兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第102回[2022年3月もライブが多いので3回に分けて書きます、の3回目・マキタスポーツ、『ビクターロック祭り2022』、神はサイコロを振らない、『命、ギガ長スW』(ギガ組)、My Hair is Bad、マキシマム ザ ホルモン、の6本を観ました]編

コラム | 2022.04.05 18:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たライブ(基本的に音楽、時々演劇やプロレス等)の短いレポをアップしていく連載の、102回目。普段は月二回書いていますが、2022年2月と3月は本数が多いので、三回ずつに分けて書きました。以下、その3月の三回目です。全部で6本、うち1本がフェスで、1本がお笑いで、1本が演劇でした、今回は。

3月18日(金)19:00 マキタスポーツ@赤坂草月ホール

 コロナ禍で開催を阻まれた末に、2年半ぶりに実現した単独ライブ『オトネタ5』。3月18日(金)に1公演、19日(土)に2公演の全3回のうちの、1公演目を観た。
 替え歌、お客からお題を受けながらのオリジナルの音頭、『ライオン・キング』を元ネタにした「朝食バイキングミュージカル」などなど、「音楽で作る笑い」という切り口で、よくここまでのバリエーションのものを作れるな、と言いたくなるネタの数々を堪能した。
 で、それらの中でも、彼の大きな軸になっているのが、特定のアーティストの作詞法・作曲の方法や傾向を解析していく、清水ミチコの『××作曲法』にも通じるネタ。たとえば、「童謡をおしゃれなコードで歌うと星野源っぽくなる」(TBSラジオのこのライブのCMで使われていた)とか。
 その発展形として、今回披露されたのは、「大川栄策『さざんかの宿』のワンコーラスのメロディに、Mr.Children『Tomorrow never knows』の歌詞をフルコーラス入れて歌う」というネタ。これを一発目に持って来た。めちゃくちゃ笑った。で、最後にはゲストで、最近配信でデュオ曲「歌うまい歌」をリリースした「歌怪獣」こと島津亜矢を呼び込み、ふたりでその曲を披露した。ほんとに怪獣レベルの歌だった。タイプもジャンルも性別も違うけど、奇妙礼太郎を連想した、なんとなく。

3月19日(土)10:00 『ビクターロック祭り2022』@幕張メッセ

 コロナ禍で3年ぶりの開催になった『ビクターロック祭り2022』、今回もビクターが配信するオフィシャルレポの仕事をいただいた。僕ともうひとりのライターが交互に書く、というフォーメーションで、キュウソネコカミ、go!go!vanillas、KALMA、ORANGE RANGE、DJダイノジ、の5アクトのレポを書いています。
 ぴあ→Yahoo!ニュースにアップされたものを貼っておきます。
 ≫ Yahoo!ニュース:サカナクション、ORANGE RANGEら11組が競演 3年ぶり開催の『ビクターロック祭り』オフィシャルレポート

3月20日(月)18:00 神はサイコロを振らない@日比谷野外大音楽堂

 ニュー・アルバム『事象の地平線』を発表し、そのリリース・ツアーを行う前に、東京と大阪で開催した野外ワンマン「東阪野音Live 2022『最下層からの観測』」の東京編。
 既にレポを書いて、このDI:GA ONLINEに入稿済みなんだけど、大阪編が4月10日(日)なので、それが終わったらアップして、リンクを貼ります。
DI:GA ONLINE:神はサイコロを振らない、念願の野外での初ワンマン「やっとスタート地点に立てたばかり、ここからどこへでも行ける気がする」

3月25日(金)13:00 『命、ギガ長スW(ギガ組)』@下北沢ザ・スズナリ

 松尾スズキ作・演出の『命、ギガ長ス』の再演。初演は松尾スズキと安藤玉恵の二人芝居だったが、今回は松尾スズキは演出に徹し、宮藤官九郎と安藤玉恵=ギガ組、三宅弘城とともさかりえ=長ス組、の2組で、1日2公演の時は交互に、1公演の時はどちらかが、という形で東京・大阪・北九州・長野の松本を回る、というもの。その東京公演の19日目の舞台を観た。
 もちろん初演も観ているし、戯曲も買って読み込んでいるし、3月12日(土)には初演の時の映像などをトークショー付きで観るイベントが下北沢のエキマエ-シネマ:K2であって、それにも行ったので(映像を観る趣旨の会だったので、この連載では取り上げませんでした)、どんな物語なのかは、かなり隅々まで記憶している。
 が、という状態で観ても、すんごいおもしろかった。いや、その状態で観たからこそ、「松尾スズキが演じたらああだったところが、宮藤官九郎が演じるとこうなるのか!」とか、「安藤玉恵、初演の時とはここがこう違うのか!」みたいな楽しみ方もできたんだと思う。
 宮藤官九郎は、50歳のニート:オサムと大学教授:キシの二役、安藤玉恵はオサムの母:エイコと、その親子を撮るドキュメンタリー監督志望の大学生:アサダの二役。オサムに関して言うと、50歳のニートのクズ感を醸し出すにあたっては、宮藤官九郎の方がさらにハマってておもしろいかもしれない。でも大学教授の方は、松尾スズキの方がいっそう……などと、あれこれ考えながら堪能しました。

3月25日(金)18:30 My Hair is Bad@国立代々木競技場 第一体育館

 3月12日(土)・13日(日)神戸ワールド記念ホールと、3月25日(金)・26日(土)に国立代々木競技場 第一体育館で行われた『ダイナマイトホームランツアー』のアリーナ編(他に「ライブハウス編」も各地で8本開催)。この「アリーナ編」は360度センターステージ、つまりアリーナの中心部分に円形のステージを作って、そこで演奏する、という趣向。
 というセンターステージでのライブは、過去にも別のバンドで何度か観たことがある。両国国技館で観た、SAKEROCKのラストライブとか(2015年6月2日)。2018年のクリスマスイブに大阪城ホールで観た、東京スカパラダイスオーケストラとか。
 が、マイヘアの360度センターステージは、それらのどれともフォーメーションが違った。ドラムセットが前後に2台セットされていて、山田淳は時間によってそのどちらかを叩く。そのドラムと平行に、マイクスタンドが2本ずつ。椎木知仁と山本大樹と山田淳が3人で向かい合って演奏する曲もあれば、3人が同じ方向を向いている曲もあれば、3人が3人ともバラバラの方向の曲もある。で、ステージ上にはモニタースピーカーも、ギターアンプも、ベースアンプもなし、という。なるほど、イヤモニがあたりまえになった今だから可能なセッティングなんだな、と、バンドからしたら「いや、そこはどうでもいいんですけど」と言われそうな感心をしてしまった。
 「真赤」や「恋人ができたんだ」や「戦争を知らない大人たち」等の、長らくプレイし続けてきた人気曲から、「予感」や「味方」や「白春夢」といった最新の曲までが並んだ、オールタイム・ベストなセットリスト。それらの曲も収録されるニューアルバム『angels』のリリース直前のタイミングだったが、そこに入る未発表の新曲「綾」も、披露された。全体に、集大成というよりも、これから何かが新しく始まる予感に満ちたステージだった。

3月28日(月)19:00 マキシマム ザ ホルモン@広島文化学園HBGホール

 どんなに人気が沸騰しようとも、自分たちのツアーはオールスタンディングのライブハウスでしかやりません、最大でもZeppかスタジオコーストくらいで、それ以上のハコではスケジュール切りません、という方針を貫いてきたマキシマム ザ ホルモンが、長引くコロナ禍を鑑みて、「ホールで座席ありで、自分たちも腹ペコたちも満足できるライブを行うにはどうすればいいか」を考えた末に実行した、初のホール・ツアー。その名も『エモートシャウト不可避ライブ 叫ぶペットボトルの黙る会 〜うる静やつら〜』。
 「エモートシャウト」というのは、ペットボトルの中にビーズ等を入れたもので、声が出せない代わりにこれを振り回して応援しましょう、ということ。エモートシャウトは会場で買ってもいいし、持参してもいいが、これを持っていないと入場できない。持ち込みは1人2本までだが、1本しか持っていない人、僕の見た限りではいなかった。
 エモートシャウトを振り回すことと、ヘドバンすることは可能でも、モッシュもダイヴもクラウドサーフもなければ、「恋のおまじない」で「やったあー!」と叫ぶこともできないホルモンのライブって、どんなもんなんだろう。と、始まる前は思っていたのだが。ちょっと不思議なくらい、違和感、なかった。バンドのテンションとオーディエンスの気合い、どちらもとにかくものすごいものだったので。声が出せなくとも、大暴れできなくても、気持ちって外に伝わるもんなんだなあ、と、実感した。
 あと、この広島文化学園HBGホールでライブを観たことは何度かあるが、こんなに音がバカでかいライブ、初めて体験しました。それから、なんで広島で観たのかというと、初日の東京(八王子)公演が発表になった時、その日にもう別のライブが入っていたから、というだけです。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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