H ZETTRIO、大人も子どもも楽しめるコンサート『こどもの日SP』開催!開放的な空間で鳴らされる自由な音楽の心地よさを堪能

ライブレポート | 2024.05.14 19:00

H ZETTRIO LIVE 2024 こどもの日SP
-スイートレスポンスフロムドッグス-
2024年5月5日(日)FOSTERホール(昭島市民会館)

ドキドキしたり、ワクワクしたり、ニコニコしたり、ほんわかしたり。こんなコンサートの楽しみ方もあるのか。目からウロコが落ちるような、自由で楽しいステージとなった。5月5日、FOSTERホール(昭島市民会館)で開催されたH ZETTRIOの『こどもの日SP』。0歳から参加できる、年齢制限のないコンサートという趣旨のもと、今年で8年連続開催となった。五月晴れの青空のもと、公園内にある会場に着いた瞬間から、通常のコンサートとは違う、にぎやかな雰囲気が漂っていた。入場口に並んでいる列の中には、リュックサックを背負っている子、野球帽をかぶった子、両親と手をつないでいる子などの姿も目立っている。家族連れが多い。コンサート初体験の子どももたくさんいそうだ。

FOSTERホールはワンスロープになっているため、見やすくて一体感のあるホールである。大人も子どもも一緒になって楽しむのにぴったりな環境だろう。ステージにH ZETTRIOの3人が登場すると、大きな拍手と声援が起こった。下手の青色のカーペットの上にはH ZETT M(Piano)、中央奥の銀色のカーペットの上にはH ZETT KOU(Drums)、上手の赤色のカーペットの上にはH ZETT NIRE(Bass)。キャラクターが立っていて、青・銀・赤に色分けされている“わかりやすさ”は、『こどもの日SP』のようなステージでも、強みになっていたのではないだろうか。

H ZETT M

H ZETT KOU

H ZETT NIRE

この日のライブは2部構成で、間に15分の休憩がある。1部の1曲目はH ZETTRIOの最新配信シングル「スイートレスポンスフロムドッグス」(72か月連続配信というギネス記録更新中の曲)だった。曲名が今回のコンサートのタイトルの一部にもなっていることから推察すると、『こどもの日SP』を想定して制作された曲なのかもしれない。モチーフとなっているのは犬だろう。犬の表情や動作までもが見えてきそうなユーモラスな演奏が楽しい。ピアノ、ドラム、ベースの表情もとても豊かだ。H ZETT KOUがスティックを振ると、観客に事前に配布された赤、銀、青のサイリウムが揺れる。観客参加型のコンサートで、大人も子どもも楽しめる工夫が凝らされている。

犬つながりで、2曲目はなんと「犬のおまわりさん」のカバー。H ZETT Mが<まいごのまいごのこねこちゃん>の歌詞の部分の印象的な旋律を弾くと、会場内から子どもの歓声が起こった。客席が手拍子で参加する中での演奏となったのだが、急に早弾きして、わざとタイミングをずらすなど、観客の反応を惑わすような、自在なピアノが楽しい。ステージ背後のスクリーンに、警察帽をかぶった犬や子猫の映像が映し出される演出の中での演奏。随所に小さな子どもの興味を引くような演出の工夫が施されていたのだ。だが、演奏はハイレベル。躍動感あふれる演奏によって、会場内が熱気に包まれていく。超絶テクニックと自在なグルーヴの“すごさ”と“楽しさ”を、年齢問わず、そしてまた、ジャズなどの音楽の素養の有無に関わらず、伝えていけるところにも、H ZETTRIOの真骨頂がある。中盤は自由自在のインプロヴィゼーション。“迷子感”のある混沌とした演奏なのだが、最終的には戻るべき場所へと着地していくところが見事。犬のおまわりさんもニッコリの演奏だ。

「こんにちは、H ZETTRIOです。元気かい?」とH ZETT Mが問いかけ、「元気~!」という子どもたちの声が返ってくると、「いいね。私たちも元気です」とH ZETT KOU。さらに、「小さいお客さまはもちろん、大きなお客さまも、子どもの心に戻って、最後まで楽しんでいってください」とH ZETT NIREが挨拶。

1部の後半は「Neo Japanesque」「ルンルン」など、彼らのオリジナル曲が続く構成だ。メンバー3人がアニメのキャラクターのように描かれた映像が流れる演出もあった。H ZETTRIOの3人のちょっとしたコミカルな仕草や、演奏中に上げる奇声によって、笑い声が起こる場面も多々あった。「MESHI KUTTE YEAH!」では「メシ喰ってイエイ!」と声をあげながら緩急自在のプレイを展開し、ブレイクした瞬間に、H ZETT Mが「大きくなれよ」という言葉を発すると、歓声と笑い声と拍手が起こった。栄養たっぷり、愛情たっぷりの温かな「MESHI KUTTE YEAH!」だ。1部のラストは「Every Good Thing~Four Seasons of SAKURA MACHI~」。ホイッスルが入るなど、ラテン的なテイストもあるのだが、みずみずしさや清々しさなども伝わってくる演奏が鮮やかだ。会場内に明るいエネルギーが充満して一部が終了した。

2部のオープニングナンバーは、2024年6月12日リリースの最新アルバム『Dynamics』のタイトル曲「Dynamics」。H ZETT NIREのベースとH ZETT KOUのドラムの二人の演奏で始まり、途中からH ZETT Mのピアノが加わる構成。スリリングなセッションは、大人はもちろん子どもたちの血もたぎらせたに違いない。「音楽は国境を越える」という言葉があるが、彼らの音楽は国境だけでなく、世代を越えて届いていくものだろう。さらに「Strawberry Jam」「飛ばしたっしょ」「月刊配信野郎」と、ここ1、2年で発表した曲が続いた。

「Strawberry Jam」では途中でどんどん音が小さくなった。その瞬間、客席から「ウギャー」という泣き声が聞こえると、「待っていたよ!」とH ZETT M。H ZETT Mも一緒になって、「アハッ~」「アギャー!」「ウガー」など奇声を発している。さらに「飛ばしたっしょ」でも、泣き声や奇声とのコール&レスポンスが実現した。「ギエー!」「オーッ」など、客席から声があがると、「いいね」とH ZETT M。通常のコンサートでは御法度とされている泣き声が、ここではむしろ大歓迎なのだ。この開放的な空間で鳴らされる自由な音楽のなんと気持ちのいいことか。子どもたちが「ゼトさ~ん」「ニレさ~ん」「コウさ~ん」とメンバーの名前を呼ぶと、「やさしいやわらかい声だね。でも野太い声も混じっているね」とH ZETT M。ステージ上と客席とのなごやかな交流に、ほっこりしてしまう。

「Workout」ではH ZETT Mが、「赤イエ~イ!」「青イエ~イ!」「銀イエ~イ!」と、観客に、自分の持っている色のサイリウムを掲げるようにミッションを出すシーンもあった。そのたびに客席が赤く染まったり、青く染まったりする。子どもたちも大忙しだ。「全部イエ~イ!」との言葉では、すべてのサイリウムが輝いていた。メンバー3人だけでなく、小さなお友達、大きなお友達、観客全員で作るライブだ。子どもたちの未来を祝福するかのように響いたのは「夢と希望のパレード」。3人の温かな思いまでもが届いてくるようだ。「東京ブギウギ」のカバーも披露された。軽快なグルーヴに、客席が揺れる。H ZETT Mが奇声を発しながら演奏すると、笑い声が起こる。本編最後の曲はピアノソロで始まった「Get Happy!」。H ZETT Mがショルダーキーボードで演奏する場面もあった。タイトルどおり、ハッピーな空間が出現。

アンコールでは、この日が初の披露となる新曲「星の海に眠る宝石箱」が演奏された。聴き手の想像力を刺激する、叙情あふれるアンサンブルが染みてくる。アンコールの最後に演奏されたのは、「今日の日はさようなら」のカバー。ここでもスリリングな演奏を披露。インストゥルメンタルでありながら、ヒューマンな演奏によって、<今日の日はさようなら><また会う日まで>という歌詞のフレーズまでが聴こえてきそうだった。演奏が終わると、大きな拍手と歓声が起こった。黄色い声から野太い声まで、歓声もカラフル。彼らのオープンでフレンドリーなマインドは、小さなお友達から大きなお友達まで、みんなに届いていたに違いない。未来への希望と音楽の楽しさとが伝わってくる『こどもの日SP』となった。「年齢制限のないライブを、関東以外でもやりたいですね」とのH ZETT Mの言葉もあった。0歳から参加できる自由なライブが当たり前に開催される未来が、近いうちにやって来るかもしれない。人間の発する音のすべてが音楽になりえること、泣き声や奇声がアンサンブルの一部になりえることを、H ZETTRIOの演奏が雄弁に証明していた。

SET LIST

一部
01. スイートレスポンスフロムドッグス
02. 犬のおまわりさん(cover)
03. ようこそジャパリパークへ(cover)
04. 手のひらを太陽に(cover)
05. Neo Japanesque
06. ルンルン
07. MESHI KUTTE YEAH!
08. Every Good Thing~Four Seasons of SAKURA MACHI~

二部
01. Dynamics
02. Strawberry Jam
03. 飛ばしたっしょ
04 .月刊配信野郎
05. Workout
06. 夢と希望のパレード
07. 東京ブギウギ(cover)
08. Get Happy!

Encore
En01. 星の海に眠る宝石箱
En02. 今日の日はさようなら(cover)

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