LiSA、ファンと一緒にツアーファイナルという最高の“幕開け”を迎え、13周年も新たな物語へと走り進める

ライブレポート | 2023.12.20 17:00

LiSA LiVE is Smile Always~LANDER
2023年12月17日(日) 東京ガーデンシアター(有明)

 LiSAが全国ツアー「LiVE is Smile Always〜LANDER〜」の最終公演を東京ガーデンシアターで開催した。
2022年11月にリリースされた6thアルバム『LANDER』を携えて行われた今回のツアーは、全国14カ所19公演。アルバム『LANDER』の収録曲はもちろん、これまでのライブのなかで磨かれてきたアンセムを含んだセットリスト、そして、“ファンのみなさんの声を聴きたい、一緒に歌いたい”という思いに貫かれたステージングによって彼女は、自らのライブの意義を——さらに進化した形で——体現してみせた。

 夜の都会を駆け抜けたピンク足の黒猫がジェットロケットに乗り込み、新しい惑星へと飛び立っていく。アルバム『LANDER』のコンセプトにもつながるオープニング映像の後、“わんたんにゅーめんず”[ゆーやん(石井悠也) / Dr、ゆーこー(柳野裕孝) / Ba、アッキー(白井アキト) / Key、PABLO / Gt、いくちゃん(生本直毅) / Gt、Nona*(岩村 乃菜) / Cho&Par]が登場。凄まじい歓声のなか、舞台の奥に置かれた階段の上にLiSAが姿を見せ、<目を輝かせて/楽しいことを見つけられてる?>というフレーズを響かせる。1曲目はアルバム『LANDER』の最後に収められた「NEW ME」。2番からはバンドサウンドが加わり、一気に加速。悔しさ、怒り、虚しさを乗り越え、新しい未来、新しい自分に会いに行こうというメッセージを真っ直ぐに伝え、ライブは鮮やかに幕を開けた。続く「紅蓮華」で早くも最初のピークに到達。<どうしたって!><運命を照らして>の大合唱が起き、観客が一つになっていく。

 赤いドレスを脱ぎ捨て、黒と黄緑色のポップなワンピース姿になったLiSAが選んだ3曲目は「コズミックジェットコースター」(アルバム「LANDSPACE」/2013年)。メンバーも前方に出てきて、横一列でパフォーマンス。LiSAは自由にステージを動き回り、ライブ全体の躍動感を生み出す。観客も全力で叫び、飛び、体を揺らしまくっていた。熱気がすごい。

「ただいま、LiSAです! ついにやってまいりました、LANDERツアー、ファイナル!」
「今日は19公演目。全国の18公演分、受け止めてくれる準備はいい?」と語り掛けると客席から歓声と拍手が巻き起こる。
「愛と思いやりを大切に、ここにいる、みーんなで、最高に楽しんでいきましょう。ピース!」といういつもの台詞の後は、「アコガレ望遠鏡」(アルバム『Launcher』/2015年)。<「正直に言っちゃいなよヨ」>のシンガロングと手拍子によって、客席とステージの距離がさらに近くなっていく。ここからはアルバム『LANDER』の楽曲を中心に進行。LiSAがピンクのテレキャスを弾いた「シャンプーソング」、PABLOのアコギを中心にしたオーガニックなバンドグルーヴとともに<アイサレタイ ユルサレタイ>というラインが広がった「dis/connect」、そして、スパンコールを散りばめたワンピースに早着替えして披露された「悪女のオキテ」へ。挑発的なボーカルによって描かれるのは、“悪女”に向けたシニカルな棘。最後に「バカヤロー!」と叫ぶLiSAに拍手喝采だ。

 ジャズとロックが刺激的に絡み合う「赤い罠(who loves it?)」では自分の腰や腕を叩いてハンドクラップを誘い(最後に放たれるLiSAのシャウトも強烈!)、ジャズの濃度を高めた「逃飛行」では、拡声器で歌うシルエットを活かしたステージを見せる。すべての演出や動きは緻密に構成されている(はず)なのだが、客席から見えるLiSAは自由奔放。楽曲が重なるにつれて、彼女のステージの進化ぶりがはっきりと感じ取ることができた。広がり続ける音楽性を的確に捉え、ライブならではの生々しさとともに表現するバンドメンバーの演奏も最高だ。

 DJ YK(ゆーこー)の進行による「メンバーそれぞれのツアーの“一言、思い出コーナー”」を挟み、ヒョウ柄&カラフルな鳥のような衣装に着替えたLiSAがパーカッションを叩きながらコール&レスポンス(LiSAが叩くリズムを観客が手拍子で真似する)。そのまま「た、い、せ、つPile up」へ突入し、みんなで一緒にモンキーダンス。最後まで、“一瞬も飽きさせない、全力で楽しませたい”という気持ちに溢れたステージが続く。

「久しぶりの声出しのホールツアーということもあって、“声出し”の楽曲をたくさんたくさん詰め込みながらやってきました。今日の東京、マジ最強! 昨日も本当にすごかったんですけど、今日はみなさんの気合を、私達の気合いも受け取ってもらえるんだなって感じています。本当にどうもありがとうございます。」
「みんなが汗だくになって楽しんでくれている姿を間近で感じられているこのツアー、至福の時をたくさんたくさん感じさせてもらってます。今日は全国で集めてきた至福の時、みなさんに全力でお届けします」
というMCに導かれたのは、「シフクノトキ」。アコースティックな音像と手拍子、<おつかれ 私の帰りを待ってるのは/果実の柔らかい“東京の”味>というフレーズ、そして、ツアー中のLiSAの写真、ファンから送られた写真が響き合うシーンは、この日のライブのハイライトの一つだった。

 わんたんにゅーめんずのメンバー紹介を挟み、“パンキッシュ×和”な衣装に着替えて放たれた「一斉ノ喝采」も強く心に残った。骨太なギターリフを中心にしたアンサンブルと濃密にしてしなやかなメロディ、決められた枠を超え、自分らしく生きていく決意を込めた歌詞が一つになったこの曲は、現在のLiSAの音楽的な充実を象徴していると思う。もちろん、この楽曲でも大合唱が発生。「一斉ノ喝采」はこのツアーを通し、LiSAの新たなライブアンセムとして完全に浸透したようだ。
 続く「1センチ」(アルバム「LEO-NiNE」/2020年)の原曲は1分半ほどのショートチューンなのだが、ライブでは“もう1センチ”コールを繰り返し、サビを何度もおかわり。この日は“てやんでぃVer.”が披露され(<BABY!! OH BABY!!>を<てやんでぃ、てやんでぃ>と合唱)、最後は“爆速てやんでぃ”として超ハイスピードで演奏。続く「say my nameの片想い」——この10年、何度もライブで素晴らしい空間を生み出してきた楽曲だ——ミラーボールの映像がスクリーンに映され、きらびらかな光が会場全体を照らし出す。バンドメンバーも自由に動き回り(アッキーはショルダーキーボードで前方へ)、最後は中央のお立ち台に全員集合。エンタメに振り切ったステージによって、会場は心地よい多幸感で包まれた。

「みんなの声がたくさん聞けて、とてもうれしいです。今回は『LANDER』の楽曲だけじゃなくて、昔の曲から今の曲まで、声を出して遊べなかった分、みんなの声をたくさん聞きたくてこういうSETLISTを組んでいますが、大丈夫ですか?」とコミュニケーションを取る姿も印象的。そして、「ここから一気にいくよ!」というコールからはじまった「REALiZE」をきっかけにライブはクライマックスに向かって疾走し始めた。「Thrill,Risk,Heartless」では会場からこの日いちばんデカい“Oi!Oi!”コールが鳴り響き、超アグレッシブなロックチューンの高揚感をさらに引き上げていく。アンセミックなコーラスから始まり、LiSAがドラムを叩きまくった「ADAMAS」に続いたのは、ライブアンセム「ROCK-mode」だ。2番はコーラスのNona*とともにツインボーカル状態で歌唱。エンディングではバンドメンバーが全員がサングラスを付け、いくちゃんがド派手なギターソロを弾きまくり、会場を沸かせる。既存の人気曲をアップデートし、さらなるポテンシャルを引き出していたことも今回のツアーの収穫だろう。

「いつかまたこんな声が聴ける日を願って作った、幕が開ける日を願って作ったこの曲、一緒に歌ってくれる?」というMCにリードされた本編ラストは、「dawn」。楽曲の途中で「こんな最高な幕開けを一緒に迎えてくれて、本当にどうもありがとう」と語りかけ、最後は「迎えにきたよ、東京!」とシャウト。「この先、どんな長い夜がまたやってきても、私達でまた最高の幕開けを何度でも迎えよう」という言葉からも、LiSAの万感の思いが伝わってきた。

“LiSAコール”に導かれたアンコールは、「炎」から。クラシカルなピアノのフレーズとともに登場した彼女は、胸に手を当て、深々と一礼。ドラマティックな旋律に乗せ、大切な人を守り抜きたい、強くなりたいという切実な思いを込めた歌を響かせ、聴く者の感情を大きく揺さぶる。鳴り止むことがない拍手を涙を浮かべながら受け止める姿は、すべてのオーディエンスの心に強く刻まれたはずだ。

 ここでLiSAは、改めて客席に向かって語り掛けた。
「まだ世界が灰色のとき。いや、真っ暗なとき。明けるかも、いつか明けるかもと思いながら過ごしていた何年間。それでもライブがしたくて、10周年がしたくて、〈LADYBUGツアー〉を行いました。そのときに作った楽曲もたくさんあって、いつかこんな日を夢見て作った曲がたくさんあったんですけど、あれから時が経って、季節がたくさん変わって、私自身も、世界も新しくなって。こんなに最高の今日を迎えられたこと、最高の今日を迎えにきた私達を誇りに思います。今日は来てくれて本当にどうもありがとうございました」
 ライブの最後を飾ったのは、「ジェットロケット」。演奏中、LiSAは客席に降り、観客とハイタッチを繰り返しながらアリーナを1周。〈踏み出せ 前を見て 最上級な世界へ〉という超ポジティブな歌によって、全国ツアー「LiVE is Smile Always〜LANDER〜」は大団円を迎えた。

 2019年までのLiSAのライブには、膨らみ続ける期待を一身に背負い、何がなんでも応えてみせるという覚悟のようなものがあった。しかし、コロナ禍を経て、彼女のステージは確実に変わった。自分を信頼してくれるファン、バンドメンバー、スタッフと一緒に、音楽を共有し、かけがえのない時間と空間を作る。

 2024年4月19日、20日に日本武道館で<LiVE is Smile Always〜i SCREAM〜>の開催も決定。最高の“幕開け”をやり遂げたLiSAは、ソロデビュー13周年に向け、新たなピークに向かって走り始めている。

SET LIST

01.NEW ME
02.紅蓮華
03.コズミックジェットコースター
04.アコガレ望遠鏡
05.シャンプーソング
06.dis/connect
07.悪女のオキテ
08.赤い罠(who loves it?)
09.逃飛行
10.た、い、せ、つPile up
11.シフクノトキ
12.一斉ノ喝采
13.1センチ
14.say my nameの片想い
15.REALiZE
16.Thrill, Risk, Heartless
17.ADAMAS
18.ROCK-mode
19.dawn

ENCORE
01.炎
02.ジェットロケット

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