渋谷公会堂物語 第6回 語り手: 門池三則(株式会社バッド・ミュージック 代表取締役)「ジュンスカ、ミスチル、ピロウズ、ミッシェルのライブ」

コラム | 2018.06.05 15:00

──そういうふうにライブを取り巻く状況が変わってくると、渋谷公会堂でライブをやるタイミングや意味合いも変わりましたよね。
例えばクアトロから始めて最後にZeppをやったり、渋公をやったら次はもう横浜アリーナをやって、追加は小さなコヤでやるとか、いろんな面白い展開が出てきましたね。
──もうひとつ門池さんが手がけられたバンド、ミッシェルガン・エレファントは96年1月にクアトロでデビュー・コンベンション・ライヴをやって、渋公はやっていないですよね。
やってないです。
──それは、90年代後半になるともう、シーンの流れとしては「ロック・バンドはスタンディング」という状況になっていたという理解でいいでしょうか。
そうでしょうね。
──その時代からもう20年くらい経っているわけですが、やはり“ロック・バンドは椅子席のホールはもういいかな”というのがシーンの空気でしょうか。
それはいろんな人と話すんですが、コンサートのやり方もこれまでとは違う発想があってもいいかもしれないですよね。バンドによっては、ファンの年代が子育て中だったりすると、夜は来られないけど子供が学校に行ってる昼間の時間帯なら大丈夫とか。もっと具体的な話で言えば、ジュンスカがいちばん最近東京でやったのは中野サンプラザで、お客さんは基本立ってるけど「白いクリスマス」のときにはみんな座ってたりして、つまりお客さんのほうも変わってきてますからね。だから、昼間にやったり、もしかしたら2回公演とか、そういうことをやってもいいのかなとは思っています。
──門池さんがやってらっしゃるもうひとつのバンド、the pillowsはまさにいまツアー中ですが、先日クアトロ公演があって、そこには15歳の方も来てましたよね。結成から来年で30周年というキャリアのバンドですから、50代のお客さんがいる一方でティーンエイジャーのお客さんもいる、と。そういう、幅広い世代のファンがいるバンドのライブ会場として椅子席のあるホールというのはどうなんでしょうか。
椅子席があるところでやるのは嫌だというようなことは、まったくないですよ。ウチだったら、怒髪天も渋公を3回くらいやってますけど、お客さんは座ったり立ったりしてますから。MCのときは座る、とかね。
──増子さん、話が長いから?(笑)
(笑)、そうそう。怒髪天の場合は、お客さんがホールとの相性がいい、みたいなこともあると思いますね。
──渋谷公会堂は、来年また復活する予定ですが、いまの時点ではどういうふうホールになってほしいと思っていますか。
まず基本的には、ライブをやるところは100人、200人、もっと言えば50人くらいしか入らないようなところでもいいと思ってるんです。最近、カフェみたいなところを個人でまわるツアーも増えてきたじゃないですか。つまり、ライブをやる場所として、いろんな種類のコヤが増えているのはすごくいいと思うんです。演るほうも、セットや照明をバリバリに仕込むライブもやれば何もないシンプルなステージもやる、みたいにメリハリつければいいと思うんですよ。どうなっても、汗の伝え方は変わらないと思うから。最近の現象としては、見やすい会場でのライブだったら、公演が近づいてから、もっと言えば当日に、チケットがかなり売れるんです。その現象が特に目立つのはベテランバンドの場合ですが。多分、見やすさというのがすごく重要で、お客さんが“あそこ、キツイな”と思ったら来てくれないですね。
──渋谷公会堂も、かつて一度改修したタイミングで、座席一人分のスペースが少し広くなりましたが、そういうことが重要になってくるということですか。
そうそう!そういうのは重要です。やっぱり歳とってくると、ちょっとゆっくりしたいというのがあるから。それから、車椅子の方の席の配置ももっと考えたほうがいいと思うんです。付き添いの方の規定もありますけど、それにしてもやっぱり見やすいところにしないといけないと思うんですよ。
──そこは、せっかく新しくなるんだから、いい形をぜひ考えてほしいですね。
2階にもあっていいと思うんですよ。
──ということは、エレベーターも付ける、と?
もちろん。エレベーターは必須でしょ。
──ライブ会場のそういうホスピタリティーにまで気持ちが向くのも、いろんな会場でいろんな場面に遭遇しているからでしょうね。
自分の子どもが小さい頃、ベビーカーに乗せて下北沢駅に行ったら、当時はエレベーターがなくて困ったとかね。それから、膝のケガをして松葉杖をついてた時期があったんですけど、そういう状態で九段会館や武道館に行こうとしたら、九段下の駅にもエレベーターがなくて大変だったとか。自分がそういう立場になったら、すぐにわかることですから。だから、これから新しくできるコヤはみんな、そういうことにもちゃんと配慮したものになっていくと思いますよ。
──いろんなバンドやアーティストを抱える事務所の人間として、つまり出演者を送り出す側の人間として、ライブ会場に望むことはありますか。
音響の設備については、有料でもいいから常設で水準以上の機材がある程度は揃ってほしいなとは思いますね。持ち込む機材をできるだけ少なくしたい。そうすると、搬入/搬出の作業も軽減できるし。それから、これはよく話題になるんですけど、渋公みたいな公立のホールの使用規定、料金や時間制限のルールを例えば平日と土日は別にして、平日はもう少し使いやすくなるといいなと思いますね。それをチケット料金に反映させられれば、お客さんもより来やすくなるし、ホールの使用率も上がるだろうから、みんなにとっていいと思うんです。これからは、海外からのお客さんもますます増えるでしょうから、そういう状況にもしっかり対応していきたいですよね。
──渋谷というのは、街の性格を考えれば、そこは大きなポイントのひとつでしょうね。
調べてみると、海外の人たちが日本で遊興に使う金額がすごく少ないんですよ。その理由を探っていくと、夜に開催されるエンターテイメントの時間帯が早すぎるということひとつあるんですよね。海外だと、午後10時から本番とか、そういうのが普通ですから。さすがに10時は無理にしても、いま6時半からやってるところを7時とか7時半にできるだけでずいぶん違うと思うんです。そういうことも含め、これからの世の中の変化も見据えながら、いろんな展開を考えていきたいと思っています。

PROFILE

門池三則

1954年、熊本県生まれ。
ライブハウス・渋谷La.mamaの店長を経て、1989年にバッド・ミュージック、
1990年にバッド・ミュージック・グループ 音楽出版を設立。
これまでに、JUN SKY WALKER(S)、Mr.Children、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTなどを輩出。
現在は森純太・小林雅之、the pillows、怒髪天、The Cheserasera、noodlesらが所属。
現 株式会社バッド・ミュージック 代表取締役、一般社団法人 日本音楽制作者連盟 理事長

  • 兼田達矢

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    兼田達矢

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