兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第117回[2022年10月前半・『PIA MUSIC COMPLEX』の1日目、同2日目、サカナクションとUnderworld、『京都音楽博覧会2022 in梅小路公園』、アナログフィッシュ『ジョントポール』の〈佐々木set〉、同〈下岡set〉、電気グルーヴ、またアナログフィッシュ、の8本を観ました]編

コラム | 2022.10.26 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、基本音楽・時々それ以外(演劇とかお笑いとか)、基本生・時々配信で観たすべてのライブについて何か書いて、半月に一回アップしていく連載の117回目・2022年10月前半編です。待ちに待った電気グルーヴのぴあアリーナMM、長年大好きなUnderworld、3年ぶりの生の『京都音博』など、しみじみとうれしいライブがいろいろあった半月でした。あと、アナログフィッシュを半月の間に3本観る、というトリッキーなこともありました。

10月1日(土)11:30 『PIA MUSIC COMPLEX 2022』1日目@新木場・若洲公園

 3年ぶりの開催のぴあのフェスで、今年はぴあという会社ができて(つまり、情報誌のぴあが創刊されて)50周年を記念してのイベントでもある。
 ステージは、WIND STAGEとCAMP STAGEとSTAR STAGEの3つ。同じ大きさのステージを2個並べて、もしくはエリアの両端に向かい合わせに建てて、ライブが終わるともう片方のステージですぐに始まる、という方式を取り入れているフェスが最近は多いが、この『PMC』は、3つとも違うエリアにある。
 朝から別の仕事が入っていて、昼過ぎにそれが終わってから若洲公園に向かったので、観れたの、途中からです。この日観たのは以下。
 ヤバイTシャツ屋さん→reGretGirl→ハルカミライ→04 Limited Sazabys→indigo la End→Saucy Dog
 ヤバイTシャツ屋さん、こやまたくやが「どうも、Saucy Dogです!」と挨拶すると、しばたありぼぼが「遠くの人とかだまされんちゃう?」、こやま「人数が一緒、編成も一緒!」。3人編成で、男ふたり女ひとりなのが、同じってことね。パートが違うけど。
 あと、ハルカミライを1ヵ月半ぶり(『MONSTER bash』以来)に観て、ライブのテンションも人気の上がり方もほんとに破竹の勢いなんだなあ、と確認したり、04 Limited Sazabys、モッシュもクラウドサーフもできないのにバンドもお客も全然平気で盛り上がる、そういう光景がすっかり普通になったんだなあ、となんかしみじみしたり、いろいろ楽しみました。
 あと、天気いいって大事。って、あたりまえだけど、先週末は3連休中の3日とも野外ライブに行って、うち2日は雨に打たれたもんで、改めてそう実感した。翌日に続く。

10月2日(日)11:30 『PIA MUSIC COMPLEX 2022』2日目@新木場・若洲公園

 『PMC』の2日目。この日観たのは以下。
 ズーカラデル→キュウソネコカミ→ハンブレッダーズ→Vaundy→神はサイコロを振らない→クリープハイプ→KALMA→Hump Back→Mrs.GREEN APPLE→w.o.d.→マカロニえんぴつ
 2022年、春から秋にかけて各地のフェスで、今年もっとも人気があったのは、Saucy Dog、Vaundy、マカロニえんぴつの3つ。コロナ禍のブランク期間が終わったら、この三強の時代になっていた、というくらい、2019年までとは状況が変わった。オーディエンスも若くなったし。
 なので、チケットが売り切れた日は、この三強が揃っている日、というフェスも、各地であった。で、三強のうちふたつが揃った、この『PMC』の2日目も売り切れ。再始動したMrs.GREEN APPLEも出ていた、というのも大きいのかもしれない。
 とか考えながら若洲公園に向かったが、ズーカラデルや、ハンブレッダーズや、Hump Backの人気を目の当たりにして、それだけじゃないかも、と、考えを改めた。その二強+Mrs.GREEN APPLE以外にも、その3バンドのような、今の若い世代が観たいアクトが揃っているからかもしれない。Hump Backなんて、この2日間でいちばんじゃない? っていうぐらい、CAMP STAGE、満員だったし、すんごい盛り上がっていた。
 余談。この日も好天だったのだが、ハンブレッダーズのムツムロアキラ、MCで、「暑い……俺たちがSaucy Dogぐらい売れたら、ぴあフェスに避暑地を作ります」。前日のヤバTもそうだし、Saucy Dog、そんなふうにちょいちょい名前を挙げられるくらい、「売れたバンドの象徴」みたいな存在になっているんだなあ、と実感した。
 4年半前にこのDI:GA ONLINEで行ったインタビュー、今となっては貴重かも。こちらです。≫ DI:GA ONLINE:Saucy Dog石原慎也(Vo/Gt)にインタビュー!年間120本ペースでツアーを回り続けてきた彼らの活動ポリシーとは?

10月4日(火)18:00 サカナクション、Underworld@東京ガーデンシアター

 この、東京ガーデンシアターでのサカナクションとUnderworldのカップリング・ライブ、7月の5・6日に行われるはずだったが、山口一郎の体調不良による休養で、延期された。で、10月4・5日で振替公演の日程が出たが、その後、山口一郎の体調回復が遅れているので出演できない、今回は延期はせず、サカナクションのステージは、他のメンバー4人によるDJセットで行う、という発表があった。希望者はチケットの払い戻しも受け付ける、という形で。
 で。サカナクションの「4人によるDJセット」って、あれかな、いつもライブの中盤くらいに5人でMacの前で横一列になって、インストゥルメンタル曲をやるコーナー、あるじゃないですか。ああいう感じなんだろうな、と思ったら、全然違った。
 機材もっとごっついし、ギターもベースも鍵盤も使うし、「DJセット」というよりも「サカナクションの過去の曲を使って新しい曲をものを作る」という感じ。リミックスともまた違う。もっと刺激的だし、もっといろんな発見がある。60分があっという間だった。
 で、Underworld。「Juanita 2022」で始まり、「Two Months Off」「Border Country」「Push Upstairs」「Ball」「Jumbo」「King Of Snake」「Rez/Cowgirl」などを経て「Born Slippy Nuxx」で終わる全12曲。25年くらい大好きな人たちが、大好きな曲を次々とやってくれる、夢のような時間でした。大満足。懐メロとか言われても「それが何か? こっちは喜んでそれにおカネ払ってるんですけど!」と胸を張りたくなるような。次の来日も観るだろうな。

10月9日(日)12:00 『京都音楽博覧会2022 in梅小路公園』

 2020年・2021年のオンライン開催を経て、3年ぶりに従来の形で、梅小路公園で行われた、くるりプレゼンツの『京都音博』。今年は、マカロニえんぴつ、Vaundy、Antonio Loureiro & Rafael Martini、SHISHAMO、槇原敬之、くるりの6組が出演した。トップのマカロニえんぴつと二番手のVaundyの間に雨が降り始めて、そのまま最後までやまなかった、という、なかなかにタフな状況だったけど、おもしろかったです、とにかく。
 某ウェブサイトに書いたレポ、納品済みなんだけど、まだアップされていないので、されたらリンク貼ります。

10月10日(月祝)15:30 アナログフィッシュ『ジョントポール』〈佐々木set〉@代官山SPACE ODD

 ボーカル&ギターの下岡晃と、ボーカル&ベースの佐々木健太郎。3人のメンバーのうちのふたりが、自分で詞曲を書いて歌うボーカリストで、しかも「こっちがメインでこっちはサブ」というのがなくて、50/50。なので、「なんで一緒にやってるの? 普通はこれ、それぞれ自分のバンドを組むやつじゃない?」という疑問込みで登場して、そのまま20年以上やっているのがアナログフィッシュというバンドなわけだが、この『ジョントポール』は、そのふたりの曲を分けて行う企画ライブである。16年前にも一度やっている。タイトルの意味は、説明するまでもないですね。
 15:30開演の方が佐々木健太郎の曲のみ、18:30開演の方は下岡晃の曲のみ。1本のライブで二部構成、ではなくて、2本の別のライブとして行われるので、チケット代も別である。なお、10月10日は「トトの日」ということで、アナログフィッシュ、毎年必ず何かやっていて、今年はこの企画です、という意味合いもある。
 にしても。これ、アイデアとしてはおもしろいけど、両者のチケットの売れ行きに差がついたらどうすんのよ。怖いことするなあ。と思ったが、2本とも観たら、ほとんどの人が両方行ったことがわかった。1本目と2本目の間の時間、SPACE ODDの上のカフェ、満席で入れなかったし。
 でも、同じ心配、佐々木健太郎にもあったようで、後半のMCで、「こんなに来てくれてよかった、ほとんど下岡のお客さんで、俺の方、20人ぐらいだったらどうしようと思ってた」。「逆もあるかもしれないよ?」と下岡晃。で、ふたりで「お互いのこの自己肯定感の低さ!」などと言い合う。確かに。
 本編は、「Ready Steady Go」で始まり「スピード」で終わる17曲。新曲もやった。で、アンコールは、お互いの曲を交換して歌う、ということで、下岡晃曲の「抱きしめて」。新鮮だけど違和感なかった。続く。

10月10日(月祝)18:30 アナログフィッシュ『ジョントポール』〈下岡set〉@代官山SPACE ODD

 しかし、こういう「1日2公演」のライブ、2020年の最初のコロナ禍の緊急事態宣言が終わった頃、(キャパの半分以下しか入れられないので)いろんなアーティストがトライしていたけど、その場合、体力のことを考えて、一回の尺を短めにするのがセオリーだった。コロナ禍関係なく「1日2公演が定形」である、ビルボードライブやCOTTON CLUB等でのライブも、どのアーティストも尺、短い。なのにアナログフィッシュ、昼に18曲も全力でやっちゃって大丈夫か? 若くもないのに。いや、俺よりは若いけど。
 で、2公演目の下岡晃set。19曲やりました。本編は「うつくしいほし」でスタートして新曲で終わる17曲、アンコールで佐々木健太郎曲である「Fine」を下岡晃ボーカルで追加。で、「ああ、『No Rain(No Rainbow)』やってくれなかったけど、それ以外は文句なしだな」と思っていたら、まさかのダブルアンコールで、その曲をやってくれた。
 後半のMCで下岡晃、「こうしてみると、健太郎さんのセットと俺のセット、全然違うよね。なんでバンドやってんだろうね?」。それを受けて健太郎、「俺も思った」。下岡晃「でも、それがいいんだろうね」。はい、そう思います。
 あ、あと、 1公演目も2公演目も、ドラム&コーラスの斉藤州一郎が1曲歌う(というか、歌わされる)コーナーも設けられた。1公演目は「オブラディ・オブラダ」、2公演目は「イエロー・サブマリン」の日本語版でした。『ジョントポール』なので、ビートルズ縛りということですね。

10月15日(土)18:30 電気グルーヴ@ぴあアリーナMM

 ピエール瀧の逮捕→謹慎以降、配信ライブ2本、フェスやイベントやファンクラブ会員限定ライブを4本行ってきた電気グルーヴだが、大々的にでかいところでやるのは今回が初めて。アリーナで自分たちのライブをやるのは、28年ぶり。
 というようなデータも入れて、ぴあにレポを書きました。未読の方、ぜひ! ≫ ぴあ:【ライブレポート】電気グルーヴ、28年ぶりのアリーナライブで完全復活!「イェイ、かっこいいだろう! 電気グルーヴだ!」

10月16日(日)15:00 アナログフィッシュ@ビルボードライブ横浜

 6日前に観たばかりのアナログフィッシュを、なんでまた観に行ったのかというと、そもそもこのビルボードライブ横浜は、毎年恒例の『ナツフィッシュ』として、7月30日(土)に行うはずだったのが、メンバーのコロナ感染で延期になった。で、その振替日程が、『ジョントポール』の翌週末で出た、ということなのだった。15:00と18:00の1日2回公演。
 その7月30日のやつ、そもそも行くつもりだったし、「振替日程が出たら『ジョントポール』の直後になったから行かない」っていうのもなあ、と思って、15:00からの公演に行った。行ってよかった。本編12曲アンコール1曲の全13曲中、『ジョントポール』でもやったのは「世界は幻」と「アンセム」と新曲×2の4曲だけ、あとの9曲はかぶりなしだったので。「Yakisoba」など、聴けてうれしい曲多数。
 あと、5曲くらいやったところで佐々木健太郎が「やっと緊張が抜けてきた」と言うまでは、初めてのビルボードライブでアガっていたということに気がつかなかった。大丈夫ですよ、しっくりきてましたよ、と言いたい。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る