兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第112回[2022年8月前半・くるり、『どんと還暦祭』、ROCK IN JAPAN FES.2022の1日目、ROTH BART BARON、ザ・クロマニヨンズ×The Birthday×KEN YOKOYAMA、の5本を観ました]編

コラム | 2022.08.23 18:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たすべてのライブの短いレポを書いて、月二回ペースでアップしていく連載の112回目です。観たライブの本数が多い場合は、月三回に分けることもあります。で、2022年8月は、1ヵ月で15本を超える予定なので、その月三回パターンにしました。というわけで、8月4日(木)から8月9日(火)までに観た5本です。

8月4日(木)19:00 くるり@Zepp Haneda

 『くるりライブツアー2022』という、シンプル極まりないタイトルのツアーのファイナル、Zepp Haneda2デイズの1日目。岸田繁&佐藤征史を支えるサポートは、ギター松本大樹&キーボード野崎泰弘のおなじみのふたりに、ドラムが石若駿、という、1年くらい前からかな、ここのところ続いている体制。
 「ここまでもヒット曲満載、ここからもヒット曲満載ですよ」「グラミーを獲った曲です」とか、「1800万枚売れた曲です」などと言いながら、普段なかなかライブで聴けない曲をどんどんプレイしていく。特に前半、「あ、これはわりとライブでよくやってるな」という曲、「ブレーメン」くらいだったのではないか。
 で、ライブが進むにつれて「さよならリグレット」や「ばらの花」あたりのおなじみの曲も交じり始め、後半では新曲が披露され、「ハイウェイ」「loveless」「everybody feels the same」「潮風のアリア」で本編が終わって、アンコールが「琥珀色の街、上海蟹の朝」「ロックンロール」という、「俺が好きなくるりの曲」トップ5に入る2曲だったのが、もううれしくて……って、だったら全部セットリスト書いた方がいいな。書きます。なお、後で調べたら、翌日の公演は22曲目まで一緒で、それ以降は異なっていました。
1Bus To Finsbury 2目玉のおやじ 3コンバット・ダンス 4ブレーメン 5忘れないように 6bumblebee 7Morning Paper 8しゃぼんがぼんぼん 9青い空 10風は野を越え 11Time 12さよならリグレット 13ばらの花 14white out(heavy metal) 15マーチ 16Giant Fish 17かごの中のジョニー 18Tokyo OP 19新曲 20ハイウェイ 21loveless 22everybody feels the same 23潮風のアリア  アンコール:琥珀色の街、上海蟹の朝 25ロックンロール
 あ、あとひとつ。後半のMCで岸田が、「モーターの音を増幅させる機械を作ってるんです」と、その機械を出して、ちっちゃいモーターを回してその機械を通して、ウワーンとでっかい音を響かせて、みんなに聴いてもらう、ということをやっていた。商品化したいそうです。

8月5日(金)18:30 『どんと還暦祭』@リキッドルーム/ZAIKO

 2000年に37歳で亡くなったどんと、存命だったらこの8月5日で還暦、ということで、開催されたイベント。生配信もあり。二部構成で、一部は基本的に弾き語りで、ゲストたちが2〜3曲ずつ歌い、二部はどんとが在籍したBO GUMBOSとローザ・ルクセンブルグのメンバーたち(Dr.kyOn、岡地曙裕、永井利光、玉城宏志)+うつみようこ(コーラス)+Peace-K(パーカッション)の演奏で、メンバーや、ゲストたちや、うつみようこが歌う、という内容だった。どんとの息子、ラキタと久富奈良も出演する予定だったが、ラキタはコロナ陽性で(と、明言はされなかったが、そうだと思う)沖縄を出られず、キャンセルに。久富奈良は二部で数曲、バンドに加わってドラムを叩いた。あと、岡地曙裕に代わり、玉城宏志曰く「俺の相棒」の+小関純匡がドラマーを務めた曲もあった。
 企画者というかプロデューサーは、どんとの妻である小嶋さちほ、だと思う。イベント開催発表の時にコメントを出していたし、この日も最初にまず挨拶をしておられたので。
 ゲストは、一部は、sandii、知久寿焼(パスカルズ)、下津光史(踊ってばかりの国)、三宅洋平(犬式)、内村イタル(ゆうらん船)、小山田壮平、友部正人。小嶋さちほの挨拶に続くsandii+ダンサー2名のフラで始まり、友部正人+小山田壮平の「どうして旅に出なかったんだ」で終わる15曲だった。
 で、二部は、永井利光の歌う「見返り不美人」で始まり、友部正人の「朝は詩人」、下津光史の「橋の下」と「絶体絶命」、小山田壮平の「あこがれの地へ」、うつみようこが歌った「さいさいあい」「カベ」「泥んこ道を二人で」などなど。
 で、一部には出なかったTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)と佐藤タイジ(シアターブルック)も登場したのだが、特にTOSHI-LOWが最高だった。髪がピンク、肌が緑色だった時期のどんとの完全コスプレでステージに現れ、オーディエンスの大半が最初は誰なのかわからず(私もです)、歌い出した声で「TOSHI-LOWだ!」という。「ポケットの中」と「最後にひとつ」を歌ってくれました。あ、でも、佐藤タイジの「夢の中」もすばらしかった。アンコールではドラマー椎野恭一もサプライズ出演。
 全部で33曲、18時半過ぎに始まって、終わったのは22時半過ぎ。ローザ・ルクセンブルグ→BO GUMBOSと、リアルタイムで大好きだったもんで(高2から社会人5年目くらいまでの時期でした)、ただただうれしい時間だった。特にようこさんが歌った曲が、個人的なツボなやつが多かったです。「さいあいあい」と「泥んこ道を二人で」はわかるけど、まさか「カベ」をやってくれるとは思わなかったし。ローザのオリジナル・アルバムには入っていなくて、解散ライブアルバム『LIVE AUGUST』でだけ聴ける曲です。

8月6日(土)10:05 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022・1日目@蘇我スポーツ公園

 茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園から、千葉市の蘇我スポーツ公園に会場を移した2022年のROCK IN JAPAN FES.、その初日に行った。観たアクトは以下。全部観たやつも、一部分を観たやつも含みます。
Vaundy→SIRUP→Saucy Dog→ORANGE RANGE→マカロニえんぴつ→羊文学→SHE’S→宮本浩次→秋山黄色→クリープハイプ→【Alexandros】→YOASOBI
 自分目当てでチケットを買ったファンは、おそらくその場にほぼいなかったはずなのに(出演が発表された時、既にチケットが売り切れていたので)、すさまじいパフォーマンスでオーディエンスを圧倒した宮本浩次など、すばらしかったライブはいくつもあったが、この日、自分が特に驚いたのは、クリープハイプだった。こういう大舞台に強いバンドなのは、いつものことだけど、その人気っぷりが、すさまじかったのだ。
 この日のROCK IN JAPAN FES.、(最終日は台風で中止になったので)4日間の開催の中でも、特にそうだったのかもしれないが、とにかく、お客さんが若かった。コロナ禍の間にフェスに行くような音楽ファンの世代交替があったのか、それだけが理由じゃないのか、わからないが、フェスにとっては、いいことだと思う。で、VaundyやSaucy Dogやマカロニえんぴつが、すさまじい数の人を集めているのを見ると、アクト側の世代交代も感じますよね、それは。
 そうなると、正直、「これはクリープハイプになると、人、減るだろうなあ……」と予想したのだった、僕は。新世代旧世代で言うと、彼らも、もはや旧世代なんだなあ、と。他の日程を見ても、彼らと同じくらいのキャリアのバンド、全体的に減っているし。まあでも、それはしょうがないよね、長くやっていれば誰だって旧世代になっていくんだから……などと、思っていたのだが。
 クリープハイプ、めちゃくちゃ人を集めたのだ。前述のアクトたちと同じ、下手したらさらに多いかも、というくらい。年齢層が高めな参加者たちはもちろん、高校生大学生くらいの若い子たちも、すっごい熱心にステージを観ているし、曲もよく知っている(というのが、イントロが始まった時の反応を見ているとわかる)。
 何これ? どういうこと? 何が起こっているの? いつの間にそんなバンドになったの? と、びっくりしたし、うれしかった。何ゆえに、クリープハイプにだけこんな素敵な現象が起きているのか、まだちゃんと解析できていないので、ひき続きライブを追いながら、考えたいと思う。

8月7日(日)18:00 ROTH BART BARON@日比谷野外大音楽堂/ Streaming+

 ROTH BART BARONの企画ライブ『BEAR NIGHT』の3回目にして、このバンドにとって初の日比谷野音ワンマン。生配信もあり。ゲストで森大翔、Yogee New Waves角館健悟、中村佳穂が出演。このDI:GA ONLINEにレポを書きましたので。ぜひ。
ROTH BART BARON「日比谷でやれて本当によかった、来てくれてありがとう!」 月明かりの中、歓喜の余韻を残し終演。

8月9日(火)ザ・クロマニヨンズ、The Birthday、KEN YOKOYAMA@ホクト文化ホール 大ホール

 キョードー北陸が2014年から行っている対バンライブ企画『乱シリーズ』。3バンドで北陸や信州をツアーする、という趣旨で、今年2022年は、この3アクトで新潟・石川・長野を回る、その最終日がこの日だった。が、横山健のコロナ感染で、新潟と石川が延期になり、結果的に初日になった。
 振替日程は、石川の本多の森ホールが8月28日(日)で、新潟の県民会館大ホールが9月1日(木)。つまり、このテキストがアップされるタイミングでは、まだ終わっていないわけで、そうなると、ネタバレ的なことを書くのは、憚られますね。
 そうか。困った。私、この『乱シリーズ』に行ったこと自体が初めてだったもんで、「あ、こんなサプライズもあるんだ?」という、うれしいものを観れたりもしたんだけど……やめとこう。
 とりあえず、トップがザ・クロマニヨンズ、次がThe Birthday、トリが横山健のKEN BAND、という出順でした。自分としては、最近ちょいちょいライブを観ていたのはThe Birthdayだけで、ザ・クロマニヨンズもKEN BANDも久々だったのもあって、それはもう楽しかった。
 が、ラストのKEN BANDを観ていて気がついた、というか、その時まで気がついていなかった。ここのような、イス席ありの大きなホールで、この3アクトを観る、ということ自体、コロナ禍以前だったら、そうそうない体験だったかもしれない。
 ザ・クロマニヨンズは、コロナ禍前から、ワンマン・ツアーの会場にホールも組み込んだりしていたが、KEN YOKOYAMAとThe Birthdayは……自分がKEN BANDをイス席で観たの、いつ以来だろう。初めて日本武道館をやった時以来じゃないっけ。シークレットゲストでBRAHMANが出た時。調べたら、2008年1月13日でした(その後、2016年3月10日にも、日本武道館をやっている)。
 で、The Birtdayでも同じくで、初の日本武道館以来かも知れない、イスありのホールで観たの。調べたら、2008年1月12日でした(その後、2012年12月19日と、2015年9月15日にも日本武道館をやっている)。
 あと、松本市は何度か行ったことあるけど、長野市に行ったのは初めてでした、私。と、見事にライブの内容に関係ないことだけ書いて終わる。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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