兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第152回[2023年12月後半・くるり、石野卓球『地獄温泉』などの5本をを観ました]編

コラム | 2024.02.01 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、基本的に生、時々配信で観たライブ、すべてについてなんか書く連載の152回目。2023年12月後半編=23日から大晦日までの5本です、今回。
 岸田繁と佐藤征史と森信行の3人だけがステージにいる、くるりのライブを3曲観れたことが、今回の個人的トピックでした。あと『地獄温泉』と『ヤングナイター』は、自分がまたなんとか1年生き延びられたことをこの日に実感する、年中行事になっています、もう。

12月23日(土)18:00 くるり @ Zepp DiverCity

 オリジナル・メンバーであり、1996年の結成から2002年まで在籍したドラムのもっくん(森信行)が参加して、彼と岸田繁と佐藤征史の3人で作り上げた(そしてその制作のさまが2023年10月公開の『くるりの映画』になった)ニューアルバム『感覚は道標』のリリース・ツアーの、東名阪Zepp公演のファイナル=Zepp DiverCity2デイズの2日目。
 頭7曲が『感覚は道標』からの曲で、ドラムはもっくん。8曲目からドラムがクリフ・アーモンドに代わって、そのまま本編ラストの20曲目まで演奏する。アンコールは、ツインドラムで3曲(その3曲目の「ロックンロール」が特にうれしかった)、そのあと岸田・佐藤・もっくんの3人だけになって、「尼崎の魚」と「東京」、メジャーデビュー・シングルのカップリング曲とA面曲をやる。
 というところで、前日のライブは終わったそうだが、この日は3人でさらにもう1曲、「さよならストレンジャー」をやってくれたのだ。メジャーデビュー・アルバムのタイトル曲である。
 ラッキー。今日来てよかった。僕がもっとも頻繁にくるりにインタビューしたりしていたのは、そのファーストアルバムの頃なもんで、いろいろとしみじみした。が、そのあたりのもっくん在籍時の曲と、『感覚は道標』の曲、どっちがうれしかった? と問われたら、同じぐらいかな、いや、『感覚は道標』の曲の方かも、と言いたくなる。ということが、いかに『感覚は道標』がいいアルバムか、そしていかにこのツアーがすばらしい内容であるかを、証明しているように思えた。

12月26日(火)23:30 石野卓球 @ リキッドルーム

 毎年恒例、石野卓球がひとりでDJし続ける誕生日イベント『地獄温泉』。誕生日なので毎年日付は固定、なのでほぼ毎回平日になる。俺、会社員じゃなくてよかった。と思うことの大きなひとつが、私、この『地獄温泉』です。でも毎回お客さん、いっぱい入ってるのよね。みなさん翌日どうしているんだろう。有休とか取るのかな。それとも俺みたいな非会社員が多いのか。
 石野卓球が10代の頃に愛した1980年代の曲 (だけではないけど) が中心で、僕なんかでも知っているようなヒット曲もいっぱいかかる、という選曲の方向性は、例年どおり。
 オープン&スタートのタイミングは入口が大行列になるので、30分くらい経ってそれが収まった頃に行って、ひとりで飲んで踊って、3時とか3時半くらいに力尽きて帰る。というのが、ここ2年くらいの自分のルーティンだったが、今年は何か楽しくて、帰りがたくて、そしてなぜか力尽きなくて、終わるまでいた。余裕で5時半を回っていました。5:45くらいだったかも。
 なお、入場時に毎年、全員何かもらえるのですが、今年は「ワン軍手」(軍手の片っぽ)でした。去年はバラン(寿司折とかに入っているあれ)、一昨年はカップアイスのへら。ここ3年でもっとも「使おうと思えば使える」物を、もらった気がしないでもない。
 あ、あと、今年は一瞬、ピエール瀧、出ました。26時過ぎぐらいに。遊びに来て、ついでにちょっと姿を現した、という感じだった。

12月28日(水)18:30 ビッケブランカ @ TOKYO DOME CITY HALL

 リリースに紐づいた通常のツアーと別に、ビッケブランカが始めたワンマンのコンセプトライブ(だと思う)『RAINBOW ROAD』の二回目。
 このDI:GA ONLINEにレポを書きました。気合い入れて書いた、いいのが書けたのではないか、と思っていたら、ツイート(ポスト)でご本人が称賛してくれてうれしかったりしたので、未読の方、ぜひ。
ビッケブランカ『RAINBOW ROAD』第二弾で「バキバキのエンタメをバキバキの衝動が超えていく瞬間」を観た

12月29日(金)19:00 JUN SKY WALKER(S) @ 渋谷LA MA MA

 ジュンスカのライブ、現体制(サポートベースでROCK’N ROLL GYPSIES/POTSHOTの市川勝也が参加)になってからけっこう経つが、いつも何かタイミングが合わなくて、いまだに生で観れていない(配信では観たが)。が、毎年恒例になっているジュンスカの古巣、渋谷LA MA MAでの年末ライブ、この日行けるじゃん俺! と気がついて、以前に仕事をしたことがある関係で、宮田和弥ご本人の連絡先を知っていたもんで、お願いしたら「どうぞどうぞ」ということで、観て来た。
 キャプテン・レコードから出た最初の音源である『J(S)W』の8曲を全曲再現、という軸がありつつ、それ以外の歴代の曲もふんだんにやってくれるセットリスト。特に「HEAVY DRINKER」がうれしかった(好きなんです)。
 というわけで曲数たっぷり、合間にマネージャー仕切りのトーク&プレゼントコーナーもあったりして、尺もたっぷり。市川が55歳で、宮田和弥&小林雅之が確かその3つ上だから58歳、森純太はふたりの高校の一個先輩だから59歳ですよね。
 それでこのボリュームとテンション、すごい。もうひとつ言うと、宮田和弥、こんなにキャリアがあって、持ち曲がいっぱいあって、しかもこれくらい長尺のライブをやっているにもかかわらず、プロンプター(歌詞のカンペ)とか一切見ないボーカリストって、とても少ない気がする。他は、それこそ宮本浩次くらいしか思いつかない。
 和弥さん、実は見ているのかな。少なくとも、僕の位置からは、そのようには見えませんでした。

12月31日(日)22:45 フラワーカンパニーズ @ 新代田FEVER/Streaming+

 それ以前からやっているが、2021年以降は新代田FEVERで行うのが定番になっている、フラワーカンパニーズの年越しワンマン(生配信もあり)が、この『ヤングナイター』なのだが。
 ベース&リーダー&マネージャー&社長のグレートマエカワに言いたいが──なら直接言えよ、という気もするが──この年越しライブ、ステージに、お客さんから見えるようにひとつ、あとメンバーから見えるようにひとつ、でかいデジタル時計か何か、置きません?
 というのは、メンバーから見える位置の時計(ステージ中央の上部にあって客席からは見えない)の時間と、メンバーが持っている時計の時間が合っていないということが、年越しの瞬間の直前でわかって、なんかバタバタして、若干フワッとしたカウントダウンで、新年を迎えたのである。
 確か、去年もこんな感じだった気がする、カウントダウンの瞬間。この連載のアーカイブで確認してみた。やはりそうでした。こちら。≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第123回[2023年1月前半・清水ミチコ/氣志團/SHISHAMOと3日連続で日本武道館、などの8本を観ました]編
 というわけで、次回はこのライブの、カウントダウンを超えた後から始まります。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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