フジジュンの「ライブ終わったらど~する?」#13 「実際あるか分からない宝の島を見つける旅を、カツサンド食べながら見守るおじさんの話」

コラム | 2023.10.18 18:00

Photo:にしゆきみ

長野県諏訪市出身、18歳で上京した俺。地元を離れて30年にもなるけど、やっぱり地元は特別な場所だし、地元が恋しく思うこともある。高校時代は「こんな田舎、早く出たい」とあんなに思ってたのに。年を重ねると、だんだん地元の良さや田舎がある喜びが分かってくるもんで。「地元・長野でロックフェスがやりたい!」と無謀な夢を掲げて、地元でラジオ番組を始めたのが2012年のこと。地元シーンを支えるライブハウスや、地元で活動するバンドとの繋がりがだんだん出来て。その頃、地元のライブハウス・上諏訪CLUB ROCKHEARTSをリードしていたバンドがJacob.Jrだった。

さっそくラジオに出演をお願いして、上島大季(Vo&Gt)と初めて話したのが、8年前の2015年8月。Jacob.Jrの結成が2014年9月だから、まだ結成して1年足らずの頃だった。俺が同じ高校の軽音部(正確には現代音楽研究部)の先輩であることを話して先輩風吹かせたり。まだ音源も出してなかったからデモCDから曲をかけたりして(たぶん、「Gun's shy」と「PACKRAT」)。「今度ライブ行くね!」なんて言って、そっからライブに行くようになって。

ライブに行く時は「勝負に勝つため」って、毎回、カツサンドを差し入れして、「カツサンド持って来る親戚のおじさん」みたいなスタンスでJacob Jr.を応援し続けていたので。2017年に4人が「上京する」と言った時は心底応援したし。上京直後に『SUMMER SONIC』に出演したり、2018年にリリースした2ndミニアルバム『City Lights Wannabe』のレコ発ライブで満員の観客を集めてるを見てすごく嬉しかったし、誇らしい気分だった。

しかし、良い時期ばかりじゃないのが、バンド人生。コロナ禍の2020年に活動停止していたJacob Jr.からはメンバーが続けて脱退。思うように活動が出来ず、解散の選択もよぎる中、上島と植松拓也(Ba)の2人はサポートメンバーを加えての活動再開を決断する。

そして、2023年。「新メンバーが入りました。新しい音源が出来たので聴いて下さい」と受け取った、3rdミニアルバム『FANFARE』を聴いて。その堂々とした歌とサウンドに、僕は「Jacob Jr.が帰ってきた!」と本当に嬉しかったし、諦めずに続けてくれて良かったと心から思った。最新作『FANFARE』の表題曲「FANFARE」で、上島は自信と確信に満ちた歌声で力強く歌う。

<間違いなく今が最高さ>

上京直後、「このまま売れちゃうんじゃない?」と思った良い時期も、上手くいかない時期もあったけど。全部引っくるめた上で<今が最高さ>とうそぶき、<君が信じたもの それが正解だってこと>と自身にも言い聞かせるように歌う上島。結成9年のキャリアとスキルを持って、上京前みたいな衝動や夢やワクワクを鳴らす楽曲に興奮した僕は、「だから、Jacob Jr.が好きなんだよ!」と感想を伝えた。

この夏、全国13箇所で5年ぶりとなる『FANFARE』のレコ発ツアー『ファンファーレがまだ鳴らないんだ』を敢行したJacob Jr.。俺もどこかタイミングが合うところで、ライブを見に行こうなんて思っていた矢先。Jacob Jr.が9月9日(金)渋谷O-Crestで開催される、ディスクガレージ主催による、次世代を担う未来ある“牙”を持つバンドが集うライブイベント『The Cub's Den vol.2』に出演することを知った俺。DI:GA編集部に「ぜひレポートをやらせて下さい!」と懇願して、ライブレポートを執筆。

『The Cub's Den vol.2』ライブレポ
>> https://www.diskgarage.com/digaonline/liverepo/185891

COPES、OWlと次世代を担う新進気鋭のバンドとの共演に、トッパーで登場したJacob Jr.。ハイテンションな演奏と上島のエネルギッシュなボーカルで<夏が来たな>と告げる「エンドレスサマー」で終わらない夏を宣言すると、活動初期から歌い続けてきている曲と最新曲を織り混ぜたセトリで「これがJacob Jr.だ!」と、最新型のJacob Jr.を見せつける。

新メンバーの岡 秀一郎(Gt)加入後、ライブを見るのは初めてだったが。高いスキルと堂々としたパフォーマンスで、過去楽曲もすでに自分のものにしてる感のあるプレイに、「良いメンバーが入ったな!」と改めて思ったし。サポートのヒロポン(Dr)のパワフルで正確なビートを軸にそれぞれが伸び伸びとしたプレイを見せるバンドの状態の良さや、そこから生まれる新たなグルーヴもしっかり感じることが出来て、Jacob Jr.の新章が始まってることを確認。

ライブ後半、「活動再開して良かったと思います。いまのライブハウス、マジで最高だと思ってます」と現在の充実ぶりを話し、コロナ禍でもみんながルールを守って、自分たちの信じた場所=ライブハウスを守り続けたからこそ、現在があることを語った上島。「結局、自分たちが信じたことが一番だったじゃん!」と始まった曲は最新曲「FANFARE」。イキイキとした表情で歌う、<間違えなく今が最高さ>の言葉は説得力に満ちてたし、いまのJacob Jr.のバンドとしての充実ぶりをしっかり感じるものだった。

ライブ後、「最高だったよ!」と伝えて。COPES、OWl共にスカパンク調の曲に観客がスカダンスで盛り上がってたので、「今日、Jacob Jr.に足りなかったのは、スカっぽい曲だけじゃない?」と笑って、会場を後にした俺。この日も『とんかつ まい泉』に寄って購入した、お約束のカツサンドを差し入れたのだが。柔らかいヒレカツと秘伝のソースと、ふわふわパンが三位一体になった、まい泉のヒレかつサンドを思い出したら、俺も食べたくなっちゃって。近所の東急ストアに置いてあるのを思い出し、最後の一箱を購入して家でヒレかつサンドをパクパク。やっぱり美味いね、まい泉のヒレかつサンド!

そして、「ライブ終わったらど~する?」つうことで。『The Cub's Den vol.2』から約3週間が経った9月21日(土)。僕はJacob Jr.の『ファンファーレがまだ鳴らないんだ』ツアーファイナルを見届けるため、新宿Marbleにいた。『FANFARE』収録の新曲たちを軸に、ここまでの集大成と言えるセトリで挑んだワンマンライブは、間違えなく今が最高であることを証明するものだった。ツアーを経て鍛え上げたバンドサウンドはたくましく、現メンバーでアップデートされた過去楽曲たちは新鮮かつ、改めて曲の良さを知らしめてくれて。若さと勢いでぶっ飛ばしていた頃とは異なる、バンドとして成熟したJacob Jr.の姿がそこにあった。

この日も演奏された曲で、「BIGMOUTH」という好きな曲があって。ホラ吹きででかい口叩く街の嫌われ者が、宝の島の話をし続けるのだが。旅から戻ってきた彼に、バカにしてたあいつも手のひらを返すという痛快な歌で。

<そういう奴が世界をこれから変えるというのなら なんとなく僕も少しはできると思うんだ>

そう歌う上島に、俺は「世界を変えて欲しい!」とあの頃からず~っと思ってた。ロックバンドといういつ沈んでもおかしくない船に、信じた仲間と乗り込んで。実際にあるか分からない宝の島を見つける旅を、いまもなお続けるJacob Jr.。最初に探してた宝の島は、そこに無かったかも知れないし。夢やロマンだけじゃ食っていけないかも知れないけど、変わらずにビッグマウスを叩いて。また新しい海路図を広げて、仲間たちと宝の島を見つける旅を続けて欲しい。俺もまたカツサンド持って、旅の成果を見に行くから!

ここからは余談だが。翌日は地元・諏訪に帰って、上諏訪ロックハーツに行って。まだ高校生だった2019年頃から応援し続けてきた、あるくとーーふの活動休止ツアーを見届けてきた俺。地元への特別な想いや地元のファンに愛されてることがしっかり伝わる良いライブで、行って良かったなとすごく思ったし。未来を見据えた力強い視線に、彼女らもきっと新しい船に乗って、再び宝の島を見つける旅を続けてくれるんだろうと期待させてくれた。どんな形であれ、旅を続ける限りは引き続き応援すっから! ちなみに、あるくとーーふ現場では、「シャトレーゼのスィーツを持って来る親戚のおじさん」だった俺だが。その話はまた別の機会に(笑)。

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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