演出家=アヴちゃんの意志が行き届いている、完璧なステージ。なので、一瞬たりとも目が離せない。
 しかも、5人の肉体と照明だけで、すべてを作っていくライブだった。日本武道館の規模なのに、メンバーを映す画面もないし、バックにLEDを出して効果映像を使うとかもしない。演出も「ステージ後方で振り落としの幕を使う」くらいで、特効とかレーザーとかもなし、ステージセットも超シンプル。
 なのに、たとえばその「画面がない」という事実にも、ライブが半分くらい進んだあたりで、ようやく「あ、ないわ、そういえば」と、気がついたくらいだった。というのって、かなりすごいことだと思う。2階席から観たのに、目の前にいるくらい近かった、女王蜂が。その事実に慄然とした、大げさでなく。

2月26日(金)18:00 奥田民生@府中の森芸術劇場どりーむホール/LINE LIVE-VIEWING

MTR&Yでの「全公演生配信あり」ホール・ツアーのファイナル。1本目の1月31日(日)YCC山梨県立県民文化ホールを、配信で観て、このDI:GA LINEでレポしました。
奥田民生、3年ぶりのバンドツアー「MTRY TOUR 2021」がスタート!ツアー初日をレポ
 で、3本目の2月8日(月)東京・昭和女子大学人見記念講堂は、生で観て、この連載の前回で、ちょっと書きました。≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第73回[2021年2月前半]編
 そして、このファイナルは、配信で観た。以下、OTの最初のMC。
 「府中といえば、初日のイメージしかございません。それがなぜか今回、最終日。ほんとにすいませんでした、府中のみなさん。今まで私たち、初日の、まだいまいちのやつしか見せてなかったです。下手だったです」
 ツアー前日にゲネプロ(照明等も本番どおりに通しで行う最終リハーサル)をやって、そのまま翌日にツアー初日をやる会場が、東京近辺にいくつかある。府中、戸田、三郷、だいたいその3つである、だからいつもは下手なんです──と、OT、丁寧に説明。「僕らだけじゃないですよ? バンドはみんなそうです」。あっはっは。いや、知ってますけれども。
 1部が9曲ぐらい、換気のための休憩をはさんで、ファンから募集したご当地写真をバックにひとりで弾き語りで2曲やって、バンドに戻って8曲ぐらい、アンコールで「BEEF」を追加、というのが、このツアーの基本構成。
 休憩明けで、「この弾き語りは自由なんでね、全箇所違う曲にしようと思ったんだけど、もうわからなくなったんです、やったんだかやってないんだか」などとぼやきながらOTが歌ったのは、「ヘヘヘイ」と「トリッパー」であったことに「おおっ!」ってなりました。

2月26日(金)21:00 フラワーカンパニーズ@新代田FEVER/Streaming+

 2002年2月に開催した企画『感傷の夕べ』を19年ぶりに開催。毎月やっている企画『月刊フラカンFEVER』の一環として、無観客配信ライブとして行った。ゲスト・ミュージシャンで奥野真哉が参加。配信プラットフォームはStreaming+で、視聴チケットは税込2,500円、3月4日(木)23:59までアーカイブ配信あり。
 要は、通常のライブではセットリストに組み込む曲数に限界がある、センチメンタルな曲や、しっとりした曲や、フォーキーな曲や、暗い曲などだけでライブを行う、という趣旨。
 メジャーからドロップアウトして最初のアルバム、2002年の『吐きたくなるほど愛されたい』収録曲の「雨」で始まり、1996年のセカンド・アルバム『フラカンのマイ・ブルー・ヘブン』に入っている「酒と女とバクチと自由」(確かアマチュア時代からある曲)や、「セロハン」(これも2002年)等を経て、2008年に作った「上京14才」を改めた「上京27才」で終わる、全16曲だった。なお、「上京14才(27才)」に関しては、「毎年2月のこの時期にやらなきゃいけない曲、でも忘れちゃって、やるの3年ぶりくらい」(グレートマエカワ)「僕らが上京したのが1994年の2月なので。あれは雪の降る日でしたね」(鈴木圭介)ということでした。
 6曲目に、個人的に大好きな「日々のあぶく」をやってくれたのが、特にうれしかった。この曲が入っているアルバム『チェスト!チェスト!チェスト!』(2010年)が出た時、ラジオで伊集院光が「特に好きな曲です」と言ってかけたのも、この曲だった、と記憶しています。
 なお、終わったあとに、19年前の『鑑賞の夕べ』の時の、MCの一部の音声を配信で流す、というサービス? が、ありました。圭介、言いたい放題で、爆笑もんでしたが、言っている内容が「日々のあぶく」の歌詞とリンクしていたりもした。

2月27日(土)18:00 TENDOUJI ゲスト:never young beach@渋谷TSUTAYA O-EAST

 昨年7月から延期になっていた自主企画『TENDOUJI Presents “MAKE! TAG! NIGHT!!! Vol.4”』を、ようやく実現できたのがこの日。ネバヤンも、TENDOUJIも、客前のライブ自体が本当に久しぶりだったそうで(そりゃそうですね)、実際に「久しぶり!」とか「楽しい!」とか口にしながらのステージだったが、もしそう言わなくても、観ているだけでそれがもう痛いくらい伝わってくる、切実な多幸感に満ちたステージだった。「切実な多幸感」って変な言い方だな。でも、観ていると本当に、そんなものを感じる時間だった。どちらのバンドも、めったやたらといきいきしていた。
 なお、2016年とかそれくらいに、ここO-EASTで8バンドぐらい出るイベントがあって、そこにネバヤンもTENDOUJIも出た、TENDOUJIはなんで呼ばれたのかわからないくらいの、8バンド中8位なポジションだった、それが今夜こうしてこの2バンドで──という意味合いでも、感慨深い夜だったようです。
 その8バンド出たイベントの時、「よろしくお願いします」と楽屋に入って来た対バンの人に「おう、よろしく」みたいな感じで偉そうに接したら、後でそれがNulbarichだったことを知った、うわぁ……というMCには、笑いました。
 それから、TENDOUJI、2021年はアルバムを2作リリースすること、その1作目『MONSTER』は4月28日リリースで6本の全国ツアーを回ること、そのファイナルはここO-EASTであること、あと、YouTube『TENDOUJI TV』を始めたことを、アンコールで発表した。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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