cadode、東阪ワンマンツアーファイナル目前!現在のモード、来年リリースのアルバムやライブ観を探る

インタビュー | 2022.12.05 18:00

ボーカリストのkoshi、音楽作家としても活躍するeba、ゼネラルマネージャーの谷原亮で結成されたユニット、cadode。2017年の結成以降、精力的に音源をリリースし、さらに2022年はサーキットイベントへの出演や初のワンマンライブと初のワンマンツアーを開催するなどライブという表現に力を入れた1年となった。
そんな彼らが東阪ワンマンツアー「虫の知らせ」の大阪公演にて、フルアルバム『浮遊バグ』を2023年1月にリリースすることを発表。さらに同アルバムに収録されるゲーム『サマータイムレンダ Another Horizon』のEDテーマ「さかいめだらけ」を初披露した。ファイナルである12月10日の東京公演でも何かしらの発表を控えているそうだ。結成から5年で新たなチャレンジを重ねた彼らは、現在どんなモードなのだろうか。これまでの歩みを振り返りながら、アルバムの全容やライブ観などを探っていった。
──cadodeはebaさんの「作家活動ではできないことをやりたい」という思いから始まったそうですね。
eba自分の手癖を一切排除した制作をやってみたいとはずっと漠然と思っていて、koshiと出会ってから「これはやるしかない」とcadodeを結成しました。「今までやったことがなくて、苦手意識があって得意じゃないけどやりたいこと、できることをやっていこう」というところから始まっていますね。
──koshiさんはcadodeを始める前まで音楽の経験がなかったんですよね。それでもkoshiさんの歌には、ebaさんを動かす力があったと。
ebaもともと人の声に惹かれる性質なんだと思います。音楽をやっていると無機的な音に触れる機会も多いんですけど、声はどんなに加工しても、身体から出てきたものだからかすごく有機的に感じる。そこが好きなんだと思います。cadodeでは今まで培った技術は排除して、100%感覚のみで作っている感じです。その結果、枠組みにとらわれない、ジャンルレスな感じになってるんじゃないかなと。
──たしかに。ポップなんだけどどこか歪んでいたり、仄暗さをまとっていたり。
ebaポップスも好きなんだけど根がハードコアというかマニアックなので、ポップスにそれが滲み出ているのがcadodeの音楽かもしれないです。cadodeではほんとに好きなことしかやってないので、そうすると自然と自分の趣味や人生が滲み出たものになっていくのかなとは思いますね。
──koshiさんの歌詞もシンプルな言い回しでありながらとても詩的で、整った図形を組み合わせてアートを作っているような印象を受けます。歌詞を書くとはkoshiさんにとってどんな行為でしょうか?
koshi歌詞を書いていくなかで、これは自分の中にある本当に表現したいものや、本音を吐き出せる場なんだなと気付きましたね。親や仲のいい友達にも、あんまり心の奥底にある本音を言ってこなかったタイプなので。cadodeで活動すること、歌詞を書くことは自分にとって天職であり、自分が自分であることの証明でもあると思うし、これは自分の生きづらさを自分で解決しているんですよね。音楽で人生の活路を見出したり、音楽に人生そのものをアウトプットしている感覚があります。大学卒業後に就職したら1年半ぐらいでガタが来て、そんななかでebaさんと知り合って、仲良くなって、それがcadodeになっていって――ここまでの歩みは運命的だと感じていると同時に、腑に落ちているんですよね。
──そこにebaさんの発案で、ゼネラルマネージャーの谷原さんがメンバーとして迎え入れられcadodeが結成されます。谷原さんはおふたりのソングライティングに対してどのように感じていますか?
谷原亮メンバーという立場なので、活動当初は制作についていろいろと意見を言うことがありました。チャレンジから生まれているユニットでもあるので、最初のうちは漠然としているというか、方向性がどうなるのかわからないところがあったんです。でも曲数が増えることによって、だんだんどの楽曲にも共通する「cadodeっぽい」が感じられるようになってきて、「これならどんなジャンルの曲を作ってもアリだよね」とみんなが思えたというか。だから今は完全に「いい曲やなあ」と思いながら静観しています。
──確かにcadodeは音楽のジャンルというよりは、哲学的かつ観念的なところが基盤になっている音楽という印象があります。その成分のうちのひとつが掲げている「青春をやり直そうとする」なのではないでしょうか。cadodeの音楽は「青春ってこういうものだよね」というノスタルジーでもファンタジーでもないので。
koshi根本的に青春を描いているユニットではないんですよね。僕らにとってcadodeの活動は10代でできなかった青春をやり直しているという、大人になった僕らが青春してるだけでもあるんです。10代の青春を歌っているわけではないから、cadodeの音楽はどこか何かがくすぶっているような感覚があるのかなと思っています。
──cadodeはそういう決まり事から逸脱した、純度の高いユニットだと思います。おっしゃっていただいた楽曲面以外にも、マネージャーの谷原さんがメンバーであることはかなりわかりやすく個性的ですし。谷原さんはバンドマン経験がおありで、3人の中で最もステージ経験がおありなんですよね。
谷原物は言いようですけど(笑)。あれをステージの経験に入れていいのか(笑)。
eba嘘ではないよ(笑)。彼にメンバーとして入ってもらったのは、ちゃんと3人均等にプラスになる関係性のほうが気持ちよくやれると思ったからなんです。「アーティストが成功したけど、自分は頑張っていても一銭も入らない」と言っている人にも会ったことがあるので。
──なるほど。会社員さんだから。
eba海外だとアーティストの成功とマネージャーの収入が比例するようなエージェント契約を結んでいることも多いんですよね。それと似たことができればいいと思ったんです。あと、アーティストにとって会社は1回きりの人生の中の出会いだけど、会社にしてみればどんどん新しいアーティストは入ってくるじゃないですか。その距離感が寂しいなと思ったんです。だから結果が出たときに、同じ温度で喜び合いたかったんですよね。
koshi“メンバー”というだけでビジネスだけではない、他人じゃない関係になるんですよね。そういう間柄でないと話せないこと、できないことはあると思うんです。だから僕は今の環境がすごく心地いいんですよね。よくアーティストがスタッフ陣を含めて“チーム”という言葉を使いますけど、メンバーになってもらえると本当の意味でチームになれるんです。
谷原音楽をやめてから作ったり表現することはしてこなかったので、裏方を経てまた表に戻ってくるのは、客観的に見てもすごく面白いなと思っていますね。業務量を心配されることもあるんですけど今のところ間に合っているので、もう手が回らない!と思うくらいになってくれたらうれしいですね(笑)。
──皆さん会社員経験があるのもそうですし、koshiさんが音楽を始めた経緯も運命的ですし、もともとebaさんが作家になられた経緯もなかなか異端で。
ebaまじでヤバいですよね。あの時はタガが外れてました(笑)。
koshiいやいや、そういうのが大事じゃないですか(笑)。
──『けいおん!』に感動して、その楽曲を作っている川口進さんがご自分と同じ富山県に住んでいるから感動を伝えたくて直接電話をして、そこから趣味でお作りになっていた曲を川口さんに聴いてもらって、そのまま現在の事務所に所属するという。
eba『けいおん!』も自分のやり逃した青春が詰まっていると感じて好きになったので、全部が今につながってるんですよね。オタクは外からの刺激には弱いけど、内なる強いエネルギーを持っている人が多いし、それを正しい方向に向けられたときに花開くんだろうなと思います。
──音楽をやり始めるきっかけも歩みも、決まったレールじゃなくていいんですよね。それが当たり前になっていくと面白いと思います。
koshi本当にそうですね。3人全員共通して持っている感覚はあるんですけど、全然違う人生を通っているから聴いてきている音楽が全然違ったりもするんです。谷さんは音楽作家の事務所に勤めている人だからJ-POPにも詳しいし、現場もたくさん見てきているから、その経験値がcadodeにも反映されていますね。

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