SURFACEと別の世界線で音楽を楽しむ新プロジェクト「椎名慶治と永谷喬夫」。ライブ開催も発表した二人がすべてを語る!

インタビュー | 2022.08.05 18:00

椎名慶治と永谷喬夫? それってSURFACE? どっちなんだい? 様々な憶測と話題を振りまきながら、9月1日に「椎名慶治と永谷喬夫」名義のミニアルバム『DOUBLE or NOTHING』のリリースが決まった。「コロナ禍で応援してくれるファンのために音楽を」という志のもと、グッズ購入者特典として配布された4曲に新曲を加えた内容は、SURFACEでありSURFACEではない、別の世界線に属する興味深い作品だ。果たしてその真意とは? 永谷の誕生日、9月10日にライブ開催も発表した二人が、「新プロジェクト」のすべてを語ってくれる。
──まず、なぜSURFACEの二人が「椎名慶治と永谷喬夫」という名義でやっているのか。そのへんの事情をあらためて教えてもらえますか。
椎名いろいろと大人の事情から始まってはいるんですけど、コロナの中で、SURFACEのグッズを買ってくれた人に何か特典としてプレゼントしたいという思いがあって、一番喜んでもらえるのはやはり音源だろうと。でもSURFACE名義でそれをすることは前例がないと言われ、じゃあ名義が違えば出せるんですか?という話をしつつ、このコロナ禍で二人の思いを汲んで、黙認していただくという形になったので。メーカーにはすごく感謝しています。
──それが、SURFACEのオンラインショップでグッズ購入特典として配布した「頭の中の3LDKライフ」ですね。2020年の3月でした。そこから1年後に「イッツマイライフ」と「手を伸ばせ」を作って、さらに「AHAHA」を作って、それもグッズ購入者特典になりました。
椎名結局、コロナがここまで長引くとは誰も思ってなかったんですよね。お客さんを入れてライブができない中で、利益としてグッズも売らなきゃいけない、そのためにはどうしたらいいか?という理由もあります。ただ、名義は「椎名慶治と永谷喬夫」ですけど、やってるのはSURFACEなので、そこらへんの線引きが難しくて、永谷もけっこう迷っただろうと思います。僕のリリックに関しても、「この状況で書く歌詞って何だ?」とか、いろいろ考えましたね。

椎名慶治と永谷喬夫/「AHAHA」[Trailer]

──そうやって作りためた曲をまとめて、『DOUBLE or NOTHING』というタイトルで9月1日にデジタルリリースされることが決まりました。
椎名作品としてリリースしたいなという思いは、最初の頃からあったんですね。ただ最初に言ったように、SURFACEでやるとなるといろんなものが絡んでくるので。それよりもフットワーク軽く、この現状を打破したい、音楽を楽しみたいという思いがあって、だったら「椎名慶治と永谷喬夫」の名義のほうが動きやすいんじゃないか?と。
──はい。なるほど。
椎名その後もいろいろあったんですけど、事務所の方から9月10日の永谷の誕生日に神田明神ホールを押さえたけど「ライブやりませんか?」という話があって、それは「椎名慶治と永谷喬夫」の名義でも有りなんじゃないか?と。そこでまた話が動き始めて、ライブに先駆けて9月1日にデジタルリリースすることが決まって、じゃあ新曲も1曲作ろうかということで、今僕は歌詞を書いたりしてますけど。
──まさに今、新曲制作中。
椎名はい。理想としてはフルアルバムまで行けたら良かったんですけど、時間もないので。少しでもみんなに聴かせてあげたいということで、こういう形になりましたね。自分の曲をほめるのも何ですけど、「AHAHA」という曲はよくできてるなと思うし、ギターリフもいいし。言葉は悪いですけど、「SURFACEのほうが良かったかな」みたいな気もしていて(笑)。SURFACEのアルバムに入ってたらすごくいい曲だろうなと思いながら、だからこそ、グッズを買った人にしか聴けないよりは、作品として聴いてもらいたい気持ちがあったので。いい機会だなと思ってます。
永谷制作自体は本当に気楽にやれてます。歌録りもすごく順調ですし。やっぱり名義が違うだけでも、意外と気持ちが違うのかなというのは感じますね。
椎名まったく別物です。全然違う。
永谷違うよね。こんなにも肩の荷が下りた感じというのは、すごく不思議。特に2曲目の歌録りをした時に「これ、楽しいかもな」と思ったというか、椎名くんも、あんまり気にしなくていいと思って歌ってるんじゃないかな?って。
椎名まさに。結局SURFACEって、24年間やってきた中で記録が全部残っていて、ヒットを飛ばしたからこそやってこれたんですけど、「次に出す作品が売れなかったら?」という不安は毎回つきまとうんですよ。でも「椎名慶治と永谷喬夫」に関しては、売れる/売れないの問題じゃなかったので。このつらい状況の中でみんなに少しでも、曲を聴いている間だけでも楽しめるものを届けてあげたい、それだけの企画だったので、純粋に音楽を楽しんで作っている雰囲気はあったし、それが声にも表れてるところはあると思う。リラックスした声というか、いい意味で頑張ってないというか。そのあとSURFACEも聴いてみたんですけど、頑張ってるんですよね。
永谷ね。特に肉声とか、体で表現するものって、出ちゃうんだと思う。この間、フィギュアスケートの羽生くんがプロに転向したけど、これからアイスショーとかで見せる羽生くんは、また違うんだろうなと思うし。
椎名ものすごく柔らかいんじゃない? 戦いの中で、4回転半を飛ぶことしか考えてなかった時とは違うと思う。
永谷それはそれでかっこいいよね。
椎名たぶんSURFACEの時の俺たちも、そういう表情をしてるのかもしれない。だからいい意味で、これが息抜きになって、その次のSURFACEの作品にプラスに跳ね返ってくると思うので。それを生かしたいなと思いますね。
──収録曲に関しては、どんなエピソードがありますか。
永谷「イッツマイライフ」という曲は、自分たちが客観的にSURFACEを見て、「この人たちを真似てみたらどうなるんだろう?」ということで、「さぁ」という曲をモチーフにした曲にしたら?と言ったら、「おまえ、それやっちゃう?」「でもそれで良くない?」というやりとりがあって。でも結局「面白いね」ということになったんですけど。
椎名オマージュが自分たちって、なかなかないですよね。向こうは「さぁ」で、こっちは「そう、さぁ」にしてみたり。オマージュしたなって気づいてほしいわけじゃなくて、スタート時点での二人のお遊びだったんですね。そういうリラックスムードはありました。
永谷曲が完成に至ってない状況で、SURFACEのアコースティックライブで歌ったんですけど、思いのほか反応が大きくて。コロナ禍だからお客さんがあまりノリノリになれない状況の中で、この曲をやるとずいぶんノッてくれてる感じがあって。
椎名空気が変わるんですよ。その曲をやった時の熱量が違って、「待ってた曲はこれだな」と。SURFACEらしいというか、みんなこういうノリ好きなんだなと思いました。

椎名慶治と永谷喬夫「イッツマイライフ/手を伸ばせ」 [Trailer]

──現時点(7月末)ではまだ聴けてないですけども。もう1曲制作中の「新曲」は、どんな感じになりそうですか。
椎名タイトルは「鳴らせよそのハートビート」で、鼓舞する歌ですね。「AHAHA」では「コロナだけどみんなまた会える日まで元気でね」と歌っていて、そこからまた立ち向かっていこうということです。(ミニアルバムは)全体的にコロナに寄ってる歌詞ではあるので、「元気出して行こうよ」「頑張ろうよ」という応援歌になってると思います。ノリとしてはロックでソウルでディスコみたいな、永谷の持ってるテイストを存分に出してもらいたくて、アレンジを進めてもらいながら、俺は今歌詞を書いているところです。3,4回書き直しました。
──気合入ってますね。
椎名やっぱりちょっと、気負ってるんですよ。さっきも言ったように、「椎名慶治と永谷喬夫」は利益じゃないところから始まってるんですけど、今回はちゃんと売らなきゃいけないので。新曲を作っても「ほかの4曲のほうがいいじゃん」って言われたら駄目じゃないですか。「やっぱり新曲もいいね」となれるようにしたいので、言葉を一つ一つ直しているところです。最終的には納得できるところに落とし込めると思うので、やれるところまでやります。
永谷最近よくやるのが、普段から4小節のサンプル音源みたいなライブラリーを自分で作って、いつでも曲にはめこむことができるようにしてるんですよ。このアレンジに、この間作ってみたサンプルをぶち込んだら、「意外といいかもしれない」とか。
椎名面白いよね。
永谷劇伴で、曲をいっぱい作らなきゃいけない時があって。たとえば笑えるシーンにはファンクみたいな音が絶対合うけど、あえてメタル的な音を突っ込むと逆に面白かったりするんですね。そういう発想です。自分の年齢的にも、新しい発想を生み出すことがけっこう難しくなってきてるというか、刷り込みがいっぱいある気がしていて、それを取っ払うためにも、意外性が必要になってくるので。自分のサンプル以外にも、Splice Soundsっていう音源があるんですけど、それを買って使ったりとか。山下達郎さんのニューアルバムも、Splice Soundsをけっこう使ってるみたいですね。
椎名新しい発想ですよね。メロンと生ハムを合わせたらうまかったみたいな。
永谷そうそう(笑)。あとは、自分にとっては歌詞がすごく大事なので。アレンジでどこまでモチベーションを上げられるか。
椎名アレンジで、歌のテンション感が変わるので。すごく引っ張られますよ。

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