新作歌舞伎 FINAL FANTASY X、明後日初日!公開フォトコールでど迫力!歌舞伎×テクノロジーの融合

ライブレポート | 2023.03.02 20:50

2023年3月4日(土)、木下グループ Presents『新作歌舞伎 FINAL FANTASY X』が初日を迎える。その前々日となる今日3月2日(木)、公演会場であるIHIステージアラウンド東京(豊洲)で、本公演の初回前会見と公開フォトコールがとり行われた。

『ファイナルファンタジー X』は、北瀬佳範プロデュースによる大ヒットゲーム『ファイナル ファンタジー』シリーズの第10作目で、業界初のキャラクターヴォイスや表情が変化するフェイシャルアニメーションを採用、リアリティを増した描写で 大いなる脅威『シン』に立ち向かう少年少女の切ないストーリーに一層の深みを与えた名作として多くのユーザーに愛されており、続編を含め世界累計出荷・DL数は2,119万(2022年3月末時点)以上を誇っている名作だ。
本公演は、企画・演出の尾上菊之助をはじめ、脚本に連続テレビ小説「おちょやん」で知られる八津弘幸、演出に「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」を手がけた金谷かほり、さらに中村獅童、尾上松也、坂東彦三郎などの豪華歌舞伎俳優陣が集結。会場はアジア初の360度客席が回転する巨大劇場 IHIステージアラウンド東京という、歌舞伎としても画期的なステージとして、業界内外問わず多くの注目を集めている。

本日行われた公開フォトコールでは、まず尾上菊之助を中心に中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、中村米吉、中村橋之助、上村吉太朗、中村芝のぶ、坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六が 登場人物としての出立ちで登場した。歌舞伎役者がゲームキャラクターを演じるにあたり注目されていた、ビジュアル面での品性溢れた融合性を華やかに披露し、メディアを魅了した。
歌舞伎へと昇華するための衣装デザインやメイク、色使い、ヘアの長さやはね、ドレッドまでも。細部に渡り、原作の世界観を守るため、また歌舞伎の舞台として息づくためのさまざまな工夫が施されている。原作を愛する人もその違いを存分に楽める説得力と新鮮味に溢れていた。

進行は自己紹介から始まるも、中村獅童や尾上松也が早速会場を笑いに包んでくれた。
その流れで終始和やかな雰囲気で進められた会見であったが、特別深く心に残ったのは、企画・演出でもある尾上菊之助が コロナ禍で『ファイナルファンタジー X』をゲームプレイしたときに作品から受け取ったメッセージについて語った一説だ。
「(中略)一丸となって“シン”という強大な魔物に立ち向かっていく…その心というものが、私生活で落ち込んでいた私に元気をくれました。(中略)まだ元気のない方、そして、痛手を負ってしまった方、そして、不況に喘いでいる方にも、前向きに未来に向けて元気になって、進んで参りましょう!という、FF(ファイナルファンタジー X)のメッセージを、ゲームではなく人間が演じることによって、より深くお伝えすることができるんじゃないか、と思っています。」会見終盤で、尾上菊之助は深く優しいトーンで語った。その思いを救い上げてさらに人々に届くようにと、隣に座る中村獅童が続いたことも、強く胸に響いた。
「菊之助さんが企画を立てて、役者一人ひとりに電話をかけて、自分の思いを伝えて…それが僕はとても嬉しかったし、素晴らしいな、と思った。一人ひとりの思いが、今回の公演を成功に導き、歌舞伎の未来へと続いてくのではないかな。」
熱い眼差しで語る目の奥には、コロナ禍で苦しかった我々の暮らしに加えて、歌舞伎に生きる世界もそこに見えた気がした。
だからこそ今回の演目は『ファイナルファンタジー X』でしかないし、此処 IHIステージアラウンド東京で、誰も見たことのない、興奮と活力でみなぎるような「新しい歌舞伎」が堂々と完成したのだ。

いよいよこれより舞台の一部が上演される。『ファイナルファンタジー X』といえばゲームの域を越えた映像美だが、その期待を遥かに超えるスケールでザナルカンドの映像が広がる。音楽「ザナルカンドにて」が流れ、ゲームの冒頭に聞こえるティーダのセリフが入り、待ち詫びたタイトルが目の前に飛び込んできた。『ファイナルファンタジー X』という、名作の凄みが一瞬で観るものを黙らせる。

やがて、舞台中央上段の寺院で入口より、シーモア(尾上松也)とユウナ(中村米吉)が登場、シーモアがユウナとの政略結婚を強引に進めるシーンへと移った。
ティーダ(尾上菊之助)、アーロン(中村獅童)、ワッカ(中村橋之助)、リュック(上村吉太朗)、キマリ(坂東彦三郎)が登場、一行はシーモアを更正しようとするが、結局戦いとなってしまう。
登場人物を次々と切りこんでいくシーモアの激しさと哀しさが、歌舞伎の立ちとリズムで導かれていく。発声の美しさを殺さない絶妙な現代語で、歌舞伎を観ているのか舞台を観ているのか、もはやどうでも良くなる程全く新しいものに触れている感覚が新鮮だった。
激しくお互いを傷つけ合いながら、正面を睨んで強烈なオーラを放つ瞬間がある。「これがあの“睨み”というものなのか!?」時折ハッと胸を鷲掴みされてこれが歌舞伎であるであろうことにゾクゾクする。

絶妙としか言いようがないセットとキレのある光の重なりの中に生きる、役者たち。流れるのは「シーモアバトル」。シーモアはアニマを召喚するが、敗れて光に消えていく。その幻想的でドラマティックな瞬間には思わず息を飲んだ。

シーモアの去り際の目力が余韻として残る。その威力に改めて感動していると、ユウナ(中村米吉)の異界送りのシーンが始まった。
先に公開された映像で予習済みではあったが、何がリアルで何が映像かがまずわからない。そんなのどちらでも良いではないか、ただただ全ての力を奪われて、脱力状態のまま心をもっていかれるほどの美しい佇まいと仕草が、細く流れる目線が、優雅に舞っていた。ユウナの姿は完全に映像と一体となり、光の方へ向かっていく。やがて静かに降り注ぐ細やかな雨が舞台のベールとなり、これが金谷かほり氏が語っていたミストシャワーの魔法かと感嘆する。これはすごい!ミストシャワーに更なる光が融合し、新空間を見たのだ。これは何世界だろうか。何か当てはめようとも全て陳腐になってしまう気がして打つ手がすくむ。やがて雨上がりのような神秘にも似た湿度の中に、再びユウナが浮かび上がり、あの名台詞をキメるのだ。私たちが大いなる脅威(シン、あるいは何か)に立ち向かう、あの誓いの言葉を。

こうして公開フォトコールは瞬きをした自覚さえなく一気に終えた。
ロビーにはさまざまな特典やコラボ企画が紹介されていたので、少し触れておこうと思う。
まず、チケットSS席にはオリジナルCGビジュアルとアクリルが、S席にはオリジナルCGビジュアルと公演ポスターが付いてくる。これはFF推しなら絶対手に入れたいだろうと思う。
チケットの他にも限定FFグッズの販売や、QG DISH(三越伊勢丹)が選び抜いたノベルティ付き名店弁当の販売、併設カフェではオリジナルドリンクやドーナツも販売される。ラビスタ東京ベイとホテルJALシティ東京 豊洲ではチケット付き限定プラン(日帰り/宿泊)もあるとのことだ。

しかしながら改めてあの衝撃舞台を振り返ってしまう。
日本が生み出す最高のファンタジーとして知られる『ファイナルファンタジー X』だというのに、2.5次元舞台が市場を賑わせる昨今、3次元に重心を安定させた上で、確かにファンタジーの中に我々も居た。更には左右に客席がスクリーンが移動したからだろうか、どうして全く同じ舞台で観劇しているとは信じがたい感覚が今でも残る。興奮したまま、観終えてこうして一息ついて、改めて物凄いものを見たと実感するとは。隙のない夢の時間だった。
僕は、また、きっと泣ける。僕は、まだ、きっと、泣ける。

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