椎名慶治がSURFACEがいる世界線の中での初めてのアルバムをリリース!「本当の意味でのソロのファーストはこれなんじゃないか?と思います」

インタビュー | 2021.09.03 18:00

ソロアルバムは3年振り? いやいや、コロナ禍をものともせず、再始動させたSURFACEの活動も含め、今の音楽シーンで最も働く男の一人。それが椎名慶治。自ら「本当の意味でのソロのファースト」と呼ぶ最新作『and』は、世界基準に合わせたモダンなサウンドメイクと、パワフルでトリッキーでインテリジェントなひねりが効いた椎名節が、がっちり組み合う自信作だ。分断ではなくつながりを。あきらめでなく希望を。『and』に込めた強い思いを、ソロデビュー10周年を迎えたタフマンがたっぷり語る。
──今回の『and』は、ソロのアルバムとして3年振りですけど、おととし、去年とSURFACEでオリジナルアルバムを続けて出しているので、実は毎年リリースしているんですよね。

そうなんです。さかのぼると、2016年と2017年にJET SET BOYSで出して、2018年はSURFACEを再始動させながらソロアルバム、2019年と2020年にSURFACE、そして今回なので、6年連続でアルバムを出してます。地獄です(笑)。

──いやあ、リスペクト以外の言葉がないです。素晴らしいです。

その中で、個人名義とSURFACEとの線引きが大事になってくるんですね。SURFACEが解散してソロを始めたわけだから、今までの個人名義のアルバムはすべて、SURFACEがいないソロアルバム。でも今回は、SURFACEがいるソロアルバム。

──確かにそうですね。どちらも同時に存在している時に、個人名義のアルバムを作るのは初めてになる。

初めてなんです。SURFACEはギタリストとのユニットなので、ギターを立てすぎると、「SURFACEでやれよ」ということが、ついに起きる時が来た。そこで、俺が今一番信頼している宮田'レフティ'リョウに相談したら、今はギターが立たないサウンドメイクが世界的にヒットしていると。たとえばBTSの曲を聴くと、ギターがほとんど鳴っていないわけです。だから二人で話して、K-POPぽかったり、アメリカで流行っていそうなサウンドだったり、音数が少ないサウンドを作ろうと決めて、作っていきました。

──楽曲そのものは、すでにライブでやっている曲も多いですよね。

もともと『and』というタイトルをつけた理由も、新しいものと古いものが50%ずつ分かれているからなんですよ。去年デジタルリリースされた「KI?DO?AI?RAKU?」「DOUBT!!」と、「それだけ」「そんなに好きなら好きって言っちゃえば?」「GOOD GIRL」が既存の曲で、ファンはみんな知ってる。で、残りの半分が新しい曲で、今回のアルバムのために作っていった曲です。もともとのアルバム名が『SPLIT』で、「二つに隔てる」という意味から始まって、隔てるんじゃなくてくっつけようと思ったのが『and』です。今の時代のサウンドメイクで二つを混ぜ合わせた時に、1枚のアルバムとして完成されるのがテーマだったので、違和感なく聴かせられれば勝ちだし、お客さんがどう思うか?なんですけど、僕とレフティとしては、いいものができたと思っています。

──宮田氏のアレンジって、音質やプロダクションを新しさとは別に、70’sのダンスクラシックとか、80'sのポップス感とかもある気がします。どこか懐かしいような。

ありますね。アメリカのヒット曲を聴いても、「こんな古いものが流行るのか」と思うこともあるじゃないですか。でも若い子は知らないんですよ。時代が1周2周回っているサウンドで、僕が「懐かしいな」と思っても、若い子にはそれが新しい。そこの温度差をどう埋めるのか、そこは僕には無理なので、レフティに任せました。

──今回、スタジオレコーディングですか。それともリモートで?

ドラムをどうしても生で録りたい曲が2曲あって、それだけスタジオレコーディングをして、あとはレフティが全部自分のスタジオで作っています。送られてきたオケを持って、ボーカルレコーディングだけはスタジオに行って、それをエンジニアが家に持ち帰ってミックスする。そのデータを確認して、直したいところがあれば直して、おしまい。コストパフォーマンスは、昔とはまったく違いますね。

──20年前の、何分の一でしょうね。

SURFACEのセカンドが一番お金がかかっていて、〇千万とかだったと思うけど、今ならアルバム10枚作れますよ(笑)。時代は変わりますね。でも逆に、お金をかけたアルバムの作り方を知らない人は、かわいそうだなと思ってます。今の状況しか知らない人は、もしかして本物の音を知らないで作っているのかな?と。今はシミュレーターが流行っているから、「似た音」がいくらでも出せるけど、それだけで満足しちゃうのは怖いよなと思います。ドラムもギターもベースも、いろんな時代を経て変化してきて、マイクの立て方がこうなってとか、どんどん忘れられて、聴いてるリスナー側もそんなことはどうでもいいわけで、面白ければいいとなった時に、引き返せなくなるのかなと思うんですよ。

──うーん。それはちょっと怖いです。

今は時代がそういう音を求めているけど、またいつかアナログの音が流行る時に、「どうやって録るんだっけ?」ということになったら困るじゃないですか。実際そういうことがすでにあって、ホーンセクションの録り方がわからないとか、バイオリンが録れないとか、そういうことが出てきている。

──今回、ホーンの音もけっこう入ってますよね。

2,3曲入ってますね。それはエンジニアがわかっているからいいんですけど、わからない人もいる。すごい時代だなと思います。僕も今回、流行りの音というものをやりましたけど、こればかりやるのは嫌だなと思ってます。『and』がこうだったから次のアルバムもそうしよう、となるのかどうかは決められない。とりあえず1枚、SURFACEがいる世界線の中で初めて作ったアルバムとしては、正解だと思っていますけど。

──椎名さんにとって、大きなチャレンジだった。

ものすごいチャレンジでした。強気な言い方をさせてもらえば、「これで歌えるものなら歌ってみろ」というサウンドなので、「俺は歌ったぞ!」と言いたい。とんでもないですよ。何回か、レフティを殴ろうと思いましたから(笑)。音数も少ないし、歌のガイドも何もなくて、CDになってるアレンジのままで歌っているので。

──そんなふうには全然聴こえないです。全曲にわたって自由自在に、椎名慶治節が炸裂している。まずはミュージックビデオも作った、リード曲「アイムリアル」の話をしてもらえますか。

この曲が、アルバムの中で一番わかりやすいと思ったんですね。リリックも前向きな応援歌というか、コロナ禍を経て、「それでも俺はもっと本物になりたい」というアーティストとしての思いを、恋愛のストーリーにして書いたので、すごくわかりやすい曲になったと思います。

「アイムリアル」MUSIC VIDEO

「アイムリアル」MUSIC VIDEO
──この曲の歌詞について、「歌ネット」で自己解説していましたよね。読みましたけど、作詞家の野口圭さんのメールのやりとりが、すごく面白かった。

これも時代だなと思ったんですよね。リリースされる前に試聴するというのはあったけど、歌詞だけ先に出して解説するというのは、面白い時代だなと思いながら書きましたけど、あそこに書いたやりとりを見ればわかる通り、作詞家の野口圭と二人で、ああいう会話をしながら作っていきました。でも二人とも、未だにメール以外の連絡先を知らないという。

──そうなんですか(笑)。何十年のつきあいなのに。

小学校1年生からだから、38年です。ちょっと離れた時期もありましたけど、また戻ってきて、家族みたいなものですね。俺が何を考えているか、一番汲み取ってくれる奴だからこそ、「迷った時の野口圭」みたいな感じで使わせてもらってます。SURFACEで2枚のアルバムを作って、リリックを書きまくったあと、1年経たずして自分のアルバムを作ることになった時に、線引きができない気がしたんですよ。それで野口に話をして、「少し角度を変えたいから、一回預けるわ」と言って預けたら、「アイムリアル」が返ってきた。そこに俺が色付けをして、という形なので、野口がいなかったらこのリリックにはなっていない。作曲も、SURFACEと同じように俺が作ったら、同じ匂いになっちゃうので、山口寛雄を使うことによって、SURFACEとは違うものになる。そういう仲間がいて良かったです。しかも自分よりも実力のある奴が隣にいるのは、助かりました。「アイムリアル」はそういう作り方ですね。

──「本物になりたい」というのは、ある種青臭いテーマですけど、そういう思いは今も「リアル」だということですか。

そうですね。45歳にして、まだ「本物になりたい」と思っている。じゃあデビューしてからの23年は何だったんだ?ということにもなりますけど(笑)。25周年の時には「俺は本物になりました!」と言いたいです。あと2年待ってください(笑)。

──あはは。これだけ長くやっても、「俺は本物だ」と言えないところがある。むしろそこが、椎名さんの魅力だと思います。

そういうところ、あるんですよ。歌がうまいと言われても、「そんなことないです」と思っちゃうし、自信がないんでしょうね。ずっと不安だし、うぬぼれられない。それがリリックにも表れていると思うんですけど、逆に、俺が自信ありまくってる歌詞を書いたら、めちゃめちゃムカつきますよ(笑)。「俺は最高だ!」みたいな歌詞って、最低じゃないですか。だから俺はこのままでいいんだろうなと思ってます。アルバムを1枚出すごとに不安になって、「次はダメかな」と思う、その不安が本音に変わり、それが共鳴を呼ぶ。世の中の人はみんなそういうところを持っていて、みんな不安だし、それが僕の歌詞を身近なものに感じてもらえている理由だと思います。俺はこのまま、変わらずに行きますよ。でも本物になります、いつか。

公演情報

DISK GARAGE公演

Yoshiharu Shiina Live 2021「KNOCK and OPENED」

2021年9月23日(木・祝) 浜松窓枠・静岡
2021年9月25日(土) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3・埼玉
2021年10月2日(土) BEAT STATION・福岡
2021年10月9日(土) UMEDA CLUB QUATTRO・大阪
2021年10月16日(土) NAGOYA CLUB QUATTRO・愛知
2021年10月24日(日) 日本橋三井ホール・東京
※生配信は10月24日(日)日本橋三井ホール公演のみ予定しております。

チケット一般発売日:2021年9月11日(土)

「Vocal Summit 2021」出演!

2021年9月5日(日)品川インターシティホール
〈出演〉大黒摩季 / 田澤孝介 / 中島卓偉 / 椎名慶治 / TAKUMA / RYO

〈SPECIAL BACKBAND〉Gt.三代堅 / Gt.Kenji / Ba.Ju-ken / Dr.小柳”cherry”昌法 / Key.炭竃 智弘
〈司会〉DAISHI

ローソンチケットにて当日引換券販売中!
先着受付期間:2021年9月4日(土)23:59まで

>>お申し込み・詳細

RELEASE

『and』

オリジナル5thフルアルバム

『and』

2021年9月15日(水)SALE
『RABBIT-MAN』リマスター盤

1stフルアルバム

『RABBIT-MAN』リマスター盤

2021年9月15日(水)SALE

INFO

歌詞検索サイト「歌ネット」にて、椎名慶治の歌詞エッセイが公開!

  • 宮本英夫

    取材・文

    宮本英夫

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