兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第118回[2022年10月後半・ユニコーン×2、ビッケブランカ等の6本を観ました]編

コラム | 2022.11.04 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、観たすべてのライブの短いレポを書いて、月二回に分けてアップしていく連載の118回目・2022年10月後半編です。基本的に生で観ていますが、時々配信で観たものもあります──と、コロナ禍以降は書いてきたものの、最近は配信、少なくなっていました。が、今回はユニコーンの呉2デイズを配信で観て、「配信って便利!」と、今さら改めて思い知りました。あとは、大阪に行ったり名古屋に行ったりの、全6本です。

10月20日(木)19:00 ユニコーン@呉信用金庫ホール/Stagecrowd

 広島県呉市は、ユニコーンのドラマー川西幸一の出身地であり、2021年12月に東京から居住地を移した、つまりUターンした街。なので、今は、仕事があるたびに東京などに行き、普段は呉にいる、という生活だそうで、地元のRCCラジオで自分の番組『かわにしんち』を持ったり、広島テレビの夕方の帯番組『テレビ派』にレギュラー出演したりしている。
 で、ユニコーン、その川西さんの移住の数年前から、ツアーに呉も組み込むようにしていたが、今回はツアーの一環とかではない。呉信用金庫ホールで10月20・21日の2デイズ、1日目は川西さんの63歳の誕生日を祝う『川西誕生祭』であり、2日目は1987年にユニコーンがファースト・アルバム『BOOM』をリリースした日、つまりデビューからぴったり35年の日に行うアニバーサリー・ライブである。
 2日とも、配信で観ました。なお、呉、ギターのテッシー(手島いさむ)の地元でもあります。
 まず1日目。1曲目、川西さんボーカル・OTドラムで最新アルバム『ツイス島&シャウ島』収録曲の「R&Rはぐれ侍」でスタート、次も川西さんボーカルで「素浪人ファーストアウト」。というあたりまではよかったが、その後、曲が終わるたびに、OTが「もうこの曲なの? 普通最後の方じゃないの?」と言ったり、ABEDONが足下のセットリストを見ながら「これ、嘘じゃないですよね? 先が思いやられますけど」と言ったりする。で、7曲目に「すばらしい日々」をやって、OT「ありがとう! さようならー! って帰るやつやないかーい、さっきから全部!」
 で、中盤、16曲目の「SAMURAI 5」の中盤のブレイクでは、

ABEDON「先が思いやられるぜ。なんだこの曲順は。最初にメインディッシュが出てきてるじゃないか」
OT「曲順ってこんなに大事なのか!」
ABEDON「順番てものがあるんだ、役割が! わかったか!」
OT「大事な曲がいっぱいあったことを知ったぞ!」
ABE「そうなんだ! 違う意味でだろ?」
OT「そう。あれがないとこんなにしんどいのか、みたいなことだろ?」
ABEDON「そうなんだ、あれがあってこその、この肉、みたいな。間にチャプチェを入れないと、ハラミに行けないだろ?」
OT「ハラミしか出てきとらん」
ABE「(川西に) わかったか、何歳になったか知らないけど、この坊主!」
川西「いい体験をしたでしょ?」

 つまり、誕生祭ということで川西さんが考えた曲順が、かなりアレなものだったわけです。もう大笑い。おもしろすぎて、上記のMC、つい書き起こしてしまった。翌日に続く。

10月21日(金)19:00 ユニコーン@呉信用金庫ホール/Stagecrowd

 この日のタイトルは、『UNICORN 記念特番〜5人でノリノリ35祭〜』。だからだと思うが、1曲目、いきなり「Maybe Blue」で始まる、というサプライズ。ユニコーンは解散前の活動後半の時期、ファースト・アルバム『BOOM』の曲は一切ライブでやらなくなっており、この「Maybe Blue」などは、メドレーでイントロをやってお客さんが「キャーッ!」となったところで、イントロで終わって次の曲に行く、みたいなことをしていた。で、2009年に再始動して以降で二度目のツアーの時、この曲が始まって、お客さん「またイントロだけでしょ?」と思ったらOTが歌い始めてみんなびっくり&思わず落涙、ということがあったのでした。下手したらその時以来かも、この曲をやったの。
 で、それ以降、ところどころは昨日と同じだけど、ところどころは昨日と違う、でも結局昨日と同じく、やる側の体力を激しく奪う曲順。この日も川西さんが考えたそうです。その結果、昨日と同じく16曲目にやった「SAMURAI 5」では──。

ABEDON「なんだこの曲順は。ラーメンを食べたあとにトンカツを食って、トンカツを食べたあとに唐揚げを食って、唐揚げを食った後にホルモンを食べて、次は何を食うというんだ?」
川西「ステーキ。食おうや」
OT「今日は普通でよかったんだよ、ほんとは」
ABE「そうなの。これも川西くんが決めた曲順だろ?」
OT「そう」

 という展開になったのだった。アンコールではOT、

「同じ曲をやっても、順番は大事よ? いつもは僕たちユニコーンの場合……俺のソロもか、舞台監督が決めるんすよ。セットリストをね。自分らがやりたい曲と、お客さんはこういうの観たいんじゃないか、っていうのを(合わせて)、うまいことやるんです。でも(今日の)これ! お客さんはお客さんでダメージを食らってんのよ?『この曲順はさすがにやめてー』と思ってるのよ。やった曲はいいよ? 流れよね」

 というわけで、この日も大笑いでした。なお、アンコールで「HELLO」と「働く男」をやって、35周年の祝いで5人で樽酒を鏡割りして締めくくり。その日本酒「酔心」の、ユニコーンのラベルのバージョンが発売になる、ということです。

10月22日(土)12:00 『Band on the Run』@大阪城音楽堂

 なぜか大阪城音楽堂に行ったことがない。一度は行きたい。できればお世話になっている大阪のイベンター、清水音泉の興行がいい。と、以前から思っていたら、フラワーカンパニーズやPOLYSICSやニガミ17才が出る清水音泉のイベントがあると知る。おお、ちょうどいい。というわけで、仕事じゃないし呼ばれてもいないのに、行きました。
 出演順に書くと、ネクライトーキー、ニガミ17才、SAKANAMON、POLYSICS、Helsinki Lambda Club 、ヒトリエ、ビレッジマンズストア、フラワーカンパニーズの8組。12時の開演から20時の終演まで、大阪城音楽堂から一歩も出ず、全アクト、じっくり観た。
 ニガミ17才、岩下優介が「最後に」と言って「かわきもの」に入った時点で、まだ持ち時間の半分も経っておらず、「え、もう?」と思っていたら、途中で曲を止め、「待って。俺、曲、飛ばしたよね?」。平沢あくび、「そうだよ! めちゃ慌てたよ!」。で、演奏に戻ってこの曲を15分くらいやったあとで、飛ばした「おいしい水」を追加。
 「25周年なので1年かけて25本・全会場で新曲を発表していく」というむちゃなツアーをやっているPOLYSICS、この日は「シーラカンス イズ アンドロイド」「Crazy My Bone」「Let’sダバダバ」等の鉄板曲を畳み掛けてくれるうれしいセトリ。で、コロナ禍以降、お客さんと「トイス!」の掛け合いができないので、サンプラーに「トイス!」を入れてお客さんが腕を振り上げるタイミングでフミが押す、ということを続けてきたが、業界のオペレーションが「ライブでの発声、25%までOK」に変更になったので、ハヤシ、「一回だけ生『トイス!』、やってもらっていい?」とオーディエンスに求め、2年半ぶりにみんなで「トイス!」と叫ぶ。という、とてもいい光景が繰り広げられた。
 で、トリ、フラワーカンパニーズ。「行ってきまーす」「パンクはうまく踊れない」「まずはごはんだろ?」「借りもの競走」「JUMP」「深夜高速」「真冬の盆踊り」の7曲。最後を「深夜高速」「真冬の盆踊り」で締めたところに、トリの責任を果たそうという姿勢が見えた。実際、そのフラカンのおかげで、とてもいい空気で終わった、イベント自体が。

10月28日(金)19:00 『レッドシューズ40』@EX THEATER ROPPONGI

 数々のミュージシャンに愛される、西麻布→南青山のロック・バー、レッドシューズの40周年記念イベント。門野久志オーナーが書いた本『レッドシューズ40〜ロックの迎賓館の40年』の出版記念パーティーでもある。
 この日、バンドはふたつ出演。ひとつめは、この日のために冷牟田竜之が結成したスカ・バンド、PAINTで、冷牟田(サックス)、LÄ-PPISCHからMAGUMI(ボーカル)・杉本恭一(ギター)・tatsu(ベース)、そして荒木玲(ドラム)、青木ケイタ(バリトンサックス)、YOSHIO(トロンボーン)、岩井ロングセラー(キーボード)というメンバー。スカのスタンダード・ナンバー等に加えてLÄ-PPISCHの「OUR LIFE」や「パヤパヤ」もプレイ。
 で、ふたつめは、ドラム池畑潤二、ベース井上富雄、ギター花田裕之、つまりルースターズの3人に、ギターイマイアキノブとキーボード堀江博久が加わったスペシャルバンド。で、最初は堀江博久がいなかったり、曲によって花田&イマイが下がったり、また加わったりしながら、ゲストボーカルを迎えていく、という構成。なお、頭2曲は花田裕之ボーカルでルースターズの「WIPE OUT」と「Do The Boogie」。しびれました。
 で、3曲目からは、土屋アンナが登場して「I Love Rock’n Roll」、そこにHISASHI(GLAY)が加わってブロンディの「Call Me」と土屋アンナの「rose」。
次のゲストは奥田民生&浜崎貴司、「デスペラーダー」「花になる」ビートルズの「Come Together」と「Money」(※正しくはビートルズの曲ではないが、ビートルズのカバーで知られている)の4曲を歌う。
 そして、鮎川誠登場。まず自身のボーカルで「ビールス・カプセル」と「ホラ吹きイナズマ」。で、LUCY MIRROR(鮎川誠&シーナの三女。シナロケのライブにレギュラーで参加している)がボーカルで「レモンティー」と「You May Dream」、サックスで藤井尚之も加わる。
 最後は、出演者全員でT-Rex「20th Century Boy」、ローリング・ストーンズ「Let’s Spend The Night Together」。さらにアンコールでは、門野久志オーナーのMCを経て、全員で「Johnny B. Goode」(チャック・ベリー)と「Satisfaction」(ローリング・ストーンズ)──。
 と、とにかく豪華で貴重な時間だった。池畑&井上&堀江をバックにOTと浜崎貴司が歌うとか、ルースターズやシナロケやザ・ロケッツの曲を生で聴けるとか、LÄ-PPISCHの2曲とか。
 なお、このライブ、12月25日(日)19:00〜21:00、フジテレビNEXTで放送があるそうです。詳細はこちら。≫ https://otn.fujitv.co.jp/b_hp/922200190.html

10月29日(土)18:00 フラワーカンパニーズとピーズ@DIAMOND HALL

 フラワーカンパニーズが地元名古屋で毎年この時期に、ゲストを招いて行っているイベント『DRAGON DELUXE』、今年はピーズを招いての2マン。仕事になろうがならなかろうが、ほぼ毎年行っているもんで、ピーズが出るならなおのこと、と思っていたら、「あ、行くんですか? じゃあレポお願いします」と、ぴあから仕事をいただきました。こちらです。ぜひ。≫ ぴあ:【ライブレポート】爆笑のオープニングで開演! フラワーカンパニーズ×ピーズ『DRAGON DELUXE 2022』

10月30日(日)17:30 ビッケブランカ@東京ガーデンシアター/CSテレ朝チャンネル1

 日程としては、メジャー・デビュー5周年の全国ホールツアーのファイナルなのだが、という意味合いだけではなくて、「ビッケブランカが新たにスタートさせるイベント第一弾!」ということで、「Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD-軌-」と銘打って開催された、初めての大会場ワンマン。
 本編での本人のMCによると、年に一回(とまだ決めたわけではなくて、もっと早いペースになったりするかもしれない、とのこと)、自分とみんなで集まって、この1年のことを報告し合うような場所にしたい、という趣旨。
 CSテレ朝チャンネルで生中継あり。どでかいステージセットあり、ステージのまんなかから花道あり。中盤からバンドにストリングス×2が加わり、後半では4人のダンサーが登場──という、エンタメの限りを尽くすみたいなステージだったが、始まって数曲経ったところで気がついた。
 そんな華やかで大掛かりなライブなのに、ビジョンがない。ステージの模様を映す、もしくはVJ的な効果映像を出したりする画面がないのだ。ここ東京ガーデンシアター、なんせでかいハコなので、自分が観てきたいろんなアーティストのライブやイベントでは、ほとんどの場合、ビジョンを入れていた。
 じゃあ今日のビッケブランカ、経費をケチったのかというと、生中継ありなんだから、機材もカメラクルーも入っているわけで、つまり「あえてそうしている」ということになる。なるほど。
 というふうに、「ソロ・アーティストがアリーナ規模の会場に進出する時のセオリー」に、沿っているようで沿っていない、ビッケブランカ流の「こうしたい」「こうでなきゃいけない」という意志に貫かれているライブだった。人柄がそのままパフォーマンスになっている、というか。こんなでかいハコなのに、お客さん、彼のことをとても近く感じたのではないかと思う。で、今日来た人、次もまた、必ず来ると思う。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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