愛とユーモアの嘉門タツオ。【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第17回

コラム | 2018.07.25 17:00

いきなりだが、日本も冗談の言いづらい国になってしまった。
ネットだけのせいでもないだろうが、いつからか性格の悪い情報や愛のない噂ばかりが勝手に拡散されるようになったこの世の中で、メディアも、僕たちの社会や日常での生活も、そしてあらゆるカルチャーも、冗談ひとつ言うのにも色んな事に気を配らなければいけなくなってしまった。
危機管理やコンプライアンスというものは、強くすればする程人々を危険から守るかも知れないが、時に人々から大切な「ユーモアのセンス」も奪ってしまう。
ユーモアが無くなってしまったカルチャーには何も残らない。
現代はあらゆる表現者にとっても、それを楽しむ側の僕らにとっても、その互いのセンスと、互いの体力までもが問われる時代になってしまった。

なんか重い話になってしまったが、デビュー35周年を迎え、来年には還暦となるが、そのユーモアセンスに更なる拍車がかかり、ますます元気にフザけ続けている嘉門タツオのニューアルバム『HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~』を聞きながら、ふとそんな事を思っていた。そして「ああ、この感じなんだよなあ...」と聞いた瞬間に自分の感性にピタッとハマッてくれるその最高なユーモアセンスに改めて(爆笑しながら)感動していた。

嘉門タツオの素晴らしいとこは、まず老若男女の誰もが知っていて、誰もが歌えるコミックシンガーだというとこだ。
僕の親の世代でも、嘉門の替え唄メドレーや、ヤンキーの兄ちゃんや川口浩探検隊を歌ったヒット曲は知ってるし、今の子供たちも、「♪ チャラリ~ン鼻から牛乳~ ♪」や「♪ アホが見~る~ブタのケ~ツ~ ♪」などの、自分が生まれる前に出たヒット曲をまるで今流行している曲のように歌い(継いで)いる。しかもみんなが歌い継いでいるその楽曲すべてが、ことごとく徹底的にフザけたコミックソングなのだ。
それって最高じゃないか。正しいユーモアとは要するにこういう事なのだ。

嘉門タツオ公式【鼻から牛乳】2018/名古屋ボトムライン

嘉門の最大の魅力といえば、やはりその選曲とネタのセンスだろう。
名曲「なごり雪」の替え唄「なごり寿司」の最初の歌詞の「♪ 寿司を待つ君の横で僕は 値段を気にしてる~ ♪」というフレーズを聞いた時、たまたま一緒にいた僕の友達は本当に飲み物を吹き出してしまった。
そしてその後、僕らはその「なごり寿司」の入ったアルバムを結局そのまま全曲最後まで笑い転げながらも真剣に聞いたのだが、聞き終わった後、その友達に「アルバム全曲を他人と一緒に真剣に聞くなんて、中学生の時以来だよな。」と言われ、僕は思わず目からウロコが落ちたのだった。
何かをしながら音楽を聞き流すのが当たり前の現代において、嘉門の楽曲はその全てが頭から最後までずっとお笑いのオチが連続してるようなものなので、聞き流しという行為を一切許さない。
嘉門のコミックソング、パロディソングという楽曲スタイルが、結果的に聞いてる人を強引に最も集中させるアーティストにしてしまっているという事なのだ。
これもアーティスト冥利に尽きる事というか、いまどき最高な事なんじゃないのか。

嘉門タツオ公式【なごり寿司】2018/名古屋ボトムライン

もう一つ、ロック好き個人として僕が嘉門に一番惹かれている部分は、その風刺家、シニカルなメッセージソングライターとしてのセンスの素晴らしさである。
昔は使われてなかったオシャレ現代英語を多用する人をブルースにした「言うてなかったやんブルース」。SNS依存の人々を皮肉った「Facebookは罪なヤツ」。マニュアル対応しかできない店員との戦いをコントにして歌う「ハンバーガーショップ」。
もしこの楽曲群をシリアスな社会派アーティストとかが真面目に歌ったら、発売禁止になっていたかも知れない。
でも嘉門はコミックシンガーなのだ。嘉門が歌えば、それはすべて愛のこもったギャグになり、優れたポップソングになってしまうのだ。

ニューアルバム『HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~』のテーマは、ユーモアと最も遠いテーマの「死」である。でもそこには死や別れの暗さや重さは一切なく、嘉門のやさしさと愛とユーモアしかない。
いつものセンスあるコミックソングの数々と共に「終活3部作」と称した、先祖への感謝の歌、送られる側の歌、見送る側の歌など、嘉門独特の鋭い別々の視点で歌ったメッセージソングも収録されている。
送られる側からの歌の「旅立ちの歌」の中の「♪ 風になんてなるつもりはない ♪」という歌詞でも分かる通り、嘉門の天才的なそのシニカルなセンスはデビュー35年の今夏で還暦目前にしてますます冴え渡っていて、ホントに素晴らしいアルバム作品となっている。

そんな最強コミックシンガー嘉門タツオが、その本領を最大に発揮するのはやはりライブだ。
時事ネタや事件をすぐ替え唄やネタにして歌えるのはコミックシンガーにとって最大の特権であり最強の武器だ。おなじみのヒット曲の数々以外にも、アドリブや即興で時事ネタや新ネタがガンガン飛び出してくる嘉門のライブはいつ見てもホント痛快で最高に楽しい。
「終活」がテーマの明るく楽しい傑作アルバムを作った事により、いま全国のお寺やセレモニーホールからのライブの依頼が殺到しているという現象にも笑ったが、それで嘉門がまた新たな「明るいお葬式ライブ」というジャンルを開拓してブレイクしたら、それも最高だよな。

嘉門のライブは、同世代や若者はもちろん、そこにいるお年寄りから小さな子供まで、集まった全員を必ず爆笑の渦に巻き込んでしまう、まさしくプロのエンターテインメントライブだ。本当に楽しいから、未体験の人もぜひ一度体験してほしい。そこには最高のユーモアと愛しかない。

公演情報

ディスクガレージ公演

デビュー35周年 to 還暦 & ニューアルバムリリース記念 ライブ

2018年8月18日(土) Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
※1日2回公演
チケット一般発売日:2018年5月26日(土)

平成最後のお彼岸に、“終活三部作”と題した「墓参るDAY♪」「旅立ちの歌」「HEY!浄土」も収録する、デビュー35周年 to 還暦の7月21日リリースアルバム発売記念&夏休み恒例ライブを開催!
歌あり!笑いあり!時にほっこりした気持ちにもさせてくれる!
そして今の時代を音楽で斬るコーナーも!
もちろんお子さんにも人気の楽しい曲やネタもご用意し、なんと中学生までは2000円の返金キャッシュバックも有り!

 

※当日年齢の分かる身分証をご提示下さい。

RELEASE

「HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~」

嘉門タツオ デビュー35周年 to 還暦 記念

「HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~」

2018年7月21日(土)SALE

PROFILE

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・チーフプロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。ライター、司会、外部企画も受けてます。嘉門さんのライブは何度か拝見してますがいつでも本当に楽しいのでロックファンにもマジおすすめです。愛しかない。

  • 横山シンスケ

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    横山シンスケ

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