兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第104回「2022年4月中旬・三浦隆一/空想委員会、TESTSET/THE SPELLBOUND、四星球(w/ゴールデンローファーズ、アイアムアイ)、佐野元春 & THE COYOTE BAND、The Birthday/HABANA/うつみようこ&YOKOLOCO BAND/SaToMansion、の5本を観ました]編

コラム | 2022.04.28 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が生もしくは配信で観たすべてのライブの短いレポを書く連載の、104回目です。普段は月二回書いていますが、2022年2月・3月・4月は、本数が多いので、三回ずつに分けて書いています。その4月の二回目、全5本、今回はすべて生で観ました。

4月11日(月)18:30 三浦隆一、空想委員会@渋谷 CLUB QUATTRO/mahocast

 去年に続き開催された、三浦隆一生誕祭ライブ。去年はここが、空想委員会再始動を発表する場になったが、今年は「三浦隆一と空想委員会の対バン」という企画で行われた。配信もあり。
 先に出た空想委員会は、再始動後の最初のアルバム『世渡り下手の愛し方』のリリース・ツアー中だけあって、ライブの体勢ができ上がっている。余裕で鉄壁のステージ。それに対し、三浦隆一バンドは、このメンバーが集まってライブをやるのは、1年前の『生誕祭』ぶりだということで、手練のメンバーが揃っているわりに、ちょっと張り詰めたムードで始まった。
 どちらもボーカルは三浦隆一なので、そんなふうに違いが見えるのが楽しい。あと、後日アップされた彼のツイートによると、空想委員会のセットリストは「対バン相手を最もやりにくい状態にさせる」をテーマに考えたそうで、その二者の違いを、本人も楽しんでいたのだと思う。テンパってもいただろうが。
 当然、1年前のソロ・デビュー・アルバム『空集合』からの曲が軸になったセットリストで、それらの曲もよかったが、3月13日に配信リリースしたばかりの新曲「なくなく」が、さらによかった。
 そして、アンコールでやった、音源未発表の新曲「QUATTRO」が、さらにさらによかった。恋人との別れをストレートに言葉にしてメロディに載せたバラード。三浦隆一や空想委員会のファンの圏内からはるか遠くまで届きそうな普遍性を感じた。

4月14日(木)19:00 TESTSET、THE SPELLBOUND@LIQUIDROOM

 リキッドルームの企画でこの2つ、なんていい対バンなんだ! と、以前から楽しみにしていた。どちらも自分が初めてライブを観たのは2021年のフジロックで(フジの時のTESTSETは、まだMETAFIVE名義だったが、今の編成での初めてのライブだった)、THE SPELLBOUNDはそのあと一回新木場スタジオコーストで観たが(2021年12月18日)、TESTSETはそれ以来。
 THE SPELLBOUND、前二回は効果映像ありのライブだったが、今回はなし。というのが最初は意外だったが、すぐ忘れた。ステージから放たれる音があまりにも強力で。THE NOVEMBERSとBOOM BOOM SATELLITES、それぞれの曲もうれしいが(1曲ずつやった)、それ以上にTHE SPELLBOUNDの曲がうれしい。歌詞が日本語になったのは小林祐介のカラーで、サウンド・プロダクトは中野雅之寄り、みたいな単純な足し算ではなくて、その二者が合わさったことによって、本人たちも予想しえなかったんじゃないかと思うような、新しいものが生まれている。たとえば、メロディにもトラックにも漂う叙情性とか。
 で、TESTSET=砂原良徳 × LEO今井 × 白根賢一 × 永井聖一。こちらは今回も映像あり。音や声を映像や光を映像を、耳と目をフル稼働して追っているうちにたちどころにトランス状態に入ってしまう、そしてあっという間に終わってしまう、そんなライブだった。ステージから放たれる情報量が途轍もない。
 何か、あちこちから声がかかっているみたいで、5月5日には大阪のフェス『OTODAMA’22〜音泉魂〜』、5月15日には福岡のフェス『CIRCLE’22』、5月21日には中野サンプラザの『BETA Q』でZAZEN BOYSとの対バン、と、今後もライブが続く。

4月15日(金)18:30 四星球(w/ゴールデンローファーズ、アイアムアイ)@新宿Marble

 四星球は、結成20周年記念のベスト選曲アルバム『トップ・オブ・ザ・ワースト』を3月23日にリリースし、4月から5月にかけて、東京・大阪・名古屋で5デイズライブを行っている。5日すべて会場は変えて、対バンも違う、という企画。
 東京5デイズは、4月13日(水)八王子Match Vox:ニューロティカ/超能力戦士ドリアン、4月14日(木)高円寺HIGH:初恋 from 突然少年、4月15日(金)新宿Marble:ゴールデンローファーズ/アイアムアイ、4月16日(土)代官山UNIT:POLYSICS/MOROHA、4月17日(日):吉祥寺Planet Kでザ・ラヂオカセッツ/STANCE PUNKS。
 という5本の中の3本目が、この日。二番手に出たゴールデンローファーズのディービー(Gt. /Vo.)、「今日、お休みの日やん!」。それ以外も、演奏中に平気で曲を止めたりしながら何度もMCをぶっこみ、声出しNGのオーディエンスみんな笑いを抑えるのが大変、という、それはそれは楽しいステージを見せてくれた。シンプルにタイトに引き締まった演奏・楽曲も自分の好み。ピーズに加入したベーシスト=みったんが、以前からやっている本業のバンドだということは知っていたが、ライブは未見だったので、この日観れてよかった。
 で、四星球。康雄、落ち武者になって刀を振り回しながら登場。で、奇声を発しながらメンバーをひとりずつ斬り捨てる→メンバー倒れる→康雄が「みね打ちじゃ」と言うとメンバー立ち上がる、というくだりを何度も繰り返す。で、途中から、まさやん(Gt.)に狙いを、定めて斬りまくる──という、昔よくやっていたというつかみネタで始まったのだが、それがめったやたらとウケて、康雄「令和でも通用しますやん!」と喜ぶ。
 その後、四星球なので、例によってなんやかんやありまくった末に、本編が終了。で、アンコールでも、その斬り捨てるくだりをやって、また大ウケ。すっかり自信をつけて、「今後のライブでも使おう」とおっしゃっていました、康雄さん。

4月16日(土)17:30 佐野元春 & THE COYOTE BAND@札幌市教育文化会館 大ホール

 3年半ぶりの全国ツアー『WHERE ARE YOU NOW』、全12本中2本目の札幌公演へ行って、BARKSにレポを書きました。つくづくすばらしかったので、ぜひ。
 ≫ BARKS:【ライブレポート】佐野元春のピュアネスをリアルに感じ取れるツアー

4月17日(日)16:00 The Birthday、HABANA、うつみようこ&YOKOLOCO BAND、SaToMansion@ZEPP Haneda

 ライブのPA、佐々木直氏の還暦イベントで、上記の4バンドが出演。うつみようこ&YOKOLOCO BANDは、わりと頻繁に観ているが、The Birthdayは久々、そしてHABANAとSaToMansionは、ライブを観るの、初めて。
 福岡から来たHABANAは、「こんな音楽ジャンルがあったのか!」という驚きを与えてくれるバンドだった。「民族系トランスロック・バンド」という形容が付いているが、確かに、それくらいしか言いようがない音を、上半身裸で刺青だらけで、頭に編笠をかぶったメンバー6人が、ステージで円状に向き合って鳴らしていく。
 次のSaToMansionは、岩手県二戸市出身の、メンバー4人全員が兄弟の、シンプルでストレートでアグレッシブなロック・バンド。全員スーツだったり、豪快でシャープなギター・リフが軸になった曲が多かったりするあたりに、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTを思い出させるところもある。かっこよかった。
 最近、21年前の結成当時のように、ようこさん以外の男5人はツナギ(揃いではないが)を着てライブをやっている、うつみようこ&YOKOLOCO BAND、こんなでかいハコで観たの、考えたら初めてだった。で、合ってた。バンドの放つでっかいグルーヴも、ようこさんの超絶ボイスも、Zepp Hanedaによく映える。
 で、The Birthday。2021年7月リリースのニューアルバム『サンバースト』や、その後11月に出たEP『CORE 4』のモードの、つまり現行で最新のThe Birthdayを見せるライブ。いやあ、かっこよかった。自分は何をやりたいのか、何をやるべきなのか、何ができるのか、ということに、こんなに迷いがない人、そうそういないのではないか。加齢に比例してカリスマ性が上がっている気がする、チバユウスケ。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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