岸谷 香とmiwa。ずっと変わらない音楽への純粋な気持ちが共鳴した“ふたりぼっちの大パーティ”東京ファイナル

ライブレポート | 2023.08.16 12:00

岸谷香プレミアム弾き語り2マンライブ
~ふたりぼっちの大パーティー!!~
2023年6月18日(日)東京・日本橋三井ホール
ゲスト:miwa

“ふたりぼっちの大パーティ”と題した、岸谷にとって初めての弾き語りツーマン・ツアー。名古屋でスガ シカオを、大阪で馬場俊英をゲストに迎えて行われたステージは、この日miwaを迎えてのファイナル公演だ。

まず、ステージ下手から岸谷が、上手からmiwaが登場してステージ中央でハイタッチを交わすと、それぞれアコースティック・ギターを抱えて演奏が始まった。自身のデビュー曲「don’t cry anymore」をmiwaが颯爽と歌い、そこにハモとギター・ソロで岸谷が彩りを加える。後輩の持ち味をまず前面に押し出して、その個性をオーディエンスに印象づけながら、ロックなハーモニー・ワークで自らの指向もちゃんとアピールするオープニングだ。

数年前から弾き語りツアーを始めた岸谷が、さらなる広がりを求めてこの弾き語りツーマン・ツアーを企画したということだが、さて弾き語りツーマン・ツアーの醍醐味とはどんなものだろう?弾き語りというスタイルがアーティストの音楽性はもちろん、その人間性までもがあらわになるものであることは多くの知るところだが、そのスタイルで3人、4人と登場すれば、それはやはりショーケース的な色合いが濃くなる。しかし、1対1のツーマンとなれば、それぞれの音楽性、人間性が時に火花を散らすことがあるだろうし、あるいは逆に効果的に響き合って相乗効果を生み出すこともあるだろう。いずれにしても、この弾き語りツーマンという形だからこそ生じる未知のケミストリーを求めて岸谷はこのツアーを企画したはずで、実際のところ、この日も会場を埋めたオーディエンスが、二人の音楽的個性を存分に味わった上に、この二人の組み合わせだからこそのケミストリーを満喫することになった。

そのケミストリーは、一言で言えば純化ということだったように思う。行き届いた演出と温かいサポートに支えられてmiwaは自分にとっての“歌”を歌いきることに集中し、だからその歌の個性はより純化し、岸谷が「透き通るような」と形容したハイトーン・ボイスを素晴らしさだけでなく、「曲を作ることよりもギターを弾くことよりも、何よりも歌が一番大事」と話した、その歌うことに没入するピュアな有り様に強い説得力を感じさせた。

そして、そのひたむきな歌の魅力に先輩の音楽に向かう思いがさらに純化され、岸谷はいつにも増して音楽を演奏することを楽しんでいた。「ロックンロールやりまぁす!」と話して始めた自分のパートでは、ルーパーを駆使して新旧のロックンロール・チューンを自在に披露した後、一転してピアノの弾き語りでmiwaの曲「ホイッスル」のカバーをしっとりと聴かせた。

その曲がmiwa22歳のときの作品であることを知ったということから話し始めた岸谷は、「こんなこと、話したことなかったんだけど…」と言って、自身の22歳の頃の恋バナをあっけらかんとした調子で話したのだけれど、それはうまくいかなかった恋愛の思い出話のようでありながら、実は20代前半の女子にとって最も大切なことであろう恋愛でさえも犠牲にして、文字通り身も心も捧げていた音楽への想いについて語ったのであり、そんな話を岸谷に語らせたのは、22歳の頃となんら変わらない自分の音楽への想いをそのまま音楽化したようなmiwaの真っ直ぐな歌声だったことは明らかだ。

この日のステージのクライマックスのひとつとなった、miwaの「片想い」という曲を岸谷がアレンジし、彼女の伴奏でmiwaが歌ったシーンでは、その曲の主人公の無垢な恋心をmiwaの無垢な歌が過不足なく表現し、岸谷は曲の主人公の無垢な恋心に共振する音楽への想いを彼女一流のセンスと音楽的な知識で印象的なアレンジに昇華させて、ここで歌われる恋心が遠い思い出になっている世代にも味わい深い1曲として聴かせたのだった。その演奏の魅力を生み出したのは、ステージ上の二人のひたむきな気持ちだけではないし、あるいは彼女たちが十分に音楽的であったからだけでもない。音楽的であることに向かってひたむきに突き進み、同時に音楽的であることがひたむきな思いをより広く、より真っ直ぐに届けるために機能する、そんな化学反応が、その「片想い」の演奏を特別なものにしたのであり、それはまさしく弾き語りツーマン・ライブの醍醐味に触れた場面だった。

岸谷は、「二回りも歳が離れてるから」と何度も口にして会場の笑いを誘っていたけれど、この日のステージを見ていると、そのセリフは自虐ネタのようなものではなく、むしろ「これだけ歳が離れているのにわたしたちはこんなに重なる部分があるのね」という驚きの言葉だと思えてくる。ステージの最終盤、♪I see you true colors/And that’s why I love you♪(私には見える/あなたの本当の色が/それがあなたを愛する理由)と歌うシンディ・ローパー「TRUE COLORS」をmiwaがカバーしたのに応えて、岸谷が同じくシンディの「ALL THROUGH THE NIGHT」を歌った。この曲のサビの歌詞は、こんなことを歌っている。
♪私たちがスタートしたらカチッとメーターが鳴って、夜通し一緒にずっと走って行く/そこには終わりなんて来ない♪
世代を超えて、深い共感を取り交わした二人の豊かな化学反応の効用をたっぷりと浴びた一夜だった。

SET LIST

<セットリスト>
01. don't cry anymore[共演]
miwa
02.delight
03.ハルノオト
04.ミラクル
05.ヒカリへ
06.あなたがここにいて抱きしめることができるなら
07.片想い[共演]

岸谷 香
08.GET CRAZY
09.STAY BLUE
10.ホイッスル(miwaカバー)
11.パパ
12.Diamonds<ダイアモンド>
13.世界でいちばん熱い夏[共演]
14.TURE COLORS~ALL THROUGH THE NIGHT[共演]
15.M[共演]

公演情報

DISK GARAGE公演

岸谷 香 バンドツアー決定!
Kaori Kishitani Live Tour 2023「56th SHOUT!」

2023年11月24日(金)名古屋・BOTTOM LINE
2023年11月25日(土)大阪・BIGCAT
2023年12月3日(日)東京・日本橋三井ホール
2023年12月9日(土)福岡・トヨタホール・スカラエスパシオ

バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON !!

2023年9月2日(土)Zepp Haneda(TOKYO)

出演:岸谷 香/筋肉少女帯/JUN SKY WALKER(S)

※全席種に会場限定『バンドやろうぜ』特別編集版(32P)付、
親子席は1冊のみ配布

チケット一般発売日:2023年7月22日(土)10:00〜

miwa INFO

miwa「ハルノオト – With ensemble」「片想い – With ensemble」の2曲を配信リリース!

 

miwaが4月にYouTubeチャンネル「With ensemble」にて披露した「ハルノオト – With ensemble」、「片想い – With ensemble」の2曲が8月2日(水)に配信リリース!
各種ダウンロードサイトやサブスクリプションサービスで8月2日(水)より配信がスタート。

 

<配信リリース情報>
・タイトル:「ハルノオト – With ensemble」/「片想い – With ensemble」
・リリース日:2023年8月2日(水)
▼ダウンロード/ストリーミングリンク
https://miwa.lnk.to/With_ensemble

 

<YouTubeにて公開中>
「ハルノオト – With ensemble」
ピアノ・5本の弦楽器(バイオリン2・ビオラ・チェロ・コントラバス)
https://youtu.be/IUp2xjwkgF4

「片想い – With ensemble」
4本の弦楽器(バイオリン2・ビオラ・チェロ)
https://youtu.be/wb07AESYoBk

  • 兼田達矢

    取材・文

    兼田達矢

  • 撮影

    MAKOTO YOSHIOKA

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