音楽家・梁 邦彦、日韓で開催の自身の集大成的ライブ〈UTOPIA 2019〉に向けて、その意気込みを語る。

インタビュー | 2019.01.07 12:00

PHOTO:Jwon Han

2018年2月に平昌オリンピックの開閉会式式典の音楽監督という大役を務め、日韓双方で改めてその名を高からしめた音楽家・梁 邦彦。80~90年代にかけて浜田省吾のバンド・メンバーとして活躍した時代から、映画やドラマ、ドキュメンタリーやアニメなど多岐にわたる音楽制作を経て今に至る、その歩みは飽くなき変化と成長を求める音楽探求家として、ジャンルを超えて人を引き付ける魅力を持つ。2019年2月1日に品川インターシティホールで行われる集大成的ライブ〈UTOPIA 2019〉に向けて、その意気込みを語ってもらった。
──今年はライブが多い年だったように思います。
そうですね、意図的に。今までは韓国に比べて日本のライブが少なかったですけど、回数を増やしていきたいし、バリエーションも増やしたいなということで。日本での空白時間が長かったので、たとえばアニメーションの音楽とか、〈WHO I AM〉(WOWOW制作のパラリンピック・ドキュメンタリー)の音楽とか、映像の音楽とかもあるので、そういうものに触れてもらう機会を増やしたかったんですね。
──8月のコンサートにはEPISODE1というサブタイトルが付いていました。
8月30日にLIVING CAFEでやった〈Ryo’s Mint Café Trio“First Breeze”〉と、11月の品川教会〈Holly Piano Night〉と、今度の2月にやる〈UTOPIA 2019〉とがEPISODE1~3として繋がっているんですけど、同じコンテンツを違う場所でやるということではなくて。できるだけいろんな形でやりたいということで、毎回まったく違うようにしています。
──8月はピアノ、ベース、ギターのトリオでした。
アットホームな、自分がくつろげちゃう感じでしたね。そういうのもいいし、品川教会みたいにある程度カチッとやるのもいいかなと思うので。品川教会のすぐあとに〈UTOPIA 2018〉の韓国公演があって、これがまた全然違う、派手にドッカーン!とやるライブだったので。自分の中で切り替えが必要だったんですけど、僕はそういうことがあった方がいいタイプみたい。その方がやりがいがあるので。
──品川教会のコンサート、見せてもらいましたけども、リコーダー・カルテットとの共演が素晴らしかったです。リコーダーってこんなにいろんな雰囲気が出せるんだって、目からウロコでした。(※ライブレポートあり
リコーダーにはすごい潜在力があって、逆に言うと先入観もあって、小学生の楽器でしょ?みたいな。でもああやってちゃんと聴くとすごくいいし、再発見もあると思うので。僕の音楽の中にある旨味をいろんな形で表現できる、それがリコーダーと教会という組み合わせだったんですね。
──パーカッションもすごくよかった。時にアジア、北欧、中近東っぽかったり、聴いてるだけで世界中へ飛べる音色だなと思いました。
彼(クリストファー・ハーディ)とはもう25年ぐらいやってるんですけど、クラシック出身でマリンバとかを勉強して、それから中東系の音楽にハマったりいろいろやってきてるんで、そう感じるんだと思いますね。そういうところで僕とは通じ合うんですよ。彼が一番楽しかったんじゃないかな。いろんな楽器を持ってきて、すごい楽しそうに“これはね…”って子供みたいに説明してくれる(笑)。ミュージシャンたちがそういう気持ちになってくれるのが、僕は大事なんですね。演奏している人がそういう気持ちになると、出てくる音も良かったりするので。
──カバーもやりました。「涙そうそう」「Jupiter」とか。カバーはよくやるんですか。
韓国ではそんなにやらないんですよ。だけど日本だと僕を知らない人も多いし、みんなとの接点を持ちたいということで。でもクラシックの名曲とかだと面白くないんで、意外なものがいいかなと思って、8月のLIVING CAFEでは「恋のバカンス」をやったんですよ。カバーに関しては何でも有りが面白いと思ってますね。
──そもそも梁さん、ライブはお好きですか。
好きみたいです。しゃべりも長いし(笑)。品川教会ではけっこう抑えたつもりだったんですけど、長くなっちゃいましたね。というのも、しゃべらないで音楽だけやってると、音楽の種類もあると思うんですけど、ちょっと遠い感じの人間に見られたりとか、怖いとか言われるんですよ。押尾(コータロー)くんも、黙ってるとそう見られることが多いと言ってましたけど。
──押尾さんは全然違いますよね(笑)。実はおしゃべり好きで。
ライブは音源とは違うから、人となりが伝わるのが大事かなと思うんですね。結局はその人のその感じが、音楽も含めて好きになるかどうかだと思うので、そういうところはあんまり虚飾しない方がいいかなと思ってます。僕の経歴で、昔医者だったとかそういうこともあって、黙ってたら近寄れないだろうなという感じもあるみたいですけど、僕はライブではオープンでいたいんですよ。ミュージシャンもお客さんもオープンな空間を共有できたらいいなと思ってます。
──そんな梁さんのライブ、見たことのない方に説明すると、クラシックでもあり環境音楽でもあり、ジャズやロックでもあり、映画音楽やポップスの要素もあり。何て言えばいいですかね。
何て言えばいいですかね(笑)。それはよく聞かれるんですけど、僕の考え方としては“いいとこ取り”なんですよね。取って逃げるということじゃなくて、ちゃんと育てていく。いろんなジャンルやミュージシャンのいい面がここで発揮される、僕の音楽という母体の中でみんながやりたいように楽しんでやれる場所を僕が作ると、その瞬間だけのユートピアがそこにできるということだと思います。
──はい。なるほど。
いろんな要素を持ってると思うんです。クラシカルな部分もあるし、ロック的な部分もすごくある。本当はロックが一番好きなんですけど、メンバーの影響でジャズ的な要素があったりする。おそらく僕の音楽に参加してくれるミュージシャンは、普段はそんなに一緒にやってないはずなんですよ。でもここに来ると、それぞれの領域でやっているものを違う形で発揮してくれる。そうするとメンバー同士が新鮮になる。一回だけだとただのセッションで終わってしまうので、それを年に数回やって、韓国や日本でコンサートをやることで、だんだん育ってきているという、バンドとしてしっかりまとまってくる感じがあって、完成度は年々上がってる感じがするんですよね。そんなふうに繋がったイメージをみなさんに認識してもらえるようになると、いいんじゃないかなと思うんです。僕の考え方は、クラシックだからすごいとかジャズだからいいとか、そういうのはないんですよ。クラシックにも寝ちゃうような曲もいっぱいあるし(笑)、でもその中でいいものもたくさんあるわけで、“いいとこ取り”と言ったのは、いい要素が集まって一つの僕の音楽としてみなさんに届いたらいいなということなんですね。
──わかります。
それを言葉でひとことで言わなきゃいけないのが、僕を規定する時に一番難しいところだと思うんですけども。何かいい名前ないですかね。募集しますか(笑)
──みなさんぜひアイディアをお寄せください(笑)。そして2019年2月1日に品川インターシティホールで行われる〈UTOPIA 2019〉。このタイトル・シリーズもかなり長いですよね。
韓国で〈UTOPIA〉というものを始めてから、もう10年以上経ってるんじゃないかな。僕の中の〈UTOPIA〉の位置付けは、規模が大きくて集大成的なライブというか、今までやってきたものを自分の中で一回まとめるような感じです。レパートリーも、オリンピックの音楽があったりアニメの音楽があったり、あるジャンルに特化したものではなくて裾野が広いもの、スケール感も含めてなるべく大きく感じてもらえるのが〈UTOPIA〉かなと思います。だいたい1年に一回、もしくは2年に一回ぐらいやってきてるんですが、その時点での集大成ということですね。
──前回はクリスマス・イブ、グローブ座での開催でした。
そうそう。グローブ座には独特の空気感があるから、またあそこでできたらいいと思いますけど、新しいところでやるのは自分にとっても新鮮だと思うので。品川インターシティホールはわりと新しいところみたいで、初めてなので楽しみにしてます。
──どんな内容になりそうですか。今考えていることは?
音楽的に今何ができるか?というところに純粋に入り込んで行ける感じになると思います。前回と比べるとメンバーは少し縮小してるんですけども、編成は大きくなるほど機動力が鈍るところがあるんですよ。特に弦のセクションが入ると、しっかりアレンジして譜面も用意しなきゃいけない。そういうものと比べると、より自由度を高められるメンバーを集めた感じですね。開かれた状態でいろんなことにトライできる、ある意味こういうコンサートは初めてかもしれない。メンバーとひざを突き合わせて楽しく準備しつつ、本番でも自由に変わって行けるんじゃないか?と思っていて、そこが面白いんですよね。メンバーが自由に泳げるというか、自分の持ち分を発揮できるような状態が作れる、そういう意味でもユートピアだと思ってます。きれいにまとまりました(笑)
──楽しみです。来年もライブをたくさんやってくれそうですか。
そうなると思います。僕のライブはインストであるがゆえに自由でいられる場所で、誰でも入ってこられるようになったらいいと思うんですよ。今は韓国のライブに日本のメンバーが行って一緒にやったりもするし、将来は逆に日本のコンサートに韓国のミュージシャンが来てもいいし、見てるだけで多国籍バンドみたいな感じになるにも、将来的なビジョンとしてきっと僕はそういう指向性なんだなと思います。2019年は、2月に平昌オリンピックの1周年のイベントがあって、3月には韓国の民族音楽のオーケストラと一緒にシンフォニーをやって。大きなアニメやドキュメンタリーの音楽の話も来ているし、ほっとくと何でもやりたがっちゃうタイプなので、うしろからブレーキを引かれるんですけど(笑)。やりたいことが次から次へ出てくるのは、幸せなことかなと思いますね。

PRESENT

【特別企画】
梁 邦彦 2/1(金)品川インターシティホール公演 5組10名様をご招待!

受付は終了しました

公演情報

DISK GARAGE公演

LIVE TOUR 2018~2019 Episode 3「UTOPIA2019」

2019年2月1日(金) 品川インターシティホール
出演:梁 邦彦(Pf) / 櫻井哲夫(Ba) / 古川望(Gt) / 川口千里(Dr) / 寺地美穂(Sax) / 土屋玲子(Vln) ほか
【SPECIAL GUEST】古村敏比古

チケット一般発売日:2018年9月30日(日)

RELEASE

「Echoes for PyeongChang」

「Echoes for PyeongChang」

(endorf music / genie music)
日本盤には平昌応援メインテーマ曲「Echoes for Pyeong Chang」及び、IPC×WOWOW パラリンピック・ドキュメンタリーシーズン2 メインテーマ「WHO I AM 2017」&劇中未発表曲を収録。日本からはギタリスト押尾コータロー、DEPAPEPEが参加。
※ライブ会場などで好評発売中
  • 宮本英夫

    TEXT

    宮本英夫

  • PHOTO

    Jwon Han

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