「スタンディングで超満員、声出しOK、シンガロングOK」のライブを、神はサイコロを振らないが初めて体験した日──『雪融けを願う飛行船』ツアーファイナル、Zepp Haneda(TOKYO)

ライブレポート | 2023.02.10 18:00

神はサイコロを振らない Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」
2023年2月5日(日)Zepp Haneda(TOKYO)

 メジャー・デビューしたのが、世の中がコロナ禍になってから5 ヵ月後の2020年7月だった。だから、新曲をリリースするたびに注目度が集まっていくが、ライブ活動はままならない、という状態が、しばらく続いた。
 その後、ようやくライブをやれるようになったが、2021年5月~6月のツアーは──僕は5月30日のZepp Tokyoを観たが──本来スタンディングの1階フロアにもイスを出して、声出しはNG。次の東京での大きなワンマン=2022年3月20日・日比谷野外大音楽堂でも、声出しはできず。次の7月16・17日のLINE CUBE SHIBUYA 2デイズも同じで、座席はびっしり満員だが、声出しはNG──。
 コロナ禍で、ライブでお客さんの声がきけないからこそ、あえてシンガロングのパートがある曲を作っている。と、日比谷野音を控えた時期の、このDI:GA ONLINEでインタビューで、柳田周作は言っていた。そして「野音の時にはみんな歌える状況になったらいいな、っていう希望もまだ捨ててない」とも語っていた(こちら)。
 結果、それは野音でもかなわなかったわけだが、その次のツアー=2023年1月15日(日)の福岡から始まり、21日(土)名古屋、22日(日)大阪Bayside、29日(日)札幌、と、全国5都市のZeppを回るツアーを、LINE CUBE SHIBUYAのアンコールで発表した時、『雪融けを願う飛行船』というタイトルを付けたのは、その頃にはみんなで歌えるようになっているんじゃないか、という気持ちをこめたから、ということを明かしていた。(その日のライブレポはこちら

 そして。そのツアーが始まった時は、まだ、「ちょっとは声出していいけど全開はダメ」みたいな、微妙なルールだった。しかし。そのツアーの最終日=2月5日(日)Zepp Hanedaの時には、「マスクをしていれば声出しOK」というオペレーションになったのだ。
 オールスタンディングの大型ライブハウスで、フロアも2階後方の立見エリアもオーディエンスでびっしり埋まっていて、曲に合わせてジャンプしたり腕を振り上げたりしながら、曲を一緒に歌う──そんな、コロナ前ならごく普通のライブを、デビュー以降初めて、神はサイコロを振らないが味わうことになった、記念すべき日。それがこのライブだったわけである。
 ……いや、違う。「デビュー以降初めて」じゃない。コロナ禍前だったデビュー前の頃から、「盛り上がらない」「お客さん棒立ち」「動員が増えても棒立ちが増えていく」というライブだった、それが悩みの種だったバンドが、神はサイコロを振らないなので(そのへんについても言及しているインタビューは、こちら)。
 つまり、神サイ結成以来初めてだった、ということだ。この日のMCで、本人たちもそのことに触れていた。

柳田 周作(Vo.)

 というわけで、ステージの下はもちろん、ステージの上も、ライブの頭から、もう尋常ではない熱量。柳田周作、1曲目「巡る巡る」の最初の一節を歌い終えるや否や、「跳べ! おい、全然足りねえ!」とオーディエンスに叫ぶ。続く「タイムファクター」では、1ブロック歌い終わるたびに「聴かせろ羽田!」「聴かせろ東京!」とアオる。4曲目「LOVE」では、オーディエンスを1階と2階に分けて腕を振らせ、曲が終わると「みんな、タオル持ってる?」と、コロナ禍のライブで声が出せない代わりに編み出した「Call & Towelponce」を始める──と、序盤から飛ばしっぱなし。
 7曲目では、2022年12月16日にリリースした「朝靄に溶ける」を、同曲に参加しているasmiを呼び込んでデュエットで聴かせる。その他の、昨年秋から今年1月にかけて連続で配信リリースした2曲「キラキラ」と「夜間飛行」も、本編ラストのブロックで披露した。
 asmiが去り、「目蓋」「徒夢の中で」のバラード2曲をじっくり聴かせたあとは、「女の子!」「男の子!」と分けて歓声を上げさせ、「声出しOK」になったことをメンバー4人で喜ぶ。
 「解放宣言」「桃色の絶対領域」とアッパーな曲を並べてフロアを歓喜させ、「踊れる準備はできてるか?」という言葉から入った、ファンキーな「愛のけだもの」では、オーディエンスはダンスとハンドクラップで、ステージにエネルギーを投げ返した。

吉田 喜一(Gt.)

 「おまえたち最高の顔してんぞおい! ずっと見えてんだよキラキラしてる顔がよ! いくつになってもキラキラしてていいんだぜ!」と突入した本編最後のブロックは、さっきも書いたように、「キラキラ」「クロノグラフ彗星」「夜間飛行」と、新曲2曲でライブの定番曲をはさんだ構成。ラストに「夜間飛行」を持って来たのは、神サイの中で最新の、シンガロング曲で終わりたかったからだと思う。
 「走り出せばいいぞ、生きろよ! 転んでも、つまずいても、また絶対立ち上がってな!」と間奏部分で伝えた柳田周作は、オーディエンスをしゃがませて「今日イチのでっかいジャンプを見せてくれよ!」と、頼んだ。
 それに応えてオーディエンスが一斉に飛ぶさまは、コロナ禍の数年間失われていた光景であることと、神サイにとっては初めてであること、両方の意味で、とても感動的なものがあった。

桐木 岳貢(Ba.)

黒川 亮介(Dr.)

 オーディエンスが、「illumination」の「♪ラララ」の箇所をみんなで歌いながら手拍子する、という形でアンコールを求める。それに応えて出て来た4人、まず神サイ屈指の激しさの「パーフェクト・ルーキーズ」で、フロアを沸騰させる。
 曲が終わると、柳田周作、長めに時間をとってMC。コロナ禍でライブができなかった時、4人で短編映画を撮影したりして音楽以外の活動をしていくうちに、メンバーを大好きだと思った、それまではそんなこと感じなかった──と、ひとりひとりを紹介し、「この場を借りて」と、3人に頭を下げてお礼を言う。
 音楽をする理由をいつも考えているが、みんなのことが好きだから。神サイの音楽があるから生きていけます、という声をよく見るようになった。最初はかっこいい音楽をやりたくて始めたけど、今となっては、音楽をやる理由はみんなのためだ。いつも支えてくれてありがとう、大好きだぞ──という言葉からの、最後の曲は「illumination」。
 「ずっとこの瞬間を信じて作りました! Singin’!」という言葉で、「♪ラララ」のシンガロングが沸き起こる。それを浴びながら、涙腺決壊するのをなんとか堪えて歌に入り、そのまま最後まで歌いきった柳田周作だったが、曲が終わって、オフマイクで「みなさん、今日は、シンプルに、出会ってくれてありがとう!」と叫んだ時には、堪えきれなくなっていた。

SET LIST

01. 巡る巡る
02. タイムファクター
03. イリーガル・ゲーム
04. LOVE
05. 1on1
06. REM
07. 朝靄に溶ける with asmi
08. 目蓋
09. 徒夢の中で
10. 解放宣言
11. 桃色の絶対領域
12. 愛のけだもの
13. キラキラ
14. クロノグラフ彗星
15. 夜間飛行

ENCORE
01. パーフェクト・ルーキーズ
02. illumination

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