ASKA、デイヴィッド・フォスターとの競演コンサート&全国ツアーについて語る

インタビュー | 2023.02.22 15:00

──競演を考え始めたのは、いつ頃からですか?

最初はまったく考えていませんでした。80年代の頃って、外国のアーティストと日本のアーティストとの間には、大きな隔たりがあるとされていましたしね。でも取材時に、デイヴィッド・フォスターから影響を受けたことを語るようになり、ネットでも「ASKAとデイヴィッド・フォスターとの共通点」みたいなとこが論じられるようになってきて、いつか一緒に何かできたらいいなと、漠然と思うようになりました。競演という形ではなくて、「僕が作った曲を、いつかデイヴィッドにプロデュースしてもらえたらいいな」って。そう思い始めてからが早かったですけど(笑)。

──2018年の来日公演時には、楽屋に招かれて、アドリブで歌を披露したとのことですが、そこで競演を直談判したんですか?

いや、彼はデイヴィッド・フォスター&フレンズという編成でライブをやっていたので、「フレンズに加入させてくれませんか?」って言ったんですよ。そうしたら、「ここで歌ってみろ」という話になり、即興で歌いました。

──その場でアドリブで歌うASKAさんの行動力も素晴らしいですが、「歌ってみて」というデイヴィッド・フォスターもオープンな人ですね。

デイヴィッドはとてもオープンな人ですし、そういうムードを作ってくれる人なんですよ。「さあ、ここで歌ってみろ」「NOW!」って(笑)。

──2022年のビルボードライブ東京での公演では、観客として観にいったASKAさんがステージに上がり、デイヴィッド・フォスターと二人で、即興で1曲を完成させて披露しています。

前回に楽屋でやったアドリブを発展させて、ステージでやったということですね。作曲家にとっては、即興で曲を完成させることは、楽器さえあれば、そんなに難しいことではありませんから。

──いやいや、ASKAさんだからこそ、可能だったのではないですか?

かなり前のツアー(2010年から2011年にかけてのツアー『ASKA CONCERT TOUR 10>>11 FACES』)で、澤近泰輔と一緒に、毎回即興で歌を作って披露するステージを30本以上やっていたので、その経験もプラスになっているかもしれません。

──そうした経緯があったからこそ、今回の競演がスムーズに実現したわけですね。

デイヴィッドに競演のオファーをしたら、「3月のここしか空いていない」との返事があったんですよ。当初は全国ツアーを3月からスタートする予定で組んでいたんですが、デイヴィッドと競演するチャンスなんて、おそらくもうないじゃないですか。日本人のミュージシャンをプロデュースすることはあっても、ステージを一緒にやったシンガーはいませんから。ASKA史においても、記念すべき出来事が起ころうとしているのだから、デイヴィッドとの競演をやるしかないな、ツアーは4月からにずらそうと決断しました。

──競演公演と全国ツアー、共通する部分はありますか?

内容はまったく違うものにする予定です。共通するのはバンドのメンバーくらいですね。ライブも作品ですし、ライブを記録してBlu-ray作品としてリリースした時に、似通ったものになってしまっていたら意味がないですから。

──デイヴィッド・フォスターと競演するにあたって、心がけていることは?

「日本のボーカリストって、こんなものか」ってデイヴィッドに思われないようにすることですね。自分の力量以上のことはできませんが、力量の中での最高値を目指します。

──選曲や構成については、デイヴィッド・フォスターとやり取りをしているのですか?

曲を送ってやり取りしてますが、最終的な形は今のところ未定です。彼は一から設計図を引いてライブを構築するタイプで、僕はハイライトになる曲を決めて、そこから広げていくタイプなんですよ。ライブの作り方がまったく違うので、どう擦り合わせていくかは、これからですね。

──コンサートに向けてのやり取りをする中で、デイヴィッド・フォスターの人柄について、どう感じていますか?

まだそんなに深く関わっていないので、いろいろ感じるのはこれからだと思います。基本的にはとても陽気で柔らかい人です。ただし、柔らかい人ほど、仕事のことになると、真逆の厳しさやストイックさを持っていたりするので、覚悟してのぞみます。もし、厳しさを経験することができたら勉強になるじゃないですか。

──確かにそうですね。

ある意味、覚悟しつつ、ある意味、期待しつつ(笑)。

──シンガーソングライターであり、ASKAさんの娘さんでもある宮崎薫さんも参加されることが決定しています。どういう経緯で決まったのですか?

デイヴィッドとの公演が決まった段階で、薫のプレゼンをしてみようと考えていました。デイヴィッドはフィリピンのシャリースという女性シンガーをプロデュースしたこともありますし、女性シンガーのプロデュースの上手い人なんですよ。薫の歌声は、デイヴィッドの好きな声色だろうとの判断もありました。親だから、きっかけを与えたということではありません。一人の音楽家・プロデューサーとして、身近なところに、表に出ていく力を持っているシンガーがいるのだから、プレゼンしようということでした。

宮崎薫

──宮崎薫さんはどんなシンガーソングライターですか?

薫が高校の時に、初めて彼女が歌う光景を背中越しに見たんですが、こういう歌を歌えるシンガーに成長していたんだなって驚きを感じたことがあります。子どもの頃から歌手になると決めていたらしいです。薫の成長を見ていくうちに、「いつか必ず表に出るな」って感じていました。

──先日、ラジオ番組『ASKA Terminal Melody』に宮崎薫さんがゲスト出演された際に、宮崎さんの「LIGHT」がオンエアされました。パーソナルな曲でありながら、普遍性も備えていて、胸に染みてくる良い曲ですね。

僕にとっては“耳の痛い曲”なんですが、伝えたいことがしっかり届いてきたのだから、表現するのに値する曲なのだと思っています。本人の中では今回の公演で歌う歌は決まっているようです。自分の持ち分はしっかりやってくれるでしょう。

──デイヴィッド・フォスターと競演することによって、ASKAさんの表現の可能性がさらに広がりそうですね。

僕は作品を作るときには、常にワールドワイドでなければダメだと考えているんですよ。日本語の歌詞というワールドワイドになりにくい要素もありますが、意識や姿勢としては、ワールドワイドであるべきだなって。デイヴィッドと競演することで、その意識はさらに強くなるでしょう。欧米のアーティストに楽曲を提供してみたいという気持ちもあります。未来につながるコンサートにしたいですね。

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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