【インタビュー】表現者として新たなフェーズに入った黒木渚に、アルバム「檸檬の棘」とワンマン公演について話を聞いた

インタビュー | 2019.11.08 12:00

黒木渚が前作「自由律」(2015年)以来、約4年ぶりとなるフルアルバム「檸檬の棘」をリリースした。同名の新作小説「檸檬の棘」(11月5日刊行)と前後して制作された本作には、シングル「ふざけんな世界、ふざけろよ」(2016年)、「解放区への旅」(2017年)など全10曲を収録。「公私ともにかなり濃密でした」(黒木渚)というこの4年間の経験に裏打ちされた、ディープな心象風景と未来への意思がぶつかり合うような作品に仕上がっている。2020年1月から2月にかけて、福岡と東京で約2年ぶりのワンマン公演も決定。表現者として新たなフェーズに入った彼女に、アルバム「檸檬の棘」とワンマン公演について聞いた。
──約4年ぶりとなるオリジナルアルバム「檸檬の棘」がリリースされました。完成してみると、「ふざけんな世界、ふざけろよ」からこのアルバムに向かう物語が始まっていたんだなと実感しますが、黒木さんはどう感じていますか?

公私ともにかなり濃密な4年間だったんですけど、それをぜんぶトレースしたようなアルバムだなって。「ふざけんな世界、ふざけろよ」をリリースした頃から喉の調子がおかしくなってーーその後のツアーのときから咽頭ジストニアを発症してたんですよねーー本気で「ふざけんなよ」と思いながらライブをやって、でも、やっぱりダメで。活動休止中は小説を書くことで抗っていたんだけど、2年前に復帰してみたら、喉の状態のアップダウンが激しくて、曲作りもライブ活動も思うように進まなかったんです。すごくもどかしい思いもあったんですが、それがすべて曲になってるんですよね。今回のアルバムはシリアスなトーンの曲が多いんですが、そういう時期だったんだなと思います。

──楽曲に結びつけることで、抱えていた感情が浄化される?

そうですね。お焚き上げみたいなものというか、成仏したなって(笑)。

──11月には同じ題名の新作小説『檸檬の棘』も刊行されますが、小説と音楽も結びついているんですよね?

はい。先に小説を書いたんですけど、「世界が壊れた記念に 檸檬の苗を植えた」という歌詞は、小説のなかにも出てくるフレーズなんです。書いてるときからメロディが付いていたし、「これは歌になるだろうな」と思って。あと、小説を書いてる最中に不明瞭な音が聞こえてくることがあって、ずっと「これは何だろうな」と不思議だったんですよ。その音を曲としてまとめたのが「Sick」だったり、かなり接点がありますね。

──小説と音楽がリンクすることは、これまでもあったんですか?

ありました。ただ、いままでは曲が先に存在していたんです。その後に書いた小説のなかに歌詞の一部が出てくることはあったんですけど、文字からインスパイアされて曲になったのは、今回が初めてで。それも声の調子が良くなかったせいでしょうね。声が自由だったら、どんどん曲が出てきちゃうタイプなので。

──なるほど。小説『檸檬の棘』は、父親との関係を主軸にした私小説風の作品ですが、当初は書くことをためらっていたとか。

めっちゃイヤでした(笑)。11才の頃からの記憶を掘り起こして、家庭が崩壊する前の、不穏な空気に包まれているあたりからスタートしたんですけど、それって、大人になる過程で丁寧に時間をかけて忘れてきたことなんですよ。それをまた思い出すのかと思ったら、イヤでイヤでしょうがなくて。憂鬱な1年でしたね。

──向き合いたくない記憶と向き合って、小説にしようと思ったのはどうしてなんですか?

以前から「私小説を書きませんか」という打診はあったんですよ。でも、ミュージシャンやタレントが小説を書く場合、一作目はたいてい私小説じゃないですか。その感じがイヤで断っていたんですが、そのうち「それを書かないって、どうなのかな?」と思い始めて。私小説を書くのは苦しいという印象があったけど、それを避けてラクしているというか、「自分の切り売りくらい、できなくてどうする。歌えないくせに」って。自分を罰したいという気持ちもあったのかもしれないですね。

──読み手としては、私小説に興味はあったんですか?

よく読んでました。もともと太宰治が好きだし、西村賢太さんの小説なども読んでいたので。いろいろ読むなかで、「こうやって自分のことをおもしろく書けるって、すごいな」とも思っていて。自分のプライベートなトピックがおもしろいかどうかもわからないし、娘と父親の葛藤も、ありがちなテーマじゃないですか。ただ、それも作家としてはおかしい話というか、「自分には到底できないなんて言ってないで、おもしろく書けよ」と自分に言い聞かせて。ただ、執筆中はかなり迷走しましたね。何度も書き直して、最終的に第14稿までいったんですけど、結局、最初の第1稿に戻したり。大変でした(笑)。

──では、アルバム「檸檬の棘」に戻って。表題曲「檸檬の棘」は、小説の執筆時に曲想が浮かんだということですが、そのときのイメージのまま制作も進んだのでしょうか?

いや、サビを全部書き替えてます。最初は怒りモードで、物々しい感じの曲だったんですが、小説を書き終えて、レコーディングに入ったときは私の気分がかなりスカッとしていて。もっと抜けるようなサビにしたかったし、メロも明るくなったんですよ。

──感情の変化がそのまま曲に反映されているんですね。「檸檬の棘」と同様、MVが制作された「美しい滅びかた」については?

これも「檸檬の棘」と同時くらいに出来た曲ですね。こっちは怒りではなくて、人生100年時代とか、これからの人生のことを考えているときに出来た曲ですね。歌手の人は普通、「声が続くまで歌いたい」と思うじゃないですか。私はいつまで声が続くのか不安だったし、引退とか、自分の閉じ方に思いを馳せることがあって。滅び方や自分の片付け方を考えられるのは贅沢だよなと思ったり…。ちょうどその頃、祖母が終活を始めたんです。「幽霊みたいに三角頭巾を付けて遺影を撮りたい」とか、みんなを愉快にするようことも考えていて、その姿を見ているうちに「私も美しく滅びたい」と思うようになって。そういうことを考えるのは、いまの生き方を充実させることと同義なんですよね。しかも、滅び方や仕舞い方って、何にでも当てはまるんです。恋愛や友情もそうだし。1年くらい前からボクシングの試合をときどき観に行ってるんですけど、ボクシングも引退が早いスポーツじゃないですか。命を惜しまずリングに上がって。まさに美しい滅び方ですよね。

公演情報

DISK GARAGE公演

黒木渚 OMENAN LIVE 2020「檸檬の棘」

2020年1月11日(土) DRUM LOGOS【福岡】
2020年1月17日(金) マイナビBLITZ赤坂【東京】
2020年2月21日(金) EX THEATER ROPPONGI【東京】

チケット一般発売日:2019年11月9日(土)

RELEASE

「檸檬の棘」

NEW FULL ALBUM

「檸檬の棘」

(Lastrum)
2019年10月9日(水)SALE
※初回限定盤A[CD+DVD]、初回限定盤B[CD+冊子]、通常盤[CD]の3TYPE

※画像は上から、限定盤A、限定盤B、通常盤

BOOK

自身初の私小説『檸檬の棘』
11月5日(火)講談社より刊行
※刊行記念トーク&記者会見を開催!

TV

日本テレビ系「news zero」11月7日&14日放送の木曜パートナーとして、黒木渚が出演決定!
放送をお楽しみに!

  • 森朋之

    取材・文

    森朋之

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