兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第73回[2021年2月前半]編

コラム | 2021.02.25 12:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽、時々演劇やお笑いやスポーツ等も含め、生で観たすべてのライブをレポして半月に一回アップしていく連載の、2021年2月前半編です。新型コロナウイルス禍以降は、「配信ライブを観て書くのもあり」にしていますが、今回は、7本中5本が生で観たもの、2本が配信で観たものでした。で、4本が音楽、3本が音楽以外、でした。

2月2日(火)18:00 syrup16g@新木場USEN STUDIO COAST/Streaming+

 1年前の新木場スタジオコースト2デイズが新型コロナウイルス禍で二度延期になった、その振替公演として、1回の入場者の上限を600人にして、2021年1月13日(水)・14日(木)と2月2日(火)・3日(木)の4デイズで行われることになったライブ、その後半の2本。前半2本のレポはこちらです。
兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第71回[2021年1月前半]編
 で、後半2デイズは、生配信も行われた。チケットは税込3,000円で、配信プラットフォームはStreaming+、両日とも2月7日(日)21:00までアーカイブ視聴あり。
 そもそもこのツアーは、各地2デイズで1日ごとに違うセットリストで行う、という趣旨であり、なので、本数を重ねていっても毎日が初日みたいな状態だったと思う。が、にしてはこの2月2日(火)は、何か、同じメニューで数十本行ってきた末のファイナルの日、くらいの、とても仕上がっている印象だった。
 バンド側も手応えがあったのか、五十嵐隆、本編ラストの曲をやる前に、「またコール&レスポンスができるようになったらいいですね。みなさんしか友達がいないので」。突然髪の毛が真っ青になったドラム中畑大樹が、その言葉に大笑いしていたのが印象的だった。アンコールでは五十嵐、「ありがとうございます、幸せ者です」と、オーディエンスに、とても素直にお礼を言った。

2月3日(水)18:00 syrup16g@新木場USEN STUDIO COAST/Streaming+

 で、その次の日。こちらがまさにファイナルだったのだが、前日と打って変わって、大変そうだった。何が。五十嵐のギターが。音が出なくなったのだ。一回ならまだいいが、何度も。そのたびに中断したり、修理したり、曲をやり直したり、というのが、とにかく大変そうだったのでした。うまくいきはじめてからも、次またいつ止まるかわからない、みたいな緊張感が続きっぱなしだったし。
 こういうトラブルに出くわすたびに、バンドって難儀だなあと思う。実感として知っているのだが、こういうのって、準備不足とか、機材等のチェックを怠っていたとか、そういう理由で起きるものではない。ゲネプロでちゃんと細部まで詰めたのに、前日の本番もなんの問題もなかったのに、この日のリハーサルの時も何事も起きなかったのに、突然トラブルが勃発してしまう、というものなのだ。
 今まで、いろんなバンドの、いろんな場面で、いろんなふうに、こういう光景を目の当たりにしてきたなあ……とか思いながら観ていたが、五十嵐隆、そういう予期せぬトラブルに強そうなキャラでは決してないにもかかわらず、トリプル・アンコールまで、しっかりやりきった。
 ロック・イン・ジャパン・フェスのLAKE STAGEで、あまりの暑さに途中でライブをやめて去ろうとして、ソデでマネージャーに手でバッテン出されてステージに戻ったところとか(たぶん2003年)、広島の並木ジャンクションで、キレてライブの最後にギターをドラムセットにガシャーン!と投げつけたところとかを(調べたら2004年1月23日でした)、生で観たことがあるもんで、何か、勝手に、感慨深いものを覚えました。「タフになったなあ」と。
 なお、五十嵐、お客さんに向かって拝むみたいに手を合わせながらステージを去ることが多いが、この日は一回目のアンコール(4曲やった)を「落堕」で終えた後、土下座で、感謝の気持ちを表した。
 ダブル・アンコールは、「いい日になりますように」という言葉からの「翌日」、トリプル・アンコールは「ああもう、感無量。お返ししたい、何かで。おカネ以外で」という言葉からの「Reborn」でした。

2月7日(日)17:00 Caravan@川崎クラブチッタ

 毎年1月後半にクラブチッタで行っている『新年祭』、今年は「規模を最小限に止めて」開催。という時に、ライブレポの依頼もないのに「入れてくださいよ」とは言えないなあ、と判断してチケットを申し込んだら(ローチケ電子チケットのみでの販売だった)、運良く取れた。で、行ってみたら、「一席飛ばし」じゃなくて「一席飛ばしと同じくらい間を空けてフロアにイスを並べる」という方式だった。ちゃんと数えたわけじゃないが、体感としては200人と300人の間くらい。違ってたらすみません。
 今年は〈Caravan LIVE EXTRA 新年祭 2021 “Bittersweet Days”〉というタイトルで、2020年11月20日にリリースしたニューアルバム『Bittersweet Days』からの曲が半分くらい、歴代の代表曲が半分くらい、あと2021年になってからリリースしたシングル「Have a Nice Day」ももちろんやります、というセットリスト。曲が始まるたびに「おおっ!」となる、ファンにとってとてもうれしい選曲だった。
 大会場だろうが数十人の前だろうが、弾き語りだろうがバンドだろうが、基本「人前で歌ってなんぼの人」であるCaravanの本領発揮みたいな、頭からシッポまで美味しい瞬間続きのステージ。あ、生配信ないのにカメラ入ってるなあ、と思っていたら、後半で「後日映像配信します」と発表された。
 それから、本編後半でATSUSHIが登場、2曲で舞った。というのはCaravanのライブでは何度も目にしてきた光景だけど、そうか、今回から「Dragon Ashの」じゃないんですね。MCでCaravanもそのことに触れていた。ATSUSHI、活動の場をフランスに移す予定だったが、コロナ禍でそれが阻まれている、とのこと。いつかフランスから逆輸入みたいに、「すごい日本人がいる」という声がきこえてくることを、自分は楽しみに待っている、とCaravan。

昨日は新年祭2021 CLUB...

Harvest Co., Ltd. / Slow Flow Musicさんの投稿 2021年2月7日日曜日

2月7日(日)13:00/17:00 『エレ片 OK コントの人』@博品館劇場/Streaming+

 TBSラジオを聴いているとCMが流れる→まだチケットが残っている日があることを確認する→じゃあ買えばいいのにまだ買わない、ということをくり返しているうちに完売してしまった。という、我ながらすごくダメなことになった結果、この最終日だけ昼も夜も配信があるというので、それを観ました。Streaming+で税込2,800円、2月14日(日)23:59までアーカイブ視聴可。
 お互いのチンコを触り合うような、「小学生か!」と言いたくなる、エレ片ならではのネタも健在で、そっちでも爆笑したんだけど、1本目(正しくはイントロダクション的なコントを経ての2本目)にやった、大学の駅伝部のネタが、さらによかった。
 要約すると、「部員にコロナ感染者が出て、やっと出場権を得た箱根駅伝に出られなかった」「その部員が一切自責の念を感じてなくて、本来感じなくていいんだけど、やっぱりすげえ腹が立つ」という内容。めちゃめちゃ笑ったけど、笑わせるだけじゃない、逆に言うと重たいテーマを触りながらめちゃめちゃ笑わせる、「さすが!」と言いたくなるコントでした。
 これを考えるやついいちろうって、やっぱりすごいし、それを絶妙の温度感で演じる今立進と片桐仁も、やっぱりすごい。

2月8日(月)18:00 奥田民生@昭和女子大学人見記念講堂/LINE LIVE-VIEWING

 このDI:GA ONLINEに初日の山梨公演のレポを書いた(こちらです 奥田民生、3年ぶりのバンドツアー「MTRY TOUR 2021」がスタート!ツアー初日をレポ)、奥田民生の「MTR&Yで全会場生配信ありでホール・ツアー」、全11本の3本目。当然ながら、一席飛ばしで入場者数を抑えての公演で、初日の山梨も配信を観て書いたくらいなので、「関係者招待で入れて」とか言える状況じゃない、でも観たい。なので、ダメもとでLINE TICKETの先行で申し込んだら、なんとチケットが取れた。うれしいことしきりでした。うちから近いし。
 で。前述の初日以外の日も、このツアーの配信、ちょいちょい観ていて、だからよけいそう思ったのかもしれないが、いやあ、いい! 生はいいわあ! という、あたりまえすぎて書くのが恥ずかしいようなことをつくづく感じるステージだった。
 いや。もっといろいろ感じた、あたりまえすぎて書くのが恥ずかしいこと。「湊雅史っていいわあ」とか「小原礼っていいわあ」とか「斎藤有太っていいわあ」とか、言うまでもなく「OTっていいわあ」とか。あと「ハードロックっていいわあ」とか「ロックっていいわあ」とか「ロック・バンドっていいわあ」とか「バンドっていいわあ」とか。得難いプレイヤーだけでできている得難いバンドだと、改めて痛感した。
 何回(何年)MTR&Y観てるんだよ、という話ですが。でもほんと、それぞれが演奏している楽器のそもそものかっこよさを、鳴りそのもの、アンサンブルそのもので理解させてくれるようなライブなのだ。いや、だから、前からそうですが。
 このあとの日程も、配信で観ると思う。

2月14日(日)17:00 空気階段@草月ホール/PIA LIVE STREAM

 第4回単独ライブ「anna」、チケット取れなかったけど、この最終日は生配信ありだったので、買って、観ました。PIA LIVE STREAMで、チケット代は2,500円・手数料込で2,720円、2 月21日(日)23:59までアーカイブ視聴可能。
 コント、全部で7本で、7本目はそこまでの6本を回収する役割も果たしている、という、とても作品性の強いライブだったんだけど、そのこと自体は、アーティスティックなコントをやる芸人なら、過去にも例がある。
 あるが、その7本目の、水川かたまりと鈴木もぐらの(たぶん、特に水川かたまりの)「ネタへの己の投影度の濃さ」と、「そのネタと観ている自分とのリンク度の高さ」によって、なんかもう、観ながら泣きそうになってしまった……いや、「泣きそう」じゃない。泣きました、PCの前で。
 ラジオへの投稿でつながる高校生同士の物語だったんだけど、私も中高とハガキ職人だったもんで、つい。DVDになるそうなので、ネタバレしないよう、あんまり詳しく書かないでおきます。買うだろうな、俺。
 あと、公演が始まる直前にかかっていたBGMが、じゃがたらの「タンゴ」だったのが気になった。というか、「あっ!」と思った。出囃子に使ったというよりも、開場中のBGMの最後にかかった曲がそれだった、という感じだった。現場にいなかったので正解はわかりませんが。

2月15日(月)18:30 『マシーン日記』@シアターコクーン

 渋谷のシアターコクーンの芸術監督に就任した松尾スズキが始めた、自身の過去の作品を、別の演出家を起用して再演する、という企画の第二弾で、何度も上演されてきた(2013年にはパリ公演も行われ絶賛を浴びた)『マシーン日記』を、大根仁が演出。
 なお、第一弾は2020年5月に、ノゾエ征爾の演出で『母を逃がす』を上演するはずだったが、新型コロナウイルス禍で中止になってしまったので、実質的にはこれが第一弾。出演は横山裕、大倉孝二、森川葵、秋山菜津子の4人、音楽はサカナクションの岩寺基晴&江島啓一&岡崎英美&草刈愛美が手掛けている。
 『マシーン日記』は、1996年、1997年、2001年、2013年とキャストを変えながら再演されてきた。大根仁も2003年にテレビドラマ化していて、今回のこの企画で『マシーン日記』を選んだのも彼だという。で、僕は、最初の二回は観れていないが、2001年と2013年は生で観ていて、2003年のドラマも観ていた。
 あと、今回、シアターコクーンのフリーペーパーに原稿を書いたり、公演のパンフレットでサカナクションの4人にインタビューしたりしたので、それなりにこの作品のことは把握していたつもりだったのだが。
 ぶったまげた、観て。いや、逆に、以前の『マシーン日記』を知っていたから、よけいびっくりした、というところもあるか。大根仁の発案で、センターステージで行う、というのは、事前情報で知っていたが、それによって、本当に、シアターコクーンが後楽園ホールのような空気になっていた。演劇の内容自体や、演出の方向性も含めて。しかもプロレスの興行の時のそれよりも、キックボクシングやMMAの興行の時のそれに近いような。
 殺伐感がすごい。グロい。毒々しい。でありながら、ポップで華やかでもある。大根仁ってすごい。ということが、改めて、まざまざとわかった。あと役者4人の「精神で肉体の限界を超えていく感じ」も、それぞれすごい。観れてよかった、ほんとに。

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