兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第68回[2020年11月後半]編

コラム | 2020.12.11 12:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、音楽等の生で観たライブすべてについて短いレポを書き、月二回ペースでアップする連載の2020年11月後半編です。最近は配信で観たライブと、現場で生で観たライブの両方を書いていますが、今回、全10本のうち「奥田民生を配信で」が3本、「フラワーカンパニーズを生で」が4本という、我ながらちょっとどうかしている按配になりました。

11月17日(火)19:00 奥田民生@EX THEATER ROPPONGI/LINE LIVE-VIEWING

 奥田民生のひとり弾き語りライブ『ひとり股旅』、久々のツアー。東京・EX THEATER ROPPINGIの2デイズで始まり、福岡・広島・大阪を回って、25日(水)にZepp Tokyoで終わるスケジュール。で、その5本すべて生配信あり。
 もともと『ひとり股旅』は事前にセットリストを決めず、その場で曲を選んでいくスタイルなので、生配信を全日やっても、毎回曲が違うから大丈夫でしょ。ということなのだと思います。なお、毎回公演が終わるたびに、その日のセトリのプレイリストが、各音楽配信サービスにアップされる、というサービスもあり。
 配信のチケットは、7,500円の「大画面満足配信セット」など、グッズ等が付いたものもいろいろあるし、投げ銭もできるが、いちばん安いオマケなしのやつだと、早割(前売)3,500円、当日・見逃し4,000円だった。で、アーカイブが1週間観れる。
 ライブは二部構成で、一部は弾き語りで8〜9曲。休憩をはさんで、二部はまず、オフィシャルYouTubeの企画『カンタンカンタビレ』で、ひとりで多重録音して作ったバック・トラックが入ったアナログの8チャンネルのレコーダー、それを使って4曲。この時はYouTubeのオフィシャルチャンネルでやっていた『カンタンバーチャビレ』と同じく、自らの背後をグリーンバックにして、背景を写真に写して、ステージ上の画面でそれを見せる。
 で、そのあと弾き語りに戻って4曲、そして「ありがとう!」と言っていったん立ち上がるが、いったんはけるのを省略して「アンコールありがとう!」と、もう1曲やる。というセットリストでした。
 8チャンのレコーダーとグリーンバックの写真を操作しながら進行するコーナー、チューニングが異なる2本のセミアコの使い分けも含めて、段取りが大変だったみたいで、この初日はかなりバタバタしておられました。で、今回この企画だからバタバタなんじゃなくて、自分のツアーの初日はいつだってこういう感じである、と、堂々と言い切る姿に、改めて逞しさを感じたりしました。

11月18日(水)19:00 奥田民生@EX THEATER ROPPONGI/LINE LIVE-VIEWING

 で、2日目。2日目だけあって、進行がとてもスムーズになっていた。あと、わかっちゃいたが、本当に昨日とは全然違うセットリストだった。それから、昨日の8チャンレコーダーを使うコーナーは、OTはヘッドホンでその音を聴きながら歌い、ギターを弾いたが、それが終わったところで「ヘッドホンするってことがすごいストレスってことがわかった」と言っていた。で、この2日目から、ヘッドホン、しなくなっていた。
 バック・トラックに合わせてギターを弾いて歌うのに、ヘッドホンとかイヤホンでモニターをしないというのは、かなり大変というか、そんなにヘッドホンがイヤなのかな、イヤなんだろうな、そういえばフェスとかででっかい会場でやる時も、イヤモニ使わないもんなOTは──。
 などと、観ながら思いました。

11月19日(木)19:00 フラワーカンパニーズ@Zepp Nagoya

 結成30周年イヤーの活動の締めくくりとして、2020年4月に行うはずだった東名阪ホール・ツアーの振替公演の初日。当初、名古屋公演は、彼らの地元名古屋のさらに地元にある緑文化小劇場で行う予定だったが、振替にあたってZepp Nagoyaに変更になった。
 この名古屋と翌日の大阪メルパルクホールは同じセットリストで、全曲ゲストのスパム春日井が参加。ビブラフォン、サックス、パーカッション、シンセ、アコーディオン等で、曲に彩りを加えたり、曲を新たに生まれ変わらせたりと、大活躍。セットリスト自体も、彼の参加ありきで曲が選ばれていたようで、普段そんなにライブでやらないレアな曲がいくつもあってうれしかった。ので、書いておきます。
1 DIE OR JUMP/2 夜をまるごと/3 人生GOES ON/4 花のようでした/5 深夜高速/6 バート/7 空想無宿/8 夜空の太陽/9 ビューティフルドリーマー/10 俺節/11 履歴書/12 見晴らしのいい場所/13 落ち葉/14 いましか/15 チェスト/16 冬のにおい/En. 17 東京タワー/En.18 サヨナラBABY

11月20日(金)18:30 フラワーカンパニーズ@大阪メルパルクホール

 東名阪ホール・ツアーの2本目、前日の名古屋と同じセットリスト。前日は、初日だけあって不慣れなところもあったのと、本来スタンディング用のZepp Nagoyaにイスを並べたため、何かこう、誰のせいでもないけど、正直なところ、会場全体のライブの空気を作りにくい感じがあった。
 が、メルパルクホールは、2Fまで含めての客席からの近さとなどがいい按配で、とてもあったかい空気ができていた。ここも当然一席飛ばしなんだけど、不思議とそれもあんまり気にならない感じ。この会場は初めてだった本人たちも気に入ったみたいで、「またやりたい」「今度は満員にしてやりたい」「ニドパルクやりたい」と、MCで言っていた。あ、「ニドパルク」というのはボーカル鈴木圭介の発言。

11月21日(土)17:00 SURFACE@神田明神ホール/FACES

 『SURFACE ONLINE LIVE 2020「HANDS #2」ENCORE』と銘打った、椎名慶治と永谷喬夫、ふたりきりで行うライブ。なお『HANDS #2』は、同じ神田明神ホールで8月29・30日(土・日)に行った無観客生配信ライブで(その日のレポはこちら ≫SURFACEが初の無観客生配信ライブを2days開催!2日目をレポート!)、今回はそのアンコール公演、という趣旨。
 有観客で、ファンクラブ「FACES」会員限定の生配信もあり、という形で開催された。配信のチケットは4,000円で、11月24日(火)20:00までアーカイブ視聴可能。
 椎名の歌と永谷のアコースティック・ギター、ふたりだけの音による「空っぽの気持ち」と、リズムマシンと椎名慶治のボイスパーカッションやコーラスをループさせて始まった「Is life beautiful?」、2曲の連打でスタート。「前回は無観客だったからふたりでアイコンタクトしながらやってたけど、お客さんいてそれがあんまりできないから、今日は、とちります」なんていう軽口を椎名がはさんで、空気を和ませながら「やってみようよ」、椎名のボイス・パーカッションと永谷のギターのループを使って、そして途中からPCでドラムのキックも足して、「タユタウ」──。
 というふうに、ボイス・パーカッションのループ、歌声のループ、ギターのループ、PCで鳴らすバック・トラックなどを使って、いろいろと音を重ねたり、重ねなかったりしながら、1曲1曲を形にしていく、ふたりとは思えないくらいバラエティに富んだライブだった。途中で椎名が「いやあ、やること多すぎるー」と言った時、素直に「確かに」と思ったほど。
 あと椎名、後半のMCで、「『hands』をもっとやった方がいい、コロナ禍だし」とか、「『hands』で地方に行こうよ、待っててもしょうがない」と言っていた。もう待っていられない、という以上に、この形態でのライブに手応えを感じ始めているから、そう言ったんだと思う。

11月23日(月・祝)19:00 THE COLLECTORS@大宮ソニックシティ

 加藤ひさしの還暦記念ワンマンライブ。観に行って、リアルサウンドにレポを書きました。こちらです。
Real Sound:THE COLLECTORS、限界を超えた先で歌い叫んだ熱狂のステージ ファンと祝った加藤ひさし還暦記念ワンマンを観て

11月24日(火)18:30 フラワーカンパニーズ@世田谷区民会館

 フラカン東名阪ホール・ツアーの締めくくり。この日だけセットリストが違うのは、場所が世田谷区民会館(めっちゃ昭和な感じのとても素敵な会場。残念ながら12月28日から休館、取り壊して建て替えられるそうです)なので、2004年のアルバム『世田谷夜明け前』の再現ライブをやる、と前もって宣言していたため。ゲストのスパム春日井、この日は曲によって参加したりしなかったりでした。
 セットリストは、本編は『世田谷夜明け前』の13曲を曲順どおりにやって、アンコールで「履歴書」「落ち葉」「チェスト」「サヨナラBABY」を追加した全17曲。リリースから16年後の今、こうしてライブでじっくり各曲と相対すると、『世田谷夜明け前』って、かなり「どうかしてる」アルバムだったこと、そこがすばらしかったことがよくわかるライブだった。なんというか、ハードコアな方向の曲も、脱力している方向の曲も、極限まで行った地点で書き、歌い、演奏した作品ばかりが並んでいるというか。
 普通に音楽配信サービスで聴けるので、未聴の方はぜひ触れてほしいです。

11月25日(水)19:00 奥田民生@ZEPP TOKYO/LINE LIVE-VIEWING

 『ひとり股旅2020』5本目=ファイナルのこの日は、生配信を観て、このDI:GA ONLINEにレポを書きました。
 こちらです。ぜひ。
奥田民生がひとりで回るツアー「ひとり股旅 2020」ファイナルをライブレポート

11月29日(日)19:00 My Hair is Bad@上越市・高田城址公園野球場/LIVE VIEWING JAPAN

 『Youth Baseball』と銘打たれた、My Hair is Badの「ライブ映像作品」。10月6日(火)に彼らの地元、新潟県上越市の高田城址公園野球場で収録されたもので、視聴チケットは2,500円、12月6日(日)23:59までアーカイブ視聴あり。配信元はLIVE VIEWING JAPANで、ローチケLIVE STREAMING、LIVEWIRE、Streaming+、Thumva、U-NEXTの5つのプラットフォームで配信された。
 レーベルが各メディア等に配信する、オフィシャルのライブレポを書きました。この「ライブ映像作品」が、無観客配信ライブでなくては不可能なものであることに、途中で気がついて、「ああ、そうか!」と興奮して、それもそのまま書いています。BARKS/Yahooニュースにアップされたものを貼っておくので、ぜひお読みいただければ幸いです。
Yahooニュース:My Hair is Bad、『Youth baseball』で見せた“無観客ライブ”の新たな形

11月30日(月)19:00 フラワーカンパニーズ@新代田FEVER/Streaming+

 またフラカンか。なんなんだ俺は。と自分で自分に言いたくなりますが、これはホール・ツアーとは別で、東京がこの日と翌日に新代田FEVERで2デイズ、次は京都磔磔で12月16(水)17日(木)の2デイズの計4デイズ、ほぼかぶり曲なしのセットリストでライブを4日やる、という企画の1日目。60人弱くらいかな、人数を限定して座席ありで有観客にして、生配信もありで、行われた。生配信のチケットは各日2,500円・通しで4,500円、プラットフォームはStreaming+、12月6日(日)23:59までアーカイブ視聴可能。
 このハコでのフラカンの「人数限定有観客、配信もあり」のライブ、前にも観ているんだけど、バンドもお客さんも、この、言ってしまえばある種異常な状況でのライブに、慣れてきた気がした。フラカンが出てきたらみんなパッと立ったし、声こそ出さないけど、曲に対する身体を使ってのリアクションが、大きくなってきたし。慣れてきた、というよりも、この不自由な状況下でも、できる限り楽しむすべを見つけられるようになってきた、という言い方の方が近いかもしれない。なんせ、いい空気でした、始まってから終わるまで。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE