兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第92回[2021年11月後半・佐藤千亜妃とか宮本浩次とか岡崎体育とかヒグチアイとかHump Backなどの7本]編

コラム | 2021.12.17 18:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽、時々演劇やお笑いなどの、生もしくは配信で観た興行、すべての短いレポを書いて半月に一回アップする連載の92回目、2021年11月後半編です。今回は全部で7本、うち1本は(日にちが被ったので)アーカイブ配信を観て書きました。7本中3本は、他のところに長いライブレポを書いているので、ぜひそちらにも飛んで、読んでいただければ幸いです!

11月18日(木)18:30 佐藤千亜妃@Zepp HANEDA

 ニューアルバム『KOE』のリリース・ツアーの東京公演。SPICEにライブレポを書きました。こちらです。
SPICE:佐藤千亜妃が選曲・構成、パフォーマンスの全てで魅せたZepp Haneda公演

11月21日(日)18:00 宮本浩次@広島文化学園HGBホール

 2022年の5月までかけて47都道府県を回るツアー『日本全国縦横無尽』ツアーの10本目。このツアーを観たの、1本目の10月20日(水)の川口総合文化センターリリア メインホール以来で、その時は「仕上がってる! これで初日!?」と驚き、宮本の頭っから最後まで全力疾走っぷりに「こんなライブを47本やるつもりのか……」とビビったが、10本目にして、もっともっとすさまじいことになっていた。まだまだ続くツアーなので、セトリとかの具体的なことには触れられないが、この人のライブ、それなりに長い間、観続けているつもりだが、それでも「こんな宮本、初めて」と思うくらい。
 それから、お客さんたちのムードが、何か新鮮だった。開演前から、場の空気全体がワクワク感で充満しているし、開演後も、声は出せないしマスクで表情が見えづらいにもかかわらず、すごく興奮しながらライブを観ているのがわかる。みんな、目、キラッキラ。ソロ開始以降の大活躍で宮本に魅せられた新しいファンが多いからなのかな、と思ったが、それもあっただろうけどそれだけじゃなかった、ということを、終演後に知った。
 友人のお好み焼き屋に寄ったら、隣の席の人も宮本を観た帰りだった。かなり以前からのファンだという。でもやっぱり、それはもう大変に、ワクワクキラキラした、という。「だって、エレカシの30周年ツアー以来ですよ、広島に来たの」。2017年5月7日(日)広島上野学園ホール以来、なので4年半ぶり。そうか、そりゃキラキラするわ。失礼しました。

11月21日(日)18:30 HONEBONE@渋谷WWW X/ツイキャス

 その宮本浩次広島公演と同日だったこのライブ、後でツイキャスで配信を観て、このDIGA:ONLINEにレポを書きました。
 こちらです。
DIGA:ONLINE:HONEBONE「リスタートツアー2021」FINAL。常に漂うピンとはりつめた緊張感

11月23日(火・祝)17:00 岡崎体育@横浜アリーナ

 「岡崎体育ワンマンライブ『めっちゃめちゃおもしろライブ』」という、開き直ったタイトルの巨大会場ワンマン。ライブ開催の1週間前に、本人が「チケットがあと500枚くらい売れ残っています! すみません! 旬過ぎたのにイキってデカい会場押さえてしまって草! 幸せにします! 来てください!」とツイッターで呼びかけ始め、残り350枚、144枚、34枚と減っていき、開催2日前に見事完売。
というように、開催の前から既に「おもしろ」が始まっていたライブだったが、当日の本番は、笑いの要素もあるものの、それ以外の部分、つまりシンプルに音楽そのもので、聴き手を魅了していく方に、重点が置かれたステージだった、と、感じた。
 我々のような職業の者を正面からおちょくった、ニューアルバム収録の「Quick Report」を前半で披露したり、幕間映像の「Fight on the Web」で、岡崎体育とネットでバトルする相手としてマキシマム ザ ホルモンのナヲが登場したり(録画だと思い込んで観ていたが、実際に会場にいてリアルタイムで中継したことを、終演後に本人がツイートしていた。びっくりした)、ステージの両端に移動する時に自転車を使ったり、などなどの笑いどころもふんだんにあったが、後半の「普通の日」や「八月の冒険者」や「エクレア」、アンコールの「鴨川等間隔」あたりの曲が、特に沁みるものがあったのだ。というか、感動させられたのだ。
 前述のように、本人は「旬過ぎた」とか言っているけど、旬が過ぎたというよりも、人気アーティストとして存在していることがあたりまえになった、という言い方の方が、ぴったりくる気がする。

11月24日(水)18:00 Organic Call、アメノイロ。、Hakubi、ammo@渋谷TSUTAYA O-WEST

 先日このDI:GA ONLINEでインタビューも行ったOrganic Call、ニューシングル『Hello,Good-bye』を携えての東名阪ツアー(全箇所企画ライブ仕立てでゲストあり)のファイナル。レポを書きました。
 こちらです。
DIGA:ONLINE:フロアを埋めたオーディエンスが「静かに」「でも熱く」向き合い続けた夜。 Organic Callが盟友3バンドと共に迎えた東名阪ツアーファイナルをレポート!

11月26日(金)19:00 ヒグチアイ@よみうり大手町ホール

 メジャー・デビュー5周年記念の東京・大阪ひとりピアノ弾き語りライブ(であることが、この方の場合多い)『ヒグチアイ 5TH ANIV 独演会[真 感 覚 ]』の東京編。
 冒頭、「ココロジェリーフィッシュ」「距離」「悲しい歌がある理由」「ぽたり」と、それでなくてもずっしりくる曲だらけのレパートリーの中でも、特にそうである新旧の曲を、MCなしで四連発で食らわして、会場をなんとも言えない空気にする。おそらく満員のオーディエンスのほとんどが「食らわされたくて来ている」人たちだと思うが。
 で、テレビドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』のエンディングテーマとして話題になった「縁」と、「かぞえうた」の2曲で、場をちょっと軽やかなムードにし、ファンのお悩みに答えるコーナーをはさんで、さらに和ませる。
 そこからは、ここ1〜2年のライブにおける必殺曲「東京にて」、コロナ禍でのライブのために作った「口を開けずに歌う歌」である未音源化曲「mmm」、このライブの2日後の11月24日に配信された最新デジタルシングル「やめるなら今」、本編最後は、これも以前からのライブの鉄板曲「前線」「備忘録」の二連打──。
 って、ほとんどベストアルバムみたいな選曲だ、これ。2020年の9月に初のベストアルバム『樋口愛』が出ているんだけど、それ以降に出た強力な曲たちも含めての、最新バージョンのベストアルバム、というか。
 さらにアンコールでは新曲「劇場」も披露。すごかった、頭から最後まで。覚悟してステージと向き合わないと、グサグサやられて這うように帰ることになる、そんなライブだった。

11月28日(日)18:00 Hump Back@日本武道館

 ニューアルバム『ACHATTER』のリリース・ツアーの、ファイナル、というわけでは別になくて、ライブハウス・ツアーの途中に、大阪城ホールとこの日本武道館が、しれっとはさまっている。
 という日程の切り方にも表れているが、ステージ上の3人を映すビジョンがあったことと、MCでここまで来たことを感慨深げに言葉にしていた以外は、本当にいつもどおりの、ライブハウスでやっていることをそのまま大きな会場でやります、それ以外のことはやりたくないしやる必要も感じていません、みたいな、迷いやブレの一切ない、清々しくて痛快なステージだった。
 頑固な感じで「ライブハウスのフォーマットでしかやりません!」みたいな感じじゃなくて、もっと自然で、あたりまえに、それが普通だと思ってそうしている感じなのが、とてもいい。
 前回のツアーで東京国際フォーラムホールAをやって、今回日本武道館をやって、いずれもフルハウスにしたので、次は横浜アリーナとかさいたまスーパアリーナとかになるんだろうけど、そうなると多少は演出とか入れるのかな。それとも、またこのまんまやるのかな。というのも含めて、次も、楽しみになった。
 あ、でも、そういえば、アンコールのMCで、ベースのぴかに「どやった? 武道館」と訊かれた林萌々子、「(次は)2デイズやりたいわ」と言った。そうね、確かに。と、素直に思いました。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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