兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第125回[2023年2月前半・爆笑問題&伊集院光、エレ片、Hump Backなどの6本を観ました]編

コラム | 2023.03.06 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(主に生・時々配信で、主に音楽・時々それ以外)について、何か書いてアップしていく連載の125回目です。
 普段は半月に一回のペースですが、1ヵ月の間に観る数が15本を上回る場合は、月三回に分けたりもしています。
で、この2023年2月は、5日に「1日3本観る」という事態が起きたりして、合計17本になることがわかったので、三回にしました。以下、その一回目=2月1日から9日までの、6本のレポです。

2月4日(土)18:00 グソクムズ@渋谷WWW

 2022年12月14日リリースの2ndアルバム『陽気な休日』のリリース・ライブ。自分がこのバンドのライブを観るのは3回目で、ワンマンは初。なので、本編17曲+アンコール2曲の全19曲、たっぷり堪能できてうれしかった。
 『陽気な休日』収録の10曲は全部やったし、それ以外も音源と過去2回のライブで耳になじんでいる曲を、次々と聴かせてくれたし、満員のフロア、終始いいムードだったし。MCによると、当初は自分たちでも心配したが、結果、300人近く入ったそうです。
 ボーカル&ギターのたなかえいぞをの声がいい。メロディがいい。歌詞がいい。そして、基本的にうまいんだけど、うまいだけじゃなくて、歌のタイム感や抑揚と絶妙にマッチしている、つまりメンバー3人の「わかっている」演奏が、とてもいい。わかっていない、もしくは、わかっていてもそれを楽器で表現できないメンバーが、いないんだと思う。
 あと、基本的にフニャッとしていて、シリアスなことや熱いことは一切言わない、楽曲の端正さとはギャップがあるMCも、とても好きです。自分より若い世代のライブを観ていて、そこまで熱く長く語らなくていいのに、「曲を聴けば伝わるから説明はいらない」という自信を持てばいいのに、と思うことが、普段多いもんで。

2月5日(日)13:00 エレ片『コントの人』@銀座 博品館劇場/Streaming+

 エレキコミック+片桐仁の『エレ片 コントの人』、今年は『Nana aita pe’ape’a(ナーナ アイタ ペアペア)』というタイトルで、東京は2月3・4・5日に銀座 博品館劇場で5公演、大阪は2月11・12日にサンケイホールブリーゼで2公演。東京の2月5日は昼夜2公演とも生配信&アーカイブ配信ありで、大阪は最終日の後にTBSラジオの彼らの番組『エレ片のケツビ!』の公開収録あり。
 その中の、2月5日の昼公演を生で観た。いつものことだが、もう笑った笑った。で──これは「いつものこと」じゃなくて「ここ1〜2年の公演で特に顕著であること」な気がするが──観ていて怖くなるような狂気を感じる瞬間も、多々あった。特にラストのコント。松尾スズキが1996年に芝居のタイトルにしたり、2000年にミュージカル『キレイ』の中の楽曲名に使ったりしていた、「宇宙は見えるところまでしかない」という言葉を思い出した。

2月5日(日)17:30 神はサイコロを振らない@Zepp Haneda(TOKYO)

2月5日(日)20:45 板歯目@下北沢MOSAiC

 女性ボーカル&ギターと男性のベースとドラムの3ピース・バンド、3人とも1年前まで高校生だった19歳。知人に「いいバンドいますよ、一回観ません?」と誘われており、スケジュールを調べたら、この日、下北沢のライブハウス4軒で行われているサーキット・イベント『Tokyo Zero Circuit 2023』の、下北沢MOSAiCのトリに出ることを知った。で、昼に銀座でエレ片を観て、そのあと天空橋に行って神サイを観て、終わったらすぐ下北沢に行けば、間に合いそう。と、わかったので、大急ぎで移動した。
 めちゃくちゃかっこよかった。ジャンルで言うと、パンク、グランジ、ガレージあたりを足しっぱなしにした感じ。フラワーカンパニーズに「人間の爆発」とタイトルの曲があるが、まさにそれ。3人それぞれが、1曲1曲で爆発しまくっている。
 家に帰って、改めて音源を聴いた。曲名、「くそったれ人生最悪の」「コドモドラゴン」「でっかいサンダル」「ちっちゃいカマキリ」「常識は超地獄だ(付録)」「地獄と地獄」などなど。どうでしょう。すばらしいでしょう、言語感覚も。この日以降、よく聴いています。ライブもまた観たい。

2月7日(火)19:00 『爆笑問題カーボーイ ついでに馬鹿力』出演:爆笑問題・伊集院光@LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)/PIA LIVE STREAM

 TBSラジオ月曜〜金曜25:00〜27:00の枠『JUNK』の20周年を記念して、2月7・8・9日に、LINE CUBE SHIBUYAで、各曜日のパーソナリティーたちが出演するイベントが行われた。
 8日は『山里亮太の不毛な議論』プレゼンツで、南海キャンディーズ/ウエストランド/空気階段/トム・ブラウン/錦鯉/ネルソンズが出演する『他力本願ライブ6』。9日は『おぎやはぎのありがとうびいき(仮)』と題して、おぎやはぎとバナナマンが出演。そして初日の7日は、『爆笑問題カーボーイ25周年ライブ~ついでに馬鹿力~』というタイトルで、爆笑問題と伊集院光が出演する。
 伊集院光がTBSラジオのイベントに出ること自体が、リスナーにとっては大事件(これまで出なかった理由は、番組で何度も語っている)。しかも爆笑問題が一緒なので、こんなの、チケット取れるわけない。ダメもとで、先行予約で申し込んだが、もちろん外れた。よかった、生配信があって。
 爆笑問題が、この日のためだけに作った(ことを、この日の夜の『爆笑問題カーボーイ』の放送で知った)新ネタの時事漫才でスタート(15分以上あった)。その後は、伊集院光を呼び込んで、ラジオのスタジオのセットで21時までフリートークするさまを観る。
 つまり、普段タダでラジオで聴いているのと同じものを、おカネを払って観ている、という状態なのだが、めちゃめちゃ笑ったし、めちゃめちゃおもしろかったし、めちゃめちゃ楽しかった。なので、「観てよかったあ」と思った。ということ自体が、自分でも不思議だった。

2月9日(木)18:30 Hump Back ゲスト:炙りなタウン@渋谷Spotify O-EAST

 対バンツアー「Hump Back pre. "tour tour tour 2023 "」の初日。昔、電気グルーヴが「ツアーツアー」というタイトルのツアーをやったのと、ちょっとかぶっているが、偶然だと思います。その電気のツアー、23年前だし。
 ツアーの初日というと、まだ手探りだったり、パフォーマンスが仕上がる前だったりして、最初の何本かで徐々に固まっていくものだが (私の知っているベテランバンドはそういうケースが多いです)、ツアー以外の時期も、イベントや他のバンドのゲストやなんかで常にライブをやっている……いや、ツアー中でも、並行してそういうステージにも立っているな、この人たち。
 という、「ライブやる時期」「やらない時期」のオン/オフのスイッチがオンに入ったままでぶっ壊れているバンド、Hump Backならではの、絶好調なライブを見せてくれた、この日も。アンコール合わせて16〜17曲くらいやったが、「え? もう終わり?」と思うくらい、ほんとにあっという間。
 なお、この初日の対バンは、岡山県倉敷市の炙りなタウン。Hump Backの影響も見える、後輩的な3ピース・バンドで、MCで林萌々子も「かわいくてしかたない」みたいなことを言っていたが、Hump Backと比較するともっとパンキッシュで荒々しい感じで、そこを魅力に感じた。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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